【AFTER GAME】 2022-23 A東京戦(12/14)〜立ちはだかった壁。1敗を1勝に変えるには~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA、写真:茨城ロボッツ photo by IBARAKIROBOTS

アルバルク東京を迎えての水曜ホームゲーム。ロボッツはアップテンポなオフェンスを展開できない中でも食らいつき、前半を5点のビハインドで終える。1桁点差のままで迎えた第4クォーターで一気に引き離され、62-83で敗れた。強豪、そしてディフェンスを持ち味とするチームとの戦いが続く12月、この経験をどうチームの成長につなげるか。この一戦を振り返る。

高さのプレッシャーの中で

この試合、A東京のディフェンスのプレッシャーは常に高いレベルにあった。エース・#24田中大貴が不在という中で、A東京はスターターを#10ザック・バランスキーに託す。スターターを見てみると、A東京で最も身長が低いのが、187cmの#75小酒部泰暉という状況。ロボッツは、まずこのサイズのミスマッチを攻略しなければならなかったのだが、ボールがなかなかつながってこない。ロボッツが良しとしないハーフコートでの戦いでは、守りから主導権を握ろうとするA東京の地力が目立つ形になった。これについて、A東京のデイニアス・アドマイティスHCは、狙いを次のように話す。

「茨城さんでボール運びを担う選手たちに、いかにプレッシャーをかけ続けるか、というのがテーマでした。ボールハンドラーからの得点効率は、茨城さんはとても高いチームです。茨城さんと琉球さんとの試合を見ても、平尾選手を始めとして、ポイントガードの選手に力がある。マッチアップする選手だけでなく、チーム全体でのカバーリングの意識を持ったディフェンスを続けました」

こうした形になった戦いについて、リチャード・グレスマンHCはこう振り返る。

「ハーフコートオフェンスのところに着目するのもそうですが、まずはディフェンスの段階からターンオーバーを誘わなくてはなりませんし、加えてリバウンドが鍵でした。リバウンドを取られている、あるいはシュートが決められている中では、早い展開のバスケットにはなりません。ディフェンスリバウンドが19本、というのは不十分だったと思います。自分たちのスピードを使っていくためにも、サイズも身体能力もあるようなチームを相手にするには必要なことでした」

また、ここのところの群馬戦や琉球戦で好調だったスペーシング、それが生まれることによって起きるボールの流動性の部分も、この日は万全ではなかった。シュート成功率の低さも原因の1つとは思われるが、アシストは試合を通して15に留まった。この状況に対して、#21エリック・ジェイコブセンは試合後にこうコメントを残している。

「人もボールも止まってしまったことで、インサイドの展開も滞ってしまいましたし、いつもなら決まるようなシュートも外れてしまいました。アルバルクさんはゲームの展開をスローダウンさせようとしていたでしょうし、そこが自分たちをより難しくさせたと思います」

固められたディフェンスを相手にしては、なかなかロボッツとしてもらしさが出ない。同時に、過去の対戦からしっかり勝ち筋を見出し、A東京はそれを遂行しきったとも言える。高いスタンダードを持ちつつ、相手の戦い方を細かく分析し、アップデートした姿を常に見せていく。ロボッツはこの戦いで、改めて強豪クラブのなんたるかを、その肌身で理解したのではないだろうか。ただ、同時にA東京との対戦はもう1試合残っている。その対戦での勝利に向けて、改めてフォーカスしてほしいところでもあるだろう。

我慢のディフェンスが続いて

ロボッツは、第2クォーターで#11チェハーレス・タプスコットがA東京の#8吉井裕鷹をなかなか攻略できない時間が訪れる。ポイントゲッターがシュートに持ち込めない…となりかけた中で、ロボッツもディフェンスから活路を見出していった。そのキーマンとなったのが、ベンチから登場となった#29鶴巻啓太だった。A東京の#1ジャスティン・コブスとの1on1を度々食い止めるだけでなく、第2クォーターの終盤にはスティールからの速攻を完成させる。ボールをさらった鶴巻は、カバーに来たA東京の#22ライアン・ロシターに対してしっかり身体を入れ続け、シュートをブロックさせなかった。プレーを振り返った鶴巻は、こうコメントを残している。

「ピック&ロールに対するディフェンスに関しては、シーズンを通じてやりつづけていることでした。体の当て方を始めとして、いろいろなところに意識をしながらやっていきました」

一方で、この試合の前半で、ロボッツはボールがからまない部分でのスクリーンプレーから相手にマークを剥がされてしまい、得点を許す展開が増えてしまった。コブスや#9安藤周人といった面々に、インサイドの選手たちがしっかりとスクリーンに入り、空いたスペースを見逃さずにパスが入っていく。こうしたプレーについて、鶴巻はチーム内の約束事に触れていった。

「アルバルクさんはスクリーンプレーに長けた選手が多いので、そこでズレを作って、ペイントエリアの中にパスを通すという印象があります。特に前回の対戦でペイントエリアでの失点が増えたということもあって、ミドルシュートは仕方がない、という事前準備をしていたんです」

鶴巻は同時に「決め続けたコブス選手がすごかった」とも付け加えた。これについては鶴巻の言葉は決して間違っていない。現代のバスケットでは、ペリメーター(2ポイントエリアの中で、ペイントエリアよりは外の部分)のシュートは非効率と見なす向きが広がってきている。ゴールに近づいていることでより確率が高くなるゴール下と、大量得点につながる3ポイントでの勝負、というのが次第に広まっている。

リーグ屈指の長身である#53アレックス・カークを始めとして、躍動感あるプレーを披露する#11セバスチャン・サイズ、さらには帰化選手のロシターなど、インサイドでの決定力に長けた選手たちが揃うA東京を相手に取って、そうした選手たちをゴールから遠ざけたところで勝負する…というのは確かに理に適っていた。だが、A東京のシューター陣はこのプレーを決め続けてきた。これが決まるか、落ちるかというところで、ロボッツとしても戦いの進め方の余裕がもう少し変わったはずだ。

ただ、チームとして対応を決めていたとすれば、その割り切りをやり続けたこともまた大事である。判断をやみくもに崩し、結果的に次の隙を生んでしまっては、勝利はさらに遠のいてしまうからだ。

チームとしてオフェンスを組み立てたA東京、チームとしての守り方を探り続けたロボッツ。こうした我慢比べのような展開は度々訪れるはずだろうところだが、ここを粘った先に勝利への道筋も隠されているはず。点差が付いた試合になったが、その差は細かなところを潰していくことで埋められ、やがて超えていけるはずだ。

地区首位チームと今季初対戦

次節はアウェーでの連戦。対戦相手は現在、東地区首位に立つ千葉ジェッツだ。今季就任したジョン・パトリックHCのもとで、あの手この手でオフェンスを切り替えて戦う千葉J。長く在籍する#2富樫勇樹や#21ギャビン・エドワーズなどの威力はもちろんのこと、ベンチから登場する#4ヴィック・ローの得点力にも気を付けたい。

その千葉Jだが、ここ数戦で#13大倉颯太が膝の負傷で長期離脱、またベテランの#11西村文男も欠場するなど、選手層にやや問題を抱える試合に直面している。それでも勝ち進めているのは、誰がオフェンスの起点になっても成立するバランスの良さと、富樫やロー、#34クリストファー・スミスのように強烈な個性を宿した選手たちが共存できているからこそでもある。

ただ、その中で特に気を付けたいのが#31原修太。今季はオフェンス面での目覚ましい活躍を見せていて、ここまでキャリアハイとなる1試合平均9.7得点を記録し、12月11日の島根戦では1試合でのキャリアハイとなる22得点を奪った。強靱なフィジカルで相手を制圧していくスタイルは、リーグ全体でも突き抜けた存在とも言える。彼に対しての守り方、試合のどの時間帯ではっきりさせられるかが見どころになるだろう。

同時に、千葉Jに対してはボールを持って組み立てさせないことも大切な試合にもなる。プレッシャーをかけ続ける、あるいはかつての対戦で見せた「3-2」のゾーンのように、インサイドへ簡単に踏み込ませない手段も重要となるだろう。

両チームのラインアップを鑑みると、ジェイコブセンにかかる役割は大きい。千葉Jは帰化選手のエドワーズと外国籍の#33ジョン・ムーニー、あるいは日本人ビッグマンの#25荒尾岳など、リバウンド獲得に長けた選手たちが多く揃う。当然、1人で全てを、というのは厳しいテーマであるため、いかにジェイコブセンを楽にプレーさせ続ける40分を作り上げるか、ということが重要になりうる。ゴール下へ素早く走り込み、パスを要求する姿は、ロボッツの「Unselfish」をこれでもかと体現している。豪快でダイナミックなプレーを、彼が絡むことでいくつ生み出せるか。ロボッツにとっては大きな生命線となってくるだろう。

間髪入れずに行われる、上位との直接対決。昨季4戦未勝利に終わった千葉Jに、成長を見せつけるゲームにできるか。赤く染まったアリーナで躍動する、ロボッツ戦士たちへの応援を願いたい。

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