【AFTER GAME】 2021-22 川崎戦(12/29)~年末ゲームで直面した壁。刺激を得て乗り越えろ~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

2021年のラストゲームとして迎えた、アダストリアみとアリーナでの川崎ブレイブサンダース戦。序盤こそ相手の守備をかき乱して、良い滑り出しを見せたロボッツだったが、第2クォーター以降、シュート精度に苦しむ間に川崎に突き放されて、後半でさらに引き離される展開に。終わってみれば65-104と大差での敗戦となった。ロボッツのストロングポイントとウィークポイントがはっきりと現れたこの試合。今後の戦いへの糧を探る。

目の前の高い壁を崩せず

「川崎さんには脱帽です。後半に入って川崎さんの素晴らしい部分についていくことができなかったところは反省点だと思います。自分たちのプレーをやりきってこのような展開になるのならまた違う受け止め方にもなるのでしょうが、今日の試合を受けて、まだまだ改善点があると思います。」

敗戦を受けて、リチャード・グレスマンHCは素直にこう話した。それほどのインパクトを与えるようなゲームだった。

川崎は、前回の対戦で2試合ともに#33長谷川技をスターターに起用。この試合でもスターターに選ばれた長谷川が、本来のスモールフォワードのポジションではなく#2福澤晃平に対してマンツーマンディフェンスを展開する。この意図を、敵将である川崎・佐藤賢次HCは、試合後にこのように語った。

「ロボッツさんの試合を見ていると、福澤選手のシュート力やペイントアタックを非常に警戒していました。長谷川選手はうちのベストディフェンダーなので、彼を付けることを選びました。1本目こそやられましたけど、その後は終始プレッシャーをかけられたのではないかと思います。」

川崎サイドの思惑は当たって、福澤はこの試合で3ポイント1本のみの3得点に押さえ込まれる。ここのところのロボッツを支えていたポイントゲッターを止めたことで、流れは川崎に傾きだした。

この試合でロボッツが悩まされたのはそこだけではない。リバウンド、アシストなどの主立ったスタッツで、川崎に大きく水をあけられた。際だったのは第3クォーターのこと。このクォーターだけでリバウンドで6本、アシストでは7本の差を付けられ、20-35のビッグクォーターとされてしまう。後半での追い上げを目指していたチームにとっては、厳しい時間帯となってしまった。グレスマンHCは後半の試合運びについてこう話す。

「前半は信州戦での流れに乗っていたのか、自信を持ってシュートを打っていたように思います。後半でシュートが落ち始めたときに、自信がないように見えるところがあったので、そこは心配に捉えています。シーズンを送っていく中でシュート成功率が良くなっていた中、今日はこういうゲームになってしまったので、また良くなるようにしなくてはいけません。」

シューター的存在が多いチームゆえに、シュートの思い切りを失ってしまっては厳しい結果が待ち受ける。さらに、グレスマンHCはリバウンドについても言及する。

「一番の懸念はリバウンドです。ゲーム全体で23本差が付いているわけですが、リバウンドの本数はコントロールできるものだと考えているので、その差が浮き彫りになったのが第3クォーターだったのではないでしょうか。」

勝利した信州ブレイブウォリアーズ戦では、2試合ともにリバウンドで相手を上回っていたロボッツ。特に相手のインサイド陣が厚みを増したGAME2において13本上回って勝ったことからも分かるように、インサイドで積極的にボールに絡んでいくことは、失点を減らす上でも、あるいはそこからのトランジションを成功させる上でも重要な要素である。今回対戦した川崎は、ロボッツが進むべき先のお手本ともいうべきバスケットを示したのではないだろうか。ならば、これを吸収してBUILD UPを果たすのみである。敗戦を刺激にしていくことが、改めて求められる一戦となった。

中村が示した戦い

ここ数戦、ロボッツで特に元気が良いのが#13中村功平である。武器としていたシュートタッチも戻りつつあり、相手に対するディフェンスも磨きがかかってきた。#25平尾充庸の欠場が続く間、プレータイムも伸ばしていることで良い循環に乗っている。手応えについて本人に聞くと、こんな言葉が返ってくる。

「平尾さんが出られないところでプレータイムも増え始めたのですが、その前段階としてチームスタッフの方から『3ポイントだけにこだわらず、2ポイントも含めたバリエーションを増やしてほしい』と言われていました。そこを心がけてやっていますし、プレーの幅も広がって、リズム良くできているような感じもあります。」

ほしいところで割り切り良くシュートを放ち、それを決めることでチームも乗せる。彼の得点シーンでは、ベンチや会場全体が一際盛り上がりを見せる。やや寡黙な面も見せる中村だが、この盛り上がりはチームやファンからすっかり愛されている証拠だろう。こうして、単に得点やスタッツだけで測れない部分でも、中村の良さが現れている。

「今までだったら、数分しか出られないという中で、『この時間で結果を出さないと交代になってしまう』というメンタルでコートに入ってしまっている部分がありました。プレータイムが増えたことで、そこで考えすぎることもなくなってきたように思います。」

オフェンスや身体能力を活かしたプレーで見せ場を作ってきた中村だが、「ディフェンスも」と意気込む。今回の川崎戦ではシュートチェックの際にファウルを吹かれてしまう場面もあったが、ボールマンディフェンスの中でしっかりと間合いを取って押しとどめるケースも出てきた。こうしたプレーは、コーチ陣との努力の結果であることも明かす。

「自分が付いているボールマンがスクリーンを使ってきたときに、引っかからないようにするための足運びについて、福田将吾ACから教わっています。そこについては昨シーズンより良くなってきたのではないかと思います。」

スクリーンプレーに対するディフェンスは、ロボッツの基本線の一つ。中村がここできっちりと成長できれば、カバーに出るインサイド陣の負担軽減にもつながってくる。守りから選手としての殻を破るという部分では、昨シーズンからの#29鶴巻啓太の姿に通じる部分もある。中村がそれに続くことができるか、ここからの踏ん張りに期待だ。

このタイミングで、特別指定選手として#7脇真大が加入したことで、現在のロボッツの登録選手は13人となった。ベンチ入りの枠は「12」のため、新たなサバイバルの局面を迎えることになる。ここのところ見せている中村の復調によってサバイバルのギアは一段高いものになったといっても差し支えない。

ベテランたちのけん引が目立ってきた、ここまでのロボッツ。今度は若手たちの押し上げで、さらなる強化が進むことを期待したい。

駅伝も良いけれど、サッカーやラグビーもあるけれど

年末年始も慌ただしいのがBリーグ。曜日の巡り合わせもあって、チームによっては元日ゲームも予定されている。ロボッツも新年2日から、アダストリアみとアリーナでアルバルク東京との連戦を迎える。この試合が、オールスターゲーム前の最後のホームゲームだ。

今月半ばに行われたアウェーでの2試合では連敗を喫したロボッツ。堅守が目立つA東京を攻撃から圧倒しようとするのではなく、まずは守りと守りがぶつかり合うようなゲームにして、神経戦に持ち込みたいところだ。相手の注目選手は#11セバスチャン・サイズ。パワーとスピードを兼ね備えたビッグマンで、A東京の覇権奪回を託された存在である。前回の対戦では2試合ともベンチスタートながら、GAME1で13得点、GAME2では30得点を記録した。帰化選手の#22ライアン・ロシターがいることでビッグラインアップも可能とするA東京ではあるが、あれもこれも抑えるのではなく、一つ、彼に対して戦うディフェンスを展開していきたい。

一方、ロボッツのキーマンは、前回対戦を欠場していた#15マーク・トラソリーニだ。オフェンスにおいては、A東京のインサイドを動きの中ですり抜けて、攻略していくような働きを求めたい。フィニッシャーは彼、という場面は当然出てくるかもしれないが、トラソリーニの個人技で戦っていくのではなく、彼をどうオフェンスの中で回し続けていくかが鍵を握ってくるだろう。

全くの余談ではあるが、昨シーズンの新年ゲームでは鶴巻が香川ファイブアローズの点取り屋、#30テレンス・ウッドベリーを抑え込んだ。チームとしてはB1昇格に向けた原動力を得た瞬間だったし、そこからの彼の活躍は、今更振り返るまでもないところだ。今回の試合でも、新たなヒーローの誕生に期待してみても良いのではないだろうか。

駅伝や、サッカー、ラグビーなど、正月のスポーツ界でのビッグイベントは数知れないが、バスケットだって負けていない。どうか、帰省中であるご家族の皆さんも連れ立って、アリーナで暖かい一時を過ごしてほしい。

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