【AFTER GAME】 2021-22 A東京戦(1/2~3)~強豪の高く厚い壁。戦いと準備で勝利を目指せ~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

前半戦最後のホームゲームとなった、アルバルク東京との2連戦。GAME1は立ち上がりで大きなビハインドを背負い、その後もペイントエリアでのシュート精度に終始苦しんだ結果、65-81で敗戦。GAME2は追い上げムードで迎えた第3クォーターで8-16と引き離されてしまい、逃げるA東京の尻尾をつかみ切れず。74-87で連敗に終わった。強豪からの勝利で勢いづきたいチームにとっては厳しい結果となってしまった。シーズンの折り返しが迫る中、改めて浮かび上がったロボッツの課題に迫る。

「まずはタフに守ること」

GAME1を例に取ると、2ポイントのシュート成功率には大きな差があった。A東京の44.4%に対して、ロボッツが27.9%。シュートの試投数自体を引き離されていなかったがゆえに、タフショットの多さが窺える結果だった。リバウンドの本数も、GAME1で21本、GAME2で17本の差。ペイントエリアでの得点も、2試合ともA東京が上回った。数字上でも、コート上の出来事でも、いかにA東京のインサイドが屈強だったかが見える。

劣勢の中でも攻め手を緩めなかったが、それだけでは厳しい結果でもあった。リチャード・グレスマンHCはGAME2を終えてこう語る。

「結果としてリバウンドで大きな本数の差を付けられてしまいました。自分たちがより高いレベルのチームになるとするなら、これだけの大差を付けられてしまっては厳しいんです。ここを良くしようとすることは大事ですし、裏を返せばその努力を怠ることは自分たちをより苦しめてしまいます。」

特にGAME2において、A東京のオフェンスの組み立て方はインサイドの強みを活かした上で組織立っていた。ベースライン側からゴール下までアタックを仕掛けて、ダブルチームを使って止めに来たところでアウトサイドにボールを振って、オープンとなった選手がシュートを沈める。#11セバスチャン・サイズや#53アレックス・カーク、#75小酒部泰暉など、何人もの選手がこのプレーを続けざまに決めきったところに、A東京の組織力の高さが見えた。

だが、グレスマンHCは懸念点は別にあると話す。

「ペイントエリアを攻め込まれてしまうことの懸念があって、キックアウトからのシュートということ自体は大きく問題としてはいません。確かに外から決められこそしましたが、今日は試合全体で相手の3ポイントを6本まで抑えました。やはり、ゴールに近い位置でボールを持たれてしまうのはかなり厳しい状況を意味します。逆にボールマンにディフェンスを寄せていくことでキックアウトを誘発する。そこからのシュートチェックをやりきっていく。そういった方向にしたいと思っています。」

A東京の#22ライアン・ロシターに対して#11チェハーレス・タプスコットが体を張ったり、そのタプスコットが相手のインサイドに潜り込んで得点を量産したりと、グレスマンHC曰く「部分部分でいい努力を感じるプレーはあった」ロボッツ。ただ、最終的にA東京の逃げ切りを許したことには、その良さを40分のフルタイムで活かしきれなかった、ということだろう。指揮官も「一貫性というところは足りなかったように感じる」と言葉を残している。

タプスコットも、そういったほろ苦さを感じていたのだろうか。GAME2でMIPに選ばれた彼は、その後のインタビューで、日本語を交えてこう語った。

「今日はありがとうございました。いつも、すごい応援をありがとう。また次のホームゲームでも、応援をよろしくお願いします。皆さんの応援には毎回毎回助けられていますし、より頑張って、勝利を届けたいと思います。」

もう少し、というゲームが続く中、シーズンはいよいよ折り返し。再び勝利に対する「産みの苦しみ」に直面したロボッツが、ブレずにいられるか。試練の時を迎えている。

多嶋が伝える「迷わない極意」と「良い準備」

ロボッツのアップテンポなオフェンスの肝は、リバウンドや相手のミスを突き、トランジションで走りきってシンプルな攻撃を成功させることにある。ところがこの2戦では、それが決まらない場面がいくつか見受けられた。ファストブレイクを狙ったはずが、相手の戻りを受けてしまうこともあった。苦しい戦況の中でも1本2本と決まれば、勝負のあやはまだまだ分からないところにいられたとも考えられる。グレスマンHCも、トランジションオフェンスでの改善を求めているようだった。

「ポイントを取れるべきところ、フィニッシュすべきところもあったんですが、そこでシュートを落としてしまった印象があります。アルバルクさんのディフェンスに対する評価ができきっていないのかもしれませんが、私としては決めきれたはずのオフェンスを落としてしまったと思えるので、そこを突き詰めていきたいと思います。」

そんな中、この2戦でも元気の良さを見せたのが#13中村功平だった。相手のギャップに対して上手く入り込んでシュートを打ち込む。GAME2では一時負傷でコートを離れる場面もあったが、今シーズン初の2桁得点(12得点)を記録。最後まで攻撃の火付け役であり続けた。

GAME2の終盤、アウトサイドで#8多嶋朝飛からのパスを受けた中村がシュートを放つ。このシュート自体は外れてしまうのだが、この場面で多嶋が一言二言、中村に言葉をかけ、頭をポンと叩いてポジションへと戻っていく。この時、どんな言葉をかけていたのか。試合後の会見で多嶋に尋ねた。

「最近、功平が良いプレーを続けていますし、チームとしてもケガ人がいる中でステップアップしているということは、誰から見ても分かることだと思います。決められたシュートも、決められなかったシュートももちろんあるんですが、チームとして作り出したシュートは、打ち続けるべきだと思いますし、彼に限らず、チーム全員で思い切り良く、トランジションの中で良いオープンを見つけたら打っていく、というのがロボッツのスタイルです。あのタイミングでシュートを打ったことは間違いではないですし、外れたことでチームにマイナスがあるわけでもないんです。あれを続けてほしい、という考えがありました。」

「打って外したのならばしょうがない」。かつて#2福澤晃平がチームメイトにかけられ続けた言葉である。大一番でのシュートを落としてしまっても、彼がリベンジを続けてB1の舞台までたどり着いたように、中村もまたB1で羽ばたくだけのポテンシャルを十分に持った選手だ。改めて、迷わないことがどれほど重要か。中村の復調から、改めて感じ取る部分は大きいだろう。

チームはここまで5勝と、B1全体を見渡しても苦しい立場にある。「勝てるゲームはもっとあった」と話す多嶋は、チームがさらに浮上するためのカギをこう説く。

「ここ数試合を見ると、リバウンドで差を付けられて、戦況が厳しくなるということが続いています。まずはチームとしての問題点を一つずつ改善していくべきですし、やっぱりリバウンドで勝負ができている限りは、チームも勝っているわけです。細かいところで、チームとして戦えている時は、結果にも繋がってきているので、チーム全体が少しでも良くなるように、良い準備を続けていきたいと思います。」

多嶋はこの記者会見で繰り返し「良い準備」というワードを用いた。戦うためには、準備が必要で、その準備は日々の練習やミーティング、スカウティングなどを通じて養われていくであろうものだ。選手たちのスキルや判断力だけでない「BUILD UP」が、改めて求められていることを感じさせる瞬間だった。

「年末年始の3試合で、いずれもリバウンドで差を付けられたわけですが、急にリバウンドが取れるようになるということはありませんし、僕らが小さなラインアップである中で、今後も試合ごとにどの相手とも勝負をしなければいけません。もちろん簡単ではありませんが、チームの努力としてどれだけ徹底して明確化できるか。どこと対戦するとしても大事だと思いますし、まだまだ良くなるポイントというのはたくさんあるチームです。それを後半戦や次の試合に向けて良い準備を続けられたらと思います。」

前半戦ラストゲーム。新たな力も加わって

次節のアウェー・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦を経て、2021-22シーズンは折り返しを迎える。平均得点90.4と、リーグ最強の攻撃力を誇る名古屋Dは、どこからでも得点が取れるのが強み。#4コティ・クラークと#43スコット・エサトンのインサイド陣のほか、日本代表の#2齋藤拓実も平均得点が2桁に乗る。一方では#8張本天傑や#32狩野祐介など、ベンチスタートの多いメンバーたちも得点力を発揮して、場面をつなぐことができる。序盤こそケガ人の発生で苦しんだものの、現在18勝8敗で西地区の2位。3シーズンぶりのチャンピオンシップ出場も狙える位置につけている。

ロボッツの注目選手は、この試合が古巣対決となる#0遥天翼に注目したい。当時実業団チームであった名古屋Dの前身・三菱電機の一員としてバスケットボール選手としてのキャリアを歩み始めた遥。当時は苦い思い出もあったと振り返る彼が、久々の古巣対戦でどのような働きを見せるかに期待したい。

また、この試合からは特別指定選手としてロボッツに加入した#7脇真大のベンチ登録が可能となる。早速彼の出番が回ってくるのか、ロボッツに新風を吹かせることができるのか、そういったポイントも見どころになるだろう。

強豪との連戦が続いた年末年始。勝利で以て折り返し、後半戦へのきっかけ作りになるゲームを展開できるか。名古屋Dの猛攻を止めた先に、勝利が待っているはずだ。

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