【AFTER GAME】 2022-23 仙台戦(11/30)〜連敗脱出ならず。過去に通った道にヒントがあるはず~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA 写真:茨城ロボッツ photo by IBARAKIROBOTS

仙台89ERSを迎えて行われた水曜ホームゲーム。ロボッツはハードなディフェンスを信条とする仙台に負けじとエナジーを前面に押し出して戦い、前半を41-39とリードして終える。しかし第3クォーターから仙台が#12寒竹隼人や#15渡辺翔太、#45ネイサン・ブースが続々と目覚めたかのように得点を奪っていく。ロボッツもオープンを作り出してのシュートで応戦するが、こちらは決まらず、77-85で敗れた。チームの姿が変わる中、今のロボッツが直面していることは過去のロボッツが通ってきた道をかすめている部分もあるはず。#2福澤晃平、#11チェハーレス・タプスコットの言葉と合わせて、この試合を振り返る。

自信とともに得点を取れるか

前半で#1トーマス・ケネディなどの3ポイントシュートが好調だったこともあって、得点が伸びたロボッツ。ただ第3クォーターから第4クォーターで得点が停滞すると、途端に仙台が流れを掴んだ。相手が体を当ててくる中で、ロボッツはなかなか「らしい」オフェンスを作りきれず、仙台よりもシュート効率が悪い状況に陥る。この日特に苦しんだのが2ポイントシュートの成功率。相手を剥がしたり、手が伸びてこない場面のシュートもありながら、これが入らず。同時に、プレッシャーを受けていない場面のシュートがゆえに、ファウルを得てのフリースロー…ともならず。次第に焦りに似たような状況になり、終盤にはタプスコットが突破を仕掛けても、得点につながらない場面が増えていった。オフェンスを振り返った福澤は、

「全員がボールを触ることなく終わった場面があって、アタックに行ってタフショットになる…というシーンが僕を含めてありました。個人的にはシュート成功率が25%だったわけで、もっと良いシュートセレクションをしなきゃいけないと思いますし、一度引いて味方にパスだったりっていう選択肢もあったと思うんです」

こうした状況での敗戦は過去にもあり、B2時代にも度々起きていた。メンバーが入れ替わる中でも、志向するバスケットの根本が変わらないとすれば、この時代に何らかのヒントがあるはず。例えば、ある選手がボールが留まらないための心構えとして「Two more pass」という言葉を残したことがある。つまり、目の前が空いていると思っても、そこから2本パスを通そう、という意味合いだ。相手がハーフコートの中に固まろうとするならば、よりズレを生むために必要な部分であり、パスをもらいやすくするための連携として、相手をはがすための動きも生まれる。この試合、仙台の方がたびたびエクストラパス(オープンからさらに1本さばくパス)を通じて得点を生んだことを考えれば、生きた教材を目の当たりにした…という状況だろう。

行き着く先としては、「人とボールが連動する、アップテンポなバスケット」への着地となるし、空いているはずのチャンスから、より決定的な場面を探る様は「Unselfish」の体現そのものだろう。一方で、タプスコットはチームの現状について、一つ正直なところを話す。

「チームの中の自信が、今少し下がってきてしまっていると思います。チームとして一つになってやり続けることは、絶対に外さずに継続していくべきことだと思いますし、良いチームメイトたちばかりです。自信を持って、バスケットをプレーできることを楽しみ、幸せに感じながら前向きにやることで自分たちが元々持っているものをしっかり出すことができると思います」

前節のコラムで「一度逃したチャンスはもう来ないかもしれない」というような言葉を書いてしまったのだが、それは考え直さなくてはいけない。もし、迷いが自信を見失わせ、結果的にプレーやチーム全体を曇らせてしまっているのだとすれば、そうした自分がコントロールできない事象はできるかぎり切り離して考えなくてはいけない。その代わり、自分たちやチームの中でコントロールできることは全力でものにする、と言うことはもちろん必要になる。

そもそも、10月の戦いでは、開幕直後に抱えていた迷いを振り払った#13中村功平が活躍の兆しを見せた。そして、「やるべきことをやって楽しむ」と決意を新たにした三遠ネオフェニックス戦で勝利を果たした。足りない部分もあるかもしれないが、チームの中で信頼されて、選手たちはコートに立っている。そこに自信を持たなくてはいけないし、まずはそれが戦うための第一歩のはず。改めて立ち返れば、「心技体」が揃ってこそだ。

ベクトルを自分に向けて

福澤はこの日、ベンチスタートながら、前半に8得点を挙げてチームを勢いづけた。それでも、後半を無得点で終えてしまい、本人は悔しさをにじませる。

「今日は、15分のプレータイムをもらえたのですが、15分出た上でこの成績というのは、コーチ陣の期待だったり、ベンチを代表して出してもらっている身としては、その責任が果たせていないのかなって僕は個人的にすごく思うんです。もっと全員から信頼される選手にならなくてはいけません」

前節・アルバルク東京戦のGAME2では、ベンチ入りしながらプレータイムがなかった。その上で、自身が直面している状況について尋ねると、彼はこう感じているという。

「プレータイムに関して言うと、自分の実力が足りないだけだし、出られなかったことに対して何か思う、というのはないんです。今シーズンは3ポイントの確率も低くて、ディフェンスで止められ続けている、ということもできていません。身長が小さいながら2番ポジション(シューティングガード)で出ているわけで、やっぱり相手にアドバンテージを取られてしまうと思うんです。そのアドバンテージをどれだけ消せるかっていうところが大きな課題になっていますね。」

一方で、福澤は、チームの現状について尋ねられると、その打開策になるかもしれない言葉も付け加えて答えてくれた。

「負けが込んでいるときって、やっぱり人のせいにしたくなるというか、何かのせいにしたくなるっていう気持ちがすごくあると思うんです。やっぱりそういうときに、いかに個人がそれぞれ自分にベクトルを向けられるか。『自分がもっとこうならなくては』とか、『チームとしてこうならなきゃいけない』とか。言葉で表現すると簡単かもしれないですけど、実際にやるのは難しい。ただ、やっぱり信頼関係ってのはすごい大事かなって。」

ベクトルを自分に向ける。勝つにせよ、負けるにせよ、チームで戦う以上、その面々には何らかの責任がともない続ける。キャプテン・#25平尾充庸はB1昇格が現実味を帯びていたころ、たびたび「自分ごと」という言葉を使い、チームに成長と奮起を促していた。それを2季にわたってバイスキャプテンとして支えた福澤も、その責任感の一端を理解しているのだろう。

チームの中にも、その芽吹きは起きているようで、細かな場面を福澤は話す。

「林選手なんかも『ポジティブ!』って声をかけ続けていましたし、ケネディ選手からもハーフタイムに『もっとハードにやって、バスケを楽しんでやろう』という話もあったんです。けど、やっぱり勝ち負けもあるし、良くないプレーでフラストレーションが溜まることもある。途中でアドバイスをすることも大事だろうし、誰のプレーに対しても、お互いを信頼できるか、っていうのはすごく大事だと思います。」

勝とうとも負けようとも、それがチームの、「茨城ロボッツ」としての結果になる。今、選手たちは「言うは易く行うは難し」をどう具現化できるかを探っている。自分たちで積むしかない「あとちょっと」を積み重ねようとする姿が垣間見えた、試合後のやり取りだった。

「守るべき城」で、もう一度

今季、ロボッツはアダストリアみとアリーナでの勝利がまだない。あえて当時の言葉をもう一度使うならば、かつて平尾を始めとして、選手たちは「ホームアリーナは守るべき城である、その城を守るための戦いだ」という言葉を残した。そして今、「VICTORY FACTORY」での勝利が、今のチームにとっての特効薬になりうる。

次節の相手は、Bリーグでこれまでずっと対戦を続けてきた群馬クレインサンダーズ。今季も#16並里成の獲得に代表される大型補強を敢行し、一方で新指揮官・水野宏太のもとでチーム全体の整備に成功。前節はダブルオーバータイムの末に宇都宮ブレックスに敗れたものの、10勝4敗で東地区の2位に座る。

群馬は今季も「鉄人」#3マイケル・パーカーが全試合でスターター出場中。プレータイム、得点力ともに衰える気配を見せておらず、リバウンドにも積極的に絡む。彼のパワーに押し負ける、という状況が起きると、ゲーム展開が厳しくなっていくだろう。

外国籍選手2人に帰化選手のパーカーというビッグラインアップが武器になる群馬。となるとキーマンはケネディと#17山口颯斗だろう。相手のチェックの中でも冷静さを保ち、ゴールを狙いに行く姿で、相手にプレッシャーを与えていけるか。また状況に応じて、相手のエーススコアラーである#4トレイ・ジョーンズに対して#29鶴巻啓太のマッチアップも見られることだろう。

ホームゲームが多く行われる12月。反撃への体制は整った。「VICTORY FACTORY」を取り戻し、青く染まったアリーナを再び歓喜一色にできるか。奮起に期待をしていきたい。

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