【AFTER GAME】 2022-23 A東京戦(11/26~27)〜勝ち筋を勝ちにするために、今をもがこう~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA 写真:B.LEAGUE photo by B.LEAGUE

東地区のアルバルク東京とのアウェー2連戦となったロボッツ。#5LJ・ピークの退団が決まった直後の試合でもあり、選手層を含めた動向が注目された。GAME1では相手に立て続けに連続得点を許し、88-56と一方的な展開を許して敗戦。立て直しを狙ったGAME2は、第3クォーターで一時逆転に成功するも、直後からA東京が一気にロボッツを突き放す。ロボッツは追いすがったものの78-70で連敗となった。前節に続き、勝ち筋が見えたはずのゲーム。それを勝ち取るには改めて何が必要なのか、強豪との対戦が続く今後に向けて振り返る。

「一発」を決め続ける

GAME2の第2クォーター、残り7秒という場面。#11チェハーレス・タプスコットがファウルを受けたタイミングで、ロボッツはタイムアウトを取る。その直後のプレーで、ロボッツはサイドラインからタプスコットがスローインを狙った。見た限りでの狙いはいくつかあり、ゴール下で待ち構えた#21エリック・ジェイコブセンへのアリウープも可能な陣形。一方のA東京はガッチリと守備を張ってそもそもスローインを入れさせない…という状況。仮にスローインが入らないまま、5秒バイオレーションを誘えたとすれば、彼らに7秒の攻撃時間が残される。

という中で、ゴール下を駆け抜け、#1トーマス・ケネディがコーナーへ走り込んできて、タプスコットがパスを出す。受け取ったケネディは振り向きざまの3ポイントシュートを沈め、前半を終えることとなった。

「あれが狙いだった」と話すのは、リチャード・グレスマンHCだ。

「自分たちもスコアが必要な状況だったので、あの場面はケネディ選手にボールを出す、というところを狙い目としていて、選手たちもしっかりと遂行して、よくやってくれた、と思っています。過去にも狙ったことがあるプレーでもあったので、選手たちにとっても、しっかりとコート上で遂行してくれて良かったと思う」

一方で、惜しいシーンも多くあった。A東京が攻撃に失敗し、#8多嶋朝飛が素早くボールを運び、ケネディへとパス。トランジションからの3ポイントという狙いはズバリだったのだが、これが決まらず。ただ、GAME1のような大きな差を考えれば、こうした一つ一つのプレーの成功か失敗か、というところに流れを持ち込んだ、ということは十分以上のインパクトだっただろう。ただ、「負けは負け」という現実も同時に見なくてはならない。

ああいったプレーを一発で決めきる、同時にそのプレーのベースとなるディフェンスでの絡め取り方を増やしていく。「強いチームと戦うに当たって、こちらがエラーをしている余裕はない」とグレスマンHCが述べるならば、相手にとってのエラーをどのように再現性高く起こし続けられるかも必要になる。似たようなシチュエーションは、その試合では二度と起きないかもしれない。とは言え、そこで萎縮してしまってもいけない。絶妙な塩梅を求められ続けるなかではあるが、これからも、それこそロボッツがチームとしてのステップを駆け上がり続けた先においても、試行錯誤は続くことだろう。ただ、そこに至るまでには苦しんだ時期もあったと思える日が来るはずで、「継続」「積み上げ」という道を選んだロボッツは、今がそこに向けて最大限にもがき続けなくてはならない時期なのかもしれない。

ローテーション変更の策も見えて

このGAME2では、これまであまり多く見られなかった選手起用が見られることとなった。開幕以来、ポイントガードのポジションは#25平尾充庸と多嶋、シューティングガードのポジションは#13中村功平が主に起用され、ここに#2福澤晃平が加わる選手起用が続いていた。この起用自体は、グレスマンHCが就任以降、B2時代から多用してきた、2ガードにシューティングガードを織り交ぜるフォーメーションの延長にあるものだろう。

ただ、この試合ではシューティングガードに#17山口颯斗、スモールフォワードにケネディという場面が多く見られ、ディフェンスを重視する…という場面では、この試合でスターター起用された#29鶴巻啓太がこの2人のどちらかに代わってコートに立った。明確にこの2人で時間を作ったのは、2人がスターター起用された開幕戦を除いて、なかなかできていなかった。その狙いについて、グレスマンHCはこう説いている。

「特にアルバルクさんにサイズが大きい選手たちが揃っている…という事情もあって、試合の序盤ではTraditional(いつも通り)の起用をしていったわけですが、要所ではそこから変えることにしました。山口選手、ケネディ選手と、2人を同時に出しても行ける、となったのは収穫だったと思います」

ロボッツについて回る、体格面でのギャップ。特にA東京は#24田中大貴、#75小酒部泰暉のほか、GAME2では欠場となった#33笹倉怜寿など、大柄かつ瞬発力も備えたガード陣が数多く在籍する。ここに先述した2ガードを軸とするローテーションで立ち向かっては、プレッシャーをまともに受けてしまう。

さらには、帰化選手である#22ライアン・ロシターが在籍しているほか、Bリーグ全体でもトップクラスの長身である#53アレックス・カークもインサイドに陣取るため、リバウンド争いではより分厚い布陣を敷いてくる。この場合、単純に相手と争う、というよりはタプスコットやジェイコブセンがきっちりと相手と競り合ってボールを落とすスペースを作り、他の選手に飛び込ませて奪うのがある種の理想ともなる。GAME2においてはケネディ、山口、そして多嶋などがここを泥臭く回収し、その後のポゼッションにつなげた。GAME2の第4クォーター、ケネディがリバウンドからバスケットカウントを奪ったようなプレーは、今後どこと対戦するに当たっても増やしておきたいプレーだっただろうし、これをより狙って実現するには、という準備もしていける。その実現性が大きく見込めるならば、他の選手たちのローテーションの中にエッセンスを加えることもできる。この試合でシーズン最多の24得点を挙げたケネディは、試合後にこう話している。

「自分のパフォーマンスとしては、まずまずだったかなと思っています。もちろん自分がより良くできた部分はあったと思いますし、もっとリバウンドのところから戦って、ディフェンスで相手にストップをかける。そういったところでチームを助けることができればと思いました。昨日の大敗から、全てのポゼッションで競い合うことを大事にしていましたし、今後に向けては最初からアグレッシブに行く、というマインドを自分たちで作り出して、自分たちがやりたいペースでやっていくことが必要だと思います」

退団したピークに代わる新たな切り札の存在を待ちたいところだが、目の前の試合は行われ続ける。こうした大柄な選手がラインアップに並ぶ布陣においては、#33林翔太郎や#88ジャワラジョゼフなど、今シーズンの戦いでまだ出番が少ないメンバーを起用できるようなフォーメーションが描ければ、また彼らにとってもアピールポイントのきっかけにもなるはず。山口とケネディが並び立った姿は、今シーズンのロボッツの新たな戦い方が垣間見えた場面でもあった。

ようやくの「初登場」

開幕以来、欠場メンバーに代わってロスター入りする場面はあっても、なかなか出番を得る…とまではなっていなかったのが#24鍵冨太雅。大差でのビハインドとなったGAME1の第3クォーター終了間際に投入され、Bリーグ初出場を果たした。

「チームとしては、第3クォーターの時点で結構点差を離されてしまって、特にリバウンドの部分で大きく離されてしまった。一方で、自分はもう、少しでもチャンスがあったときのために、ここ3ヶ月ずっと準備してきたので、出たとなれば、もう思い切って、自信を持ってプレーしようと心がけていたので。ゴールにアタックしてファウルももらえて、すごく良かったと思います。皆さん期待もあったと思うんですけど少しずつ自分も成長していきたいです」

第4クォーターでも続けて出場した鍵冨は、さらにフリースローでBリーグ初得点もゲット。難しいゲームでありながら、結局第4クォーターで10分間フル出場し、エナジー溢れるところも見せた。チームとしては苦境が続く中だったが、彼もまた前を向いている一人だ。

「ピーク選手がチームを去ったり、いろいろ難しい状況が続く中で、本当にリバウンドで突き放されている。そこをしっかり調整していくことと、あとは、オフェンスに対してやっぱり自信を持ってやることがすごく大事だと思う。みんなが思い切って、ロボッツの目指すスピード感あるバスケを展開していけば、おのずと流れも来るはず。それをチーム一丸となって続けていきたいですね」

また、この試合ではジャワラも今シーズンのリーグ戦での初得点を3ポイントシュートで記録するなど、この場で得たチャンスをものにしようとするメンバーの奮闘もあった。グレスマンHCも「ベンチ入りした全員が10分以上出られたことは良かった」としたが、次に実現するならば勝ちゲームで見たいところでもある。

「再戦」の鍵は鶴巻の言葉から

次節は水曜日開催のホームゲーム。対戦相手は仙台89ERSだ。両チームの対戦は、2021年5月のB2プレーオフ以来。仙台は藤田弘輝HCの下でディフェンシブなバスケットに磨きをかけて、今季5年ぶりのB1に臨んでいる。

ロボッツに馴染みのあるメンバーでは、B1昇格に貢献した#2小寺ハミルトンゲイリーが残念ながら負傷離脱中。もし欠場となれば、今後の対戦での再会を待ちたいところだ。そんな中、勝負の鍵になるのは、前戦から勝負を仕掛けてくるディフェンダー陣だろう。#15渡辺翔太にこちらがフラストレーションを溜めるような展開は避けたいし、一方で今季まだ出場のない#30田中成也の動向も注目される。

ロボッツとしてはそうしたディフェンスに付き合いすぎないことを心がけたい。タプスコットや山口といった面々が積極的にボールを運び、相手の土俵を作らせないことが重要になってくる。そういった意味ではA東京戦で見られたように、ケネディのクイックな3ポイントシュートが決まることも重要だろう。

また、この試合に対する心がけとしては、鶴巻が残したコメントも非常に大きな意味合いを持つ。

「仙台さんがB1に上がってきて初対戦になるんですけど、もう『昇格チーム』っていうこととかを考えるのではなく、もう『1つのB1チーム』として対策を練っていく。しっかり勝利できるように頑張っていきたいと思います」

ロボッツは、どんなチームが相手であれ、挑みに行く。それを示し続けた先に勝利があるだろう。今季のアダストリアみとアリーナでの初勝利は果たせておらず。何かを変えるには、勝利があってこそ。1つのボールを激しく奪い合って、40分先の歓喜を掴みに行ってほしい。

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