【AFTER GAME】 2020-21第4節 香川戦(10/24-25)~2日続けて我慢の展開も、ねじり合いを制し、大きな収穫~

取材:文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:B.LEAGUE

ホーム4連戦で4連勝を飾ったロボッツは、一度茨城を離れ、香川ファイブアローズとのアウェー戦に臨んだ。2日続けて、最終盤まで戦いの行方はもつれにもつれたが、両日共に粘りきって、連勝で香川での戦いを終えることができた。苦しみながらも勝利を掴んだという結果は、ロボッツに新たなエナジーをもたらすだろう。長いシーズンを考えれば、そうした経験を早い時期にできたことも、また収穫だったと言えるのではないだろうか。

ディフェンスの厚さに苦しむ中、光明となった「unselfish」

この2試合、相手の香川が採ってきたディフェンス戦略は一貫したものだった。#34兒玉貴通が高い位置からプレッシャーを保つ間に、ペリメーター付近を固めきり、ロボッツのペイントアタックを防ぐというものである。これでまず、ロボッツの走力としてのスピードを防ごうとしていた。これに対し、ロボッツはパスワークを使って相手を振り切ろうという策に出る。#25平尾充庸や#6小林大祐が起点となり、走り込んできた#15マーク・トラソリーニへとラストパスを送る。トラソリーニもこれによく応え、相手のビッグマンである#25リース・ヴァーグや#42ケビン・コッツァーがゴール前を固める中を切り開き、得点を量産していった。

しかし、香川はそこからロボッツに対して流れを渡しきらない。第1戦では#6藤岡昂希や#7筑波拓朗が3ポイントシュートで効果的に加点。最大16点あったリードが、一時は1点差まで詰められていく。第2戦ではインサイドを攻め込まれ、逆に香川がリードを得る展開となった。

場面場面を切り取ると、アップテンポな攻撃をつなげられないところにも遭遇したロボッツだが、パスワークとペイントエリアの粘りは、最後までロボッツの支えとなった。執念とばかりにペイントエリアに進入したトラソリーニを信じ、平尾が決定的なパスを送り込む。この2人のホットラインが生きていたことで、ロボッツのオフェンスは断絶されず、アウトサイドで戦う選手たちにも余裕が生まれた。パスと泥臭さで勝負する様子は、「unselfish」そのものだった。

一方で、「泥臭い」と言えば、タプスコットのプレーの数々も見逃せない。第1戦ではフィールドゴールこそなかなか決まらない状況だったが、ファウルを上手くもらい、フリースローを着実に沈めることで得点を積み重ねた(13得点)。第2戦では、ロボッツにとって高い壁となっていたペイントエリアを切り開いて、ロボッツ加入後最多となる30得点を稼いだ。これまでは、どちらかと言えばアシストや囮役となって、ロボッツオフェンスの脇を支えるような存在だった彼だが、ようやく本領発揮とも言える結果を残した。彼がこの2試合で見せつけた力は、間違いなく今後のロボッツを支える大きな要素となるだろう。

ディフェンスでは遥が魂のプレー

オフェンスが相手に阻まれる場面もあった今節、相手に流れを渡しきらなかったのはディフェンスの強度があってこそだろう。そもそも、#2福澤晃平が体調不良で今回の遠征に帯同していないと言う状況ではあったが、今季、度々見られる3ガードのフォーメーションは、今節でも投入された。しかし、相手の香川は藤岡や筑波など、サイズのミスマッチとなるフォワードの選手をぶつけてくることで、スピードを体格で押し始める。また、第2戦では中村がファウルトラブルに見舞われるなど、3ガードのローテーションそのものに問題を抱える場面にも直面した。

そんなロボッツディフェンスの救世主となったのが、#0遥天翼だった。体格の大きな選手とマッチアップするような状況でも当たり負けせず、スピードでは相手に食らいつき、かつリバウンドにも飛び込んでいった。決して華やかな役回りでこそないが、彼の存在があったからこそ、ロボッツのディフェンスは最後まで緩まらなかった。

今季のロボッツにおいて、加入1年目ながら遥の存在感は大きい。それはプレーや技術と言った面だけでなく、エネルギーや精神力と言った、数字に表しにくい分野においてもだ。また、本職のスモールフォワードの他、時にはその体格を活かしてインサイドのポジションでも存在感を見せる。

長年、トップリーグを経験する中で培われてきたメンタリティ。ロボッツが遥を獲得する、そしてB1昇格を目指すに当たって、重要視していた部分だ。遥自身も、自らの経験をチームへ注ぎ込むことを決して躊躇しない。開幕前、彼にインタビューをした際に残した言葉が印象に残っている。

「この1本、疲れているけど耐えなきゃいけない、誰かが声を出さないといけないって時に、気づいたら僕自身も声を出さなきゃいけない。そうした気持ちの面や、人としてできることを、なるべく還元していこうと思っています。」

精神面の強さは、ロボッツの悲願とも言えるB1昇格を果たすために、チームが欲してきたものと言える。これから、シーズンに何度となく待ち受けているであろうタフな戦いを、まず1つ、2つとものにして見せたロボッツ。その中で遥がもたらすエナジーには、今後期待の目が向けられるだろう。

辛勝にこそ価値あり

ワンポゼッションゲームとなる場面が何度も訪れる中、今節は勝ちきることができた。「辛勝」と言うと聞こえや響きは悪いかもしれないが、「勝ちは勝ち」でもある。

開幕前、残念ながら今回の遠征には帯同がかなわなかった福澤が、今節のような事態が来ることを予期していたように、こんな言葉を残していたことを思い出した。

「一度流れが悪くなったら、苦しい時間帯を踏ん張って、また逆転に持っていかなくてはいけません。いかに不調なときに、全員でカバーしあっていけるかが大事です。バスケットは1点差でもいいから、試合が終わるまでに相手を上回れば、その試合は勝ちです。その積み重ねが、優勝につながると思うんです。」

大勝、快勝やドラマティックな試合で、ポジティブな面が多く見えることも確かに重要だが、長いシーズンを見ればそんな試合ばかりではない。むしろ、流れが悪いなりに勝ったことや、逆転を許した中でも盛り返し、振りきったという今節のような試合運びができるかどうかと言うのは、試合を終えた選手たちに大きな経験値をもたらすものだ。

こうした経験値は、やがて自信となる。自信は、劣勢に立たされたときの新たな活力となる。今節の戦いは、スタッツや得点差以上の収穫を持っていた。「粘り」という武器を手に入れ、一皮むけたロボッツの戦い様に、今後とも注目してほしい。

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