【AFTER GAME】 2020-21第3節 青森戦(10/17-18)~チームの熟成が見えた2日間。日立開催で盤石のゲーム~

取材:文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide Toyosaki

シーズン唯一の日立市でのホームゲーム。ロボッツは青森ワッツとのゲームに臨んだ。上位進出のためには確実に勝っておきたいゲームとなったが、蓋を開けてみれば2戦とも相手に20点以上の差をつける快勝となった。第1戦で99点、第2戦で102点を記録したオフェンスの爆発力もさることながら、攻撃の流れに繋げるディフェンスも非常に効果的に機能したことも見逃せない。今回のAFTER GAMEは、少しずつながら形になってきた「2020-21版、ロボッツの戦い方」を掘り下げていく。

集中力の高いマークを崩さず

奇しくもこの2試合、ゲームの流れは非常に似通っていた。第1クォーターで互いにオフェンスの手を見せ合い、第2クォーターで相手の攻撃を「攻略」したロボッツが集中したディフェンスで青森を封じて一気に引き離す。後半、追いすがられても再び引き離し、最終的には外国籍選手が誰もコートに立たない「オンザコート0」の状態で勝利を収める…。ここまでの試合運びは、長いシーズンの中でも、多くはないというレベルだったと言っていいだろう。

ロボッツは2試合を通じて、集中力の高いディフェンスに徹し続けた。注目したいポイントは。青森の得点源となった外国籍選手への対応だ。青森は#7ジョシュア・クロフォード、#41スティーブン・ハートに対してボールを供給するものの、そこに対してロボッツのビッグマンたちが立ち塞がる。時間を消費する中、苦し紛れにパスが出たところをさらって、ロボッツは一気呵成に攻め上がった。クロフォードとハートによるターンオーバー数は、第1戦で6つ、第2戦では実に9つを数えた。結果的に、この2人で攻撃を完結せざるを得ず、青森の攻撃は分断されてしまった。

こうした「徹底した守りからの速攻」というパターンは、今季のロボッツの特色となりつつある。#14髙橋祐二は、これこそが今季掲げられた「アップテンポなバスケット」の肝なのだと語る。

「グレスマンHCは、攻撃的なバスケットのスタートはディフェンスだと伝えていて、ディフェンスの強化というのは重点的に練習しています。選手一人一人のディフェンスへの意識も高まっていて、ハードにやっているところですし、今後もアグレッシブにやっていきたいところです。また、時間が少ないシチュエーションでの攻撃に関しても練習を重ねていて、練習の中で選手たちもオフェンスに対する考えを深めてバスケットをしていると思います。」

また、ディフェンスにおいてもう一つ目立ったのが、「3ガード」という戦略だ。開幕節から度々、スモールフォワードの選手を置かず、ポイントガード2人に加えて、シューティングガードに#6小林大祐や#29鶴巻啓太などを置くという戦術を採っている。その一員としてコートに立つ髙橋も、3ガード戦略には手応えを感じているようだ。

「今節に向けた練習で、3ガードを改めて練習しました。この2試合ではそれがうまくはまったという感じです。今年のロボッツは、選手の層が厚く、選手の組み合わせをいろいろ変えられるのが強みになってきています。この戦術を成熟させて、もっと連携度を高められたらと感じています。」

トラソリーニの獅子奮迅に見えた、チームの熟成

今節の2試合を振り返って、無視できないのが、#15マーク・トラソリーニの大活躍である。第1戦では23得点、第2戦では33得点をたたき出し、ロボッツのオフェンスを文字通り牽引した。とてつもない攻撃力を見せつけたトラソリーニ。第2戦の試合後には「序盤からシュートがよく決まり、ゾーンに入っているような感覚でした」というコメントするほど、今節は乗りに乗っていた。

今節、彼のプレーにおいて目立ったのは、206cm・109kgという体格で押していくようなものではなかった。出足の速さで振り切ったダンクあり、パスワークの流れから隙を突いての3ポイントあり、ショットクロックを使わされた中でのタフショットありと、非常に多彩なオフェンスを見せてくれた。これがそもそものトラソリーニのプレーの持ち味と言えばそこまでかもしれないが、それを引き出しきった連携度の高いオフェンスは見事と言うほかなかった。

トラソリーニを始めとして、外国籍選手のコンディションの調整は、チームとしても大きな課題だった。新型コロナウイルスの感染拡大により来日が遅れ、トラソリーニがチームに合流を果たしたのは、9月上旬のことだった。この時点で、開幕まで1ヶ月を切った段階である。急ピッチで状態を上げて、なんとか開幕を迎えたわけだが、第2節・東京Z戦(10/10)の試合後、トラソリーニはこんなコメントを残している。

「今シーズンに関しては、今まで自分が過ごしてきたキャリアの中でも非常に準備が難しいシーズンとなりました。ただ、それに関しては他のチームでも状況は同じで、仕方がないことです。ともかく、試合ごとに日々成長していくことが重要だと思っています。」

青森戦の試合後も、改めて「開幕直後は準備不足な面があった」とこぼしたトラソリーニ。開幕節や第2節の段階では、個人のコンディションもそうだが、チームとしての連動性も準備不足だったと言えるだろう。実際、彼や#11チェハーレス・タプスコットが持ったところでボールが止まってしまうことがしばしばあり、チーム全体がリズムを欠いていたことは否めない。その結果、得点も個人の能力にかかりきりとなってしまい、個人の調子にチーム全体の得点力が左右されるという状況に陥っていた。

そうした状況を思えば、オフェンスのスタートからフィニッシュまでがしっかりと描けていた青森戦でのバスケットは、チームの熟成が進んでいることの表れと言えるだろう。トラソリーニの爆発的な得点力ばかりに注目が行ってしまうところだが、2試合ともに、出場した12人の選手のうち11人が得点を記録したことも忘れてはならない。こうした結果も、チームとしての連動性が実現しつつあることを示しているのではないだろうか。

試合を重ねる中で、戦いの全体像が見えてきたロボッツ。4連勝を果たした中で、ブースターとしてはまだ本領を発揮できていないメンバーがいるのでは、とやきもきしている所もあるかもしれないが、心配は無用と見ていい。そう遠くないうちに、彼らが今節のトラソリーニのようなヒーローになる瞬間が来るだろう。

【ROBOTS TV(YouTube)】10/17(土)青森戦ハイライト

【ROBOTS TV(YouTube)】10/18(日)青森戦ハイライト

長距離移動のアウェー連戦。されど、連勝マスト!

ロボッツはここで一度アウェーでの戦いに身を投じることになる。対戦相手は西地区の香川ファイブアローズだ。昨シーズンは香川との対戦はなかったが、Bリーグでの通算対戦成績は5勝1敗と分が悪い相手ではない。今季の香川はこれまで1勝5敗とまだ波に乗れていないだけに、しっかりと勝利を収めておきたいところだ。

香川のキーマンとなるのが、#34兒玉貴通。身長166cmと、決して体格に恵まれたプレーヤーではないが、的確なパスを送り込んで得点を生み出す。1試合平均5.2アシストは、B2リーグ6位タイの数字だ(第3節終了時点)。また、時には自らもゴールへ果敢に向かっていくだけに、厄介なプレーヤーとなる。ロボッツとしては#25平尾充庸や#14髙橋祐二など、スピードに長けたポイントガードがしっかりとマッチアップをすることで、決定的なプレーを封じていかなくてはならない。

また、その直後の水曜日には山形ワイヴァンズとのアウェーゲームも待ち構えている。ミッドウィークでの開催となるだけに、コンディションの維持や、移動に伴う疲労の回復など、多くの課題がつきまとう。対する山形は、第3節終了時点でまだ今シーズン未勝利。山形としてはなんとかロボッツを叩いて弾みをつけたいと意気込んでいるところだろう。山形の注目選手はキャプテンの#37河野誠司。かつてはロボッツに在籍したポイントガードだ。決してチーム状態が上向かない中、孤軍奮闘を続ける彼をリズムに乗せないことは勝利への絶対条件。今回の対戦のみならず、今後に向けても嫌なイメージを植え付けたいところだ。

ホーム4連戦で、ロボッツブースターに非常に力強い姿を見せてきたロボッツ。一方では、昨年大きく負け越したアウェーをどう乗り切るかが、上位に踏みとどまるための鍵を握る。この3戦、全てモノにしたい。3連勝を飾って、10月を締めくくらなければならない。

おすすめの記事