戦いの準備は「心」から~2021-22 開幕前特集 チェハーレス・タプスコット〜

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B2での5シーズンで、得点王に輝くこと3度。ついに、B2最強とも言えるスコアラーがB1の舞台に挑戦状を叩き付ける。#11チェハーレス・タプスコットは無事にチームへと合流。新シーズンへの準備を着々と進めている。昨シーズン、チームの窮地を何度となく救ってきた男は、ロボッツの現在地を冷静に見定めつつ、来たるべき戦いへ集中力を高めていた。それと同時に、新境地を全力で楽しみに行く。そんな、ある種の決意も透けて見えてくるのだった。

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気持ちの準備はOK。一方では…

B1での戦いを「楽しみ」と率直に表現するタプスコット。オフ期間中もランニングやボールハンドリングを中心にトレーニングに励み、調整を続けてきた。時に、ラジオ出演やイベントなどでのエピソードから、「お菓子好き」というキャラクターもすっかり定着した「シュガー・シェイ」。オフシーズンはお菓子の誘惑との戦いもあったという。一歩間違えてオーバーウエイトになってしまってはいけない。が、最終的にはやはり抗うのは難しかったようで…。

「コンディションの点では、食べないように、食べないようにとは考えていたけど、ちょっと自分には辛い話でしたね。控えめに、それでもチョコレートとかは食べていましたね。」

ここから話は、気持ちでの準備の面に派生していく。当然、B1に上がると言うことで、自らのプレーレベルを高めなくてはならない一方、マッチアップする選手たちも、フィジカルやスキルがより高いレベルになることをしっかりとタプスコットは理解していた。彼は、戦いの肝をこう感じている。

「僕個人がより高いパフォーマンスを発揮するのは、当然必要なことだと感じています。また、チームとしてのポイントは自信を持ってプレーすることが重要ではないでしょうか。『Good player』であっても、自信を持たないことには『Great player』にはなれません。例えばですけども、中村選手や鶴巻選手などが自信を持ってプレーできれば、よりチームの競争力も上がっていくでしょうね。」

カギになるプレーについては、「リバウンド」を重要視するタプスコット。ゴール下ではサイズも迫力も上回るような相手とのマッチアップが増えてくるところだが、しっかり腰を低く当たって、ボールを奪いに行く、もしくはイージーバスケットは作らせないという姿勢を見せ続けることで、チーム全体が感じ取り、成長していくこともあるはずだ。

新戦力との融合が進むロボッツ。#21エリック・ジェイコブセンや#55谷口大智の印象についても尋ねてみた。タプスコットは、彼らがいることで「アップテンポ」はより一層ギアの上がった物になると話す。

「谷口選手であれば、外からのシュートを武器にすることでインサイドへのスペースメイクができるはずですし、そこをジェイコブセン選手が機動力で切り込んでいくということも可能になるでしょう。昨シーズンよりもっと早いテンポで攻撃ができるでしょうし、2人は皆さんが思うよりも早くチームに溶け込んでいけるのではないでしょうか。」

昨シーズン、ロボッツにとって「飛び道具」となったビッグユニット。帰化選手や強力な日本人ビッグマンを擁する戦い方は、Bリーグにおいて一つの主流になりつつある。昨シーズン、一足早くそれを経験したロボッツとしては、今年も活かさない手はないはずだ。

今シーズンの個人スローガンを尋ねると、とてもシンプルな言葉が返ってきた。

「『Help the team』、これに尽きると思います。チームが勝つことでみんながハッピーになれれば、僕も楽しくなれると思います。」

厳しい戦いの中で、にこやかに「Cold Blood」のポーズをする姿が何度見られるか。彼のプレーからは今年も目が離せない。

臆するぐらいなら、戦わない方がいい

かつてのbjリーグを経験した後、5年間にわたるB2の戦いにおいて得た物とは。勝利に恵まれない苦しいシーズンも送った一方で、B1昇格を懸けて、ヒリヒリするような緊張感が漂うプレーオフも戦い、そこできっちりと結果を残してきた。3度のスコアリーダーは、決して飾りではないだろう。そうした日々を、彼はこう振り返る。

「B2で長くプレーをする中で自分の経験値も上がってきて、より良いパフォーマンスができるようになっていました。チームでの成長も経験できましたし、それがさらに僕に還元されるようなこともありました。僕自身としては、今こそB1に駆け上がるべきタイミングではないかと思っています。」

そうした日々を経てたどり着いた、B1というステージ。どのような心境でいるのかを尋ねると、「I love competing(競争が好き)」と話し、こう続ける。

「正直に言えば、ほとんど楽しみという気持ちでしょうか。何と言ってもハイレベルな舞台でプレーできますからね。高い次元での競争は大歓迎だし、そこに怖さや不安はありません。むしろそれに対して怖がる、臆するようであれば、僕はB1ではプレーしないべきだとすら感じています。僕は競争とも言うべき今シーズンは非常に楽しみに思っていますし、ワクワクしています。自分たちがしっかりと集中力を発揮すれば、必ず良い結果になって返ってくると思います。」

昨シーズン、選手たちが特に口に出し、実現を目指していた「40分間戦い続けるバスケット」。今シーズンもその路線を継続するのは当然必要なことである。タプスコット自身も、「40分なら40分、いつでも戦い続けなくてはならない」と、その姿勢を望んでいた。

ならば、新たなフィールドで戦ってみたいチームや選手はいるのか。例を挙げてもらうと、昨シーズンのBリーグ覇者の名前が出てきた。

「B1で当たってみたいのは、千葉ジェッツさんですね。富樫(勇樹)選手を始めとして、日本代表に入るような選手と戦ってみたいという気持ちもあるのですが、今のベストチームであろうジェッツさんと戦うことで、個人としてもチームとしても、どんな差や違いがあるのか。物差しも見えてくるはずだと思います。倒してみたいチームですね。」

B1での戦いの中で、ロボッツとしては胸を借りるような強力な相手ばかりが揃う。自ら、あるいはチームの成長や、集中、収穫といった要素は確かに必要ではあるが、そのための基準点がブレてしまってはいけない。選手層、スキル、戦略…。Bリーグの中でもトップオブトップに位置するチームと相対することで、長期的にクラブが舵を取るべき方向性も分かってくるだろう。将来、B1の頂点を極めようとするならば、例え負けてでも何かを得ようとする姿勢は、とても重要なことだ。

いつかは満員のアリーナが見てみたい

変異株の流行も次々に起こっていることで、社会全体を覆うコロナ禍が明ける気配は依然として見えない。ただ、リーグやクラブに様々な制限があった中でも、B1昇格を決めた一戦には、2000人を超えるファンが集まった。その記憶も残るタプスコットは、ある願いを打ち明ける。彼は「アリーナに来るのが難しいという人もいるでしょう」と話した上で、ファンにこのようなメッセージを送った。

「年末になるのか、はたまた来年、来シーズンになってしまうのか。いつになるのかというのは分からないですけども、どこかで満員になったアダストリアみとアリーナも見てみたいという気持ちはあります。ただ、今は会場に来られないという中でも、皆さんがサポートしていただいているのはよく分かっていますし、感謝しています。ですが、皆さんの安全が第一です。健康に気をつけつつ、一緒に戦っていきましょう。」

今シーズン、アダストリアみとアリーナの姿は大きく生まれ変わることがすでに示されている。いつか、満員になること、あるいは歓声を上げることが許されるようになったアリーナで、はつらつとプレーするタプスコットの姿も見てみたい。B2の世界をかき回し、沸かせ続けてきた「シェイタイム」は、B1では果たしてどのような物になるのか。ベールが取られる日は、すぐそこまで迫っている。

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この記事を書いた人

福島県内での報道記者、大手自動車メーカーのモータースポーツ部門ライターを務めた後、独立。
茨城ロボッツを中心にB2の試合現場に足を運び、ファン目線から取材を重ねる。Twitter @MasaruARA

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