【AFTER GAME】 2021-22 富山戦(2/5〜6)〜つばぜり合いから流れを呼び込む。耐え続けたことで生まれた勝利~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

アダストリアみとアリーナで行われた、西地区の富山グラウジーズとの連戦。点の取り合いとなったGAME1は、ビハインドを背負った場面から富山の背中を追いかけたものの追いきれず、88-96と点の取り合いに勝てず。逆襲を狙ったGAME2では第1クォーターで築いた巨大なリードを終盤になって一度失ったが、折れることなく戦い続けて再び流れを取り戻し、85-79で勝利。冷や汗の出るような戦いではあったが、勝利をもぎ取ってみせた。2戦とも濃い試合展開だった中で、選手たちからは様々な言葉が出てきた。今節のAFTER GAMEは#0遥天翼、#8多嶋朝飛、#29鶴巻啓太の3選手にフィーチャーしていくこととする。

多嶋が触れた勝負のポイント

GAME2の滑り出し、ロボッツはとにかく全てが噛み合った。相手のボールプッシュに対してハードに体を当ててリングへの侵攻を許さず、まずシュートに至らせないことを徹底した。平均得点が80点を超える富山をわずか10点に抑え、同時に10個のターンオーバーを誘う。勝利への執念を燃やすロボッツが大きく前に出た。

その後は富山の変則的なゾーンディフェンスを切り開けなかったことで、点差を徐々に詰められる。前半抑え込んでいた富山の#11宇都直輝が後半だけで13得点を挙げて食らいつき、#5ブライス・ジョンソンや#34ジョシュア・スミスも攻撃力を発揮し続けることで、試合はシーソーゲームとなっていく。

今シーズンのロボッツはとにかくシーソーゲームが多い。ここまでのリーグ戦での7勝のうち、2桁点差を付けて勝ったのは2試合にとどまる。一方で、1桁点差での敗戦だけを取り上げても11試合ある。広島ドラゴンフライズや新潟アルビレックスBBとの試合では、ともに2桁点差までリードを広げながら敗れるなど、タフなシーズンと分かってはいるものの、流れの分からない試合にやきもきするファンやブースターは少なからずいるだろう。

GAME1を終えての記者会見に、多嶋が現れた。数々の場面をくぐり抜けてきた彼も「自分たちのペースの中ではタフに打たせたりリバウンドを取れたりしたものの、その時間が長くはありませんでした」と話す。どうしても、これまでの取材の中で「B1のスキル」や「B1のフィジカル」の話を聞いてきたこともあり、シーソーゲームを制するには「次はメンタルなのでは」と筆者は感じていた。思い切って多嶋にその質問をぶつけると、彼はこう返す。

「粘り強く戦うことは間違いなく必要だと思っていて、自分たちが良い流れを持ってくるために粘り強く我慢しながらプレーをする。自分たちの流れにするために、準備したことをやり続ける。その中でタフにやられるシーンももちろん出ますが、その時々のプレーで気持ちを切らさずに、自分たちで流れやリズムを作っていくことは、どのチームであっても大事なことです。ロボッツとしてもそれは必要なので、自分たちが自分たちらしく戦うために、より良いメンタリティーを持ってプレーし続けなくてはならないと思います。」

多嶋はここまで続けた上で、「ただ、それはロボッツの選手たちの認識としては共有している」とも言う。その上でB1の世界は「強烈な個性を持った選手がいて当たり前の世界」とも話す。改めて、チームとして戦って勝利を掴むために必要な部分を、彼はこう語った。

「僕らはいろいろなことを準備して、試して、それが効くのか効かないのかというのをやり続けています。準備してきたことを、誰が出てもしっかりやり続けるというところが必要です。さらに、相手が対応してきたことに対して、自分たちも試合の中でアジャストしながらやっていくことも必要だと思います。相手の対応に対してブレずにやる一方で、アジャストもする。両極端にも見えるんですけど、すごく大事なことです。1つのプレーに対して、リアクションをして集中が途切れてしまうことが、どうしてもGAME2では多くなってしまうので、そうしたところを1プレーごとに積み重ねて、上手くいかない時は我慢し続けることが重要なのかなと思います。」

競ったGAME1を経て、GAME2で敗れることもしばしば起きている今シーズンのロボッツ。こうした嫌な流れや体験がいくつもあった中でGAME2は勝利を収めるのだが、その扉を開いたのは、綿密な準備を経てエナジーを解き放った選手たちの存在があった。

我慢の展開をつないだエナジーと強心臓

厳しい展開の中でも、エナジーが完全に途絶えることはなかった。その火付け役となったのは、前節の新潟アルビレックスBB戦から続けてスターターとして起用された#0遥天翼だった。起用については「(GAME1で同時に起用された#55谷口大智と共に)エナジーをもたらしてほしかった」とその理由を述べたグレスマンHC。GAME2の勝利の後には、名前を挙げてその働きを称えた。「すばらしいエナジーを出してくれて、ボディランゲージでチームを鼓舞してくれた」とグレスマンHCが話すように、今節の遥は、久しぶりに何かが乗り移ったかのような闘志を見せていた。GAME2の第1クォーターで、富山は早々に2回のタイムアウトを使うのだが、この時、遥は何度も手を叩いて喜びを露わにしながらベンチへと戻っていく。度々このコラムでは彼のエナジーの昂ぶりを伝えてきたが、苦戦が続くチームにおいて「今日こそは」という思いが伝わる一瞬だった。結果、GAME2でのプレータイムは今シーズン最長の15分5秒。この試合のMVPになるにふさわしく、要所をつないで戦うには、彼は欠かせない存在だった。

ここのところ、どこか吹っ切れたようなプレーが続く遥。敗戦の後ではあったがGAME1の記者会見に登場した彼に、その舞台裏を聞くことができた。

「体の準備はできていたんですけども、なかなか信頼を勝ち取れていない場面があった中で我慢を続けていました。自分がやるべきことを練習やオフのワークアウトで準備を続けてきました。いつ出番があるかは分かりませんけど、出た場面で自分が後悔しないようにするためにしていました。僕がスタートだと知らされても、10分、20分と出るとは思っていませんでした。ポイントごと、あるいは時間帯ごとに自分が出せる力を全部出し切って、5分なら5分と、フルにスタミナを使って足を動かしていこうと臨んでいました。」

得点やリバウンドなど、目に付く数字において遥の存在を推し量るのはなかなか難しい。とは言えここ数戦の遥は、チームが掲げる「Unselfish」と「Toughness」を最も体現している一人ではと思わせる活躍を続けている。スクリーナーとして、あるいは起点になる「アシストの前のアシスト」ができるパサーとして、彼の視野の広さは大きな武器だ。ディフェンスでも最後の部分でリングに対して押し込ませないパワーを持つ。こうして良い流れをもたらすとなれば、残りのシーズンにおいてさらに重宝される存在となりうるだけに、彼の逆襲に期待をしていきたい。

一方、グレスマンHCが称えたのは遥だけではない。10得点を挙げながらターンオーバー0・アシスト8と、攻撃を循環させ続けた多嶋、そして持ち前のハードなディフェンスを見せるとともに、しびれる場面で得点を重ね続けた#29鶴巻啓太である。GAME2の記者会見に登場した鶴巻は、「入りの良さを継続することが難しかった」と話したが、宇都や#0小野龍猛、#16松井啓十郎など、久々にマッチアップを局面によって変えながら抑える展開をやりきった貢献度は大きい。

一方で、3ポイント2本を含む12得点はシーズン最多タイ。しびれる場面で獲得したフリースローを4本全て決めるなど、久々に彼の「強心臓」ぶりを垣間見た。フリースローの場面は「緊張していたが、入った後のことも外した後のことも何も考えなかった」という鶴巻。改めて、自らのプレーをこう振り返る。

「自分が求められているディフェンスに関しては、今シーズンずっとやり続けなくてはいけないですし、一方ではリバウンドへの飛び込みについてもコーチからもっと行ってほしいと言われています。オフェンスでは福澤さんや平尾さんに厳しくマークが貼り付くこともあるので、そこで僕がカッティングをしたり、オープンでのシュートを決めきったりとか、そういった活躍も残りのシーズンでは頑張りたいです。」

グレスマンHCは鶴巻に対して「どの試合でも相手のベストな選手に付く以上、彼にとってのイージーマッチアップは基本的に無い」と、率直なところを打ち明ける。その上で、彼への期待をこう続けた。

「ディフェンスの選手にさらに多くを求めるのはなかなか難しいことではありますが、鶴巻選手はディフェンス・オフェンスでしっかり貢献してくれています。この2試合はスターターから外れましたが、あくまで戦略上の話です。スターターからでも、ベンチからでも大きな貢献をしてくれたと思います。」

タフなシーズンを送る中、選手それぞれが確実に実りを得ている。あとは良い流れを掴んで、さらなるステップアップができるか。この中断期間を良いイメージで入ることができたことも一つの実りではないだろうか。

リフレッシュを経て、反撃なるか

日本代表の活動期間に入るため、B1のリーグ戦は長い休止期間に入る。そのためロボッツとしては来月まで試合がない状態が続くのだが、一度心身ともにリフレッシュを試みて、次の戦いに挑んでほしい。

新たな日程がこのほど発表され、ロボッツの次の試合は2月2日、アダストリアみとアリーナに秋田ノーザンハピネッツを迎えての一戦となった。ちょうど1ヶ月の延期を経て行われるこの試合、ロボッツが「BUILD UP」の成果を戦いの中で示せるかがポイントになるだろう。

とにかくディフェンスでのプレッシャーの強さを信条とする秋田。ガード陣だけでなく、コート上の全員が常にタフショットにさせようとしてくる。注意しておきたいのが、シューターである一方でリーグ2位の1試合平均1.6スティールを誇る#7ジョーダン・グリンだ。昨シーズンのB2・ライジングゼファー福岡在籍時には、ロボッツ戦2試合で42点を奪った点取り屋。今シーズンの開幕節でも2試合で40点を奪って波に乗ると、現在リーグ8位の1試合平均19.0得点、3ポイント成功率はリーグトップの48.0%を誇っている。縦横無尽に動き回る彼をまず止めなくては、勝機を見出しづらくなるだろう。

ロボッツが重視したいのが、フロントコートへのボール運び。開幕節では2試合で24スティールを許し、ターンオーバーからの得点を決められ続けることで苦しい試合展開となってしまった。これを打開できうる存在が、#14髙橋祐二だろう。ロボッツが誇るスピードスターはここまで苦しいシーズンを送ってこそいるが、彼の足が活きる瞬間が増えれば増えるほど、ロボッツの連動性は増してくる。彼の戦い様を見せつけてほしいところだ。

ここからのシーズンは、ジェットコースターのように進んでいく。チーム状態をどれだけ高く保ち続け、勝利を重ねていけるか。再びの戦いの日々を心待ちにしよう。

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