【AFTER GAME】 2022-23 大阪戦(5/6~7)~最終節に新たなる躍動。23勝37敗で60試合を完遂~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:B.LEAGUE photo by B.LEAGUE

今シーズンの最終節、ロボッツは敵地で大阪エヴェッサとの2連戦に臨んだ。GAME1で攻守に渡って相手の上手を取り続けたロボッツは、6人のプレーヤーが2桁得点を記録するバランスの良さも見せて62-82で勝利し、今季初の4連勝を果たす。GAME2は逆襲を期した大阪の集中力の高さを前に95-81で敗れ、今シーズンの戦いを終えた。最終節にしてこれまでよりも進化させたような戦いぶりを見せたロボッツからは、最後の1秒まで戦いきるという強い意志が感じ取れた。2022-23シーズン、最後の40分を振り返る。

アドバンテージの最大化

GAME1で、大阪は負傷欠場をしていたビッグマンの#54ショーン・オマラが復帰したものの10分程度のプレーに留まる。さらに、欠場明けとなった前節でフル回転となっていた#24カイル・ハントも25分程度のプレーとなった。一方のロボッツも、#11チェハーレス・タプスコットが個人ファウルをため込んでしまったこともあり、#15キャメロン・クラットウィグとプレータイムを分け合う形に。クラットウィグは#21エリック・ジェイコブセンと組んでのプレーとなった一方、大阪はハントとオマラが並び立つ…というシーンにならなかったこともあり、この布陣でロボッツは1つ、高さと強度のアドバンテージを得た。

クラットウィグが通したパスをジェイコブセンが受けて攻める、という形もあれば、この日はクラットウィグを受け手とするプレーも見られた。「特にインサイドのアドバンテージがあったと思うので、そこが自然と起点になるようにプレーを狙った」と、#25平尾充庸は説く。一方で、受け手となったクラットウィグも、冷静に状況を見極めていた。

「前半ではポストアップをしながら戦っていましたが、大阪さんがウィークサイド(コートの外側)からダブルチームで僕を守ろうとしてきました。そこからはダブルチームで守られたらパスを狙うと意識しましたし、タイムアウトを境に大阪さんがダブルチームをやめたので、また攻めることを意識しました。状況判断をしながら、そこで生まれるアドバンテージを取っていくことができました」

コートの全体でのオフェンスが機能したこともあり、GAME1ではスターターとして起用された5人に加え、クラットウィグも2桁得点を挙げる。こうしたオフェンスでのバランスの良さに、リチャード・グレスマンHCは「本当にパフォーマンスが良い選手が、試合ごとだけではなくクォーターごとに出てきてくれたことは、本当に素晴らしいこと」と称えた。

ただ、それ以上に勝利のポイントとなったのは、相手に対してアドバンテージを取る、という大原則をディフェンスでも貫いたことにあっただろう。

見せた集中力の高さ

大阪はビッグマンたちを欠いた戦いでも度々勝利をものにしてきた。それを可能としているのは、時に「神」とも称される#25ディージェイ・ニュービルの圧倒的なパフォーマンスがあるからこそだ。ロボッツは彼に対して徹底的にシュートコンテストを行い、終始ドリブルで攻めさせた。結果、4アシストとされるも、Bリーグ・3シーズンでの最少タイとなる3得点に抑え込んだのである。

グレスマンHCは、記者会見で福田将吾AHCの立案にも触れつつこう話す。

「福田コーチにディフェンスの多くを託していて、彼が作ってくれた戦術を、選手たちもよく遂行してくれたと思います。ニュービル選手への対策は必要ですし、しっかりと彼に集中しなければならない部分も多かったです。ただ、ニュービル選手に集中するあまり、他の選手を蔑ろにしてはいけませんでした。ニュービル選手に対して、ロボッツには山口選手、鶴巻選手と2人の良いディフェンダーがいるわけですから、この2人にどんどん交代してもらいながら当たってもらう。これが、コート上の他の4人を楽にできた部分もあるでしょうし、一方ではニュービル選手へのディフェンスを助けてくれた。チームとしての努力があったと思います」

2試合ともにスターターで起用されたのが#17山口颯斗。フットワークと根気強さでニュービルと対峙したシーンが目立ったが、彼もしっかりと分析を重ねて試合に臨んでいた。

「非常に3ポイントシュートが入りやすいのと、ピック&ロールを仕掛けるときに、味方のスクリーナーに対して逆方向に行く『リジェクト』をよく使ってくるというのが分かっていました。一度やられはしましたけども、『リジェクトはされないようにしよう』というマインドの中でプレーをしていました。チームのみんなも助けてくれたので、今日はよく守れたんじゃないかと思います」

一方、その山口は、オフェンスでもニュービルをうまくいなして、GAME1で16得点を挙げる。今季は59試合中27試合で2桁得点を記録し、レバンガ北海道に在籍した昨季と比べて平均プレータイムこそ減ったものの、平均得点をむしろ増やしてみせた。ディフェンスでも、めきめきとツボを心得て相手のアタッカーたちを止めてきた。この男の底知れぬパフォーマンスや奮起を目指す#29鶴巻啓太なども含め、激しい競争がまた繰り広げられていくだろう。

最後まで追いかけて

GAME2は一転して大阪のシュートタッチが絶好調に。前半だけで8本の3ポイントを決められ、フィールドゴール成功率も50%に達するなど、先手を取られてしまう。第3クォーターに一時3点差にまで追い上げたものの、そこから再び走られて、第4クォーターに入ったところで点差は21まで拡大。グレスマンHCが「疲れもあってか、前日ほどのエナジーが出せなかったのでは」と振り返った。

だが、終盤戦に入ってから長いプレータイムを得られていなかった#1トーマス・ケネディが久々に胸のすくようなシュートラッシュを見せる。約1ヶ月ぶりに10分以上のプレーをしたケネディは、この日14得点を稼いだ。試合終了間際には#33林翔太郎も久々の3ポイントシュートを決めるなど、最後まで追いかけたが及ばず。今季のロボッツの戦いは幕を下ろした。

「いつもワクワクしていたし、今日もそうだった」と話すケネディは、プレーについてこう振り返る。

「もちろんシーズン最後の試合というのもありましたし、今日が終われば夏の間も試合がありません。コート上でしっかりと楽しもうと思いました。エナジーやエフォート(努力)を、出せる限り出していこうとプレーしました」

苦しい試合展開になると颯爽とコートに立ち、相手のマークをかいくぐり、どこからともなく現れたかのように3ポイントシュートを決めていく。シーズン終盤には、試合を前にした入場の際に、全員を手荒に迎える姿も印象的だった。かつて、B2で戦っていたロボッツの前に立ちはだかり、苦しめ続けたスコアラーは、今のロボッツにおいて茶目っ気と、時に「ちょっとクレイジー(談・山口颯斗)」なところを交えた立ち回りでチームに溶け込む存在になった。

そのほか、GAME1では古巣対戦となった#88ジャワラジョゼフが約3週間ぶりの出場となったほか、GAME2でもエントリーした12人全員がコートに立つ。敗色濃厚の中ではあったが、最後まで託された役割を全うしようとする選手たちがそこにはいた。そうしてタイムアップを告げたブザーは、60試合にわたる戦いの終わりも同時に意味するものだった。

GEAR UPをさらなるバネに

シーズンを前に掲げた「チャンピオンシップ出場」こそ果たせなかったものの、ひとまずロボッツは好不調の波を乗り越え、昨シーズンよりも勝ち星を増やしてシーズンを終えることができた。23勝37敗と、昨季より7勝多く勝ち星を積み上げてシーズンを終えただけでなく、昨シーズンよりも細かなスタッツでも成長が現れ、個人成績を見ても平尾がフリースロー成功率(89.1%)でリーグ1位に輝くなど、喜びたい出来事も数々あった。

最終戦を終えて、平尾がシーズンをこう振り返る。

「目標はチャンピオンシップだったので、23勝に終わったことは非常に悔しくはありますけど、昨シーズンより勝ち星を重ねて、成長できたシーズンだったとは思います。ロボッツはチャンピオンシップに食い込めるようなチームにならなければいけないです。これからロボッツに入ってくる選手も、去る選手もいるでしょうけど、そのロボッツで成長した部分っていうのを、どこに行っても発揮してほしいと思います。悔しい思いもしましたけど、でも成長できた1年でした」

しばしの休息と準備期間を経て来シーズンの開幕を迎えた時を楽しみにしていてほしい。ライバルたちも確実に成長と変化に向けた手を打ってくる中で、2024年の今ごろ、あるいはもう少し長い戦いの果てに、さらなる歓喜に茨城が包まれていることを祈りたい。

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