文:小沼 克年|text by Katsutoshi Onuma
写真:B.LEAGUE、茨城ロボッツ|photo by B.LEAGUE, IBARAKI ROBOTS
茨城ロボッツがB1に昇格して5年目のシーズンが幕を閉じた。
掲げたスローガンは『GROW BOLD』。クラブは今シーズンを「大胆な成長」に挑む1年と位置づけた。序盤から苦戦を強いられ、精神的支柱の長期離脱という苦境に立たされながらも、決して歩みを止めなかった。もがきながらも変化を恐れず、成長し続けたその軌跡は次なるステージへの確かな礎となった。
2025-26シーズンの振り返りをピックアップし、落慶久ゼネラルマネージャーとクリス・ホルムヘッドコーチ、そして、#3 長谷川暢、#21 エリック・ジェイコブセンの両キャプテンの言葉で振り返る。

早すぎる“象徴”の離脱。15の黒星
クラブ創設10周年を迎えた昨季は、落慶久がGMに、クリス・ホルムがHCに就任した1年目のシーズンでもあった。レギュラーシーズンの成績は15勝45敗。この厳しい現実に目を背けず、築いた土台に確かな「結果」を積み上げるべく、2025-26シーズンのロボッツは30勝という目標を掲げた。
開幕ロスター12名のうち、新戦力として迎えたのは3名。つくば市出身でリーグ優勝経験のある#1 小島元基、攻守において万能性が光る#9 ヤンジェミン、豪快なプレーで個で打開できる#8 タイラー・クックと、ガード・ウイング・インサイドの各ポジションに即戦力が加わった。
2025-26シーズン 開幕ロスター
#0 ロバート・フランクス
#1 小島元基
#3 長谷川暢
#7 駒沢颯
#8 タイラー・クック
#9 ヤンジェミン
#10 陳岡流羽
#13 中村功平
#14 久岡幸太郎
#21 エリック・ジェイコブセン
#25 平尾充庸
#29 鶴巻啓太
開幕前の編成について、落GMはこう振り返る。
「私自身、新体制になって1年で結果を出すのは難しいと思っていました。2年目もクリス・ホルムにHCを任せるにあたり、幹の部分を大きく変えるよりは彼のバスケットや人間性、要するにHCのストロングポイントとウィークポイントを踏まえた上で、昨シーズンも一緒にプレーした選手を多く継続させる方がプラスだと考えました。
一方で、昨シーズンは帰化・アジア特別枠の選手を上手く起用できなかったという課題もありました。今シーズンは#3 長谷川選手がアキレス腱断裂からの復帰シーズンでもありましたし、そういった状況でウィングでハッスルできる#9 ヤン選手を獲得できたこと、地元出身で実績のある#1 小島選手を補強できたことは上手くいったと感じています。#8 クック選手に関しては#21 ジェイコブセン選手と#0 フランクス選手が残る中で、フランクス選手のピュアシューターとしての魅力をさらに生かすためには、個で打開できる外国籍選手が必要だと考え彼をリストアップしました」

ホルムHCは「本当に色々なことを学んだ」と就任1年目を振り返り、「ヘッドコーチとして経験が浅いことを言い訳にできない。私自身もさらに成長できるように意識して日々取り組んでいきたい」と決意を胸に、新たなシーズンに挑んだ。
2025年10月4日。2025-26シーズンが幕を開けた。アウェーでの連敗スタートとなったものの、日立市池の川さくらアリーナでのホーム開幕戦で今季初勝利。この試合では#7 駒沢がキャリアハイの28得点、オーバータイムでは#1 小島が10得点と躍動した。
ホームでの最初の歓喜が追い風になるかと思われた矢先、チームはその後7連敗を喫してしまう。11月中旬のバイウィークまでに積み上げた白星は3つ。反対に黒星は15まで膨れ上がっていた。この間、“Mr. ROBOTS” #25 平尾の長期離脱という悪夢にも見舞われ、残酷なまでの試練がロボッツを襲った。
巻き返しへの一手
何かを変えなければいけない。
シーズン最初の中断期間は、チーム全体にそんな雰囲気が漂っていた。「周りに声はかけ続けていましたけど、成績も伴わなかったですし、チームとしてはちょっと落ちていた時期でした」。長谷川は当時の空気感を回顧する。
今以上に円滑なコミュニケーションを図り、さらなる一体感を生むために導き出した一手が、ジェイコブセンをもう1人のキャプテンに抜擢することだった。
「エリックは言葉でもプレーでも身を粉にしてチームに貢献してくれていますし、ロボッツでのプレー歴も長い。ロボッツのあるべき姿を体現できる彼に対して、新たなまとめ役として全体を鼓舞してもらいたかった」(落GM)
長谷川とジェイコブセンのダブルキャプテン体制に、引き続きバイスキャプテンの#14 久岡が脇を固める。硬直していた組織に新たな摩擦を加え、ロボッツは再び前を向いた。
「正直なところすごく驚いたよ」。大役を任された張本人はそう言って笑ったが、背番号21の献身がどれほどチームの救いになっているかは、ファン・ブースターにとっても、もはや説明不要の事実だ。

「エリックはすごく明るいキャラクターですし、元々頼りになる存在なのでキャプテンの僕としてもネガティブな気持ちにはならなかったですね。いい相乗効果になったんじゃないかなと思っています」(長谷川)
主将に就いたジェイコブセンも、これまでのスタンスを変えるつもりはなかった。むしろ、変わらない背中を見せ続けることが、ロボッツらしさを取り戻す、最もシンプルで強力なメッセージになると信じていた。
「自分の中で何かが変わったわけではないんだ。キャプテンの打診を受ける前から、自分はコート上で常に声を出し続けてきたし、チームのことを第一に考えてプレーしてきた。就任が決まってチームに話をさせてもらった時も、みんなにはこう伝えたよ。『キャプテンになったからといって自分の行動や言動を変えるつもりはない。今までと全く同じことをやっていく。だから僕のことを特別に見ないでほしい』ってね」

反撃の先に、新たな光
バイウィークが明けた12月6日。ロボッツはホームで横浜ビー・コルセアーズを迎え撃つも、66-68で敗戦。ゲームクロージングの課題を払拭できず、第4クォーターで試合をひっくり返された。続くGame2にも敗れ、気づけば5連敗。結果が出はじめたのは第15節のホームゲームからで、#92 村越圭佑が練習生から選手契約を勝ち取った時期と重なった。
秋田ノーザンハピネッツから今季初の同一カード連勝を奪うと、第16節ではアルティーリ千葉との初対決に勝利。アウェーでの第17節Game1ではフランクスが32得点の大暴れを見せ、広島ドラゴンフライズを87-72で退けた。ロボッツは4連勝のあとに1敗するも、すぐさま2連勝。年をまたいで記録した7戦6勝という勝率は、確かな変化を証明していた。

1月29日にはBリーグ初の一大イベント「B.LEAGUE DRAFT 2026」が開催。全体2位の指名順となったロボッツは、得点能力に秀でた#12 赤間賢人を1巡目で指名した。加入後の活躍ぶりを見れば、この指名が正解だったことは疑いようがない。しかし、大学4年間で実績を積んだ有望株を選ぶこともできた。20歳の原石を選んだ理由はどこにあったのか。落GMの答えはこうだ。
「大学の試合にたくさん足を運んで、いくつかの大学の練習にもお邪魔させてもらいまして、夏場ぐらいまでには12、3名に候補を絞っていました。その中で重視した点は即戦力であることと、将来性・スター性があるかどうか。即戦力と将来性は相反する部分でもあると思いますが、賢人はまだ20歳ですし、これからフィジカルも強くなってくると思いますし、経験値も上がってくる。もし3年契約でロボッツでプレーすると考えると、間違いなく“ロボッツの未来”ですし、チームの顔の1人になる。即戦力という観点で言うと、シーズンが始まってからうちは3Pシュートの決定率が課題でした。彼のプレーは藤枝明誠高校時代から見ていましたし、シューティングスキルの部分では今回のドラフトにエントリーした選手の中でトップクラスだと思っていたので、彼を指名させていただきました」
落GMの言葉通り、赤間はすぐにロボッツの武器になった。今シーズンは特別指定選手としてプレーし、デビュー2戦目の第22節Game2で2本の3Pシュートを含む9得点をマーク。日立市池の川さくらアリーナでの今季最終戦を白星で飾る活躍を見せた。




