取材・文:茨城ロボッツ text by IBARAKI ROBOTS
写真:茨城ロボッツ photo by IBARAKI ROBOTS
茨城ロボッツは、新しい取り組みとして「生成AIを活用した問い合わせシステム」を2026年3月30日から導入しました。
これまでは問い合わせ対応が特定のスタッフに偏り、クラブ全体でナレッジを共有しきれないという課題がありました。「特定の担当者だけに頼るのではなく、誰もが同じ精度でファン・ブースターを支えられるようにしたい」。その思いから、ビジネススクール、企業研修、ベンチャーキャピタルなど多岐にわたる事業を展開するグループ会社「グロービス」の協力のもと、この開発プロジェクトは動き出しました。
新システムでは、最新の生成AI技術を組み合わせることで、ロボッツらしいユニークな解決策を実現しました。「待たせない、迷わせない」新しいデジタルの案内役として、クラブならではのホスピタリティをどのように具現化したのか。その舞台裏に迫ります。
ロボッツ愛とユーモアを届ける「ロボスケAI子分」誕生
新しい問い合わせシステムでお問い合わせをナビゲートするのは、茨城ロボッツ公式マスコットキャラクター・ロボスケの子分です。
ダンスの練習に夢中なロボスケに代わり「ロボスケAI子分」が24時間365日、ファン・ブースターの疑問に寄り添います。
開発で最もこだわったのは、無機質な自動応答ではなく「ロボッツらしい語り口」を通じてあたたかさを感じてもらうこと。あえて完璧を追求せず、少し抜けていても一生懸命に頑張るAIロボスケが対応することで、思わずクスッと笑ってしまうような体験を目指しました。
例えば夜中のふとした疑問にも、ロボスケAI子分がユーモアあふれる回答で対応してくれる新しいデジタルの案内役です。技術と遊び心が融合した、ロボッツならではのおもてなしを、ぜひ一度体感してください。
【問い合わせシステムの手順】
1.公式サイトTOPの「?」アイコンをクリック。
2.選択肢または自由記述形式で、チケットや会場について質問を送信。
3.ロボスケAI子分がユーモアを交えて回答を提示。
※ロボスケAI子分が解決できない複雑な内容に関しても生成AIを利用した問い合わせ受付窓口を用意


開発者が描く、ロボッツとAIの新しい関係
「問い合わせ対応を効率化したい。でも、冷たい自動応答にはしたくない」。そんな、一見矛盾するテーマに挑んだのが今回の開発を担当した堀部 智靖氏です。
特定スタッフへの業務集中を解消するためのナレッジ共有と、AIロボスケが登場しファン・ブースターを和ませる遊び心ある世界観。その両立を目指し、Bリーグ初の生成AI問い合わせシステムに込めた思いと、これからのDX(デジタル・トランスフォーメーション)のあり方について伺いました。
- 今回のシステム開発に至った、真のきっかけは何だったのでしょうか?
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根本にあったのは、現場スタッフの負担軽減と、ファン・ブースターの体験の質の向上を両立させたいという想いです。以前の問い合わせ体制では、チケット担当や事務局の特定スタッフ数名に全ての質問が集中していました。
今回の開発では、常に最新の状態にアップデートされるナレッジをベースに、AIが回答を生成する仕組みを構築しました。そして、この仕組みの鍵は「特定の誰かだけが使うものにしない」という点にあります。全社員がアクセスできるスプレッドシートを活用することで、誰もが情報の更新に関わり、誰もが問い合わせのプロになれる体制を整えました。
ロボッツには、新しい技術をポジティブに受け入れる土壌があります。以前からグロービスと連動して全社的なワークショップを開催するなど、AIについての学びを深める機会を作ってきました。その積み重ねがあったからこそ、スタッフも抵抗感はなく今回のシステムが組織の中に溶け込んでいったと感じています。 - Bリーグ初の試みとして、開発で最も「ロボッツらしさ」を意識した点はどこですか?
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最も苦労し、かつこだわったのは「技術をいかにロボッツの温度感に落とし込むか」という点です。生成AIは非常に強力ですが、時に無機質であったり、回答を100%制御できなかったりする特性があります。そのまま外部に公開しては、ロボッツが大切にしている「ファンとの距離の近さ」を損なう恐れがありました。
そこで発案したのが、「ロボスケの子分であるAIロボスケ」という設定です。「ロボスケはダンスの練習で忙しいので、代わりに子分が一生懸命答える。」
--このユニークな設定によって、AI特有の回答の癖や、時に生じる不完全さを、「ロボッツらしい遊び心」としてポジティブに受け取ってもらえるよう工夫しました。「完璧なロボット」を目指さず、未完成の状態から皆さんと一緒に育てていきたいという思いが強いです。どこか抜けていて愛着がわく存在として、最先端の技術の中にも「人の体温」を感じてもらえるようにしていきたいですね。
- 技術的な側面で、特に注力した「見えない工夫」を教えてください。
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「回答スピード」と「精度の追求」です。
AIがナレッジを検索し思考して回答を生成するまでには、どうしても数秒から十数秒のタイムラグが生じます。現代のユーザーは1秒の遅れでもストレスを感じるため、裏側のフローを徹底的に検証し、いかに回答速度を上げるかに注力しました。
また、精度の面では、元々社内ナレッジがありましたが、AIが理解しやすいように6つの重要カテゴリーへ集約・再構成しました。これにより、AIが迷わずに正しい情報へ辿り着けるようになっています。さらに、セキュリティ面も万全を期しました。外部からの悪意ある入力によって社内の機密情報が引き出されないよう、プロンプト(指示文)の段階でガードレールを設置しています。 - 実際に運用が始まり、手応えはいかがでしょうか?
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開始数週間で既に100件を超える問い合わせがあり、そのうちの約6割がAIの回答のみで完結しています。正直もう少し回答率は低いと想像していましたが、今まで積み重ねてきたナレッジのおかげかなと思っています。ただ、私たちはこれを完成形だとは思っていません。AIが答えられなかった「残り4割」の中にこそ、私たちがまだ気づけていないファン・ブースターのニーズや、改善のヒントが隠されています。
ログを分析し、毎日少しずつナレッジをアップデートしていくという、地道な積み重ねこそが、AIを「ロボッツのスタッフの一員」として成長させていく唯一の道だと確信しています。ぜひみなさんもAIロボスケと話してみていただけるとうれしいです。
- このシステムの「今後の展望」を教えてください。
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最終的には、実際の「ロボット」がアリーナでファン・ブースターをお迎えし、対話が出来たら面白いなと思っています。音声認識の精度もかなり上がっているので、音声認識で「今日の試合どう思う?」と話しかければ、AIロボスケ(仮)が過去のデータや戦術を分析して答えてくれるような対話が出来たら面白いなと思います。
例えば、バスケにあまり詳しくない方でも「今日の試合の見どころ」や「注目の選手」などを聞けば、レポートに基づいた深い解説が返ってくる。そうした対話ができる場所があれば「アリーナへ行く理由」の1つになります。単なる問い合わせ対応の枠を超えて、戦術や歴史までを網羅した「ロボッツの百科事典」のような存在へ進化させ、ファン・ブースターがより深くチームを愛せる仕組みを構築していきたいですね。


ファン・ブースターと共に育てる、ロボッツ流問い合わせ体験
定期的に開催される社内会議では、堀部氏と事務局スタッフが膝を突き合わせ、AIだけでは拾いきれない「現場の機微」について熱い議論を重ねています。
このプロジェクトは堀部氏だけのものではなく、約20名の担当スタッフが「ファン・ブースターが本当に求めている回答は何か」を自分たちの実体験を持ち寄り、AIのナレッジを磨き上げています。
会議では、チケットのキャンセル規定の伝え方や、特定イベントの案内が正しく分類されているかといった細かなポイントまでログをチェック。画面の向こう側にいる一人ひとりを思い浮かべながら、回答の精度と温度感の両方を高めています。


こうしてAIとスタッフが二人三脚でナレッジを育てていく中で、現場にはどの様な変化が生まれているのでしょうか。代表の川﨑篤之、そして運用・チケット・ファンクラブを担当するスタッフがそれぞれの立場から今回の取り組みへの手応えと今後の期待を語ります。
Bリーグ初となるお問い合わせAIの導入は、現場が抱えていた課題を解決するために、グループ会社であるグロービスの知見と技術を総動員して実現した、私たちらしい先進的なチャレンジです。完璧な仕組みを一度でつくるのではなく、使えば使うほどファンの皆さんと一緒に育っていく。この“成長し続ける問い合わせAI”こそ、ロボッツのユニークさを象徴する新たな価値だと感じています。このシステムが、ロボッツらしいホスピタリティの一つとして、これからも進化を続けてくれることを期待しています。
最初は本当にAIに任せて大丈夫なのか、不安な気持ちもありました。でも、私たちが日々対応している内容が少しずつAIに反映されて、24時間いつでも即答できるようになったのは、想像以上に心強いです。担当者それぞれの知恵や工夫を持ち寄ってナレッジを育てていくプロセス自体が、チームの結束を前よりずっと強くしてくれたと感じています。
定型的な質問をAIが引き受けてくれることで、私たちはより複雑な相談への対応や、ファンサービスの企画など、人間にしかできない部分に集中できるようになりました。業務負担が以前より軽減されたことで、本来いちばん力を注ぎたかった“価値の高い時間”にシフトできている実感があります。
AIが答えられなかった質問のログは、ファン・ブースターが何を求めているのかを知るための宝箱のような存在です。それを手がかりに社内ナレッジをすぐにアップデートしていくサイクルができ、日々システムが賢くなっていくのを間近で実感しています。AIと一緒にファン対応も成長させたいと考えています。
未完成を強みに、Bリーグのスタンダードへ
動き始めたばかりのこのシステムは、まだ「完成形」ではありません。
茨城ロボッツは、最初から100%の完璧を求めないことをあえて掲げています。答えきれない質問を「失敗」と捉えるのではなく「次のアップデートのヒント」として一つひとつ丁寧に拾い上げ改善を積み重ね、ファン・ブースターと共に育てていく。この前向きなサイクルこそが、ロボッツ流のDXです。
この取り組みを「ロボッツ・モデル」として確立し、将来的にはBリーグ全体へ新しいスタンダードとして広げていくことを目指しています。
未完成であることを強みに、茨城ロボッツはこれからも唯一無二の価値を皆さまに届けていきます。


