Play back GROW BOLD ~大胆な成長を求めて~<後編>

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文:小沼 克年|text by Katsutoshi Onuma
写真:茨城ロボッツ|photo by IBARAKI ROBOTS

今シーズンのロボッツは、『GROW BOLD』のスローガンのもと「大胆な成長」に挑む1年と位置づけた。シーズン終盤はホームアリーナを日立から水戸に移し、試練が続く中でも前を向き続けた。迎えた最終節はホーム2連勝。歓喜と共に、1人の男が現役生活に幕を下ろした。

2025-26シーズンの振り返りをピックアップし、落慶久GMとクリス・ホルムHC、そして、#3 長谷川暢、#21 エリック・ジェイコブセンの両キャプテンの言葉で振り返る。

※この記事は後編です。前編をご覧になっていない方はこちら↓

目次

突然の別れ、そして即断

レギュラーシーズンが後半戦に差し掛かった頃、ロボッツを取り巻く状況が再び動いた。

新戦力として主にインサイドで持ち味を発揮していた#8 クックが、本人からの申し出により退団。双方合意の上で契約を解除することになった。206cmのビッグマンを突如失ったことで、落GMは補強に動かなければならなかった。退団のリリースを出したのが2月23日。2025-26シーズンにおける選手登録の最終日は3月17日。動ける時間は多くなかった。

 落GMはドイツ代表経験を持つ#30 ティム・シュナイダーの獲得にこぎ着けた。だが、その道のりは「それほどバタバタはしなかった」と説明する。

海外で活躍中の選手を呼ぶにはビザが必要で、ビザが下りるには約1ヶ月から1ヶ月半かかるので間に合いません。ですので、まずはビザを持っていてフリー(FA)になっている外国籍選手をリストアップしました。#30 シュナイダー選手はインサイドでプレーできるロールプレーヤーですし、福岡(ライジングゼファーフクオカ)との契約が(双方合意の上で)解除されたタイミングでもありました。あとはちょうどドイツ代表の活動をしていた時期だったので、実際にいつ来日できるのかくらいの懸念点がなく、とんとん拍子で契約まで進めることができました

新たな顔ぶれを揃えたロボッツは、シーズン終盤の21試合へと照準を定めた。

水戸再起動——幾度の善戦

『水戸再起動~Bプレミア序章~』と銘打った3月7日も、今シーズンを語る上で外せない1日として記憶に残る。アダストリアみとアリーナで約1年ぶりとなるホームゲームが開催。約4000人の観衆が詰めかけ、アリーナを青く染めた。

この日行われた第24節からは、のちにチャンピオンシップ出場を果たす名古屋ダイヤモンドドルフィンズや千葉ジェッツ、琉球ゴールデンキングスなどの強豪クラブとの戦いが続いた。第24節Game2では、名古屋D相手に一時23点リードを奪う試合運びを披露。しかし、最終クォーターに4-30という猛反撃を許し、掴みかけた勝利は無情にもこぼれ落ちた。

第26節のホームゲームでは初戦で千葉Jから白星を獲得したものの、シーズンが大詰めを迎えた4月は、ホームでの勝利は1度きり。第33節Game2は西地区1位の長崎ヴェルカに逆転負け。最終クォーターに追いつかれ、またも勝ち切ることができなかった。

どんな相手にも互角に渡り合えることは、シーズン序盤から証明してきた。アウェーでの戦いでもアルバルク東京や宇都宮ブレックスに勝てるチャンスはあった。大胆に戦える。けれど、勝ち切れない。それが、歯がゆくもロボッツの現在地だった。落GM、ホルムHC、#3 長谷川がそれぞれの立場から言葉を紡ぐ。

昨シーズンの段階で、ヘッドコーチ1年目のホルムHCがゲームマネジメントができていないのは誰が見ても明らかでした。今シーズンに関しても、やはりタイムアウトや選手交代のタイミングに問題がありましたし、冷静さを失って審判と戦ってしまうという彼の弱さが出てしまいました。ホルムHCはああ見えてすごく臆病で慎重です。事前の準備などはしっかりしていますし、試合後は私とも擦り合わせやディスカッションをして改善に努めてきました。しかし、冷静な判断力、勝負どころでの瞬発力という部分ではどうしても腰が引けてしまった印象です」(落GM)

名古屋D戦のようなゲームに関しては本当に私の責任だと思っています。もっとベンチの選手たちを信じて使ってあげればよかったと感じた試合でした。シーズンを通しても先発メンバーに頼りすぎず、ベンチメンバーの調子が良い時にこそ使ってあげるべきだったなと。選手たちにも今シーズンの悔しさを受け止めて成長に繋げてほしいですし、私自身も『何ができたか』を考えて、自分のキャリアや成長に繋げていきたいです」(ホルムHC)

今、茨城ロボッツが一番欲しいのは『勝ち』だと思います。終盤戦で言えば名古屋Dや長崎のゲームで自分たちが勝っていたら、クラブとしてもすごく大きな1歩だったと感じています。僕自身、あのゲームを勝たせられなかったことに対して後悔していますし、もし勝っていればファン・ブースターの方たちはもっと盛り上がってくれたはずです。勝ちを増やさない限りはクラブとしても今まで通りになってしまうので、もっと勝利に対して向き合っていかなきゃいけないです」(#3 長谷川)

 シーズン後半は怪我人が相次いだこともチームに重くのしかかった。それでも最後まで戦い続けたロボッツは、今シーズン最終節でホーム2連勝。#25 平尾が約半年ぶりにベンチ入りを果たし、昨季を上回る19勝を積み上げた。

最終戦のコート上では、ロボッツでの5年目を終えた男が口を開いた。#21 ジェイコブセンが現役引退を表明。10シーズンにわたるプロバスケットボール選手としての旅路に、自ら幕を下ろした。

ロボッツはあきらめない。次なる覚悟

この仕事をしていて、一番得られるものは『関係性』だと思っています

ホルムHCが口にした言葉だ。コーチ、選手、スタッフ、ファン・ブースター、クラブを支えるスポンサーやパートナーもそうだ。それぞれが異なる立場で、同じ想いを持って、繋がっている。すべての関係性が絡み合い、ロボッツというクラブは成り立っている。

『ロボッツはあきらめない』という言葉があるように、僕らが負けていたとしてもファンの人たちも最後まで諦めずに応援してくれる文化みたいなものはすごく感じています。それは平尾さんやOBの一色(翔太)さんたちが中心になって積み上げてきたものだと思いますし、これからもロボッツを応援してくれる方たちのために自分たちのバスケットを見せ続けなければいけないです

長谷川はさらに続ける。

30勝という目標を達成できなかったことは悔しさが残りますけど、チームとしてはコーチ陣とのコミュニケーションの取り方、練習の取り組み方が変わったことに対する成果はすごくあったと感じています。苦しい時もありましたけど、全員が勝つことに対してすごく貪欲に向き合ってくれましたし、最後までやり切ろう、戦おうという気持ちはより強くなりました

 ジェイコブセンも「目標に向かって全員が正しい方向を向いて走り続ける、戦い続けることはしっかりできた」と同じ手応えを口にした。

私たちはこの街、茨城県というホームの土地に生かされています。茨城県の誇りになれるようなチームになりたいですね」と改めて述べた落GMは、「やっぱり強くならなければいけないなと、強く考えてます」と来シーズンへの覚悟をにじませる。

 2026-27シーズンからはBリーグの新制度により大きな変革期を迎え、ロボッツは新B1にあたる「B.LEAGUE PREMIER(Bプレミア)」で熾烈な戦いに挑む。戦力均衡を狙ったサラリーキャップ制度の導入は、「正直チャンスだと思っています」と落GMは表情を引き締める。

今も十分素晴らしいクラブですが、そこにとどまっていたら成長はありません。Bプレミアに残り続けるためにも来シーズンがすごく重要になると思っています。クラブとしても覚悟を持って次の1歩を踏み出すので、期待していただければと思います」 

 日本一達成を目標とする2031年までは、あと5年。2025-26シーズンを振り返れば苦しい記憶の方が多いかもしれない。だが、数字だけでは表せないものが、確実にこのクラブを前へ動かした。大胆な成長を求めたこの1年は、来シーズンへの確かな礎となる。

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