取材・文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide TOYOSAKI、B.LEAGUE
一向に止む気配を見せない新型コロナ禍。Bリーグに所属する多くのクラブでも難しい状況が続いている。茨城ロボッツも選手・スタッフに新型コロナウイルスの陽性判定者が出たことで、チームは一時的に活動を止めることとなった。その中で、選手やコーチたちは何を見つめ、残る戦いに備えようとしているのか。今回は、ヘッドコーチを務めるリチャード・グレスマンに今後への抱負を尋ねた。
「選手たちにとってはつらい日々だったのでは」
激しい上位争いを繰り広げる中でのシーズン中断には、率いる立場のグレスマンHCにとっても厳しい事態だと感じていたようだ。グレスマンHCは「Challenging」という言葉をしばしば使い、現状を語った。
―シーズンの中断を、指揮官としてどう受け止めていますか
「非常に厳しい事態だと思っていますし、一日一日チームとして戦っています。シーズンが締めくくりに向かう大事な時期に2週間活動を止めなくてはいけないこと、隔離生活で2週間家にいなくてはいけない状況だったので、選手たちにとってはメンタル的にもフィジカル的にもつらかったのではないかと思います。」
―外出自粛で家を出られない中で、どのようにロボッツの選手たちと過ごしていたのですか
「チームとしては毎日オンラインでのミーティングを続けていましたので、そこでコミュニケーションを取っていました。システムを含めたチームの戦術なども確認できていた一方、トレーナー陣がオンラインでできるフィジカルトレーニングを組んでくれたのは助けになりました。他にも、アシスタントコーチの2人が、アパートに住んでいてもできるようなボールさばきのトレーニングをするなど、とにかく刺激を与えられたらと考えていました。」
―チームとしては上り調子の中でした。ヘッドコーチとして、ここまでの戦いをどう捉えていましたか
「中断時点で33勝13敗と、いい成績を残せていたと思いますが、特にこの1ヶ月ほどでチームは躍進していたように感じていました。(3月6日に行われた)西宮戦のGAME1でこそ、敗れてしまう結果となりましたが、そこからよく切り替えていけたと思っています。パーフェクトではないにせよ、高いレベルでのプレーはできていたように感じています。シーズン序盤から中盤にかけては、GAME1よりGAME2の方がパフォーマンスがよいという状況がよく見られていましたが、ここ最近ではそれが改善されていたと感じています。ゲームごとのギャップが減ってきていたとも感じていましたね。」
「ギャップが減った」その真相は
事実として、中断直前に行われた2節を紐解くと、アースフレンズ東京Z戦(3/13)や熊本ヴォルターズ戦(3/20)では、GAME1からしっかりと力強い戦いができていた。一方で、GAME2(3/14)でもそこから緩まずに戦えていたことで、ロボッツには力強さが生まれていた。敗戦から立ち直って、見違えるような戦いを見せた、西宮ストークス戦(3/7)のような試合もあった。グレスマンHCに、その要因についても尋ねてみた。
―「ギャップが減った」とおっしゃいますが、そうした成長の要因はコーチングにあったのですか、それとも選手の伸びにあったのですか
「直接的な原因は正直これと言えないのですが、選手たちがシステムの習熟を進めていたこと、またロボッツのチーム全体の層の厚さが挙げられるのではないかと思います。Bリーグにおいては、層の厚いチームほど、2試合を通じたパフォーマンスが上がると言ってもいい気がしています。コーチングの中で、パフォーマンスのギャップについては伝え続けてきましたが、選手たちが責任感を持って集中力を高く取り組んでくれたことも、大きいのではないかと考えています。」
―シーズンが進む中で、ご自身や選手の役割の変化などもあったのでしょうか
「終盤に差し掛かると、私が、と言うよりも選手たちにリーダーシップを持ってほしいと考えるようにしています。シーズンインの段階ではコーチ陣がチームの風土や基盤を作り出すのですが、終盤ではそれを選手たちが作ってほしいという考えを持っています。コーチの役割が大きく変わるという訳でもないのですが、チーム始動から9ヶ月ほどが経った中で、チームとして一体感を持っていくためには、選手たちが自発的に責任感を持っていってほしいと感じています。」
そうしたチームの変化が、ロボッツの今の成績に表れているのだとすれば、終盤戦に向けては好材料とも言える。再開の時が、待ち遠しい。
「日々の練習の出来を評価しながら、再開初戦につなげたい」
チーム活動、そして中断されていたリーグ戦の再開は、もう間もなく。オンラインでトレーニングを続けていたとは言え、全く不安がない状況ではないはずだ。指揮官として、現状をどう見定めて再開に備えているのかについても、話を聞いた。
―チーム活動やリーグ戦が再開間近。今のチーム状況をどう捉えていますか
「行動制限期間中、いろいろなことを考えていたのですが、まずは一日一日にフォーカスしてやっていくということを大事にしなくてはなりません。日々の練習の出来が、そのまま再開初戦の出来に関わってくるからです。毎日、練習やトレーニングの出来を評価しながら、翌日にやるべきことを、柔軟に変えていかなくてはいけないと思っています。ロボッツの選手たちは、プロ意識の高い選手がそろっていますが、2週間の活動停止・行動制限を経るとなると、これまで通り、あるいはこれまで以上のパフォーマンスを期待するのは、正直に言って難しいです。そういった部分については、ゆっくりと時間をかけて見定めなくてはいけないと思います。再開して1週間、2週間と経っていけば強度もついてくるとは考えていますが、現状としては慎重にならざるを得ません。」
―プレーオフ争い、またその後に待ち受けるB1昇格に向けて、抱負をお願いします
「まずは、優勝争いができるポジションを、しっかりと取り続けることが大事になっていきます。仮にこうした事態になったとしても、あくまで優勝を狙っていく、昇格を目指すという想いに変わりはありません。常に追いかけ続けていきます。」
―最後に、この状況下でも支えてくれるファン・ブースターへのメッセージをお願いします
「いつも応援ありがとうございます。この行動制限期間中で、ファンの皆さんのサポートの大きさという部分を痛感いたしました。行動制限期間が明けたときには、心身ともに私たちは強くなって、『強いロボッツ、強いバスケット』というものを、しっかりお見せできればと思いますし、誇りに思ってもらえるようなチームになって、B1昇格を成し遂げられるように、悲願を達成できるように頑張っていきたいと思います。」
強いロボッツ、強いバスケットを体現できた先には、ロボッツの悲願である昇格は、確実に果たされるだろう。シーズン再開を果たしたのち、ロボッツが全力で相手に挑み、打ち倒していく様を、期待しよう。