【AFTER GAME】 2021-22 宇都宮戦(10/16~17)~手応えを積み重ねて、地道な再現を~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

ホーム開幕をようやく迎えたロボッツ。対戦相手はB1東地区の強豪で、昨シーズン準優勝の宇都宮ブレックス。果敢に挑まないことには勝利が見えないこの戦い。ロボッツは宇都宮のディフェンスに手を焼いてGAME1を66-88で落とすと、GAME2では序盤に大きなビハインドを背負ったことが響いて69-84で敗戦。連日チケットが完売となるほど大入りとなったアダストリアみとアリーナのファンの前で、今シーズンの初勝利とはならなかった。少しずつ、勝利への道は見えつつあるが、わずかなところで結果に結びつかない。そのもどかしさと勝利への執念は、選手たちが感じていることだった。

「考えるバスケット」の具現化を

GAME1を終えての記者会見、#25平尾充庸はこのような言葉を残した。

「宇都宮さんとは、変な言い方をすれば天と地ほどの差がありました。一つのスクリーンプレーもそうですし、一つのディフェンスもそうです。また、システムもそうです。トップを走っているチームだ、というのはコートに出ていても感じましたし、交代で出てくるメンバーも、自分の役割をしっかり理解した上でコートに立っています。対戦していて勉強にもなりましたし、そのレベルのバスケットをしていかないといけない。本当に日々成長していかなければいけないと思いました。」

開幕から5連敗。常に課題と隣り合わせとなって、トライ&エラーを繰り返しながら戦ってはいるものの、なかなか結果はついてこない。会見に居合わせた記者から、「B1の壁をどう感じるか」という質問を投げかけられると、平尾はこう答えた。

「コートの内外で見ていて感じるB1の壁と言う点で行くと、一人ひとりの判断が全然違うと感じています。作り上げられたフォーメーションや作戦もあるとは思うんですけど、それを相手に止められた時に、さらにその次の判断ができて、それがすごいなと思います。ただ、自分たちもそのレベルにならなければB1では戦っていけません。慣れもあると思いますし、『止められたら次はこうしよう』という考えにもなると思うんです。しっかりと成功と失敗を繰り返して、そのレベルに立ちたいです。」

この言葉に、筆者は昨シーズンの途中に試みたインタビューの一場面を思い出した。当時は新型コロナウイルスの影響でチームが活動を止めたタイミング。再開後のリーグ戦に向けての勝負のカギを問うてみると、平尾から「プロになってからはいかに頭を使うかが勝負」という話題が出た。その時、彼はこう語っていた。

「自分がコートに立ってしんどい時に、他にコート上にいる4人のことを、いかに考えられるかも必要になってきます。小中学生の時代であれば、思い描いたようなプレーを難なく実現できるのかもしれませんが、プロの世界ではそこに『頭を使ってバスケットを考える』という部分が必要になってきます。例えば『足を速くしろ!』だとか『もっと高く飛べ!』と言われたとしても、大人になった今では劇的に変わるものではありません。ただ、考える、頭を使うと言う部分には伸びしろがあります。むしろ、プロはそこが成長のほとんどです。強豪クラブとの戦いが続く中で、今までで失敗したことをしっかり反省して、自分たちのプレーのどこが通用するかを考える一方で、どれだけ他の選手を思いやれるかも考える。きつい戦いだとは思いますが、そこを成し遂げるにはチームがひとつにならないといけません。」

例えば、昨シーズンまでの戦いであれば、そもそものスキルや身体能力で相手を上回れていたり、戦術のミスマッチからロボッツが上を行く展開がたびたび起きていたからこそ、こうした部分は大きな問題にはなりづらかったのだろう。ただ、全ての勝手が違うB1の舞台。能力は互角かそれ以上という中では、戦術の理解度、さらには平尾が言うような判断力も、勝負のカギとなってくる。

劣勢になればこそ、どうしても自らが打開を図ろうと、視野が狭くなることはあり得る。ただ、そこで一度、ロボッツとしてのバスケットが何か、というところに立ち返ってほしい。「Unselfish」を合言葉に戦ってB1へと殴り込んだのだ。改めてここをブラッシュアップして、コート上の他の選手を思いやったプレーを見せてほしいところだ。バイスキャプテンの#2福澤晃平は、GAME2を終えてこう語る。

「コートに出ている5人がしっかりコミュニケーションを取って、相手がこうしてるからこう攻めよう、逆にこう攻めてくるからこうディフェンスしようという一人ひとりが発信して5人で話し合わないといけません。個人のディフェンスも。もっと考えてやっていかないと、ベンチからの指示、作戦が出るのを待っていたら展開についていけないはずで、オンコートの5人がしっかりコミュニケーションを取って、悪い流れをすぐに変えられるように解決していかないといけないと思います。」

考えること、その考えを臆することなくぶつけ合うこと。それが間違っているかも、などと恐れてはいけない。シーズンはまだ始まったばかりなのだ。チームの状態は必ず上向くことを信じて、考えをぶつけ合ってほしい。

良いところが常に出る40分間へ

2試合とも大差となってしまったため、どうしても悪い部分が目に付いてしまうかもしれない。ただ、強豪を相手にして「どこからならば上回れるか」、あるいは「どうすれば駆け引きを制することができるか」という試行錯誤は、各所に見られた。

そのキーマンとなったのが、福澤と#29鶴巻啓太だった。福澤は#8多嶋朝飛や平尾がベンチに下がり、自らがボールハンドラーとなる場面もあった中で、ピック&ロールを効果的に使っての3ポイントシュートや、時間が差し迫った場面での果敢なディープ3などを次々と沈めていった。GAME1では10得点、GAME2ではチーム最多の17得点と気を吐いたことで、胸のすく思いをしたファンもいたはずだ。かねてから「単なるシューターでは嫌」と言ってはばからない彼が、しっかりとB1でも得点の形を作りつつあることは、この先の戦いにおいては大きな武器になるはずだ。

一方の鶴巻。GAME1では日本代表であり宇都宮のエースとも言うべき存在、#6比江島慎に対して一歩も引かないディフェンスを披露。比江島の独特のステップに動じない1on1を見せ、3試合連続で2桁得点を記録していた彼を、第1クォーターの4得点のみに押さえ込んだ。リチャード・グレスマンHCは、その働きをこう称えた。

「(鶴巻選手は)B2からB1にステージが移る中で、すばらしいパフォーマンスを発揮してくれている選手だと思います。今日も比江島選手に対していいディフェンスでしっかりと抑えてくれました。彼は非常にポジティブな影響を与えてくれていると思います。」

鶴巻自身も、比江島とのマッチアップをこのように振り返る。

「比江島選手は独特なステップで攻めてきて、最初にポストアップからシュートを決められたときは『これがトップレベルの選手なんだ』と肌で感じましたし、マッチアップしていて、フィジカルでは押し負けていないところも感じることができました。これからのB1の戦いにおいて、自分の武器をもっと磨いていこうと考えられました。」

場面場面を切り取れば、決してロボッツが戦えていないというわけではない。ならば、勝利につなげるためには、こうした場面を40分間の中でどこまで増やせるかという話になる。キャプテン・平尾の言葉を借りるとすれば、「通用している部分、通用していない部分がはっきりと出てきている」のだ。良い場面が増えれば、必然的に勝利は近づく。そして、それを偶然のものではなく、「どうすればこの場面を作れるか」という検討を積み重ねて、ゆくゆく必然の物にしていく。選手個人の成長、そしてチームの成長につなげるためにも、勝利への努力を続けてほしい。

唯一の神栖開催。反撃に向けたゲームを

ロボッツにとっては2週連続のホームゲーム。西地区の三遠ネオフェニックスを、かみす防災アリーナに迎える。昨シーズンはコロナ禍の影響で試合開催ができなかった神栖でのゲーム。2年ぶりの戦いで、今シーズンの初勝利を果たしたい。

三遠のキーマンは、#28津屋一球。昨シーズン途中に特別指定選手として三遠に加入。抜きん出たパフォーマンスを印象づけ、そのままチームに定着した。選手を大きく入れ替えた今年の三遠では、バックコート陣の競争が激化。その中でも、開幕からスターターを任されているだけに、期待も大きいと見える。ツボにはまると止まらない「津屋ってる」とも称される彼を止められるかが。一つのカギとなるだろう。

ロボッツの注目選手には、その津屋にとって母校・東海大学の大先輩とも言える、#0遥天翼と#8多嶋朝飛を挙げておきたい。絶えずチームにエナジーを注ぎ続ける遥。今シーズンはここまでベンチからの起用が多くなっているが、チームが苦しいときにはここぞという場面で頼りにされる。そのあふれるエナジーが、ロボッツに初勝利をもたらすことに期待したい。

一方の多嶋は、ここまで全試合でスターターとして出場。キャプテンの平尾や#11チェハーレス・タプスコットなどと司令塔役を分担しながらの戦いとなっている。彼がボールに流動性を生んで、チャンスをどれだけ作ることができるか、一つ注目していきたい。

開幕ダッシュ、とはならなかった。だが、ここからがロボッツにとっての反撃の舞台だ。ホーム、そして神栖のファンの前で「ロボッツらしさ」のあふれるバスケットを演じ、勝利を掴み取りたい。

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