【AFTER GAME】 2020-21第6節 越谷戦(11/7~8)~死闘の末連勝ストップ。それでも下を向く必要なし~

取材:文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

久しぶりにアダストリアみとアリーナでの開催となった第6節。相手は序盤戦で好調な戦いぶりを見せていた越谷アルファーズだった。上位で戦い続けるためには重要な首位攻防戦で、ロボッツは2日間ともに激しい戦いを演じ、土曜日の第1戦は101-91でものにすることができたが、日曜日の第2戦は最後の最後で相手に振り切られ、91-92での敗戦となった。連勝は「8」でストップし、昨シーズンから続いていたホームゲームでの連勝も、Bリーグタイ記録の「20」で止まってしまったが、かと言ってこの敗戦でシーズンが終わったわけでもない。下を向くような事態ではないことは、他ならぬ選手たちが実感していることでもあった。

スピードとシュートへの意識。「動」で得点を奪い続ける

この2試合、攻守両面に渡って越谷を牽引していたのは、なんと言っても#5アイザック・バッツ。インサイドをどっしりと固め、少々のマークやチェックは押し切ってしまう強靱なフィジカルを持ったビッグマンだ。インサイドを死守するロボッツに対し、越谷はバッツにボールを預けて個人の打開を狙ったり、あるいはバッツにマークが寄った瞬間を狙って、彼が意表を突いたパスをアウトサイドに出す瞬間もあった。ロボッツは時に、その存在感に手を焼くところもあったが、逆にオフェンスにおいてはバッツがコートに立つ状況に、勝機を見出そうとしていた。ロボッツがボールを持つ場面では、バッツをアウトサイドへとおびき出し、空いたペイントエリアに向かって#25平尾充庸が素早く飛び込む。強固な外国籍選手と対峙する上で、一つの見本のようなパターンを作り出していった。第1戦を終えた段階で、平尾は越谷に対する攻め所をこのように語っている。

「ピック&ロールを使ったときに、相手のビッグマンよりスピードで優位に立てると思うんです。結果として自分のポジションが必ずノーマークになりました。ヘルプが来ればパスも出せるような状況で、それが結果的に良かったのかなと思います。」

相手ボールに対するスティールの意識も高かった。一瞬の隙をついてボールをさらい、即座にゴールへと向かう。スピードのミスマッチを効果的に活かしたロボッツのオフェンス陣。ペイントエリアでの得点は、2戦ともに40点を超え、越谷とほぼ互角の数字となった。インサイドを中心に「静」でペースを掴もうとした越谷に対して、ロボッツは「動」の中で同等の得点を生み出せた。オフェンスにおける選手の連動性の高さ、展開の早さは、今シーズンのロボッツのこだわりとも言える部分であり、シーズンを追うごとに進化を感じさせる部分だ。#27眞庭城聖は、徐々にではあるがチーム力の高まりに手応えを感じているという。

「開幕節やそれ以前と比べれば、外国籍選手のコンディションも上がってきて、プレーのスピードや質も変わってきています。チームが形になっていく部分で言えば、開幕戦からこの越谷戦までを見ただけでも、結束力は高まってきていると思います。」

また、2戦を通してシュート精度を高く保つことができたことも、好ゲームを生んだ要因ではないだろうか。特に光ったのはフリースローの成功率である。第1戦では96%、第2戦ではなんと100%の成功率を誇った。フィールドゴールではタフな場面に持ち込まれても、フリースローを着実に得点につなげたことで、相手に対してプレッシャーをかけ続けることができた。しかし、ロボッツの面々は決してその状況には満足していない。#25平尾充庸はオフェンスやシュートが不調に陥った時を考え、改めてディフェンスの必要性を強調する。

「オフェンス面のいい状態が続くとは思っていません。例えばシュートが入らない状況で、やはり相手のビッグマンをどう止めるかが重要です。イージーなシュートを打たせないことや、相手のオフェンスリバウンドからセカンドチャンスを与えないところであるとか、常に危機感を持って戦わなければいけないと思っています。」

ビッグマンに対するディフェンス。ロボッツがこの2日間、度々手を焼いた部分である。ただ、そんな状況下でも一方的な展開を許さなかったのは、それぞれの選手たちが限られた時間で全力のプレーをする「unselfish」と「tough」がしっかりと根付きつつあるからではないだろうか。

目の前のワンプレーにこだわって

今季のロボッツは、入れ替わり立ち替わり、ポジションを問わず様々なメンバーがプレータイムを得ている。勝ち試合においても負け試合においても、それが変わることはない。このコラムでもプラトーンシステムや3ガードなど、戦略面の特徴についてはその都度取り上げてきた。この越谷戦でも積極的にメンバー交代に打って出る戦略を採ったロボッツ。特にバッツを止めたい、守備から流れを作りたいという場面では、#31アブドゥーラ・クウソーが積極的に投入され、クウソー自身も奮闘で応えた。

「ヘッドコーチからも伝えられたことですが、犠牲心を持って相手を止めに行かなければならない状況でした。バッツ選手は試合を通してフィジカルの強い相手でしたので、第2戦の終盤、自分があと1回、2回と彼を止められていれば、ゲームの結果も変わったのではと思います。」

本人は反省を口にするものの、クウソーの献身的なプレーは今節のロボッツにとって支えとなった。第1戦を終えたところで、指揮官であるグレスマンHCが、名前を挙げて働きを認めたことからも、それが分かる。

様々なメンバーが出番を得ることで、特定の選手に対する負担も減る。それは、選手にとってはプレーの幅を生むことにもつながっているという。実感を話すのは、#27眞庭城聖だ。

「チームが勝つことが第一目標なので、プレータイムが減っても、全集中力をぶつけていくようにしています。例えばファウルに対する考え方もそうです。これまでなら、長く出る分ファウルをしないようにプレーをしていましたが、自分が犠牲になってファウルが多くなったとしても、ベンチから出てくるメンバーも心強いので、考え方も変わりつつあります。今年は『僕がやらなければ負ける』というようなチームではありません。ケガやコンディショニングのリスクも減るので、プラスな部分を感じています。」

クウソーや眞庭の言葉に織り込まれる「犠牲心」というワード。これは選手たちが指揮官が掲げる「unselfish」をかみ砕き、自分のものとしようとしているのではないだろうか。激しいプレーでファウルが込んでしまったことは一見ネガティブに見えるが、見方を変えれば、与えられたプレータイムを全力で挑んだ証拠と捉えることもできる。こうした奮戦が報われる瞬間は、シーズン中に必ず訪れるはずだ。

一方、オフェンスに関しても同様で、たとえ試合を通して1本しかシュートが決まらなかったとしても、その1本が終わってみれば値千金だった、ということもありうる。そうしたプレーの積み重ねが、ゆくゆくは勝利を引き寄せる。目の前のワンプレーにこだわり、「ここを止める」「ここで決める」という姿勢は、今後とも見せ続けてほしい。

再び試練のアウェー連戦へ

ホームの、そしてシーズンの連勝が止まったことを悔いている時間はない。次なる戦いは、すぐそこに迫っている。眞庭は日曜日の敗戦を「すごく悪かったゲームではない」と前置きした上で、次のように話す。

「連勝が止まったことで、必要以上に落ち込んでしまっている選手もいるかと思うんです。ただ、連勝はいつか途切れてしまうものですし、好調の越谷さんを相手に1勝1敗、しかも2戦目も勝てたかもしれない試合でした。そこを考えると、この先もシーズンは長いので、連勝が途切れたからと言って落ち込みすぎることもありません。」

ロボッツはここから、2週にわたるアウェー連戦を迎える。11月12日・13日にはアースフレンズ東京Zと、21日・22日には群馬クレインサンダーズとの試合に臨む。両チームとも以前対戦したときとはメンバーが入れ替わっていて、特に外国籍選手に対しては要警戒と言える。東京Zは#20イシュマエル・レーンが合流したことで外国籍選手のローテーションが可能となり、攻撃に大きなオプションが加わった。ここまでの序盤戦で2勝9敗と波に乗れなかっただけに、このホームゲームから巻き返しを狙っているところだろう。ロボッツとしてはアウェーの雰囲気に飲まれず、しっかり勝利を果たしておきたいところだ。

その後に相対する群馬は言うまでもなく、開幕節で連敗を喫した相手である。こちらも開幕節にはいなかった#4トレイ・ジョーンズと#40ジャスティン・キーナンが加入を果たし、攻守両面でのキーマンとなっている。第6節終了時点で7連勝中と勢いに乗る群馬を止め、今後のリーグ戦における存在感を示し、昇格戦線で優位に立ちたいところだ。スタッツ以上に「ロボッツは手ごわい」「一筋縄ではいかない」という爪痕をいかに残すか、ロボッツの進化と真価が問われる連戦になるはずだ。

厳しい戦いを乗り越えた先に、歓喜の瞬間を迎えるために、序盤戦から息の詰まるような戦いが続いている。しかし、こうしたタフな戦いの連続は着実にロボッツのメンバーたちを成長させているはずだ。このアウェー連戦、1つでも多くの勝利を手にして、B2優勝・B1昇格の夢を着実にたぐり寄せてほしい。

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