【AFTER GAME】 2020-21第9節 福島戦(11/28~29)~再出発の2連勝。アウェー連戦を前に大きな弾み~

取材:文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide TOYOSAKI

前週、群馬との首位攻防戦で連敗を喫したものの、ロボッツのメンバーに下を向いている時間はなかった。ホーム・茨城へ戻っての対戦相手は、序盤戦15試合で11勝4敗と、好調をキープしていた福島ファイヤーボンズ。「ホームを守る」と意気込む選手たちにとっては、これまた強敵といえる相手だった。ロボッツはGAME1、中盤から福島をジワリジワリと引き離して94-77で勝利すると、続くGAME2では、今季最多となる1514人の観衆の前で、すべてのプレーヤーが躍動。Bリーグでのチーム最多得点更新、今季初の全員得点となる114点をたたき出し、ファン・ブースターを大いに元気づけた。そんな、力強い試合運びの舞台裏には、どのような想いがあったのか。選手たちの言葉から紐解いていきたい。

「ホームは守るべき城」

前節の群馬戦の敗戦を経て、福島戦を迎えることになったロボッツ。しかし、敗戦を引きずって気落ちしすぎているようでは、ホームでの戦いにも影響を及ぼしかねない。#25平尾充庸は、「忘れるべきことは忘れなければならない」と話し、気分を入れ替えて新たな戦いへと臨んだ。

「正直、群馬さんに負けたことは悔しくて、どうしたら勝てたのかと反省することもありました。ただ、それはそれとして、自分たちが次の試合でどう戦うか、福島という相手にどう集中力を向けていくかという部分をしっかりチームで話し合いました。ホームは自分たちにとっては城みたいなもので、是が非でも、どんな形であっても負けたくないんです。」

「ホームを守らなくてはいけない」。その言葉を背負っていたのは、平尾1人だけに限ったことではないだろう。コート上に立つ5人はもちろん、ベンチの7人、さらにはコーチ陣を含めて、チームの全員が気を抜くことなく戦い続けた。相手のキーマンを自由にさせないディフェンスを講じる一方で、オフェンスの好機では臆することなく長い距離からのシュートやペイントエリアへのアタックといったチャレンジを続けていった。群馬戦では課題となっていたシュート精度も改善し、GAME2では3Pシュート成功率が60%に迫った。目の前のハードルを一つ一つ乗り越えたことで生まれた連勝だったともいえるだろう。

さらに、平尾はロボッツを支える多くの人たちが集まる場所で試合を行うからこそ、ホームでの勝利を目標に掲げている。世の中が、まだまだ収束が見通せないコロナ禍にあることも、少なからず影響を及ぼしているようだ。

「コロナ禍の中でも応援に来てくれるファンやブースターの方、スポンサーの方など、たくさんの人たちが僕達の背中を見て、『明日頑張ろう』とか、『今日のロボッツはよかったね』とか、いろんな思いを抱いて帰ってくれると思うんです。だからこそ、自分たちのホームは守らなくてはいけません。見に来てくれる人たちのために、自分たちができることをコートの中で一生懸命表現しているんです。」

ロボッツのファンやブースターが待ち望んでいた勝利。アリーナが歓喜に沸き立つ様子は、今後も選手たちを後押しし続けるだろう。

キーマンにフォーカスし、1手先へ

この2試合、ロボッツの選手たちは相手の先を行くことに注力していたように見える。特にディフェンスにおいて、その意識が強く見られた。ガード陣がまずボールマンディフェンスを徹底し、自由なパス回しを許さない。ボールを運ぶ間に福島のシューターたちが外角に陣取るが、試合の中で間合いを捉えたディフェンス陣が、高いプレッシャーを敷き始める。一方で、インサイドのビッグマンたちを相手取っても、#11チェハーレス・タプスコットや#31アブドゥーラ・クウソーがしっかりと体を当てて、安易にローポストへボールを持ち込ませなかった。結果的に、福島は個人のタフショットにおける精度や#15チリジ・ネパウェの突破力といった部分で勝負せざるを得なくなり、試合が進むほどにそれは点差となって現れていった。#2福澤晃平はGAME1の試合後、ディフェンス戦略をこう語った。

「福島さんの場合、ネパウェ選手がピックアンドロールからゴール下へ突っ込んでくるような状態になると、体も強いのでファウルで止めざるを得なくなります。そうなる前に、外にいる選手を中に入れさせず、もう一歩間合いを詰めるということを意識できていましたし、ネパウェ選手にボールが集まりすぎる展開も防げました。結果としてチームでのディフェンスの成果なのかなと思います。」

ゴール下でネパウェと何度となく攻防を繰り広げたクウソーも、GAME1を終えて「今日の試合はネパウェ選手をどう抑えるかにフォーカスし続けた結果」と、その手応えを語った。リチャード・グレスマンHCも、彼の働きを評価している。

「クウソー選手の働きは全体的によかったと思っています。オフェンスの能力が高い選手が揃っているロボッツにおいて、彼は、ディフェンスの影響力をもってチームに貢献してくれると感じていますし、それゆえに期待値は高く持っています。今節のゲームでも、ディフェンスで大きな影響力を発揮してくれたと感じています。」

一方で、2日続けて高い次元のプレーを見せ続けたオフェンスも、見逃すことはできない。質の高いプレー選択を常に行い、相手の隙はどこにあるのか、どこからなら相手を上回れるか。2日間のゲームで徹底的に探し続けた。特に、相手も改善点を見つけてプレーの修正をしてくるGAME2において、得点や点差を伸ばすことができたという収穫は大きいだろう。#27眞庭城聖は、福島のチーム力の高さを考慮した上で、こう語る。

「福島さんは決してこの点差ほどの差があるチームではなく、仙台さんや越谷さんという結果を残しているチームにも勝っています。ここまでの出来はオフェンスだけをみればいい傾向にあるなと思います。ボールがうまく回って、相手が的を絞りづらいオフェンスができ、それが2日目になって相手が修正してきた中でも継続できたということは、守りづらく効果的なオフェンスができている証しだと思います。」

待ち受けるアウェー連戦。試練の日々は続く

この12月、ロボッツにとっては大きな試練とも呼べる日々が続くことになる。その幕開けとなるのは、第9節まで12勝5敗、ロボッツと相星になっている仙台89ERSとのアウェー戦だ。それを皮切りに今月は9試合が行われ、うち8試合はアウェー。残ったホーム戦も平日開催の山形ワイヴァンズ戦(12月9日)とあって、強行軍ともいえるスケジュールだ。平尾は、そんな状況を粘り強く戦い抜こうと、このように話す。

「相手や自分たちの順位がどうこうという問題ではなく、次の節の1戦目にしっかりフォーカスする。そこで勝って、悪いところは反省して、次の日にいい形で戦えるように課題をクリアしていくのは理想だと思っています。アウェーが続きますし、タイトなスケジュールではありますが、しっかりと一戦一戦、一分一秒、どう戦わなければいけないか、コーチ陣や選手同士でしっかりとコミュニケーションをとりながら、戦っていきたいと思います。」

首位に立つ群馬を、わずかなゲーム差で追う状態は変わらない。だからこそ、この連戦をどのように勝ち進むかで、今後のリーグ戦の展望はどんな形にも変わるだろう。コンディションやパフォーマンスを維持し続けることには、大きな苦労が存在する。それでも、これは乗り越えなければならない試練だ。少し気が早いかもしれないが、少しでも上の順位、すなわちプレーオフが見渡せる位置で後半戦を迎えるためにも、目の前の一戦一戦をもぎ取る「覚悟」を、ロボッツ戦士たちに見せてもらいたい。

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