【AFTER GAME】 2020-21第32節 越谷戦(4/23~24)~連敗から何を得る。必要なのは成長~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE

越谷アルファーズとのアウェーゲーム2連戦。ロボッツはGAME1、序盤でリードを奪ったものの中盤以降で相手の猛烈な追い上げを許し、75-77で惜敗。GAME2では劣勢を跳ね返し、オーバータイムに突入する激戦を演じたものの、103-105で力負け。今シーズン3回目のカード連敗という結果となった。この負けから、何を収穫として終盤戦やプレーオフにつなげていくかが重要である。あの場で何が起こっていたのか、選手や指揮官の言葉から振り返っていきたい。

下げてはならないゲームへの集中力

「前日の練習でも状態が良くありませんでした。負けたことよりもゲームに対するアプローチに危機感を感じています。」

GAME1を終えたリチャード・グレスマンHCはそう語った。GAME1、序盤からディフェンス意識を高く持ち、リードを奪っていたロボッツは、10連勝の勢いそのままに越谷に対峙する。第1クォーターでリードを奪うと、相手を波に乗せないように注意を払いながらゲームを進めていた。後半に入ってもそれは変わらず、第3クォーターで越谷がターンオーバーを連発し、そこをロボッツがきっちりと突いて得点を重ねたこともあり、一時は15点までリードが広がっていく。しかし、ここからの戦いが様変わりしてしまった。越谷がディフェンスリバウンドを着実に奪い、攻撃を仕掛けていく一方、隙あらば#33クレイグ・ブラッキンズや#91落合知也など、インサイド陣も3ポイントシュートを打ち込み、またそれを決めていくことで波に乗っていった。ロボッツはチームファウルがかさんでしまい、思うような強度でのプレーができない。そしてゴール下でファウルを与えては、越谷がフリースローを着実に沈めて得点を重ねていく。わずか6分ほどで、試合は一転して越谷がリードを奪う形となった。#2福澤晃平は、その経過をこのように話す。

「リードが広がった時に少し緩んでしまった時間があって、シュートが単発になってしまったり、相手のリバウンドからブレイク、アタックされるところでファウルがこんでしまったりと、うちの悪いところである、劣勢になった時に耐えられないという部分が出てしまいました。連勝していた間は、劣勢になっても最後まで戦って逆転するようなこともありましたが、今日は審判などにも矛先が向いてしまい、自分たちがゲームに集中し切れていませんでした。」

戦う相手は、あくまで相手のチームや選手であり、そこにフォーカスしきれなかったことは少なからず影響はあるだろう。連勝が続いていた終盤戦において、#25平尾充庸など、選手たちに話を聞くと「好調の要因は、我慢ができるようになったことが大きい」と話す選手もいる。流れのスポーツであるバスケットにおいて、劣勢を耐えきるだけの我慢がなくては、勝てるはずのゲームも落としてしまうことになる。

「試合の最後、勝てるチャンスもあったと思うのですが、自分たちで勝利を手放したというか、もったいない負け方をしてしまったと思います。」

流れを相手に渡してしまう試合が多くなると、プレーオフに向けても暗雲が垂れ込めてしまう。少しの緩みが負けを呼ぶ。ロボッツのメンバーにとっては、このGAME1はこれ以上ない教材だったのではないだろうか。

猛追に見えた遂行力

GAME2は、序盤から越谷のインサイド陣に猛攻を許し、オフェンスでもなかなかロボッツの形を作りきれない。コートやベンチで、平尾がたびたびチームを鼓舞すべく声を張り上げていた。第2クォーター、点差だけを見れば引き離されてしまうことになるが、ここでロボッツのディフェンスが少しずつかみ合い始める。相手の攻撃を一本一本しのぎきり、自分たちの攻撃へとつなげていく。直接的に点差が詰まることこそなかったが、流れをこれ以上渡さないように奮闘する姿がそこにはあった。グレスマンHCは越谷の大黒柱である#5アイザック・バッツへのディフェンスを例に挙げ「十分ではなかった」としたが、そこを耐えたことが、試合終盤の猛追につながったのではとも見える。

越谷の12点リードで迎えた第4クォーターのオフィシャルタイムアウト明け。劣勢を強いられる中、ロボッツはここで試合を投げ出さず、むしろ全力で相対した。福澤、平尾、#13中村功平の3ガードを中心に、#11チェハーレス・タプスコットと#15マーク・トラソリーニを配置し、力強いディフェンスから試合を立て直す。オフェンスでも広いパスワークからテンポの速い攻撃で追いすがり、勝負どころでは中村の3ポイントも決まる。残り30秒ほどで、ロボッツは12点差を追いつき、試合はオーバータイムへと突入した。立役者となった中村は、試合後にこう語る。

「なかなか自分たちのいいペースや試合運びができなくて、ずっと苦しい展開でしたが、最後、追いつくまで粘ってやれたことは良かったかなと思います。」

オーバータイムの5分間、ロボッツは常に先手を取ろうと、果敢なオフェンスで越谷を突き放しにかかる。1ポゼッション差で、一つのミスも許されない神経戦が繰り広げられる中、タプスコットがスティール。その瞬間、越谷の#24チャールズ・ヒンクルがアンスポーツマンライクファウルを犯してしまう。ロボッツにとっては願ってもない瞬間だったが、タプスコットは与えられたフリースロー2本を外してしまう。掴みかけた流れが、一転して越谷の手にわたってしまった。

フリースローが1本でも入っていれば、その後の攻撃を決めていれば。あの場面を巡って、様々な想いは尽きないが、これがプレーオフの場面でなくてよかったと考えることもできる。1本のシュートを打ちきる、決めきることが大事なのだと、改めて思い直すきっかけになったはずだ。試合を終えた中村の言葉からも、それがにじむ。

「終盤でシュートを決めたことで追いついたという言い方もできますが、前半から決めきれていれば、そもそもこんな展開にもなっていなかったはずです。試合の最初から、終盤なんだというメンタルを持ってシュートを打てるようにしていかないといけないなと思います。」

この敗戦が、シーズン最終盤のロボッツにどんな変化を与えるか。全ての逆境を乗り越えて、もう一度チームとして進まなければならない。

ホーム最終節、実り多き勝利を目指して

連勝は止まったが、ここで負けを受け止めすぎて、負のスパイラルに陥ってもいけない。まだリーグ戦は残されているからだ。次節の仙台89ERSとのホームゲームを制し、再び弾みとしなくてはならない。ロボッツも仙台も、互いに順位が確定した状況ではあるが、モチベーションをしっかりと保って激しい戦いを期待したい。

仙台は、終盤戦の激戦を支えた#2ルブライアン・ナッシュがケガで離脱。司令塔の#22笹倉怜寿も直前の群馬クレインサンダーズ戦でプレーしないなど、コンディション面での不安要素を抱えている。ただ、そうした要素を、ロボッツが必要以上に余裕と捉えてしまってはいけない。プレーオフでも対戦の可能性のある仙台を相手に、「集中力」と「遂行力」をフルに活かした戦いを期待したい。

ロボッツは、ここまでチームを鼓舞し、引っ張り続けてきたキャプテン、#25平尾充庸の力強さに期待したい。チームの良し悪しを見つめ、「覚悟」と「厳しさ」を掲げての戦いを繰り広げてきた彼にとって、ひとつの集大成のようなゲームとなる。ホーム最終節を勝ちきって、ロボッツファンを笑顔にさせるようなゲームを期待したいところだ。

泣いても笑っても、レギュラーシーズンは残り3試合。プレーオフに向けて、もう一段高いレベルでの戦いを演じ、不安を吹き飛ばしてもらいたい。

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