【AFTER GAME】 2022-23 北海道戦(10/26)〜選択と遂行を続けるも、ハードな40分を過ごしてこそ~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA 写真:茨城ロボッツ photo by IBARAKIROBOTS,B.LEAGUE

今シーズン初の平日開催となる試合、ロボッツはアダストリアみとアリーナにレバンガ北海道を迎えた。対戦回数の多い同地区との対戦は今季初めてのこと。さらに言えば、ロボッツがB1昇格以来、2シーズン目にして初の「貯金」状態もかかった試合だった。試合は前節好調だった#25平尾充庸が欠場する中、後半に入って絞り込まれたインサイドを切り開けず、北海道の逆転を許す。そのまま劣勢を跳ね返せないまま、80-93で敗戦。連勝ストップを受けて、チームに改めて必要なものを考えていく。

単調、というのも少し違って

この試合の命運を分けたのは、何を言っても3ポイントシュートの成功率だった。ロボッツは試合全体で21.7%にとどまった一方で、北海道は#0橋本竜馬や#7中野司などが高確率でシュートを沈め、チーム全体では42.9%に達していた。3ポイントシュートが低調だったものの、ロボッツは序盤からペイントアタックでの得点が伸びる。特に古巣対戦だった#8多嶋朝飛や#17山口颯斗のフローターシュートがよく決まり、ペイントエリア内での得点は、前半だけで30点に達していた。

しかし、後半に入るとこの部分での得点も伸び悩む。北海道・佐古賢一HCは、後半に向けてこんな指示を送っていたという。

「フローターのように、中間距離からのシュートを打たれてしまっていたので、リアコンテスト(後ろからでも手を伸ばして打たせない)を必ず入れに行くように指示をしていました」

このディフェンスの修正が効いて、ロボッツが後半にペイントエリア内で決めた得点は、18得点とほぼ半減。まず北海道がディフェンスで先手を決めた。

ならばと、ロボッツはディフェンスのズレを作ってシュートを狙う。ロボッツは#1トーマス・ケネディや#2福澤晃平らが、前が開けていた場合、あるいは#21エリック・ジェイコブセンなどのスクリーンに入り込めていれば、迷わずシュートを選択する。特に今シーズンのロボッツのバスケットスタイルを考えれば、これは決して間違ったプレーではなかったはず。さらに言えば、締め込まれたインサイドでの相手ディフェンスを少しでも広げさせて、その後の優位を作るためにも、外角のシュートが決まる、というところを見せなくてはならなかった。

ただ、そのシュートがリングに嫌われていく。さらに、この試合ではジェイコブセン以外に、個人でのオフェンスリバウンドを獲得できておらず、落ちたシュートはことごとく北海道ボールとなる。ジワリジワリと、試合は北海道のペースになっていった。試合を振り返ったリチャード・グレスマンHCはこう語る。

「3ポイントの確率が上がらず、21.7%では厳しいものがあります。(チームの方向性とは違っていなかったはずと問われ)仰る通り、チームとしてやるべきことをやりにいったわけですが、オフェンスリバウンドの獲得もたった4本です。シュートが決まらないならば、ファイトが必要になります。例えば三遠戦(10/16)のようにフリースローで得点を稼ぐ…というところもできませんでした。オフェンスリバウンドを取れれば、こういったチャンスも増えていくわけですが、それもできませんでした。今日の全体を振り返れば『Extra effort(あと一歩の努力)』が足りなかったと思えます」

この試合の前半、人とボールがよく動く試合運びをたびたび見せて、アウトサイドのシュート確率が低い中でもリードを奪っていた。相手の修正に対して、もう一つ早く判断して相手の策を封じるか、もう一段上を行くプレーを選択して、また相手に考えさせるか。これを続けてこそ、勝利を得られるはずで、改めて目の前の試合で1勝を挙げることに、決して近道がないことを示されるような40分だったのではないだろうか。

”Killer Instinct”を携えて

敗因を語る中で、グレスマンHCの語気がさらに強くなっていく。この試合を見た者の気持ちを、ある種代弁しているかのようだった。

「北海道さんが私たちよりもいろいろな面で勝っていた、それがまず試合を分けた大きな部分です。一方、私たちには三遠戦や横浜BC戦で見せていたような、”Killer Instinct”がなかったのではと思えて、今日の早い段階で難しいゲームになる予感がしていました」

“Killer Instinct”で辞書を引くと「手強さ」や「負けん気」、あるいは「情け容赦のなさ」と訳される。これまで、グレスマンHCが繰り返し述べてきた「Urgency(危機感・切迫感)」にも通ずる言葉であり、平尾が常々述べる「40分間闘ってこそ」ということなどを意味するとも言える。いずれにせよ、そうした部分が足りなかったのでは、と指揮官は見ているようだ。具体的な例を挙げて、グレスマンHCの言葉が続く。

「ディフェンスにおいて、相手のターンオーバーをどんどんと誘発するようなエナジーというのを今日はなかなか発揮することができていなかったと思います。自分たちとしてはここから学ぶしかありませんし、我々にはエラーを起こしていられる余裕はないし、勝利にリラックス場合ではないのだと、もう一度理解して戦いに臨まなくてはならないんです」

強烈な個性を持った横浜BC戦での連勝は、確かにチームに対しては好材料になっただろう。そして、その直後に決して上り調子ではなかった北海道との対戦。そして、シュートタッチを含めて決して内容が万全でないながらも、前半をリードして終えた。少しずつ、少しずつではあるが、チームとしてのベクトルがぼやけてしまったのかもしれない。

開幕してからの1ヶ月を4勝5敗で終えたロボッツ。昨シーズンとの比較を考えれば、かなり早いペースで勝利を手にしていることは間違いない(昨季のシーズン4勝目は12月25日の信州ブレイブウォリアーズ戦)。ただ、目標はそこではないはず。改めてグレスマンHCは警鐘を鳴らす。

「今シーズン、ここまでの4勝は決して簡単なものではなかったです。今日の試合は、これまでがそうであったことを、頭を打たれて気付かされるような展開でした。自分たちには明らかな課題がたくさんあるわけで、コーチ陣とも考えて、何が一番影響力をもたらせられるか絞り込みつつ、チームが良くなるようにやっていくことが必要です」

幸いにして、リーグ戦はここで一度中断期間を挟む。再開初戦で、どのようにエンジンをかけて臨めるかを心待ちにしたい。

若武者なりの苦労も見えて

この試合で一際「らしさ」を見せ続けていたのが#17山口颯斗だろう。初の古巣対戦に燃えた男は、場面場面できっちり得点を奪っていったほか、昨季にポジションを争った中野や、相手の切り札である#2ドワイト・ラモスなどと激しいマッチアップを繰り広げた。

「本当に気合いが入っていましたし、『負けたくない』気持ちをコートで表現できたとは思います。味方の流れが止まり始めた時もあったのを考えると、もっとシュートを打ちに行って、チームを引っ張ることができれば、違う流れになったのかな、とも思います。『もっと引っ張っていく』というのを大事にしないといけないのかな、と思わされました」

「自分が引っ張る」というのは、このチームの合言葉である「Unselfish」を考えたときに一見矛盾を生むかもしれない。ただ、彼が苦境を引っ張るという姿が、チームにもたらすものは計り知れない。「若い選手からの底上げ」というのは、これまでのロボッツにおいては決して見逃せない課題だったわけだが、この心意気がある限り、存分に暴れてほしいとさえ思える。かつて、B2時代に#29鶴巻啓太が定位置を獲得しかけた際、ポジションを争っていた小林大祐(現・アルティーリ千葉所属)は「全力で行け、ミスしても尻拭いはする」とむしろ背中を押したという光景があった。今のロボッツは、彼が退くことになっても、ケネディや鶴巻、時には#13中村功平など、先輩たちが続々と待ち構えている。彼が活躍していればそこを上回ろうという気概も生まれるだろうし、普段からそのメンタリティーを出し続けることで、調子が悪くても「彼の分も」となることもできる。その循環に乗せられた段階で十分に「Unselfish」の現れのはずだ。これからも、それは決して折れることなく見せ続けていてほしい。

「シェイ(タプスコット)やエリック(ジェイコブセン)も含めて、プレータイムの長い選手にとって中2日というのは疲れもあったと思うんです。僕も疲れていないわけじゃないですけど、心身ともに元気な状態ではあったし、僕がボールを持った場面でピックアンドロールからズレを生むことができていました。それだけに、シュートの成功率が大きな鍵になってしまいました。チームとして『決めきる』というのは重要だったように思えます」

試合の流れについて尋ねると、山口はさらにこう話す。

「チームとしては良いシュートを作れていたはずで、『決めきるだけ』という部分で地力というか、我慢の差のようなものが出てしまいましたし、僕らが我慢できなかったのかな、と思います。個人としては自分でボールを運んでのシュートが決まっていたので、相手選手も寄せてきていたんですけど『落ちるまでシュートを打ち続ける』ことができていれば、もっとチームを勢いに乗せられたのかな、と思います」

若いなりに、考え、実行し、また新たな壁を見つけ出す。今の山口にとってみれば、どんなことでも成長材料になるはずだ。

バイウィークに「全てを見直す」

先述したように、天皇杯への参加や、日本代表の活動期間が設定されていることもあって、B1のリーグ戦は一度中断(バイウィーク)を迎える。バイウィーク中の過ごし方についてグレスマンHCに問うと、こう断言する

「全てを見直さなくてはいけません。自分たちがどんなプレーをするべきなのか、まずはそれぞれが自分自身を理解して、より速いプレー、ハードなプレーを見せていかなくてはいけない。攻守両面に多くの課題がある」

3週間以上が空いての次戦は、アウェーでのサンロッカーズ渋谷戦だ。今回の会場は、ロボッツが初めてプレーをする青山学院記念館(昨シーズンのSR渋谷ホームの試合は墨田区総合体育館にて開催)。若い日本人選手と、経験豊富な外国籍選手を組み合わせて戦い、大黒柱の#34ライアン・ケリーが不在の試合がありながらも5勝4敗・中地区3位で10月を乗り切った。

注目選手は、昨シーズン途中から在籍している点取り屋の#5ケビン・ジョーンズだ。幅広いシュートレンジから高確率でのシュートを決めることができ、10月16日の千葉ジェッツ戦ではBリーグ史上2人目となる、1試合50得点をマークした。1試合平均得点も21.4と、現在リーグ2位の数値を残す。オーバータイムでの出場も厭わないタフネスと、それを可能にするためにファウルを犯さないクレバーさもある。ロボッツ戦でも厄介な存在になることは間違いないだろう。

ロボッツとしては、そろそろ#5LJ・ピークに目覚めてほしいころ。ボールの出し入れの判断や、プレーの選択などにおいて、コート上で戸惑うように見える場面もあったピーク。この中断期間で、今、自らが何を必要とされ、何を実行できるのかを見直した上で戦わなくてはならない。そのプレーが脅威になり得るのは、Bリーグファンであれば多くの人間が知るところ。タプスコット、ジェイコブセン、ケネディの負担軽減を含めて、本領発揮が待ち望まれる選手だろう。

間違いなく、B1での戦いのレベルが上がっている今季のロボッツ。長所と短所を今一度洗い出し、11月以降、次々に待ち構える上位対決を戦い抜いてほしい。

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