取材・文:茨城ロボッツ text by IBARAKI ROBOTS
写真:茨城ロボッツ photo by IBARAKI ROBOTS
茨城ロボッツが皆さまと共に取り組む社会貢献活動「M-HOPE(エムホープ)」の柱のひとつが「M-HOPE TICKET」です。2025-26シーズンもパートナー企業の皆さまの温かなご支援により、県内各地の福祉施設や団体の皆さんがホームゲームでの観戦を楽しむことができました。
では、こうしたプロスポーツ観戦という非日常の体験は、福祉の現場にどのような変化や感動をもたらしているのでしょうか。
本記事では、茨城県社会福祉協議会、施設職員、アリーナで観戦した方々の声を通して、M-HOPE TICKETが紡いだ今季の軌跡をお届けします。
【特別インタビュー】スポーツ観戦が広げる新たな福祉の可能性~茨城県社会福祉協議会~
地域福祉のネットワークを支える茨城県社会福祉協議会県(社協)は、M-HOPE TICKETの趣旨に共感し、県内の福祉施設・団体に向けてチケット利用の輪を広げてくださっている心強いパートナーです。
今回は、福祉のまちづくり推進部長の中村 英一様に、生活を「守る」従来の福祉から一歩踏み込み、子どもたちの心を「育てる」支援や、余暇活動の可能性についてインタビューを実施しました。
スポーツが持つ「人を繋ぎ、地域に活力を生む力」への期待や、福祉のプラットフォームを担う立場から見た社会的意義をたっぷりと語っていただきました。
――初めに、M-HOPEチケットについてお伺いします。茨城県社会福祉協議会として非常に積極的に協力されていますが、本プロジェクトを知った経緯と、賛同した理由を教えてください。
中村部長:茨城ロボッツの社会貢献活動を知る中でこのプロジェクトをご紹介いただいたことがきっかけです。県社協としては試合観戦はもちろん、プロスポーツという「非日常」に触れる機会が子どもたちにとって極めて貴重な体験になると考えています。日頃、私たち福祉の世界では「日常の生活支援」が主となりますが、成長過程にある子どもたちにとって、こうした非日常の体験を提供することは非常に重要です。その点に深く共感し、ぜひ県社協としても招待の橋渡しをうまくさせていただきたいとご相談をさせていただきました。
――「生活を支える支援」がある一方で、あえて「プロスポーツ観戦」という体験を届けることに注力される狙いはどこにあるのでしょうか。
中村部長:プロの生の試合を観戦することは、応援する楽しさや会場の一体感を味わうだけでなく、選手への「憧れ」を抱くきっかけになるなど、多面的な価値があると感じています。特に子どもたちにとっては「また自分も頑張ろう」という前向きな気持ちを引き出す原動力になるのではないでしょうか。こうした体験がその後の子どもたちの生活や成長に良い影響を与えると確信しているからこそ、私たちは積極的にM-HOPE TICKETのご案内を行っております。
―― 県内の福祉現場に近い県社協が窓口を担うことで、現場の職員の方々にはどのような安心感を届けられていると感じますか。
中村部長:社会福祉協議会は日頃から各施設や関係団体と密接に繋がっており、現場のニーズや状況を常に把握しています。必要としている人に必要なことを届けるという活動を常日頃から行っているため、現場の方々も安心して利用できているのではないかと考えております。施設の方々は日頃から社協と繋がりがあるため、私たちが窓口であるということが安心感に繋がっています。その結果として施設側も参加がしやすく、「自分たちもぜひ行ってみたい」という動きに繋がっているのではないかと感じています。
――スポーツ観戦をはじめとした福祉における「余暇活動の支援」について、どのような可能性を感じていらっしゃいますか。
中村部長:これまでは生活を「守る」支援を重視してきましたが、今後は生活の「質」や心の豊かさを高める支援も必要不可欠であると考えています。今回の活動は子どもたちに夢や希望を与え、前向きな気持ちを育むことができるものです。憧れや活力を生むこの活動は、生活を「守る」ことと、子どもたちの心を「育てる」という、いわば「攻め」の支援の両立が可能になると考えています。そうした可能性が、スポーツ観戦には秘められています。
――「スポーツを通じて地域を元気にする」というロボッツの理念に対し、地域福祉の課題解決を担う立場からどのような期待を寄せていらっしゃいますか。
中村部長:スポーツを通じて地域を元気にするという理念は、私たちが目指す「地域福祉(地域を良くする仕組みづくり)」と非常に親和性が高いと感じています。スポーツには
「人を繋ぐ力」や「地域に活力を生む力」があります。ロボッツのような存在が地域にあることで、福祉の枠を超えた「新たな連携」が生まれることに、大きな期待を寄せています。
――多くの施設・団体の方々にM-HOPE TICKETをご利用いただいていますが、印象に残っているエピソードはありますか。
中村部長:これまで観戦に来た施設からは「子どもたちが当日を本当に楽しみにしていた」あるいは「帰ってきてからも興奮して試合の話をしていた」といった声をいただいています。中には今回が初めてのプロスポーツ観戦だったという子どもたちもいたようで、その鮮烈な体験が強い印象として心に残っているようです。現場の皆様の声を通じて、改めてこの活動の意義を深く実感しています。
――より多く必要としている方々へチケットを届けるために、運用面で工夫されているポイントを教えてください。
中村部長:より多くの方々に観戦の支援を届けるため、社会福祉施設の皆様への丁寧な案内と情報共有を徹底しています。また、利用状況を詳細に把握しながら特定の施設に偏りが出ないよう調整を行ったり、初めて利用する施設にもしっかりと機会が行き渡るよう配慮したりしています。常に現場の声に耳を傾け、柔軟に対応することを心がけています。
――本活動を一過性のもので終わらせず、地域に定着させるために目指している展望はありますか。
中村部長: 私たちは、この取り組みを一過性の支援ではなく、地域に根付いた「支え合いの仕組み」として定着させたいと考えています。観戦体験をきっかけに、地域との繋がりや交流がさらに広がるような展開を期待しています。福祉とスポーツが連携することは、新しい地域づくりにおける大きな可能性の一つになると信じています。
――今後、ロボッツや他企業と共に挑戦してみたい「新しい支援の形」があればお聞かせください。
中村部長:例えば、選手の方々との交流機会やスポーツ体験教室など、観戦に留まらない取り組みも考えられるのではないでしょうか。企業の皆様ともさらに連携を深め、子どもたちや福祉関係者の皆様が地域の中で様々な体験を重ねられる機会を、より一層広げていきたいと考えています。
――最後に、読者の皆様や活動を支えるパートナー企業へメッセージをお願いします。
中村部長:M-HOPE TICKETをはじめとした福祉関係者の招待事業は、多くの方々のご理解とご協力があって初めて成り立つものです。観戦を通じて生まれる子どもたちや福祉関係者の笑顔、そして前向きな気持ちは間違いなく地域全体の力になります。今後も茨城ロボッツをはじめとする様々なパートナーの皆様と連携しながら、誰もが安心して暮らせ、そして楽しみを持って生活できる茨城を築いていきたいと考えています。引き続き、温かいご支援とご協力をお願い申し上げます。

【利用施設インタビュー】アリーナでの観戦体験が子どもたちの自信につながる~ウィズユー・ひたちなか~
プロスポーツ観戦という「非日常」の体験は、子どもたちの日常にどのような変化をもたらしているのでしょうか。
4月18日(土)にアダストリアみとアリーナでの試合観戦に訪れた、放課後等デイサービス「ウィズユー・ひたちなか」の職員の皆さまにお話しを伺いました。
- M-HOPE TICKETを利用し、観戦を希望された動機についてお聞かせください。
-
福祉施設の日常において、元々バスケットボールに強い関心や動機を持たない子どもたちを連れて、自発的にアリーナへ足を運ぶ機会を創出することは容易ではありません。そのような中、以前当施設に勤務していた職員から「M-HOPE」という素晴らしい観戦招待制度の存在を共有されたことが、子どもたちに「本物の体験」を提供する大きな契機となりました。
- 福祉現場の視点から、チケット代や交通費といった経済的負担、および運用上の課題についてどのように感じていらっしゃいましたか?
-
利用児童の当日の体調や、個々の特性による急な予定変更(不参加や試合途中での退室など)が生じる可能性を考慮すると、チケット代等の費用負担が伴う一般観戦は、どうしても福祉現場として二の足を踏んでしまいます。本制度のおかげで、経済的・心理的な不安に躊躇することなく「まずは貴重な経験をさせてあげよう」と、施設としても保護者の皆さまと共に安心して一歩を踏み出すことができました。
- 試合中における子どもたちの集中力や、観戦姿勢に関する変化はいかがでしたか?
-
普段の施設生活では長時間の着座が少し苦手なお子さんもいらっしゃいますが、「プロの選手を全力で応援する」という明確な目的意識を持つことで、1試合を通してしっかりと着座し、観戦を全うすることができていました。アリーナの状況を能動的に理解しようと前のめりになっていく、子どもたちの驚くべき集中力の持続と向上には、職員一同深い感銘を受けました。
- プロスポーツの観戦体験は、競技への理解や関心の向上につながっているとお考えでしょうか。
-
画面越しの試合観戦とは異なり、コートの床を蹴る音やボールの迫力を間近に感じたことで、バスケットボールという競技の本質的な楽しさはもちろん、大勢の観客と空間を共にして声を揃えて応援する「集団活動」の喜びを深く実感してくれた手応えがあります。プロの卓越した技術に直接触れたことは、子どもたちのスポーツに対する知的好奇心を刺激する非常に有意義な機会となりました。
- 試合の進行に伴い、子どもたちの表情や行動にどのような具体的な変化が見られましたか?
-
今回が初めてのプロスポーツ観戦となる児童が多数を占めていましたが、試合が開始されると、プロの圧倒的なパフォーマンスに一瞬で魅了され、その顔つきが生き生きとした輝かしい表情へと変容していきました。会場の熱気と一体になりながら、心から楽しそうに興奮し、声を枯らして全力で声援を送り続ける姿は、子どもたちの秘められたエネルギーを感じさせる大変印象的な光景でした。
- アリーナで観戦し応援を共にする体験にはどのような価値があるとお考えですか?
-
福祉現場には、大人数が集まる空間やアリーナ特有の音響が少し苦手な特性を持つお子さんも在籍しています。しかし、周囲のサポートを受けながらそうした心理的障壁を乗り越えてイベントに参加し、1試合を最後まで見届けたという「達成感」は、本人の将来に向けた非常に大きな自己肯定感(自信)へと繋がります。また、その生き生きとした姿は、保護者の皆さまにとっても我が子の新しい可能性や成長を実感できる貴重な機会となっています。
- コート上で真摯にボールを追いかける選手たちの姿勢は、子どもたちにとってのロールモデルとして機能していると感じられますか?
-
間違いなく、子どもたちの素晴らしい自立心の原動力になっています。最後まで決して諦めることなくコートを駆ける選手たちの真摯な姿は、子どもたちの目に真の「かっこよさ」として映り、強い精神的衝撃として心に刻まれていました。その姿を間近で体感したことで、子どもたちの心の中に「自分もあきらめずに、日々の課題や練習を頑張りたい」という前向きな心理的エネルギーが創出されているのを実感しています。
- このような観戦体験は、今後の日常生活や支援にプラスの影響をもたらすと思われますか?
-
困難に立ち向かう選手の姿に触れた経験は、子どもたちが日常生活において「自分も一歩を踏み出してみよう」と主体的に行動する力になります。昨季に観戦した際も、帰設後に「ゴーゴーロボッツ!」と元気にアリーナの再現をして遊ぶ姿が見られ、集団内での共通の話題やコミュニケーションが劇的に増加しました。夢中になれる健全な対象が新しく増えたことは、子どもたちの精神的な安定にもつながっています。
- 最後に、M-HOPE TICKETの取り組みについて、メッセージをお願いいたします。
-
アリーナでの観戦を遂げたという達成感は、未来の社会を生きる子どもたちの確固たる自信となり、茨城ロボッツ様とつながったことで、閉ざされた世界から出ていく未来への扉が開かれました。様々な経済的・運用的ハードルが存在する中で、このような社会体験をプレゼントしてくださるパートナー企業の皆様のご支援は、まさに地域の子どもたちの未来を動かすエンジンそのものです。現場を預かる職員一同、皆さまの温かい社会貢献活動に心より感謝申し上げます。

【M-HOPE TICKET利用者の声】コートから届いた明日へのエネルギー
子どもたちをはじめ、M-HOPE TICKETを通じてアリーナの熱狂を体感した利用者たちのリアルな声をお届けします。
選手たちの諦めない姿勢や卓越した技術に刺激を受け、「もっと練習して上手くなりたい」や「明日からまた頑張ろう」と未来へのエネルギーを燃やした皆さんの特別な体験談を、ぜひご覧ください。
シュートが決まるかなってずっとドキドキしていました。みんなで『頑張れー!』と叫んで最高に嬉しかったです。私も選手みたいにたくさんシュートを決められるようになりたいです!小学生/女子
選手が一生懸命ボールを追いかける姿がとってもかっこよかったです。僕も選手みたいなかっこいい大人になって、たくさん試合に出場したいです。小学生/男子
初めて試合を観ました。ドキドキ・ワクワクして楽しかったです。周りの友だちと一緒に大きな声を出して応援できたのが、すごく楽しかったです。小学生/女子
プロの試合は迫力がすごかったです。選手のシュートやドリブルを見てあんなプレーをしたいと思いました。ドリブルシュートをもっと練習して上手くなりたいです。小学生/男子
いつもM-HOPEを利用させてもらっています。今日の試合では、後半の#13中村功平選手のディープスリーが本当にかっこよかったです。高校生/男子
プロの選手がシュートを打った後の入り方や、リバウンドを取るためのポジショニングをしっかり考えているなと感じ、自分たちの練習のとても参考になりました。高校生/男子
水戸市社会福祉協議会を通じて、M-HOPE TICKETを利用させていただきました。
私たち障がい者は、このようなスポーツ観戦の機会は、ほとんど無いのが実情です。テレビでは感じられない会場の雰囲気や、プロアスリートの迫力あるプレー・臨場感、さらにテ
レビでは見られないハーフタイムショーなどに驚きながら、楽しく観戦することが出来ま
した。また、会場ではスタッフの皆さまに親切にしていただき、ご苦労に敬意を申し上げます。非常に楽しい一日を過ごすことが出来ました。ありがとうございました。車いす利用者/女性
プロバスケットボールの試合を観戦する機会をいただき、本当にありがとうございました。私は昔からプロスポーツ観戦が大好きで、今回もとても楽しみにしていました。
これまでは介助者の母と一緒に野外での試合を観ることが多かったのですが、アリーナでの観戦は会場全体の一体感がすごくて驚きました。
車いすのままで周りを気にせず、ゆっくりと試合に集中できたことも、とてもありがたかったです。車いす利用者/男性
現場でプロのプレーを観ることは、選手たちにとって大きな刺激になります。『こうやってリバウンドを取るんだよ』といった技術をプロの姿を通して伝えることで、指導への納得感が増します。チケット代も上がっている中、こうした機会は本当にありがたいです。障がい者バスケットボールチームスタッフ/女性
選手が頑張る姿や会場が一体となって応援する様子は、子どもたちにとって『こうやって頑張るんだよ』と教えられる最高の教材です。B2時代から見ているチームの成長を子どもたちに見せられるのは、スポーツが与えてくれる大きな力だと思います。施設職員/男性
地元にも数多くのプロスポーツチームがあることを知り、大人になった時にスポーツ観戦が趣味のひとつになることもあるかもしれません。選手、チア、演出、チーム・会場スタッフなど様々な仕事があることを知り、将来の選択肢が増えると良いと思います。施設職員/女性
M-HOPE TICKETが育む 茨城の豊かな未来
M-HOPE TICKETは、試合観戦という枠を超えて、子どもたちをはじめとした利用者の心の成長や、バスケットボールへの関心・意欲の高まりなど、多面的な価値を生み出してきました。
アリーナで同じ時間を分かち合った経験は、日常に戻ったあとも、小さな自信や前向きな一歩につながっています。
こうした貴重な機会を支え、利用者の皆さんが未来へ向かって踏み出す「一歩」を後押ししてくださったパートナー企業の皆様に、心より御礼申し上げます。
皆様のご支援は、これからも福祉とスポーツが手を取り合い、茨城の未来を動かしていくための大きなエンジンであり続けます。





