[選手対談6] 世界を知る二人がロボッツの 新たなカルチャーをつくる

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※本記事は、2019年9月21日刊行の『2019-20 IBARAKI ROBOTS OFFICIAL FANBOOK』に掲載したものです。

スペインリーグのリバウンド王、大学時代での全米制覇とNBAでのプレー経験。
素晴らしい経験をもった二人の外国籍選手がロボッツにやってきた。
世界を知る2人がなぜロボッツを選んだのか、そしてここで何を成し得たいのか。
すべてが詰まった読み応えのあるインタビュー。ぜひお楽しみください。
インタビュー・文=鳴神富一 取材日=2019年8月8日

目次

日本での新しい挑戦を渇望した”勝ち方を知る”2人

ーニック選手は昨シーズンスペインリーグでリバウンド王にも輝いた中、どうしてロボッツでプレーしようと決めたのですか。

ニコラス・カナー・メドリー(以下ニック) スペインリーグが終わった5月に自分のエージェントから連絡がありました。自分のエージェントがトニー(アンソニー・ガーベロットヘッドコーチ)と非常に親しい仲で、彼が経験豊富なリーダーとなるベテランを探しているということを聞きました。加えて、ロボッツが目指すビジョンやB1に昇格してトップで戦いたいという意向も聞くことができ、とてもエキサイティングな気持ちになりました。スペインでの9シーズンを含め、13シーズンのヨーロッパでの経験がありましたが、日本での新しいチャレンジに対して自分自身強い関心を抱くことができたので、加入を決意しました。

ーチェフ選手は大学時代のビラノバ大学で全米制覇して、NBAでのプレー経験もあります。その上で日本という国、そしてロボッツを選択した理由は何でしょうか。

ダニエル・オチェフ(以下チェフ) アジアのマーケットで中国の話はよく聞いていましたが、日本という国は自分にとっても新鮮な経験になると感じました。さらにいうと、知り合いの選手が既にBリーグでプレーしていて、いろいろと話を聞くができました。その上でニックと同じように日本で新しい経験がしたいと思った、それが大きな理由です。

ーいろいろな選手から話を聞くことができたと伺いましたが、どんな選手とコンタクトとったのですか。

チェフ 琉球ゴールデンキングスのジャック・クーリーやレバンガ北海道のダニエル・オルトン。あとは昨シーズン仙台89ERSにいたタイラー・ハリスですね。主に日本の文化や生活について聞きました。日本のファンはバスケを愛しているし、チームもいろいろとサポートしてくれると言っていたことが印象に残っています。

ニック 実は自分も知り合いがいます。信州ブレイブウォリアーズの栗野譲アシスタントコーチです。彼はすごく良いスカウティングをすると思います。妻がいま妊娠しているので、彼の奥さんの経験や、病院での対応について聞いていたんですが、非常に対応が良いと聞いているので安心しています。いま、一緒に来日して暮らしていて。日本で出産するんです。

ーそれは楽しみですね、もう性別とかお名前とか決まっているのですか。

ニック 女の子です。実は名前も日本に来る前から決めていて、「ジェイド(Jade)」といいます。日本語にすると翡翠(ひすい)っていう宝石の名前と聞きました。素敵な名前だと感じています。

ー日本に来て、すでに覚えた日本語や、体験した日本食はありますか。水戸納豆はまだ体験していないと聞いていますが。

ニック 刺身や寿司、和牛も堪能しました。茨城は海が近いので、けっこう魚は食べますね。あと親子丼が美味しかった。日本語は「こんにちは、ありがとう、おはよう」くらいかな。

チェフ 来日した初日にうどんを食べに行きました。あのちょっと太麺な感じがすごく気に入りました。日本語に関しては「1(いち)、2(に)、3(さん)、4(よん)、5(ご)」は言えます!

自分自身の強みを活かしてチームを勝利に導く

ー今シーズン、チームは「B2優勝、B1昇格」という目標を掲げています。そのためにそれぞれチームの中でどのような役割を担おうと考えていますか。

ニック 身体能力を活かして攻守両面でチームに貢献できると思います。チームには素晴らしいシューターやバスケIQの高い選手も揃っています。さらにトニーはバスケを良く理解していて、非常に素晴らしいコーチです。チームメイトの長所を理解しているので、自分自身の良さを活かして、確実にこのシーズンは成功できると確信しています。

チェフ オフェンスではニックがアウトサイドでもプレーできるので、自分がインサイドでの強さを効果的に発揮できると信じています。ディフェンスでは身長を活かして、ブロックショットやリバウンドで大きな助けになると感じています。ニックはかなり経験があるので、彼と二人でインサイドで相手オフェンスをおさえるなど、貢献していきたいですね。

ーニック選手のスペインでの経験、オチェフ選手のNBAでの経験。お二人からみて、それぞれ日本バスケに対してはどのような印象をもっていますか。

ニック 映像で何試合か見たレベルですが、NBAやスペインリーグなど世界最高峰のリーグと比較するとフィジカルの強さやタレントレベルの差はあるかなと感じています。現実的な話として、Bリーグのレベルが低いと言っているわけではありません。実際に評判は世界でも非常に上がってきていて、さらに、日本全体のレベルも上がってきています。これからますますレベルが上がっていくと確信しているので、ここで戦えることは非常に楽しみです。

チェフ 何が違うというと考えるよりも自分自身の能力で実際に何ができるのかということを注視しているので、そこまで日本とNBAとの違いを考えたことはなかったですね。

ーニック選手はリバウンド、チェフ選手はインサイドでの強さが特徴的です。その長所を継続させるためにどのような努力をしてきたのでしょうか。

ニック チェフが先ほど「自分自身の能力で何ができるか」と言っていましたが、まさに僕にとっては、それがリバウンドです。スペインにいた昨シーズン、本当にリバウンドを頑張ろうと集中していて、結果としてリバウンド王になりました。やはり全身全霊を尽くして、自分のやるべきことを遂行するのが大事だと思います。ヨーロッパには非常に素晴らしい選手たちがいて、選手枠に関してもかなり限られています。その状況で自分自身の良さを確実に表現しないといけませんでした。

チェフ 自分自身が子どものころに、コーチからはとにかくディフェンスとリバウンドを頑張りなさいと言われていて、そうすればチャンピオンシップを獲得できると指導されてきました。コーチに言われていたことをできるようになるために、自分自身でリバウンドをとる方法や、ディフェンスで相手をおさえる方法をずっと模索してきました。さらに様々なコーチからアドバイスや良い指導をしてもらったからこそ、いまの自分があります。

ーロボッツの話から少し離れますが、世界を知るお二人がいままでの人生の中で一番印象に残っている試合を教えていただけませんか。

ニック メリーランド大学での一戦です。2004-05シーズンに強豪のデューク大学をアウェーで破って、自分たちが最終的にそのシーズン、カンファレンスチャンピオンに輝きました。デューク大学のホームコートで勝利を収めるのは非常に難しいと言われていて、あの試合は痺れましたね。マッチアップしたのがNBAでも活躍しているJ・J・レディック(ペリカンズ)だったけど、一生懸命ディフェンスしたのを覚えています。

チェフ やはりビラノバ大学で全米チャンピオンに輝いたゲームはもちろんですが…それ以外だと、ルーキーで迎えたNBA 2016-17シーズンでのプレーオフ、セルティックスとの第6戦です。あの試合は残り10秒で2点差で負けていたんですが、追いついて最終的にはオーバータイム
で勝つことができた。それが印象に残っています。

ー74,340名が集結したアリーナで全米チャンピオンに輝いたときのことをお聞きしたいです。

チェフ チャンピオンになって当時のオバマ大統領に表敬訪問で会うことができたり、あとはフィラデルフィアのプロチームが優勝を祝福してくれたりとか、本当に人生の中でも特別印象に残る体験でした。

ーそんな世界を知るお二人が選手として大切していることを教えていただけませんか。

ニック 自分は35歳と、アスリートとして高齢だから、トレーニングや食事をどうするのかが大切で、その部分をしっかりしないといけないですね。若いころのオフシーズンはしっかり休んでリラックスすれば良かったけれど、いまはしっかりトレーニングしながら食事にも気をつかわないといけない。普段の生活から自分自身のルーティンを大切にしています。

チェフ ニックと同じように、自分自身の体を同じレベルでキープできるようにするのが大事だと考えています。もう一つはメンタルを常に正しく健康な状態にして過ごすことにもフォーカスしています。

信頼するチームとともにとにかくB1昇格するのみ

ーロボッツのチームやチームメイトの印象はいかがですか。

ニック 彼らのプロ意識や、常に頑張る姿勢には、非常にポジティブな印象をもっています。そして、自分たちのことを温かく歓迎してくれました。日本に来たことのない自分にとってはすごく大きなことですし、自分たちが来て喜んでくれているのは嬉しいですね。

チェフ ハードワークだし、常に努力を惜しまない姿勢は素晴らしいです。お互いに良い影響を与えあっている関係も印象に残っています。彼らの頑張りは自分自身にも非常に影響があり、常に高いレベルでプレーしようという気持ちにさせてくれています。

ーガーベロットヘッドコーチについては、どのような印象をお持ちですか。

ニック 彼は非常に選手のことを大切にしてくれるコーチです。コーチによっては自分のやり方しかしないという人もいますが、彼は選手の創造性や個性を活かすというのを重視しているようにみられます。チーム名はロボッツですが、彼は選手をロボットのように扱わず、プレーヤーの特徴を大切にして、選手たち自身に考えてプレーさせるようにしています。また僕を中心に組み立てるような考えもあって、すごくプレーするのが楽しいです。

チェフ 非常に良い印象を抱いています。アメリカにいたときにロボッツとの契約にサインをしたけど、電話をくれて自分の話を聞いてくれました。そういうコーチはなかなかいなかったし、練習でも選手の話を聞き入れてくれるし、話をさせてくれる。選手のためのコーチだという印象があるし、僕らを良い方向に導いてくれると感じています。

ー今シーズンをどのように過ごしていきたいと考えていますか。目標も含めて教えてください。

ニック とにかく優勝して、B1に昇格することです。そのためにはチームを常に良い状態に保つことが大切で、そうすれば自ずと昇格できると思います。オーナーの堀さんも言っていたけど、チーム一丸となって戦うことが勝つためには必要です。自分のスタッツについては、いままでいろいろと達成してきたので、そこにはあまりフォーカスしていないです。いままでのキャリアで、小さなリーグでしかチャンピオンになったことがないので、B2という大きな舞台で頂点に立ちたいです。自分のキャリアにとっても大きいことですし、そのために自分ができることをとにかく実行し続けます。

チェフ 自分もB1に昇格して、B2でチャンピオンシップを獲得することが何よりの目標です。そのためには細部にまでこだわることが大切で、その部分でチームにしっかりと貢献していきたいです。リバウンドやディフェンス、そしてコミュニケーションの部分において、小さな努力も惜しまずにプレーしたいです。あのビラノバ大学で全米チャンピオンになったときと同じことをここでもやり続けていきたいです。

ー最後にファンの皆さまに向けてメッセージをお願いします。

ニック ファンの方々には今シーズンをとにかく楽しんでもらいたいし、ぜひホームアリーナに来て、たくさんのエナジーを我々に届けてほしいです。一緒にゲームに入り込んで楽しんで、そして勝利をわかちあいたいと考えています。皆さんに会えるのを楽しみにしています。

チェフ コートでも街中でも、自分を見つけてくれたときは、気軽に声をかけてくれたら嬉しいです。そして、そのときに自分でも話せる日本語を教えてほしいです!

世界を知る、経験豊富な”勝ち方を知っている”二人がチームに加入したことは、チームにとって非常に大きく喜ばしいことである。彼らがコンスタントに活躍すればするほど、B1昇格という目標に近づいていけるに違いない。彼らが示す”世界基準”をぜひアリーナで体感してほしい。

PF/C.32 ダニエル・オチェフ Daniel OCHEFU
1993年12月15日 アメリカ合衆国生まれ
ビラノバ大学卒 211cm/111kg

PF.22 ニコラス・カナー メドリー Niklas CANER-MEDLEY
1983年10月20日 アメリカ合衆国生まれ
メリーランド大学卒 203cm/104kg

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