入ったシュートも、外したシュートも覚えている

これまで決めてきた3ポイントシュートで、どれを覚えているかと福澤に聞くと、ルーキーシーズンのBリーグ開幕戦での一本を挙げる。この試合、福澤はベンチスタートとなったものの、プロ初出場ながら15得点を挙げ、3ポイントも3本沈めた。プロとしての華々しいスタートの記憶は、4年が経った今でも鮮明だ。

「印象に残っている一本は、プロで最初の3ポイントって言いたいんですけど、その試合で勝利を引き寄せた一本の方を覚えています。開幕戦をホームで迎えて、西宮(ストークス)と試合していて、大塚さん(大塚勇人選手。現・バンビシャス奈良所属)がピックを使ったところで、僕がリフトアップして、パスを受けて左45度の位置から3ポイントを決めました。」

最終盤までもつれたシーソーゲーム。福澤のこのシュートで、FE名古屋は西宮を振り切って勝利を収めた。ロボッツ加入後の思い出も尋ねると、2019-20シーズンの第6節・アウェーでの熊本戦を挙げる。

「1日目に3ポイントがまったく入らなくて…(6本放って成功0)。試合が終わってからサブアリーナでひたすらにシューティングをしたんです。しかも、翌日は外国籍選手がチェフ(オチェフ選手)もニック(カナー・メドリー選手)も出られない状態になっちゃって。全員でがんばろうっていう雰囲気だったのを覚えています。その日は14本放って8本成功。後半になるほど調子が良くて、僕に2人相手選手が来ていて、隣でウィル(クリークモア選手)がノーマークになっていても、入ると思って打っていったし、そんなシュートも入りました。あの時は外れる気がしませんでした。」

この試合、福澤はフィールドゴールはすべて3ポイントという離れ業を演じ、27得点の大活躍で勝利に貢献。チームの危機を救ってみせた。しかし、福澤の脳裏には、別の記憶もある。思い出の一本を挙げていくさなか、「外した方を覚えていることもあるんですよ」と福澤は、悔しい思いもこぼした。

広島(ドラゴンフライズ)と試合をしたとき(2019年11月9日)、試合終了間際、ベンチ前の左コーナーでボールをもらって、それが決まれば勝ちだったんです。あの試合は3ポイントが9本中6本決まっていましたし、あの場面で決めたかったっていうのはめちゃくちゃありました。試合後にもマニさん(#27眞庭城聖)から『お前が打って外したのなら、誰も文句は言わない』って伝えられたんですけど、余計に悔しくなっちゃいました。」

福澤は、翌日の試合でも同じようなシチュエーションに遭遇。この時はきっちりと沈めたことで、彼は「一つ成長できた」と振り返る。500本達成の裏には、このような悔しい瞬間も同じだけ、いやそれ以上にあったことを、彼はしっかりと心に刻んでいる。

他のプレーもできてこそのシューター

今や、ロボッツのファン・ブースターなら、彼にボールが回った瞬間から3ポイントシュートへの期待を抱く人も多いだろう。福澤としてもそれは意識があるようだが、最近、意外な「刺客」が現れることがあるという。

「ベンチの選手たちも、すごく期待してくれているみたいで…。今年の東京Z戦(10月10日)、ノーマークでシュートを打ちに行ったタイミングがあったんですけど。ベンチで鶴巻とか(中村)功平が、『ありがとうございます!』とか、入る前に言うんですよね(笑)。それだけに、外れたときに申し訳なくなる。『決める前に言うな』とは伝えたんですけど、鶴巻から『入ると思ったんです』って返されたら…。それは『すまん』ってことで、僕が練習しなきゃいけないですよね。」

一方で福澤は、そんなチームメイトがいるからこそ、500本という大記録が達成できたのだと、感謝を忘れない。「『いい奴ぶってる』って言われそう」と、笑いを浮かべながらも、彼は率直に言葉をつむぐ。

「パスが来なければ打てないし、チームメイトが僕をノーマークにしてくれるからこそっていうこともあります。ありがたい環境ですし、真面目にそう思っています。一人でバスケができるわけじゃないので。」

今後の展望を尋ねると、バスケットボール選手としてさらなる成長を臨む、彼の情熱の一端が見えた。

「3ポイントしか打てないっていうのは、僕としては弱いところ。もちろん大事なんですけど、例えば3ポイントしか打てなくて、ドリブルもパスもできないってなったら、選手としてはスケールが小さくなってしまうと思うんですよね。他のこともできないと、長生きできないというか。例えばB1でシューターをするような選手を見ても、ピック&ロールも使う、パスもできるっていう人はいます。3ポイントだけでは、シューターとしてもスケールが小さいと思うので。シュートだけじゃ足りないと思いますね。正直な話、まだまだだと思います。」

シューターとして生きていくためには、他のいかなるプレーも「おろそかにはできない」と語る福澤。この500本は決してゴールではないという決意の表れと見ていいだろう。現に500本目を達成した試合でも、ロングシュートだけでなく、ペイントアタックへの意識など、オールラウンダーとして進化しようとする努力が垣間見えた。達成後の福澤の言葉からも、改めてその決意が見て取れる。

「外からノーマークを作ってもらって打つというのは、相手にとってすごく守りやすい選手になってしまうと思います。ドリブルからピック&ロールを使ったり、パスへの意識をしていかないと、スカウティングされたら簡単に潰されてしまう選手になってしまいます。シュートを含めて、さまざまな能力を伸ばしていきたいと思います。」

彼が選手としてのレベルアップを積み重ねていった先には、「B1」という新たなステージも見えてくる。躍進を続ける福澤の姿は、今後も目が離せないものとなるだろう。

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