取材:文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:B.LEAGUE
前節・越谷戦から中3日。アウェー4連戦の始まりとなった第7節の対戦相手は今シーズン2度目の対戦となるアースフレンズ東京Zだった。ロボッツは相手に対して高い集中力を保ち続け、2試合ともに主導権をがっちりと握って連勝を収めた。今節のロボッツの試合運びは3つの「力」を感じさせるものだった。相手が勢いに乗っても盛り返す力、相手を一気に突き放す力、そして掴んだ流れを渡さない力だ。これらががっちりとかみ合った状態を保っての連勝は、また一つ、チームを勢いづけるものとなったのではないだろうか。
スターター、ベンチの総力戦。光ったディフェンスの集中力
今節の2試合、ゲーム展開は似通ったものだった。第1クォーターを競った展開で入り、第2クォーターで大きく突き放し、後半も集中力を切らさず、リードをしっかりと保ったまま試合を締めくくる。盤石とも言える展開だった。また、付け加えるとするならば、ベンチメンバーの層の厚さ、メンバーが交代する中での連携度の高さも示せた試合だった。
キーマンとなったのが、#2福澤晃平だ。代名詞ともいえる3ポイントシュートは今節も大きな切り札となったが、ペイントエリアへの貪欲さも度々見せてくれた。第1戦(11/12)では節目となるB2通算500本目の3ポイントシュートを含む20得点、第2戦(11/13)も3本の3ポイントを成功させ、18得点を挙げた。こうした得点力も十二分に目を引くところではあるのだが、福澤が存在感を発揮したのは、むしろディフェンスだった。東京Zのシューターである#10岡田優介に対して、激しいマークに付くことでシュートレンジから外へと追いやっていく。結果的にこのディフェンスが彼へのパス供給も断ち切ることにもつながり、相手オフェンスの重要ポイントを見事に封じた。
東京Zも、身体能力に長ける#2栗原翼や#4ケイン・ロバーツ、日本人ビッグマンの#13坂井レオなどを積極的に投入し、ロボッツから流れを取り戻そうとしてきた。しかし、こうした相手の交代メンバーに対しても#0遥天翼や#13中村功平、#14髙橋祐二などがきちんと対応し、相手脅威の芽を摘んでいく。特に髙橋が見せたスピード感あふれるディフェンスは相手の脅威となり、リチャード・グレスマンHCは第2戦の試合後、髙橋の働きをこう讃えた。
「特に髙橋選手は大きなインパクトを与えてくれた選手でした。得点こそ無得点でしたが、得点をしなくてもゲームに大きな影響を与えられる選手だと思っています。チームのためにプレーをし、パスを回し、またディフェンスでも大きな存在感を放っていました。」
一方で、ベンチスタートとなった選手たち自身も、「出場時に流れを作ること」を非常に意識しているように感じる。第1戦終了後の福澤の言葉からも、それが伝わってくる。
「もちろんチームの調子が良い時は流れに乗っかるという自分の役割があるのですが、今日のようにスタートから流れが悪い時は、自分が出てディフェンスをアグレッシブに頑張ってチームの起爆剤というか、活性化させるという意識で控えから出ているので、そういう部分では自分の仕事がちょっとずつできているのかなと思います。」
ここぞの場面で一気に攻める。unselfishが攻撃の厚みに
結果を振り返ると、2試合ともにターニングポイントとなったのは、第2クォーターだった。流れるようなパスワーク、深い位置からでも放つ3ポイントシュート、ペイントエリアへの容赦ない侵入と、パターンに富んだ攻撃が随所に見られた。第1戦はオフィシャルタイムアウト明けから13連続得点を挙げ、第2戦ではクォーター全体で30-4という大爆発とも言えるオフェンスで試合の行方を決めてしまった。
多種多様なオフェンスの裏には、それぞれの選手が確度の高いプレー選択を常にしていくことが挙げられる。その場その場でどの方法が一番得点につながるか、計算を重ねたオフェンスが浸透してきているとも言える。それは、ボールを持つ選手に限った話ではない。「ここで受ければノーマークを生み出せる」「ここに飛び込めばシュートできる」という、先を見越した連動性が、コート上の優位をたぐり寄せる。
こうしたプレーが連続して行われることで、相手のディフェンスに対しても「この選手が今打ってくるのでは」「次はこの選手に打たせるのでは」という、一瞬の迷いを生じさせる。そこでたたみかけるように間を詰め、素早いプレーを見せることで、相手を振り切っていく。ある場面ではショットクロックを残し、またある場面では最後の1秒まで使う。試合を重ね、チームとしての時間を重ねていく中で、チームの連携度は高まり続けている。だからこそなせる緩急の効いたオフェンスが、相手にどんどんとプレッシャーをかけていった。
今のロボッツは、コート上の全員が攻撃に参加し、全員がフィニッシャーとなれる力を持っている。また、各選手が持つ得点パターンも決して一本槍なものではない。しかしながら、そこにチーム戦略のキーワードである「unselfish」が組み合わさることで、結果的にオフェンスの厚みがどんどんと増している。それが、日替わりのように試合ごとにヒーローを生み出し続けることにつながっている。#0遥天翼はそれを、率直にチームの長所だと話す。
「ロボッツのいいところは、いい意味で自分が犠牲になってみんなを活かしてあげようという前提でプレーしているところです。その日その日でスタッツには残らないけれど活躍している選手はいると思うので、そこがロボッツの強みだと思っています。」
様々な選手が試合ごと、時には局面ごとに活躍するさまは、チームとしての力強さの表れとも言える。今後もこうした強みを見せ続けられるかが、息つく暇もないシーズンを戦い抜く一つのヒントとなりそうだ。
熟成を見せつけ、逆襲を
まだ、シーズンは十数試合を消化した程度。しかし、次節は早くも「山場」という言葉が当てはまりそうな連戦だ。開幕節で連敗を喫した、群馬クレインサンダーズが相手となる。会場も、開幕節と同じヤマト市民体育館前橋。シーズン開始から今までの、チームとしての成長、熟成を見せられるかが、そのまま勝負の分かれ目となっていくだろう。対する群馬は、シーズン開始後に合流した外国籍選手、#4トレイ・ジョーンズ、#40ジャスティン・キーナンが好調をキープ。開幕節で大きな壁となった#3マイケル・パーカーや#41ブライアン・クウェリを含め、豊富なタレントが揃ったチームだ。「B1」というロボッツが目指すステージに対しては、乗り越えていかなければならない相手と言えるだろう。
どこからでも、誰が起点になっても得点ができるという、ロボッツの長所を存分に発揮し、一方では厳しいシュートチェックや貪欲に体を当てに行くディフェンスなど、シーズンの中で磨いてきた武器をフルに活かす必要がある。この2戦、誰かがキーマンというわけではなく、総力戦で臨む必要がある。
一つでも多くの見せ場を作れば、勝機を手繰り寄せることができる。それをがっちりと離さないことで、勝機はやがて勝利という結果に変わる。勝利のために何ができるか、何が必要か。止まることなく答えを探し続ける必要があるが、そうして考える時間も選手たちの血肉となっていくはずだ。すべては勝利のために。この首位攻防戦を、ぜひともものにしたい。