取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE
アウェー5連戦の幕開け、ロボッツはレバンガ北海道との2連戦に臨んだ。GAME1ではリバウンドから大きく差を付けられ、シュートタッチもなかなか改善しないままにゲームが進み、80-68で敗戦。翌日のGAME2は、ベンチ入り7人という中で戦い続けたものの、84-77で連敗。日に日に戦況が厳しくなり続ける中、ロボッツのメンバーは戦うことにフォーカスし続けていた。今回のAFTER GAMEは特に少ない人数での戦いを強いられたGAME2に着目していく。
火付け役はキャプテン
一言で表すならば、異常事態だった。かねてから欠場が続いていた#8多嶋朝飛、#13中村功平に加えて、今シーズンここまで全試合に出場していた#11チェハーレス・タプスコットと#29鶴巻啓太までもが、この試合ではケガのため試合のエントリーメンバーから外れることになる。鶴巻に至っては松葉杖姿でコートに姿を現すなど、やや痛々しい状況だった。この結果、コロナ禍に見舞われた中で行われた今月17日の横浜ビー・コルセアーズ戦よりさらに少ない、ベンチ入りメンバー7人で試合を迎えることになる。
この試合、最初から最後まで火付け役としてコートに立ち続けたのが、#25平尾充庸だった。先制攻撃の3ポイントシュートを浴びせると、その後も得点源として立て続けにシュートを決めていく。この日記録した34得点は、ロボッツ加入1年目のレギュラーシーズン最終戦、いわゆる「いわきの悲劇」として語られる、2018年5月の福島ファイヤーボンズ戦で記録した、Bリーグでのキャリアハイに並ぶものだった。
ディフェンスでも、前日に持ち前のスピードでチームが苦しんだ#4寺園脩斗を粘り強く抑え、攻撃の起点から遠ざけさせていく。ロボッツのポゼッションでは、むしろ寺園のチェックが甘くなったとみるや猛攻を仕掛け、試合の行方を混沌としたものにしていった。
象徴的だったのが、第3クォーター序盤でのシュートラッシュだった。インサイドに潜り込んだ#14髙橋祐二や#22ハビエル・ゴメス・デ・リアニョのパスを受け取って3ポイントを連続で成功させると、今度は#2福澤晃平からのキックアウトをきっかけに3ポイントを放つ。北海道の#66松下裕汰が慌ててチェックに走るが、平尾を止められずにファウルとなる。シュートも吸い込まれ、4点プレーを完成させた。
この時、平尾は3ポイントのハンドサインを示しながらコートを走っていく。キャプテンをここ2シーズン、好プレーに対してもアクションを起こすことが少なかった彼が、久々に「らしい」姿を見せた一幕でもあった。
その戦い様でチームを引っ張ろうとし続けた平尾。この状況にどう立ち向かおうとしたのか、試合後に彼自身が明かしてくれた。
「ケガ人がいることを言い訳にしない。ツル(鶴巻)やシェイ(タプスコット)、朝飛さんや功平がケガで出られない中で、『俺が出てたらこうしていた、あんなプレーをしていた』って思わせないようなプレーを、この人数でもしっかりやろうと声を掛けていて、それを一人一人が体現してくれたので、今日のように最後まで分からないゲームにできたと思います。」
思えば、メンバーが揃っていた中でも、こうした言葉がブレることはなかった。昨年12月の島根スサノオマジック戦を終えて、平尾が残した言葉と重なった。当時のAFTER GAMEにも綴られているが、この時彼はこんな話をしている。
「5人しかコートに立てない中で、ベンチメンバーも出たいと思っている選手もいるはずで、『自分ならこうする』と考えている人もいるはずなんです。でも、そういう人たちを置いて選ばれてコートに立っているわけです。ならば戦わないなんてまずあり得ないことなんです。」
その言葉の通り、いかにして戦うか。その考えをどう体現するか、あるいは体現し続けるか。この日のロボッツからは終始そうした感情が溢れ出していた。敗れた中にも一つすっきりさせるような言葉が出てきたのも、彼なりに感じ取るものがあったからだろう。試合後のコメントで、平尾はこう続けた。
「こういう試合ができたことで、僕はこのチームを誇りに思いますし、だからこそ応援してくれる人のために勝ちたかったというのもあります。負けはしてしまいましたが、次につながるゲームが、この少ない人数でもできたと思っています。またみんなが帰ってくる頃には、入ってくる隙がないようなチームにできたらと思います。」
とにかく、目の前の1試合を物にしたいチームにとっては、この上ない試練の日々が続く。それも、誰を責めるでもない事態の連鎖によってだ。このゲームを単に戦力差での負けと捉えるのではなく、どう次の勝ちにつなげていくのか。まだまだ可能性は残されていると見たくなるゲームだった。
シンプルな役回りの中で光ったプレー
ベンチメンバーも含めて、誰の活躍が欠けても難しい展開を強いられてしまうここのところのロボッツ。この試合も文字通りの全員バスケで、勝利を目指した姿が印象的だった。3試合ぶりのスターターを務めた#0遥天翼は、北海道の#24デモン・ブルックスに対して真っ向からディフェンスで勝負を挑み、彼が得意とするインサイドへのドライブを精力的に封じていった。
方や、4ヶ月ぶりにスターターに名を連ねたのが髙橋だった。本来のマッチアップから考えればやや大柄な選手を相手にする場面ばかりであったが、こちらもブルックスや#17山口颯斗など、相手のアタッカー陣を食い止め続ける。前日16得点で波に乗っていた山口を、この日は5得点に抑えてみせた。
そして、この2試合でチームを奮い立たせたのが、ゴメス・デ・リアニョ。得意の3ポイントシュートが冴え渡り、2試合ともに2桁得点を記録。シュートへの意識が強すぎるときがある彼だが、この2試合ではしっかり我慢を効かせてポジション取りを続け、シュートを沈めることでそれに応えていた。結果として、GAME2では今季最長となる28分24秒のプレータイムで、今季最多の17得点を挙げてみせ、ポテンシャルが決してさび付いていないことを示す。課題だったディフェンスでも、しっかり足を動かして守り続け、簡単なアタックを許さなかった。
リチャード・グレスマンHCも、この3人に対しては試合後のコメントで名前を挙げて労っている。
「髙橋選手、遥選手、ハビエル選手は、通常よりもプレータイムが非常に長くなりましたが、3人ともよく対応してくれたと思います。通常、10分程度のプレータイムとなる中で、3人とも20分以上の出場となりました。なかなかアジャストをしづらい中でも、しっかりやってくれたと思います。」
少ない人数ゆえに、コート上のメンバーに課せられたミッションは至ってシンプルだった。ディフェンスならば誰を食い止めるか、オフェンスならばどういうシュートを作り出し、それを決めていくか。勝利を目指す中で、40分間、そこがブレることはなかった。試合後のグレスマンHCのコメントからも、それが読み取れる。
「厳しい状況の中で選手たちは頑張ってくれましたし、戦うからには勝つという想いを持って全力で戦ってくれました。ベンチ入りが7人という状況ならば、前半で10点差を付けられたタイミングで、多くのチームは次の試合に向けてフォーカスをしてしまうかもしれません。ただ、ロボッツの選手たちはそういった感情を出さずに戦ってくれました。そういう意味で、選手たちの奮闘ぶりにはうれしく思います。」
戦績や取り巻く状況を考えれば、チームによってはなかなか先々のモチベーションも保ちづらい側面もあるだろう。しかし、一戦に懸ける執念を燃やしたロボッツに、胸を打たれる人も多かったはずだ。シーズンは残すところ6試合。このメンバーが見られる時間も、残りわずかである。一日ずつ、より良いチームになり続けてきたロボッツが、さらに良いチームとなれるかが、今こそ試されている。一つ、シーズンの最後まで見届けたいポイントだ。
「クレイジーピンク」の中で旋風を
チームは茨城に戻ることなく、次節の相手である秋田ノーザンハピネッツとの戦いに備えて敵地に乗り込んだ。手負いの状況はすぐには改善しがたいところではあるが、ここを戦いきるという意識を持ち続けたいところだ。
対戦相手の秋田は東地区5位に位置しているのだが、4月に入ってから1勝7敗と負けが込んで一気にチャンピオンシップ出場争いから後退。西地区4位のシーホース三河に勝率で逆転され、ワイルドカードでの出場も崖っぷちという状態だ。
秋田もここのところ#45コルトン・アイバーソンの離脱が重くのしかかり、正確な出場メンバーが読めない状況。しかし、過去の対戦でも力を発揮した#7ジョーダン・グリンと#9アレックス・デイビスがコートに立ち続けており、この2人への警戒は怠りたくない。
また、日本人選手の中では、豊富なガード陣の中で異彩を放つ#17中山拓哉に注目したい。ミスマッチとみてインサイドでポストアップを受けても全く引かないフィジカルの強さは、攻守両面で強みを発揮する。
また、前回対戦でベンチから登場し、シーズンハイとなる20得点を記録した#24保岡龍斗にシュートラッシュを許すのも避けておきたい。彼に限らず、#5田口成浩や#51古川孝敏など嫌らしいシューターが多い秋田。彼らの得点をいかに伸ばさせないか、ハードなチェックを欠かすことなく守っていきたい。
ロボッツはシューター勝負となれば福澤の出番だが、北海道戦では当たりが止まってしまった場面もあったため、彼が奮起する場面を願いたい。また、相手のチェックの上からシュートをたたき込めるゴメス・デ・リアニョや#55谷口大智の得点シーンが増えるかという点も注目。ディフェンシブな試合展開が予想されるだけにシュートの乱打戦とはならないだろうが、裏を返せば1本の精度の積み重ねが勝敗を分けていくことになるだろう。
まだまだ厳しい戦いは続いていく。それでもロボッツの闘志は衰えるどころか増すばかりだ。その思いが報われる勝利を掴むためにも、現地やバスケットLIVEでの応援をお願いしたい。