【AFTER GAME】 第97回天皇杯(10/30~11/1)~やりきって勝つことの重要性。全ては反逆への布石~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA

ロボッツにとっては実に3シーズンぶりの参加となった、天皇杯全日本バスケットボール選手権大会。リーグ戦で苦戦するロボッツにとっては、大きなテストの場でもあった。初戦のファイティングイーグルス名古屋との試合を86-74で制すると、翌日には地元クラブのレバンガ北海道を69-77で撃破。その後富山グラウジーズに87-94で敗れたことでラウンド突破とはならなかったが、ロボッツのバスケットをブレさせることなく2勝をもぎ取ったことに価値を見出したい。そんなゲームに見えたのだった。

アップテンポはブレず。シーズンに活かせるスタイル

ここまでのレギュラーシーズン、ロボッツはなかなか勝利を掴めていない。相手ディフェンスの網にかかってしまったり、残りわずかという場面で相手の底力を受けてしまったり。B1の洗礼を浴びる形で、ここまで1勝8敗という成績になっている。だからこそ、開幕前に#55谷口大智にインタビューを試みた時の言葉が引っかかっていた。

「勝てないときに、何かを変えようとしてしまいます。チームに限らず、ファンの方や、あるいは会社としてのクラブもそうです。変えようとして、変えてしまったことが結果として裏目に出てしまう。経験をして、積み重ねていった結果もあるはずなんです。ある程度の経験をする覚悟を持って戦っていかなくてはいけません。」

勝ち上がれば最大3連戦となる天皇杯の日程。そもそもがリーグ戦から中2日で挑むという強行軍であるだけに、コンディション管理も重要な課題だ。様々な要因が組み合わさった中で、ロボッツが「その日に勝つためのバスケット」に走ってしまわないか、という不安があった。結論から言えば、これは杞憂に終わることになる。

初戦のFE名古屋戦。ロボッツは思い切りの良いディフェンスと、素早くシンプルなボールムーブメントを軸にしたオフェンスで相手をかき乱した。対するFE名古屋は外国籍選手や帰化選手が積極的にインサイドを切り開こうとするが、#15マーク・トラソリーニや#21エリック・ジェイコブセンが体を寄せきってタフショットに次々と追い込む。FE名古屋の#41ブライアン・クウェリのフィールドゴールを1本のみに抑えたことからも、強度の高さが窺える。第3クォーターでこそ猛追を受ける格好となったが、相手に決定的な主導権は渡さず。「ロボッツのスタイルで勝つ」という大原則を、しっかりと守って見せた。

#8多嶋朝飛は、初戦をこのように振り返る。

「準備期間も少ない中で、自分たちが1日1日良くなるためにしっかりステップアップしようという話もしていましたし、プライドを持ってバスケットをしようという話もしました。試合の中でアップダウンはありましたが、自分たちが粘りきれて勝ち取れたことは、チームの自信にしていいと思います。」

明くる日の北海道戦。この日もロボッツはチャレンジャーとして相手に渡り合った。リバウンドをしっかりと争って取ること、ボールを持ちすぎずにつなぐこと、シュートを迷わずに打ちきること…。ベンチから出た多嶋やトラソリーニなども、自分の役割を明確にこなして流れをつないでいく。ベンチスタートの選手の得点は、北海道の25点に対してロボッツが41点。2桁得点の選手も北海道の2人に対して4人と、終始バランスの良さが目立つ格好となった。

この日もFE名古屋戦と同様に第3クォーターで相手に走られる格好になり、ロボッツはこのクォーターを7得点で終えてしまう。だが、チャンスメイクができずに攻めあぐねての7点ではない。攻撃を組み立てた結果としてシュートがバラついた。ディフェンスでも我慢を続けて18点に抑える。これまでとは違うポジティブさすら見えるものだった。

最終クォーターでも、ロボッツは上げる分だけのギアを残していた。トラソリーニが一気呵成に12得点を挙げる一方で、ディフェンスのプレッシャーを強めたところで#29鶴巻啓太がスティールを連発。相手の足を重くさせたロボッツが、この日も勝利を飾った。

古巣対決で躍動したトラソリーニは、試合の実感をこのようにまとめた。

「個人としても得点力を発揮できましたし、チームとしても良いバランスを見せることができました。ロボッツはシーズンの良いスタートを切れませんでしたが、多くのことを少しずつ積み重ねていくことでより良くなっているところです。改めて、チームの勝利に貢献できればうれしいですね。」

形をしっかりと見せながら、勝利という結果にもつなげたロボッツ。自分たちのバスケットが間違っていなかったことの証明でもある。苦戦が続く中でのこの2勝は、確かな光と言えるだろう。

されど、守らねば

3戦目の富山戦。ジェイコブセンがコンディションを鑑みて、エントリーこそしたもののプレーはせず。フロントコート陣はタプスコットとトラソリーニがシェアし合う構図となった。対する富山はアジア特別枠を含めた4人の外国籍選手が代わる代わる襲いかかった。キーマンとなったのは、昨シーズン富山を初のポストシーズンへと導き、Bリーグのベストファイブにも選ばれた、#32ジュリアン・マブンガ。自らも突出した得点力を持ちながら、ゴール下へのいやらしいパス供給で味方の得点機会も作り出す。ボールがよく回った富山に第1クォーターだけで9アシスト・33得点を奪われてしまい、14点のビハインド。ロボッツはいきなり窮地に立たされてしまう。

ただ、この2日間で見せた「形」を崩さずに戦うことで、次第に富山を追い詰めていく。第1クォーター終盤から谷口や#25平尾充庸らがしっかりとノーマークを作り出して得点を重ねていき、反撃の体制を整えていくと、ここからは文字通りの総力戦の様相を見せる。富山がターンオーバーを連発する中でロボッツはコートを素早く駆け抜けてきっちり得点を生み出す。第3クォーターにはタプスコットが15得点を記録し、9点差で最終・第4クォーターへと進む。

機動力での勝負に出たロボッツは、最後まで足を動かす。この3戦、なかなかシュートタッチが重かった#2福澤晃平がこの場面で目の覚めるような得点ラッシュを披露し、第4クォーターだけで13得点。一時は2点差まで詰め寄った。

ベンチで戦況を見つめる機会が多かった谷口は、チームとしての士気を、試合後にこのように話している。

「チーム全員が勝って次のラウンドに行きたいという気持ちがあって、僕たちは勝ちに飢えている部分がすごく強かったんです。それがチームの方向性として統一できた結果、あそこまで追いつくことができたと思います。」

ただ、序盤に背負ったビハインドが大きすぎた。福澤は試合を振り返って、率直な思いを明かす。

「相手のインサイドにすごく強力な選手がいたのと、試合を支配してくる選手がいた中で、1Qの入りが悪くなってしまいました。後半に見せたようなファイトを、ゲームの入りから見せないと厳しくなってしまうなと思いました。」

最終盤、トラソリーニのファウルアウトによって高さのミスマッチが発生したところを積極的に突き続けたマブンガと、そこをしっかり活かした#34ジョシュア・スミスとのツーメンゲームに勝機を見出した富山が、ロボッツを振り切っていく。

試合後のロッカールームで、リチャード・グレスマンHCは選手たちにこのような言葉を伝えた。敗戦を受けても、ブレずに戦うという意思を感じ取ることができた。

「改善点、修正点、良くするべきところはたくさんある。全てはディフェンスの重要性に戻ってくる。ここまでが非常にタイトなスケジュールだったとは言え、94点も取られてしまっては勝つことは難しい。僕らは非常に厳しい場所で戦っている。しっかり体をリカバリーして、良い練習をしてチームの状態を高めなくてはならない。言い訳は何もできないから、しっかりとやっていこう。」

好機をしっかりと流れにすることができたことは、間違いない戦果だ。このコラムでたびたび触れているように、勝利までのあと一伸びが今のロボッツを苦しめている。シーズンの中で産みの苦しみから解き放たれたロボッツが、どこまで爪痕を残せるのか。今はとにかく、未来を楽しみにしたい。

再びのアウェー連戦。天皇杯を機に反撃へ

愛知、北海道と続いた移動日程はまだ続く。続いての戦いは昨シーズンのチャンピオンシップに進出した、西地区の強豪・大阪エヴェッサとのアウェーゲームだ。今シーズンの大阪はここまで3勝6敗とまだ波に乗り切れていない印象。そのカギは自慢のオフェンスがなかなか連動せずに得点を伸ばせていない部分にある。平均得点75.7はリーグ17位、平均アシスト18.4はリーグ18位タイという数字だ。すなわち、ロボッツのカギは相手に流動性を生ませずに、タフショットに追い込んでいくこと。個々のマッチアップからしっかりと止める意識付けが重要になるだろう。

注目選手は#25ディージェイ・ニュービル。Bリーグのトレンドになりつつある大型の外国籍ガードで、1試合平均21.2得点の猛攻を見せる。また気をつけるべきはファウルを受けた数。9試合でリーグ2位となる55のファウルを受けていて、1試合平均にすると6つ以上。直接的な得点力もさることながら、彼の強烈なドライブによってロボッツがファウルトラブルに見舞われるケースも警戒しなくてはならない。

ロボッツとしては前節・シーホース三河戦で#5カイル・コリンズワースに対して#0遥天翼をマッチアップさせたように、マッチアップの相手を冷静に見極めることが重要だ。ポジションにとらわれすぎないマークを付けることで、ディフェンスから流れを持ってくる戦いに持ち込みたい。「守り勝つ」という経験を積むことで、ロボッツの戦い方の幅はさらに増えてくることだろう。

開幕から1ヶ月。息つく暇も無い戦いが続いているが、ロボッツのメンバーは必死にチームとしての士気を保っている。戦いを見守り、背中を押す。そんな応援をこれからもお願いしたい。

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