【AFTER GAME】 2021-22 大阪戦(11/6~7)~チャレンジャーだからこそ「受けず」。常に先手を打って~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE

天皇杯の3次ラウンドを終えたロボッツは、わずかな調整期間を経て再びアウェーへの戦いに乗り込み、大阪エヴェッサと対戦。昨シーズンのチャンピオンシップ出場チームにどう挑むかという2連戦で、ロボッツはGAME1で終盤に走られて90-72で敗れたものの、GAME2では相手の動きに積極的に対応を続け、72-81で勝利。B1でのアウェー初勝利を果たしてみせた。今節のAFTER GAMEは、勝利という結果で示したGAME2を軸にコラムを展開していく。

守る、そして走る。積極性と先手の勝利

ペイントエリア内で、相手ディフェンスの収縮を生ませるように攻め込み、図ったかのようなパスでオープンを作り、シュートを沈める。試合開始直後、#25平尾充庸と#8多嶋朝飛が作った形がはまったことで、ロボッツは一つ前に出た。

大阪のフロントコートを張る#24カイル・ハントや#33アイラ・ブラウンらがパワーで押し込もうとするのに対して、ロボッツのインサイド陣はスピードで渡り合うことを選んだ。大阪のスペーシングに対してミスマッチができたと見るや積極的にボールを呼び込み、手数少なくゴールへと流し込む。それに対して他の選手たちもよく連携がとれており、ここしかないというルートをしっかりと開けていた。結果としてペイントアタックがよく決まり、ペイントエリア内での得点は48点に上った。初勝利となった三遠ネオフェニックス戦の54点に迫る数字と考えると、やはりペイントまで走り込んで得点を奪うことの重要性は大きな物と言えそうだ。

また、守りの中でもロボッツは集中力を切らさなかった。特にそれが現れたのが、大阪のベンチユニットの選手に対する守り方である。ハードなシュートチェックを欠かさず、局面局面をタフにさせていく。GAME1で2桁得点を記録した#1青木龍史をフリースローのみの2得点、#3エリエット・ドンリーを無得点に抑える。ベンチの選手で流れを変えようとする大阪の思惑を外れさせた部分は大きい。

逆にロボッツは、#0遥天翼や#13中村功平、#14髙橋祐二がここぞという場面でディフェンスの仕事をきっちりとやりきり、特にこの3人は時間帯に応じてファウルを使ってでも相手を抑えるという仕事人ぶりを発揮した。また、GAME2ではベンチスタートとなった#2福澤晃平もそれに続く。大阪が追い上げムードとなっていた第3クォーターで、ハードなディフェンスからスティールを決めて得点をお膳立てしたかと思えば、直後には自らのドリブルから隙を探って、そのまま3ポイントシュートを決めるなど、これまでのイメージとは一味違った得点パターンを披露。平尾や多嶋らがベンチに下がった時間帯でも、しっかりハンドラーとしての役割を果たせるようになれば、ロボッツの戦い方はより幅広いものになる。キャプテンの平尾はこう試合を振り返った。

「試合の入りからディフェンスの強度を高めて戦えたことが今日の結果につながったと思います。逆に言えば、これをベースにして今後もしっかり戦っていくことで、もっと自分たちらしいバスケットができると思うので、ディフェンスから、しっかりと責任を持って戦っていきたいです。」

この2試合において、もう一つ大きかったのが、リチャード・グレスマンHCによる指示の出し方であった。少しでもディフェンスの中で、意図せぬオープンからのポイントを許せば、即座にタイムアウトを取る。相手に流れが渡ってしまう前に切っていくことを意識しているかのようだった。

「選手たちはとてもいいマインドセットで入ってくれました。タイムアウトでは選手たちに落ち着いて、ファイトし続けようと伝えていました。シーズンの中でもポゼッションを失うようなミスをしてしまうと自信を失ってしまうこともあるかと思うのですが、コーチとしてタイムアウトを賢く取ることで、チームの助けになっていくと思っています。今日の経験はとても学びになると思いますし、チームも『BUILDUP』を掲げて戦っています。可能な限り勝って、ポジティブな空気を生み出していきたいと考えています。」

選手と首脳陣による総力戦となって勝利を得たこの試合。後手を踏まないことがどれだけ大事かが、今後も問われることになりそうだ。

ゲームを通して光った、「鶴巻の身のこなし」

大阪の攻撃の軸となっているのは、#25ディージェイ・ニュービルに他ならない。ロボッツ戦を迎えるまでの9試合全てで2桁得点を記録し、GAME1でも3ポイント4本を含む18得点を挙げた。今季のB1の平均得点ランキングで、ガード登録の選手として唯一トップ10にランクインしていると言えば、いかにニュービルの得点能力が際立っているかが分かるだろう。そんな彼を、ロボッツの誰がどのように止めるかは、試合の注目ポイントだった。

大阪はこの2試合で#15竹内譲次をスターターに起用するビッグユニットを採用。その竹内が第1クォーター途中にベンチに退いてからが本番だった。試合当初ブラウンへのマークに付いていた#29鶴巻啓太は、ここでニュービルへと相手を変える。そこから一歩も引くことのない1on1ディフェンスを披露し続け、ニュービルの得点を第1クォーターの5点のみに抑えきったことで、流れはロボッツへと傾いた。特筆すべきは、鶴巻がニュービルに対して1つもファウルを犯さなかったこと。むしろ試合途中にはニュービルからオフェンスファウルを誘うほどクリーンに守りきったことも、大きな収穫と言えよう。

試合直後のインタビューでも、鶴巻は守りでの実感を語っている。

「ニュービル選手を抑えるように指示をもらっていて、やられる部分もあったんですが、今日についてはしっかりやれたと思います。これからも上手い選手とマッチアップする機会があると思うので、その中で自分の成長につなげていって、最終的には嫌なディフェンダーだと相手に思わせるような選手になりたいですね。」

守りから流れに乗った鶴巻は止まらない。ニュービルとの1on1の中でシュートチェックをかいくぐられ、一度だけ3ポイントを許すが、直後の攻撃で「3ポイント返し」を見せたことで、主導権は鶴巻のものとなった。スピードに乗ったゴール下へのカッティングを積極的に行って相手の意表を突いていく。速攻の完成にも一役買った他、ドライブインでニュービルを振り切る場面も見せ、B1で最多となる11得点を挙げた。彼が緩めることなく走り続けたことによる効果は、攻守両面で計り知れない。

グレスマンHCは試合終了直後のインタビューで鶴巻の働きについて、こう称えている。

「特に鶴巻選手が良い仕事をしました。彼がニュービル選手をしっかりと抑えたことで勝つことができたと思います。このディフェンスを、ぜひとも続けてもらいたいですね。」

特別指定選手から数えて4シーズン目にして最長となる32分14秒のプレータイム。これまで、いざという場面で起用されることで積み重ねてきた信頼の厚さが、如実にプレータイムとして表れた格好だ。攻守にわたって彼が精彩を放ち、一本立ちできる日はそう遠くないようだ。

ハードスケジュールを駆け抜けて

ロボッツは中2日でアウェーでのサンロッカーズ渋谷戦に挑む。移動、移動、また移動という戦いではあるが、わずかな時間をしっかりと成長へと活かしていきたい。昨シーズン、Bリーグ2度目のチャンピオンシップ出場を果たした渋谷だが、エースビッグマンで元NBAプレイヤーの#34ライアン・ケリーが1試合しか出場できず、開幕早々にインジュアリーリスト入りするという緊急事態に見舞われている。

その中でも、ここまで8勝3敗と東地区の4位にいられる(上位3チームと勝率は同じ)裏には、むしろケリー不在によってコート上のバランスが良くなったようにも見える。日本代表の#9ベンドラメ礼生が積極的にコートを駆け抜け、インサイドでの破壊力が必要とされる場面では#14ジェームズ・マイケル・マカドゥが容赦なくダンクを叩き込む。マカドゥはここまで全試合で2桁得点を記録している上に、1試合平均20.8得点はリーグ5位。彼による失点をどこまで抑えるか、あるいはどこまでを許容するかが問われるゲームになるだろう。

ロボッツは、ここ数試合で献身的なディフェンスに磨きがかかったインサイド陣の仕事ぶりに期待をしていきたい。特に注目したいのが、サイズのミスマッチを問わずに戦いにいく、#11チェハーレス・タプスコットだ。シーホース三河戦で相手のエース#54ダバンテ・ガードナーからスティールを決めるなど、彼がしっかりと場面ごとに最適なプレーをすることで、ロボッツが流れを得ている。相手の流れを切る、奪い取る存在としてタプスコットが役割を演じきることができるか。

平日ゲームもこなしながらの過密スケジュールも、もう少しの辛抱。ホームでの戦いを前に、もう一つポジティブな戦果を得たいところだ。

おすすめの記事