「スポーツ×AIの今後の展望とは?地域未来競争とスポーツの可能性を探る」茨城大学×茨城ロボッツ対談

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誰でも無料で楽しく学べることをコンセプトとした、茨城大学が開催する「土曜アカデミー」。今回開催された本イベントは、茨城大学工学部や地域未来総合学環で教鞭をとる機械学習の専門家鈴木智也教授と、プロバスケットボールチームを運営する茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメントの川﨑社長が対談する特別企画。スポーツビジネスとAI技術の融合が地域社会にもたらす可能性に焦点を当て、今後の取り組みについて議論が行われた。

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新たな学部相当の組織「地域未来共創学環」

イベント冒頭では、今年4月に茨城大学に創設され、「学部等連係過程」と呼ばれる「地域未来共創学環」について紹介があった。約60年ぶりに新設となったこの地域未来共創学環は、従来の学部を超えた分野横断的な教育組織として、茨城大学の人文社会科学部・工学部・農学部という3学部をはじめとする多様な分野や文系・理系の壁を超えた授業をおこなうという。ビジネス×データサイエンス×ソーシャルアントレプレナーシップ(社会起業家精神)を教育の柱とし、学生が社会に必要な要素を分析し、最新のテクノロジーを駆使することで作業の効率化や業績アップに繋がる可能性を秘めている。

また、学生が地域課題に取り組むために、約3か月という長期に渡って企業や自治体と連携しながら企業や自治体のメンバーとして実習をおこなう「コーオプ教育」が最大の特徴だ。茨城ロボッツはBリーグのプレミアリーグ、B.PREMIERに参入する2026年以降にコーオプ教育の実習先として参加予定となっている。

課題解決を導くために必要な力は何か。「地域社会が抱える課題は複雑。なんで起きているのか、どういった背景があるのか。それらを解決するには、単一の専門分野に留まらない新しいアプローチが必要です。ツールというデジタル技術を使用して課題解決するには文理融合、文理横断し、AIにはない自主性が必要。それを学環で学んでほしい」と鈴木智也教授は語った。

地域社会に必要とされる茨城ロボッツを目指して

2024年11月13日で10周年を迎えた茨城ロボッツ。川﨑社長は、茨城ロボッツはトップリーグの中でもまだまだ小さいクラブだとした上で、2024-25シーズンに掲げた方針を広報発信の強化による報道の露出増やチケット有料率を重視した収益増とし、それらは着実に成長を遂げていると評価した。

「茨城ロボッツは単なるスポーツチームではありません。茨城・水戸を誇りに思ってもらえるような種まきをするのが我々の仕事だと思っている。スポーツビジネスを単におこなうだけでなく、シビックプライドとして地域に根差し、地域社会を元気にし、必要とされる存在を目指していく」と語り、茨城ロボッツが次の時代をつくっていくために愛着の種まきが一番大事であると強調した。

また、AIやデータ解析技術の面では、「現状顧客体験価値やマーケティング活動にデジタルの技術を取り入れているが、AIが人の感情や感動といった心を動かすことができるかのは興味がある。地域社会においてもどのような効果をもたらせているかを検証しながら進めたい」と語った。

AIとスポーツビジネスの未来で語られた「AI対AI」

対談では、AIがスポーツビジネスに与える影響やバスケットボールにおけるAIやデータ解析の活用についての議論が繰り広げられた。

鈴木教授は「AIを活用することで、選手のパフォーマンスデータから試合の戦術をリアルタイムで分析し、試合展開を予測することが可能になります。これにより、選手一人一人の役割を的確に評価し、チーム全体の戦略に生かせます」と、機械学習とAIの効率化について語った。

川﨑社長は、スポーツビジネス全体におけるAI活用の可能性について「選手のパフォーマンス向上や怪我防止、さらには観客体験の向上に至るまで、AIの可能性を追求している。AIの活用は、選手のコンディション管理だけでなく、観客の体験価値を向上させるマーケティングにもつながる。例えば、ダイナミックプライシングを導入して試合チケットの価格を需要に応じて柔軟に設定するなど、ビジネスの効率化も視野に入れています」とした。

スポーツとデータサイエンスの連携が地域社会や教育に新たな価値を提供する可能性についての議論が中心となる中で、茨城ロボッツと茨城大学が共有するビジョンは、「地域社会の活性化」と「次世代の可能性を引き出す」ことにある。
「スポーツを通じて地域の絆を強化し、人々に新しい喜びと誇りを提供していきたい」と川﨑社長が語るように、AI技術を取り入れたスポーツビジネスは、試合の勝敗を超えた社会的意義を持つと言えるだろう。一方、鈴木教授は「学生が地域課題に直接取り組み、解決策を模索する経験を通じて、自らの成長を実感できる教育環境を提供したい」と語る。

川﨑社長が「今後、大学生たちとも具体的なデータ分析や地域実践に取り組んでみたい」と呼びかけると鈴木教授は強く頷いた。茨城大学地域未来共創学環と茨城ロボッツの取り組みは、新たな可能性を切り拓く第一歩となるのではないか。今後も注目していきたい。

アーカイブ動画

茨城大学公式YouTubeチャンネルにて、「茨城ロボッツ・川﨑社長×茨大AI研究者・鈴木教授ガチンコ対談【茨城大学の土曜アカデミー】」のアーカイブ動画をご覧いただけます。

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