タフな戦いも前向きに~2021-22 開幕前特集 エリック・ジェイコブセン〜

リバウンド争いでの腰の強さ、一方では素早い身のこなしからスクリーナーとしても威力十分。もちろんその得点能力も含めて、昨シーズン、ロボッツを苦しめた#21エリック・ジェイコブセンが、今シーズン新たな仲間となった。今シーズンのタフさを重々理解するビッグマンは、自身3シーズンぶりとなるB1の舞台を非常に前向きな気持ちで挑もうとしている。茶目っ気もある彼の素顔を、インタビューから探っていく。

3季ぶりのB1は「楽しみ」

ジェイコブセンはレギュラーシーズン、そしてB2プレーオフと、大車輪の活躍を続けた。そんな彼が「敵」として見ていたロボッツは、どのような印象だったのだろうか。

「B2でもトップチームの一つだろうという感覚はありました。どんどん交代のカードを切ってきますし、そこで出てくる選手も層が厚いように思いました。特に終盤戦では『40分間戦うんだぞ』というメッセージを感じました。それこそがリッチコーチ(リチャード・グレスマンHC)のコーチングスタイルなのだとも感じましたし、僕のスタイルともとても合っているようにも思えました。」

2020-21シーズン、仙台89ERSではB2全体で7番目に長い1733分のプレータイムを記録。1試合平均のプレータイムも30分を超えた。ロボッツの選手の最長プレータイムが#11チェハーレス・タプスコットの1615分(1試合平均28分20秒)であったことを考えると、その数字はより際立つのではないだろうか。さらにプレーオフでは1試合平均33分以上コートに立ち、3位決定戦までの全7試合を戦い抜いた。

タフと表現するのも難しいようなシーズンを戦いきったジェイコブセンは、休息こそとったものの、あまりオフと言い切れるような期間は少ないまま、日本へと戻ってきた。母国・アメリカでは同じくBリーグで戦うクレイグ・ブラッキンズ(越谷アルファーズ所属)と合同で自主トレーニングを行って体作りをしてきたというジェイコブセン。本人は「仕上がりは90%」とした上で、久々のB1挑戦をこのように捉える。

「以前B1に挑戦したとき(当時ライジングゼファー福岡在籍)に、僕個人としてはケガを重ねてしまったので万全な状態ではなく、プレーをやりきるという状況にできませんでした。だからこそ、日本のトップレベルのリーグでプレーできることを考えれば、B1の舞台はとても楽しみなんです。」

スクリーナーとして、あるいはインサイドでの肉弾戦による存在感など、彼を言い表すに当たって「ハードワーク」という言葉はつきものである。ロボッツにおいても、ジェイコブセンはそれを代名詞とする気でいる。

「コートを走り回る、スクリーンをしっかりかけること、リバウンドを取りきる…。アイデンティティーとも言うべきハードワークはしっかりとやっていきたいです。そこに加えて、今シーズンはチームの助けになること、例えばシュート能力を伸ばして相手の脅威になりたいと思っています。僕が脅威になれれば、相手のディフェンスにもプレッシャーを与えられるでしょうし、それによってアウトサイドのシューターにチャンスをもたらすこともできるはずです。」

冗談めかして「オフに練習を積んだから、今シーズンは3ポイントもどんどん打つよ」と言ったジェイコブセン。しかし彼のシュートレンジが広がれば、ロボッツの戦略に幅が生まれることもまた事実である。「動けて、強固で、打てるビッグマン」へと進化すれば。彼がどんな活躍を見せるかにも注目だ。

チームメイトの支えを受けながら

とは言え、加入や合流からはまだ日が浅いジェイコブセン。チームの方針などを徐々に理解しながら、チームへの順応に努めているという。チームメイトや旧知の選手からのサポートを受ける場面も多々あるようだ。

「特にトラソリーニ選手やタプスコット選手は、僕をよく助けてくれています。コーチが僕に何を期待しているのか、選手の人となりとかをいろいろ話してくれて、自分がチームになじむ手助けをよくしてくれています。一方では、かつてチームメイトだったテン(#0遥天翼)がいることも心強いんです。去年のロボッツを知っている彼が教えてくれることもあります。」

福岡時代、B1昇格やB2優勝という栄光を手にしたジェイコブセンは、その後のチームの苦しみにも直面した。昇格初年度のチームにおけるポイントも、彼なりの視点で存在するのでは。そう思い、質問をぶつけることにした。

「プレーで必要な面は当然いろいろ出てくるとは思います。リバウンドやディフェンス、シュートを決めきる意識もそうです。ただ、自分として思うのは、どんな逆境が来ても戦い抜くことが必要だと感じているんです。タフな場面にいくつも出くわすでしょうけども、いつでも前を向いているべきなのです。その姿勢であり続ければ物事は正しい、あるいは良い方向へ進むでしょうし、勝てるチームにもなってくるはずです。」

プレーの勝手も違うが、例えばレフェリングの基準も変わる。「去年までなら」という展開も通じない瞬間がやってくるはずだ。彼は「overcome(打ち勝つ、乗り越える)」という言葉を使い、さらにこう続けた。

「逆境を言い訳にしないこと、チームで一体となって乗り越えることが大切だと思います。そこから積み重ねていく。チームスローガンのように『BUILD UP』していくことが、チームにとっても大切になるでしょう。」

「戦うバスケット」を標榜するロボッツにあって、勘所をしっかりと押さえている彼がいることは、厳しいシーズンの中でも必ず光になる瞬間が来るはず。27歳という若さで、すでに場数を多く踏んでいる彼の戦い様というところも、必ずやロボッツファンに焼き付いていくだろう。

今シーズンの意外な野望…?

今シーズンの戦いにおいて、マッチアップしてみたい相手やチームを問うと、仙台時代のチームメイト、ダニエル・ミラー(レバンガ北海道所属)や、出身校(アリゾナ州立大学)の先輩であるジェフ・エアーズ(新潟アルビレックスBB所属)の名前が挙がる。その上で、「ちょっと残念なことがある」と、ジェイコブセンは続けてこんな言葉を残した。

「今年残念なことは琉球ゴールデンキングスとの対戦が無いことです。コーチ・ダイ(琉球・桶谷大ヘッドコーチ。仙台時代の指揮官)に会いたかったのですが…。彼のチームと戦えたら楽しみだっただけに、楽しみにはしていたんですけどね。」

レギュラーシーズンでこそ対戦は無いが、Bリーグの祭典とも言うべきオールスターゲームが、今シーズンは沖縄で開催される予定だ。「オールスターメンバーに選ばれればそこで会えるのでは」とエールを送ると、ジョーク交じりにこう返す。

「だったら、Bリーグファンからの投票を集めなくちゃいけないし、そのためには僕の存在をもっと知ってもらわなきゃいけないね。良い記事をいっぱい書いて、僕のことを広めてくれないとダメだよ!」

オールスター選出は、ROBOTS TIMESに懸かっているかもしれない…という脱線はさておき、最後にファンへのメッセージを聞かせてもらった。

「難しいシチュエーションではありますけども、ファン皆さんの前でプレーできること、茨城の地での新しい出会いを楽しみにしています。ファンの皆さんには僕らのこと、また僕らのプロセスを信じてもらいたいところです。茨城のため、チームのために頑張りたいと思います。」

フル回転で勝利に貢献する彼がいることで、ロボッツは新たなオプションを得る。インサイド陣への化学反応が、今から待ち遠しいところだ。

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