これまでに無い危機感と共に~2021-22 開幕前特集 福澤晃平〜

これまでの5シーズンで沈めた3ポイントシュートは実に598本。まさにB2を代表するロングシューターであった#2福澤晃平は、今シーズンの開幕を前に並々ならぬ危機感を抱いていた。コロナ禍の影響もあり、実戦形式の調整が難しい中で、彼はB1での挑戦を前にどう感じているのか?「チャレンジャー」としてのロボッツが、どのような戦いの日々を過ごすべきか、彼の言葉からヒントを見出していく。

この強度が通用するのか

B1での戦いに向けては、コンタクトの強度をはじめと、これまでとの勝手の違いをイメージしながら練習に励んでいる福澤。旧知のトレーナーから協力を仰いでトレーニングメニューを作り、より強靱な体作りを目指した。

「審判が笛を吹く基準も違うと思うので、フィジカルを強化していかないと、スキルを発揮する前に、激しいコンタクトで体が疲労してしまって、持っている能力も出せないことが起こりえます。」

オフのトレーニングは功を奏し、今季ロボッツの仲間となった大塚健吾ストレングス&コンディショニングコーチが合流して以降の、練習強度にもついていけていると言う福澤。ただ、B1という未知の世界を前に、自身のコンディションがどの状態にあるのか、はっきりとした自信は掴みきれていないようだった。

「B1という舞台の経験が無いので、今準備していることが正しいのか、筋力を増やしたからと言ってそれが通用するのかも分かりません。これまでB2にいた中で100%とかそれ以上の準備ができていたとしても、B1では通用しない可能性もある。これまでも不安や考えすぎてしまうことはあったんですけど、特に今はチーム内でしか練習ができていないので、今の強度で開幕しても大丈夫なのかとか、そんな気持ちになってしまうことはあります。」

とは言え、自らの武器はしっかりと見定めて練習に励んでいる。これまで最大の持ち味としてきたシュート能力を、磨き続けることで開幕を待つ。ただ、福澤の心配は、このインタビューでたびたび顔を見せることになる。開幕節の秋田ノーザンハピネッツとの試合展開について話していたときのこと。福澤なりの最悪のシチュエーションが語られた。

「シーズンが始まる前からこんなに悲観的になる必要はないと思われるかもしれませんが、開幕で秋田さんと当たって、向こうはめちゃくちゃアグレッシブにディフェンスをしてくると思うんです。そこで、僕らと秋田さんの物差しが全部違っていて、『これがB1か』って面食らって、何も得られずに連敗してしまうこともあり得ます。」

では、どうすればそんな事態が防げるか。昨シーズン、チームの中で根付きつつあった「戦いきるバスケット」をしっかりと遂行しきることに他ならない。

「ファウルをしろとまでは言いませんが、どれだけマッチアップする選手にボールをつながせないか。リバウンドでのボックスアウトや、普段からスクリーンをやれるか。当たり前のことのレベルをどんどん上げていかないと、乗り越えることはできないんじゃないかと思っています。」

チームとしては、しっかりと強度を上げて日々の練習をこなし続け、開幕を待っている状態。少しでも良い状態を作り上げ、スタートを切ってほしいところだ。

2季目のバイスキャプテン。「耐え」の雰囲気作り

2020-21シーズンに続いて、バイスキャプテンを務めることになった福澤。今シーズンは新加入の#55谷口大智と2人体制で、キャプテン#25平尾充庸を支える体制をとる。今シーズン待ち受けている厳しい戦いに向けて、どのようなポイントで貢献を考えているのか、重視するポイントを尋ねた。

「B1に上がったことで、相手チームのレベルがもちろん上がりますので、苦しい展開も多くなると思うんです。プレーで泥臭さを出すことやアグレッシブに行くことはもちろん、ベンチやコートで、チームを鼓舞することやハドルを通してチームのベクトルを合わせることが重要になると考えています。調子が良いときは、みんなこれを率先してできると思うんですけど、劣勢になったときに、どれだけ耐えられるか。そういう時間帯は絶対来ると思うんです。そこで、耐えられるための声かけは意識できたらなと思います。」

苦しい時を耐える。これまでロボッツが意識していてもなかなか不得手としていた部分だ。ただ、ここが変わったことがB1昇格の原動力となったことは間違いない。B1の舞台で段違いに耐える力が要求される今シーズン、福澤が言うように声やハドルでその雰囲気を作り出していくことは、重要になるだろう。福澤はさらに、バイスキャプテンとしてどのような貢献ができるかを模索する。

「昨シーズンに続いて平尾さんがキャプテンですが、これまでと違って勝てない日々になることもあるはずです。そのタイミングで平尾さんに抱え込ませるのではなく、特に大智さん(谷口)との3人でしっかりコミュニケーションをとって気持ちを一つにしたいです。少なくともこの3人でのベクトルだけは変わらないようにしていれば、他のチームメイトも付いてきてくれるはずです。」

谷口が加わったことで、厳しさの中でもチームの雰囲気は良いと話す福澤。「ムードを作るのが上手な人」とした上で、それを自らに吸収しようともしていた。

「大智さんはチームを巻き込んでいける能力のある人だと思います。声かけのボリュームもすごくて、コートの反対側にいてもめちゃくちゃ聞こえてくるんです。僕はやっぱり自分がダメな時に『なんとかしなきゃ』って思ってしまうところがあるんですけども、大智さんがいることで『自分も声を出していかないと』って気づかされる部分もあります。」

その上で、チームがもう一段上のステップで戦うために、チームのコミュニケーションにも変化が必要だと話す。

「ミスをしたときに励ます声をかけることも大事だと思うんですけども、厳しさも必要な気がしています。『もっとハードに』とか、『ここはもっと行けた』とか、『自分はこうしてほしい』とか。一方通行になってはいけないんですけども、互いを深め合うコミュニケーションというのを増やさなくてはいけないように感じています。選手それぞれに考えはあるはずで、そこをすり合わせることは非常に大事なことだと感じています。」

半端であることは許されない

福澤は、どこまでも気持ちを引き締めているようだった。今シーズンに懸ける覚悟の程を、話してくれた。

「練習試合ができていない、特に他のB1クラブと当たれていないので、僕みたいにB1が初めてという選手は当たりのハードさとかは分かっていない状況の中で練習を積んでいます。でも、『このくらいで良いだろう』という気持ちでやっていたら、実際の試合で何もできません。強度、インテンシティ。もっと上げていかないと、準備ができないのではと思っています。」

「楽しみと不安は半々ぐらいで存在している」という福澤。今の準備が通用するか、蓋を開けるまで分からないこと、さらに、もしその準備が間違っていたとしたら。そんな想いもあるという。だからこそ「できることをやっていく」と、懸命に戦おうという姿勢で日々取り組んでいる。「所詮はB2レベル」と思われないこと、そんな評価があったとすれば見返すこと。淡々と話す中にも、闘志が伝わってくる。目前に迫った、Bリーグ通算3ポイント600本という記録に対しても、「それはゴールじゃない」と言い切る。その想いは、チームに対しても向けられた。

「B1に上がることは、個人としてもチームとしても目標ではありましたが、達成したからには次の目標が生まれます。『今シーズン1年間何をやっていたんだろう』ってならないように、1試合1試合、1日1日、無駄にせず成長することが大事です。」

福澤がロボッツに加入した2017-18シーズン、チームはホームをアダストリアみとアリーナに移した。多くの感動を生んだ「VICTORY FACTORY」は、今シーズン、また新たな姿に生まれ変わる。組織としてのロボッツがさらに成長するために、福澤は「また見に来たいと思われるような試合をしなくてはいけない」と言う。

「もちろん、会場の運営や雰囲気作り、今だったら感染対策もあると思うんですけども、選手が諦めるような姿勢を見せてしまってはダメだと思うんです。勝とうが負けようが、最後までワクワクするような試合をしたら、また応援したいと思ってもらえると思うんです。何か一つ、記憶に残るようなシーンを作れればとも思いますし、選手だけでなく、会社としてのロボッツも一体となって雰囲気を作り上げなくてはと思います。」

「応援してくださる方と、一緒に成長できたら」とも話す福澤。今シーズンは「チャレンジャー」として戦うロボッツが、いつの日かB1の強豪と呼ばれ、ホームアリーナが満員であることが当たり前になるようなタイミングに、彼もいてくれたら。その第一歩となる今シーズン、福澤が冷静に得点を重ねる姿がどれだけ見られるのか。シーズンの幕開けを、楽しみに待ちたい。

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