2023-24 シーズンプレビュー ~新たな形で、より躍動的に~

取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS,B.LEAGUE

B.LEAGUE2023-24シーズンの開幕が近づいている。昇格3シーズン目、今シーズンもB1東地区の配属となった茨城ロボッツは、強敵との戦いの日々を絶え間なく送ることになるだろう。今回の記事では、チームの体制が大きく変わる中で、どういった面々が、どのような場面で躍動していくことが勝利へのポイントとなっていくのか。選手たちや、新指揮官であるジェームズ・アンドリセヴィッチスーパーバイジングヘッドコーチ(SVHC)の声も交えつつ、まもなく開幕する新シーズンがどのようになるかを紐解いていく。

守ってこその攻め

アンドリセヴィッチSVHCは、合流時の会見で「ディフェンスレーティング」と呼ばれる数値について着目していた。その後発表されたチーム目標でも「リーグ15位以内」という具体目標が設定されている。

ディフェンスレーティングとは、例えば1試合の中で相手の攻撃が100回行われた時に何失点しているか、という「失点率」を表したもので、チームの守備指標を、平均失点以上により正確に捉えるとされる指標だ。そこを念頭に、アンドリセヴィッチSVHCは、攻守のレベルアップを課題として掲げた。

「ディフェンスレーティングは、昨シーズン、B1の24チーム中、ロボッツが19番手の数値でしたので、最優先に解決すべき点だと感じています。一方で、オフェンスに関しては、速く、スピード感のあるバスケットを目指したいです。『5アウト』スタイルのオフェンスを作り、ゴール下に向かって全員がアタックできるような状態を理想としています」

昨シーズンまでも、「アップテンポなオフェンス」を掲げた中に、表裏一体として「タイトな守り」という課題は常に存在していた。というよりも、爆発的なオフェンスをして勝つためには、まず守らねばならないというのは現実的な課題であり続けた。この部分のブラッシュアップや、より理想型に近づいていく状況を考えながら、各ポジションで競争を繰り広げる選手たちを見ていく。

緻密、かつ大胆に

まず、新たなカラーが出てきているのがバックコートを支えるプレイヤーたち。プレシーズンゲーム以来、昨季練習生からの「昇格」となった#22中村ジャズが積極的なディフェンスで活躍。ここに、よりパワフルな存在として#2モサクダミロラが加わったほか、スピードの切り札として、特別指定選手の#18大庭圭太郎も加入し、ガード陣の争いに一つのアクセントを加える。

一方で、シューター・クリエイターの双方をこなせる#13中村功平が開幕に向けて状態を上げてきている。在籍4季目を迎えた今シーズンは、バイスキャプテンの1人に就任し、8月に行われた初練習から、はつらつとした様子でコミュニケーションを取る姿を見せ続けていた。幅広いポジションで攻守ともに渡り合える能力は、今季のアンドリセヴィッチバスケにおいても重要視される部分だろう。

一方、そのとりまとめを期待されるのが、ロボッツ史上最長を更新する、在籍7シーズン目を迎えた#25平尾充庸だ。4季目のキャプテンとして、「不安半分、期待半分」とした上で、シーズンに向けた始動の段階で、今季のロボッツの新体制について、自らの思いを口にしていた。

「チームの若返りに伴い、より基礎的なところから、丁寧に指導が入ってくるだろうと感じています。その一方で、これまで若手とされてきた中村選手や鶴巻選手が『中堅』と呼ばれるような年齢になり、今までよりも『責任感』や『覚悟』を強めながら戦わなくてはならないと思います。その過程の中で、練習からの声かけやコミュニケーションを、シーズンを通じて強めていってほしいです。声をかけるからには、その選手にも日々の責任が生まれますし、自分自身に発破を掛けるような意味も出てくるでしょう。そうした部分を、ぜひ成長につなげていってほしいです」

激戦区では、各所で「柱」を作れるか

一方で、今シーズン、ポジションレスな戦いをする上で鍵となるのが、シューティングガード(SG)、スモールフォワード(SF)の選手たちだろう。

昨シーズンからオフェンス構築に参加する姿を見せていた#17山口颯斗は今季もその軸であることが期待される一方で、プレシーズンゲームでは、今季バイスキャプテンの1人となった#29鶴巻啓太のほか、#7浅井修伍や#12松本礼太といった面々が積極的にボールに絡んで1つの攻撃を作っていくところも見られた。

鶴巻の言葉を借りれば、まだ発展途上かもしれないが、方向性は垣間見えていると言えそうだ。

「全員でボールに絡んでいくことで、『ボールをたくさん動かす』という、自分たちの理想に近いオフェンスを遂行することができるようになりますし、そこから相手とのズレが発生するとも考えています。ズレをきっかけに、勝負を挑んでいくのが一つの形だとも思うだけに、練習からさらなるレベルアップを図りたいです」

新たなスタイルで中心となることが期待された#8ヘンリー・エレンソンと#21エリック・ジェイコブセンがインジュアリーリストに登録され、開幕を前に、外国籍選手の再編が起きた。その過程でBリーグ4季目を迎え、オーストラリア代表としても活躍してきた#9アンガス・ブラントと、B1・B2とカテゴリーを問わずダイナミックなプレーを見せていった#5マックス・ヒサタケが加わっている。

マーク貝島ゼネラルマネージャー(GM)は、アンドリセヴィッチSVHCとの編成に当たって、アウトサイドを中心としたプレーを目指した一方で、次のような意図があったことも明かしている。

「『センター、ビッグマンとなるポジション以外は同じように扱う』というように、ポジションの概念をある程度取り払って戦うと予想しています」

裏を返せば、ビッグマンに当たる選手には相応の特殊性が求められる。インサイドの強度を攻守ともに助けるのはもちろん、同時にボールを持たない状態でも、オフェンスの起点としてフィニッシュまで力強くあらねばならない。現時点ではブラントにかかる役割は大きいが、エレンソンやジェイコブセンの回復状況次第で、この辺りはシーズンを通じて大きな変化も起きていくことだろう。

また、このスタイルとなれば、オフェンスのスタートからフィニッシュ、さらには腰の低いディフェンスも含め、#11チェハーレス・タプスコットが今季も強烈な存在感を発揮していくはず。天皇杯でも見せたそのポテンシャルをシーズンでも大いに期待したい。

さらに、2季目を迎えた#1トーマス・ケネディの得点力も、試合を通じての飛び道具としてかなり重宝されていくだろう。このオフには3x3日本代表としてもその得点力を証明した。今季も胸の空くような3ポイントシュートを次々に沈めてくれることだろう。

前半戦から好カードの連続

ロボッツにとっては2季ぶりに敵地での開幕となる信州ブレイブウォリアーズ戦を皮切りに、ホーム開幕節となるファイティングイーグルス名古屋戦などディフェンスで勢いを作り出すチームが相手となる。「相手の守備をどう打開していくか」という部分を試されるシーズンのスタートになりそうだ。

続く対戦相手である大阪エヴェッサも、#8多嶋朝飛や#7西川貴之といった「元ロボッツ勢」の華やかさが目に付く一方で、堅いバスケットを理想としている大型補強を成し遂げた宇都宮ブレックスとの戦いも、一筋縄ではいかない。

つまり、シーズンの序盤戦で、早くもチームの理想型に対する完成度が求められるとも言え、良いスタートを切って、「勝って反省する」というサイクルに持ち込みたいところ。B1昇格後、2シーズンともにシーズンの入りには苦しんだだけに、今季こそダッシュを決めてほしい。もちろん、そのためにはシーズンを通じた、ファンによるブーストも不可欠。ぜひ会場に足を運び、時には「バスケットLIVE」も逃さずチェックし、ロボッツを強力に支えていってほしい。

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