#0 ロバート・フランクス「進化への姿勢がチームに化学反応をもたらす」

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取材・文:佐藤 拓也 text by Takuya SATO
写真:B.LEAGUE、茨城ロボッツ photo by B.LEAGUE, IBARAKI ROBOTS

開幕から19試合連続スターティングメンバー入り。そして、19試合終了時点でチーム最多となる1試合平均17.1得点、平均リバウンド8.1を記録。201cmの高さを活かしたダイナミックなプレーで攻守において圧倒的な存在感を示している。それがロバート・フランクス。通称ロボだ。

目次

2年目にロボッツを選んだ理由

アメリカ出身のロボはNCAAの名門・ワシントン州立大学卒業後、NBAでプレーする選手を育成するためのリーグ、NBA G Leagueでプレーし、1年後にNBAのOrlando Magicと契約を締結。その後、オーストラリア、イスラエルのチームに在籍し、昨シーズン、名古屋ダイヤモンドドルフィンズに移籍加入してBリーグデビューを果たした。

怪我の影響でシーズン後半戦は欠場が続いたものの、36試合にスターティング5として出場し、1試合平均31分51秒のプレータイムで18.1得点7.7リバウンド2.5アシスト、3Pシュート成功率38.7%の成績を残した。昨シーズン第9節でロボッツと対戦した際、2試合合計で50得点も決められる苦い思いも味わされた。
「シーズン途中で怪我をしてしまい悔しい思いもありましたが、Bリーグで活躍できることを証明することができたと思っています。そういう意味で昨シーズンは自分にとってすごく良いシーズンになりました」
充実した表情で昨シーズンを振り返った。

そして、Bリーグ2年目のシーズンに向け、選んだチームは茨城ロボッツだった。
「日本での2年目のシーズンということで、自分としてもっとできるということを証明したかったですし、自分のプレーの幅を広げたいと思っていました。その中で届いたのが茨城ロボッツからのオファーでした。昨シーズン、ロボッツはなかなか勝つことができませんでした。おそらく、今シーズンに向けても多くの人が『ロボッツがたくさん勝利することはできない』と思っていたことでしょう。でも、そのロボッツを強くしたいですし、勝利するところを多く見せることによって、自分のプレーヤーとしての価値が高まるし、プレーの幅が広がると思います。そういった思いでロボッツに入りました」

キャリアハイを狙う

今シーズン、ロボッツは開幕10連敗という苦しいスタートを切った昨シーズンからの変化を見せている。第2節で千葉ジェッツを、第3節では名古屋ダイヤモンドドルフィンズを撃破。開幕早々、昨シーズンチャンピオンシップに出場したチームから連勝を飾るという幸先のいいスタートを切った。

いずれの試合でもロボは躍動し、チームを引っ張った。第2節GAME2の千葉J戦では3Pシュート4本を決めて両チーム最多の25得点を記録。続く第3節GAME1名古屋D戦では、古巣相手に5本放った3Pシュートを決めることができず、得点も12にとどまったものの、献身的なディフェンスとリバウンド争いで力を発揮して勝利に貢献。「とてもスピーディーで、トランジションを重視する」(ロボ)ロボッツのスタイルに早々とフィットする対応力の高さを証明してみせた。

とはいえ、「もっとチームにアジャストしないといけない」と現状に満足する様子は見せていない。それどころか、さらなる成長に向けて、強い意気込みを示している。
「周りの選手やスタッフからは『良い仕事をしている』と言ってもらえているのですが、自分として求めているレベルのプレーはできていないし、全然満足できていないところもあります。現在のプレーで満足することなく、『もっとやれる』『もっと行ける』と思って、さらにギアを上げていきたいと思っています」

特に「自分は3Pシューターなので、3Pシュートのパーセンテージをもっと上げたい」と意欲を示す。昨シーズンの3Pシュート成功率は38.0%。しかし、今シーズンは19試合終了時点で32.6%に落としている。だからこそ、「プロのキャリアの中で大体成功率は40%を継続してきたので、そこは意識したい」と語気を強める。さらにリバウンドに対しても、19試合終了時点で平均トータルリバウンド数は昨シーズンを上回る8.1を記録しているが、「今シーズンはキャリアハイを狙っている。もっと数字を上げていきたい」と向上を目指している。攻守において、数字を高めることがチームの勝利につながることを理解している。だからこそ、「まだ僕は若いし、これから先がある。現状に満足することなく、常に成長することを意識しないといけない」とさらなる進化に向けて、貪欲な姿勢を見せている。

新たな「ロバート・フランクス」を作り上げる

そして、チーム力をさらに高めるために、スタイルを変えようとしているという。
「相手チームの選手は自分が中心選手だと思って、厳しいマークをしてくることが多い。その中で自分が持ち味を発揮することも大事なんですが、同時に他の選手をうまく使うことも大事になる。それをチームとして求められています。自分の仕事は一つだけではなく、いろんなことをやらないといけないんです。だから、すごく大変なんですけど、それも自分にとっての良いチャレンジだと思って、受け止めることができています」

その中で強く意識しているのが、プレーのバランスだという。
「周りを活かすことを大事にしながらも、自分を失わないようにしないといけない。そのバランスがポイントだと思っています」
自分のプレーばかりを意識するのではなく、常にチーム全体のことを考えてプレーするようにしている反面、周りばかり見すぎて、自分のプレーの強みをおろそかにしてはいけない。そのバランスの最適解を見出すことをテーマにしながら、新たな「ロバート・フランクス像」を作り上げようとしている。

シーズン序盤、強豪相手に勝利をおさめて勢いに乗りたいところだったが、その後、なかなか勝ちきれない試合が続いた。それでも、ロボはチームに対して大きな可能性を感じているという。
「試合によって好不調の波がありますが、それでも、どの試合もしっかり戦えている手応えはあります。ロボッツは可能性があるチームだと思っていますし、これからもっと良くなれると信じています。でも、やっぱり“あと少し”のところが足りない。どのチームが相手でも良い試合をすることはできているけど、最後のところで勝ちきることができていない。そこが自分たちの弱いところ。でも、そこを乗り越えることができれば、もっともっと勝てるようになると感じています」

新たな風と化学反応を起こす

“あと少し”とは何か。ロボはこう説明する。
「細かいディテールのところをもっと意識しないといけない。そこが欠けていると思います。10~20分できてもダメなんです。40分間やり続ける遂行力こそが、このチームの課題だと感じています」
直面する“あと少し”の壁を乗り越えることは簡単なことではない。一日一日のトレーニングを大切にして、プレーの精度を高めていくしかない。そのための努力をロボは絶やさない。

第10節GAME1滋賀レイクス戦。ロボは3Pシュート6本を含む、チーム最多の19得点を決めてチームを勝利に導いた。その活躍について、ロボは当然のように、こう述べた。
「すべて準備の賜物です。試合前だけでなく、1週間、2~3週間、1カ月以上続けてきた努力の成果だと思っています」
チームがどんな状況だろうと、地道に努力し続けられるメンタリティーこそ、ロボの強みであり、ロボッツが必要としていたものである。
「高確率の3Pシュート、アスレティック能力を活かした力強いペネトレイト、そしてチームを勝利に導くため努力を厭わないプロフェッショナルなメンタリティーはロボッツに新たな風と化学変化をもたらしてくれると思います」
ロボ加入発表時、落慶久GMが期待していた通りの役割を果たしている。ただ、ロボッツでの戦いの道のりはまだはじまったばかり。さらなる化学反応を起こし、多くの歓喜をもたらしてくれることに期待せずにいられない。

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この記事を書いた人

茨城県のスポーツシーンを取材するフリーライター。現在は水戸ホーリーホックを中心に活動しており、有料webサイト『デイリーホーリーホック』のメインライターを務める。
Twitter @takuyabeat69

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