【AFTER GAME】 2020-21第10節 仙台戦(12/05~06)~上位対決は1勝1敗。修正力と危機感で前に進め~

リチャード・グレスマン ヘッドコーチ
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取材:文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:B.LEAGUE

息つく暇もない戦いを繰り広げるロボッツ。そんな中、今シーズンの開幕前にチームに合流した外国籍選手への対応を巡って、Bリーグからロボッツに対してくだされた制裁の一報は、ファンやブースターなど、ロボッツを取り巻く人々に様々な影響を与えたであろう。その中で、ロボッツは仙台89ERSと激突。リーグ上位同士の山場といえる2試合は、1勝1敗で終えることとなった。白熱の戦いを見せた選手たちを称えると同時に、今シーズンの開催そのものがイレギュラーのかたまりであることを、もう一度立ち止まって考えなくてはいけない。そんな週末だったのではないだろうか。

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序盤の不調が尾を引く。指揮官が問うた「危機感」

GAME1、第1クォーター。結果からいえば試合の入りであるこの10分が、この試合のすべてを握ってしまった。仙台の強固なインサイド陣に対して、ロボッツは外からのシュートに活路を見出しにかかったが、その精度を欠く。3ポイント成功率は12.5%(8本中1本成功)だった。対する仙台は、#22笹倉怜寿が中心となってゴール下にリズムよくパスを送り込み、#21エリック・ジェイコブセンが得点を量産。外角からも効率よくシュートを打ち込み、終わってみれば30-10という立ち上がりとなってしまった。

いくらロボッツが攻撃力に長けたチームといえども、20点の差は、チームにとって重くのしかかるものだった。後半・第3クォーターに入って攻守がかみ合い始めたロボッツは、内外でバランスよく得点を重ね、一時10点差まで追い上げた。しかし、終盤に入って再び仙台が猛攻。結局85-64で敗れる形となった。64点は今シーズンの最少得点、21点差での敗戦はシーズンワーストに並ぶ数字だ。リチャード・グレスマンHCは試合後、「序盤の差が試合を決定づけてしまった」とコメントを残し、#25平尾充庸も「すべてが後手後手になってしまった」と試合の入りを悔やんだ。

ボールハンドリング、パスワーク、シュート精度。試合の中でプレー上の課題は徐々に修正こそできたものの、指揮官の「危機感が足りなかった」という言葉に、様々なものがたどり着くだろう。思えば、グレスマンHCはシーズンが進む中で、試合後の会見ではたびたび「危機感」というワードを用い、チームに警鐘を鳴らし続けてきた。それは勝った試合でも、負けた試合でもだ。何か特定のプレーに対する意識を問うているのではない。このシュートを外せば。このパスを送り込めなければ。この一歩が踏み込めなければ。一つ一つのプレーが連鎖的につながり合って、ゆくゆくは勝敗を分けてしまう。戦う集団としてチームを引き締めるキーワード、それが「危機感」なのだ。グレスマンHCは翌日に向けた抱負に、改めて「危機感」の重要性を説いた。

「修正点はたくさんあるのですが、どれだけ危機感を持ってゲームのスタートを切れるかが鍵になると思います。」

攻守にわたって高い強度を保ちながら、目の前のプレーを冷静に遂行しきる。その危機感を持ったプレーの数々は、明くる日のGAME2で発揮されることとなる。

連敗は許さず。攻守に見せた底力

先発メンバーに#2福澤晃平や#31アブドゥーラ・クウソーを起用し、スタートから「3ガード」を採用したGAME2。スターター起用の福澤が試合開始から積極的なディフェンスを披露し、仙台の攻め手を削っていく。ローポストの位置ではクウソーが相手ビッグマンと対峙。サイズのある相手にも当たり負けせず、安易な得点は許さなかった。結果として前半のロボッツは、仙台の3ポイントシュートを1本の被弾で乗り切り、得点者自体も3人(#5ダニエル・ミラー、ジェイコブセン、笹倉)におさえてみせた。

オフェンスでも、#15マーク・トラソリーニが広い視野を持ってプレーし、点取り屋としてではなく泥臭い役回りを演じる。福澤や#11チェハーレス・タプスコットがこれによく応え、ペイントエリアを度々脅かしていった。後半になると、仙台が3ポイントシュートを連発して猛追する展開になったが、ロボッツも勝負どころで#6小林大祐を中心に、きっちりと得点を決めて相手の流れを断つ。前日のことなど引きずらない。連敗は許さず、上位に留まり続けるのだという執念を感じる40分間となった。

GAME1では9本差をつけられたリバウンドも、GAME2では仙台より8本多く勝ち取り、ペイントエリアでの得点も上回った。一つ一つのプレーで相手の上を行けたことで、勝利を着実なものとすることができたのではないだろうか。指揮官も、試合を振り返ってこんなコメントを残している。

「ディフェンス面でよりアグレッシブに、ということを選手たちにも伝えていました。試合では集中したディフェンスからオフェンスのテンポをつくっていくことを目指していましたし、それが実現できたと感じています。」

チームとしてきっちり問題点を修正し、自分たちのテンポの中で戦うことができた。タプスコットも試合後、「前日のように序盤に大差をつけられてしまったところからよく切り替えることができ、良いゲームだったと思います」と激闘を振り返った。アウェー連戦が続く中、たやすく相手の雰囲気や戦術に飲まれない力は、勝負の上で大きな鍵を握ってくるだろう。GAME2の勝利は、チームの成熟度を確かに示すものだったといえる。

#11 チェハーレス・タプスコット選手

年内最後のホームゲーム。相手は熟成進む山形

アウェーでの上位対決を1勝1敗で終えた選手たち。次なる戦いは中2日での山形ワイヴァンズ戦だ。前回・10月28日の対戦時とはメンバーが変わった山形は、新戦力とのマッチングが進み、徐々に調子を上げつつある。ロボッツにとっては12月唯一のホームゲーム。落としたくない一戦であることは間違いないだろう。

新型コロナウイルスの大きな影響が収まる気配はいまだ見えてこない。そんな中、選手たちはもちろん、試合会場のスタッフや、そこを訪れる人たちが万全を期して感染対策を施しているからこそ、制約された応援の中でも熱い空間が生まれている。クラブはそこに立ち返り、今一度ファンやブースター、スポンサーといった、ロボッツに関わるすべての人たちからの信頼を、チームとして積み上げていくしかないだろう。

山形戦の注目は、得点能力の高い外国籍選手のマッチアップである。山形の#0アンドリュー・ランダルはシーズン途中からの加入ながら、今やチームの核ともいえる選手に。1試合平均20.5得点は目を見張るものがある。また、インサイドを切り開きながら、意表を突くキックアウトも出せる選手なだけに、要注意な存在だ。対するロボッツは#11チェハーレス・タプスコットがキーマン。相手がビッグマンでも積極的に1on1を仕掛けていく戦いぶりは、チームに勢いを与える。仙台戦では2試合ともチームのスコアリーダーとなっているだけに、好調ぶりを持続してほしいところだ。

ホーム・茨城での戦いは、これが年内最後となる。ロボッツがどのような戦いを見せてくれるか、注目だ。

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この記事を書いた人

福島県内での報道記者、大手自動車メーカーのモータースポーツ部門ライターを務めた後、独立。
茨城ロボッツを中心にB2の試合現場に足を運び、ファン目線から取材を重ねる。Twitter @MasaruARA

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