【AFTER GAME】 2020-21第18節 越谷戦(1/27)~辛抱のゲームも敗戦。原点からの再出発を~

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取材:文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:B.LEAGUE

B2東地区の上位同士による直接対決となった、越谷アルファーズとの一戦。両者にとっては一つの山場となる試合であり、互いのエナジーがぶつかり合う好ゲームとなった。ロボッツはビハインドの展開から盛り返し、一時はリードを奪う展開に持ち込んだが、終盤に再び越谷に試合をひっくり返されて83-88で敗戦。越谷と同率ながら東地区3位に順位を落としてしまった。難敵との戦いが続く中、鍵となるのは改めてチームのポリシーである「Unselfish」と「Toughness」であることを再確認し、ホーム連戦につなげてほしい。そう思えてならない一戦だった。

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攻守ともに見せた辛抱強さ

越谷は、#5アイザック・バッツと#33クレイグ・ブラッキンズの2人をスターターとして起用。インサイドとアウトサイドの役割をはっきりと分担させ、ペイントエリアから着実に得点できるような布陣を敷いていた。ロボッツはこれに対して2試合連続のスターターとなった#4小寺ハミルトンゲイリーなど、ビッグマンたちがしっかりと立ちはだかる。また、バッツがゴール下でシュートを仕掛けようとした際には、素早くヘルプが入って数的優位を作り出す。これを地道に繰り返すことで、越谷の自由な突破を許さなかった。

結果的に、小寺や#11チェハーレス・タプスコットが4つのファウルを記録するなど、インサイドを守った選手たちにファウルがかさむ格好とはなったが、ゴール付近でボールが止まる時間を作り出し、越谷の攻撃から連動性を断つことに成功した。この試合における越谷のアシスト数は13にとどまった(ロボッツは23)ことからも、ロボッツが粘り強く「ボールを止める」ディフェンスができていた証拠といえる。強力なビッグマンを抱えるチームと対峙する上での手本とも言うべきものだっただろう。

また、ゲームを通じたペイントエリアでの失点は34。リチャード・グレスマンHCが「ペイントエリアでの失点を35点以内に抑える」としていた中にあっては、一つ狙いを達成できたポイントだったと見てよいのではないだろうか。

こうした辛抱強さは、オフェンスにおいても現れていた。相手がどっしりと守るペイントエリアや、やや手薄だったペリメーターゾーンから次々にシュートを放ち、タプスコットや#15マーク・トラソリーニが粘り強く得点を重ねる。日本人選手も、#25平尾充庸や#6小林大祐がゴール下を脅かし、そろって2桁得点を挙げた。ペイントエリアでの得点は、越谷を大きく上回る52。インサイドで泥臭く攻めきるという得点意識が働いていたことが、この試合を白熱させていった要素だっただろう。

Unselfishにパスを出す、Toughnessにリバウンドを奪う。もう一度原点に返って

一方で、この試合を左右してしまったのが、シュート精度とリバウンドの獲得である。この日も外角からのシュートタッチが低調だったロボッツは、3ポイント成功率が17.2%。前節の奈良戦GAME1(●85-90)で記録した14.8%に次ぐ低さとなってしまった。シュートタッチ自体は水物ともいえるだけに、これだけを責めることはできない。試合を終えた平尾は敗因について、精度とは別の可能性について言及している。

「極端にシュート確率が低いこともありますが、同時に流れが悪い試合ではボールを動かせていません。今日の試合も、リードするところまではボールを動かしていけましたが、そこから全然ボールが動かなくなってしまいました。」

粘り強いディフェンスで相手の攻撃をしのぎきって、一気呵成にボールをゴール下まで運ぶ。この試合、ロボッツは最大7点のリードを築くことになるが、平尾の言う通り、リードを作っていた時間帯ではそうしたプレーが多く見られた。

特に調子の良い選手がいるならば、その選手を言わば「Go to guy」として、「フィニッシュまでをどうつなぐか、どう任せるか」を逆算していくという手法もあるだろう。ただ、ロボッツはそれを良しとしないチームであることを、今シーズンのポリシーからしっかりと掲げている。改めて「Unselfish」とは何であるかを確認し、個人で戦うのではなく、1本のパスから場面を切り開くことを大事にしたい。

もう一つ、プレーでの不安を挙げるとすれば、リバウンドへの姿勢である。タプスコットやトラソリーニがフィニッシャーとなっていた場面があったとは言え、越谷のバッツ1人に25本のリバウンド獲得を許すなど、チームトータルで17本もの差をつけられてしまった。一歩踏み込んでリバウンドが取れていればという場面もあっただけに、この差は無視できない。上位に居続けるためには「1試合1試合こぼせない状況(平尾談)」という中、一時も気の抜けない状況が続いている。しかし、目の前の試合を「Toughness」に戦わないことには、勝利はどんどん遠くなってしまう。誰か能力の長けた選手に任せるのではなく、全員でボールを奪いに行く。その姿勢が勝利を呼び込むと信じて、臆することなく戦い続けてほしい。

再浮上のためには勝利あるのみ

平日開催のアウェーゲームを終えて、ここからはホーム4連戦。次節の相手は山形ワイヴァンズ。山形は上位陣と立て続けに好ゲームを演じ、西地区首位を走っていた佐賀バルーナーズに2連勝を果たすなど上り調子だ。ロボッツを叩いてポストシーズン争いに本格的に殴り込もうと意気込んでいるところだろう。

山形の注目選手は、#1中島良史。ここまでチーム唯一となる全試合先発出場を果たしていて、内外を問わない様々なシュートパターンでチームを支えている存在だ。ロボッツとしては、彼が攻撃参加する割合を減らしていくことで、山形のチーム全体のシュートチャンスを減らすことが勝利への肝となってくるだろう。

そのキーマンとなるであろう選手が、ディフェンスからチームにエナジーを与えられる存在、#29鶴巻啓太だ。相手が体格の大きな外国籍選手であろうとも全く引かないスピードとパワーは、今のロボッツにとって大きな武器となっている。ウイングやインサイドの選手に対して、彼がどこまで迫力あるディフェンスができるか、期待しながら見てほしい。

もう一度ロボッツがジャンプアップを果たし、B1昇格という目標を現実のものとするには、やはり勝利し続けていくことが必要となる。苦難をチームとして乗り越え、再びファンやブースターに勇気を与える姿を心待ちにしたい。

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この記事を書いた人

福島県内での報道記者、大手自動車メーカーのモータースポーツ部門ライターを務めた後、独立。
茨城ロボッツを中心にB2の試合現場に足を運び、ファン目線から取材を重ねる。Twitter @MasaruARA

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