取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide TOYOSAKI
今シーズン唯一となる、つくばカピオアリーナでのホームゲームとなった佐賀バルーナーズ戦。プレーオフでの直接対決も予想されるチームとの戦いで、ロボッツは攻守にわたって躍動をみせた。GAME1で今季7度目となる100点ゲームを達成して勝利すると、GAME2ではロースコアの神経戦を制し、このカードで連勝を飾った。上位争いを繰り広げるチームを相手に攻め勝ち、一方では守り勝つという、別々の展開をものにできたことは、ロボッツの戦いの幅広さを見せつけるようなゲームにできたといっても良かったのではないだろうか。
久々の3ポイントラッシュ。チーム全体での改善の成果
ここのところ、ロボッツは特にアウトサイドでのシュートタッチに苦しむ試合が増えていて、佐賀戦を迎えるまでの10試合のうち、4試合で3ポイント成功率が25%を下回っていた。チームの3ポイント成功率の平均が32.7%であることを念頭に置くと、確率的にはやや物足りない状況が続いていたことは否めない。しかし、この佐賀戦では久々に胸のすくような3ポイントシュートが多く見られることになる。
立役者となったのは、ロボッツが誇る3ポイントシューターの#2福澤晃平、そして#13中村功平であった。GAME1の第2クォーター、競り合った展開が続く中で相手の攻撃をしのぎきると、2人は立て続けに3本の3ポイントシュートを沈める。それも、無理矢理に打ったシュートやボールが止まったところから打ったシュートではなく、ボールを動かし、相手の隙を作ったところから決めたものだった。福澤は、日々の練習の中で取り入れた動きが結果に出たと話す。
「ここ最近、チーム練習を終えたあと、中村選手と一緒に走りながらシューティングをするという、かなり息の上がるような練習をこなし続けていました。今日のように僕と(中村)功平の2人のところで、こうして結果として出てきたことは良かったと思います。」
ともに練習をしてきた中村も、福澤に感化されているのか、こんな言葉を残した。
「福澤選手は、きつい練習が終わったあとでもシューティングに打ち込んでいました。そんなストイックな姿を見て、そういう姿勢を見習って僕もシューティングに打ち込むようにしています。一緒にコートに立っていた場面で、チーム練習や自主練習の成果を出せたことは、ひとつ良かったのではないかと思います。」
最終的に、GAME1では福澤が5本、中村が4本の3ポイントを成功させ、#15マーク・トラソリーニも久しぶりに3ポイントを沈めるなど、チームとしても11本の3ポイントを成功させて勢いに乗っていった。1試合に10本以上の3ポイントが決まるのは、1月9日の愛媛オレンジバイキングス戦以来、実に10試合ぶりのことだ。
思い起こせば、開幕前の段階で福澤は「日々の練習を大切にすることも、バイスキャプテンの責任」と語っていた。シーズンが進む中で、彼がこなすハードな自主練習に、中村に限らず他の選手たちも参加するようになってきたという。シュータータイプの選手がが多く集まるロボッツにあって、3ポイントシュートの成功率は、一つの生命線ともいえる。チームとして課題解決を目指す姿がこうして実を結んだことで、これからさらに練習にも熱が入ることだろう。福澤は現状に満足することなく、試合後のコメントで、チームにさらなる奮起を促した。
「一緒に練習をしている選手たちも、ここから状態を上げていってくれれば、相手としても守りづらくなると思います。プロ選手であるからには、シュートが入るようにするのが仕事だと思うので、チームメイトを信じていきたいと思います。」
明くるGAME2でも、トラソリーニが4本全ての3ポイントを成功させるなど、チーム全体でのシュートタッチに改善の兆しが見えてきた。残る終盤戦において、ロボッツの「形」が一つ戻ってきたことは、大きな収穫といえるだろう。
「我慢ができるようになった」チーム。粘り強さを最後まで
互いのオフェンスが爆発したGAME1から一転し、GAME2はロースコアの状態で試合が展開されていく。佐賀の得点源である#6マルコス・マタや#25ケニー・ローソンたちに決定的な仕事をさせず、スコアをおさえこんでいく。そこには、勝利したものの93失点を喫したGAME1の反省がしっかりと存在していた。試合を振り返った、リチャード・グレスマンHCはこう語る。
「大きく強調していた部分は、相手のガード選手によるドライブをおさえることです。特にピックアンドロールを使ってくる場面で、高いプレスからしっかり守ろうという話をしていました。」
佐賀は#2レイナルド・ガルシアや#3澁田怜音など、突破力に長けたガード陣を強みとしている。GAME2では、高い位置からボールマンディフェンスのプレッシャーをしっかりとかけることで、彼らを簡単にシュートレンジに飛び込ませず、前線へのボール供給も断っていった。その間に細かなポジション取りを進め、ビッグマンたちを危険地帯からかき出す。ロボッツはディフェンスで先手先手を打ち続けていったのだ。GAME1とGAME2の比較で、ガルシアのアシスト数が12個から4個へと大きく減ったことや、澁田の得点をおさえたことは、成果の一つといえるのではないだろうか。一方で、ガード陣として実際に相対した福澤は、これとは別のチーム課題への意識もあったと明かす。前節・青森戦でのコラムでも取り上げた、「コミュニケーション」についてだ。
「チームの中で課題としているコミュニケーションのところでは、スイッチミスだったり、ディフェンスで何をすべきかという部分は、GAME1よりはっきりしながらやれていました。それによってイージーなレイアップを許すとか、そういった部分は減らせたのかなと思います。まだ満足していいようなレベルではないですけど、チームとして解決しようとできていたのかなと思います。」
そんな中、ロボッツはGAME2で、相手が多用したゾーンディフェンスをなかなかこじ開けられない状況に陥った。GAME1ではゾーンをかいくぐってゴール下へと入り込んだという得点パターンも、やや苦戦気味となる。この試合のペイントエリアでの得点は26点。GAME1からは10点以上少ないものとなった。福澤は、オフェンスの展開についてこうコメントを残す。
「昨日はゾーンディフェンスをされているときにコーナーから攻め込めたところもあったと思うんですけども、佐賀さんがこの1日でディフェンスの付き方などを修正してきたこともあって、攻めあぐねたところだと思います。マーク(トラソリーニ)が3ポイントを決めてくれましたが、それ以外の選手による得点が入っていなかったので、結果的に単調になってしまったと感じています。」
オフェンスが万全でないときに、どうすれば試合を優位に進められるか。今までこのコラムでも多く登場してきた話題だが、集中力の高いディフェンスを続けていくことが、単純にして明快な答えとしてもいいだろう。この佐賀戦で約1ヶ月ぶりに試合出場を果たした#14髙橋祐二は、「我慢」という言葉を使い、試合を振り返った。
「今までであれば、オフェンスがうまくいかずに流れを崩してしまうことがあったと思うんですが、今日はディフェンスでよく我慢できたなと感じています。今後も厳しい対戦相手が続きますが、ディフェンスで我慢する、というところを継続できればいいなと思います。」
我慢の展開の中、オフェンスで無理に均衡状態をこじ開けるのではなく、相手の攻撃を一本一本しのいで、勢いを削いでいく。オフェンスに強みを持つチームとの試合が続く中、その繰り返しで勝利が掴めることを、ロボッツの選手たちは試合という最大の経験で学べたのではないだろうか。
「仮想プレーオフ」は続く。勝てば「上」が見えてくる
佐賀戦を「仮想プレーオフのクォーターファイナル」とするならば、次節に予定されているアウェーでの西宮ストークス戦は「セミファイナル」ともいうべき戦いとなる。仮にこのままの順位でシーズンが終了した場合、プレーオフのセミファイナルで西宮とのアウェーゲームが予想されるからだ。西宮は1月24日の越谷アルファーズ戦に勝利して以来、現在13連勝中。怒濤の勢いでB2西地区の首位に駆け上がった。
そこに大いに貢献しているのが、#5マット・ボンズだろう。1月に西宮へ加入して以降、スターターとしての出場こそないが、積極的なオフェンスと得点能力でチームを引っぱってきた。身長は196cmと決して飛び抜けた高さがあるわけではないが、リバウンドにも献身的に飛び込むだけに、彼が自由に走り回る状態を防げないことには、勝機を見出しづらくなるだろう。
ロボッツとしては、誰が注目選手ということではなく、総力戦でこの試合をものにしてほしい。リバウンドに飛び込み、足を動かして相手に食らいつき、ボールをワイドにつないで相手の隙を探る…。ロボッツがこれまでシーズンで実践してきたことが、そのまま試される瞬間になるはずだ。
全く気の休まる様子も無く上位争いを繰り広げている中、目の前のライバルを倒していくことで、B1への扉は少しずつではあるが開けてくる。今シーズン唯一の西宮との対戦となるが、ここで勝利できるかがそのままシーズンの分岐点になりうる。終盤戦を占うこの対戦での勝利を期待したい。