取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE
敵地に乗り込んで行われた、信州ブレイブウォリアーズとの2連戦。お互いにB2に在籍していた2019-20シーズン以来、およそ2年ぶりとなる対決は、ロボッツのアップテンポなオフェンスか、はたまたリーグでも屈指ともされる信州のチームディフェンスかという予想がされていた。しかし、蓋を開けてみれば、集中力の高いディフェンスを40分間やりきったロボッツが2戦を連取。B1昇格後、初の連勝を果たす格好となった。守りを武器にしたチームに守り勝つという、新たな一面を見せた2試合。ロボッツを支えたのは集中力と思い切りの良さの連続だった。
最後まで切れなかった集中力
誰かのシュートが大当たりしても、タフなディフェンスの末に難しい体勢からリングにねじ込まれても。今節のロボッツには、不思議と焦りのようなものを感じなかった。それに加えて、「キーマンを定めて、徹底的に戦いきる」ことからブレなかった。象徴的だったのは、信州の#55アンソニー・マクヘンリーに対するディフェンスである。アウトサイドでボールを預けられたマクヘンリーに対し、インサイド陣がまずはシュートを打たせまいとしっかりと正対してチェックを行い、時には明らかなサイズのミスマッチであっても体を張っていく。GAME1の序盤、ミスマッチとなった#2福澤晃平が体を当てきり、絶妙のタイミングでヘルプに入った#8多嶋朝飛と共にショットクロック・バイオレーションを誘発した。この一発を決めきったことで、チームが勢いづいていく。信州のお株を奪うようなディフェンシブなゲーム展開に持ち込んで、前半で大きくリードを奪うことに成功。最終的に、ロボッツ戦まで11試合連続で2桁得点を記録していたマクヘンリーを、2試合合計で7得点に抑え込んだ。
GAME1で記録した67失点は、B1昇格以来の最少失点。レギュラーシーズンでは初の70失点以下での決着であった。リチャード・グレスマンHCは、GAME1での守り勝ちについてこのように振り返っている。
「B1初年度のチームとして、相手に対してどのような形で守るのか、どのような準備をしていくのかが必要だと考えています。失点を70点以下に抑えられたことも、自分たちにとっての大きな一歩だと感じています。ゲームプランとしては、簡単な3ポイントを気持ちよく打たせないことを重要視していました。全体的にはよく守れましたし、明日も引き続きやっていきたいです。」
GAME2で、信州は欠場が続いていた#50ウェイン・マーシャルと#77岡田侑大を戦列に復帰させる。特に岡田にはゲームを通じて27得点を許すが、乗り始めたタイミングでディフェンスから絡め取るという冷静さを見せ続けた。第2クォーターのオフィシャルタイムアウト明けに#29鶴巻啓太と福澤の連係プレーでスティール、第4クォーターには鶴巻のスティールからアンスポーツマンライクファウルを奪って、勝利への足がかりとなった。
筆者の主観かもしれないが、マーシャルと岡田が復帰するという想定を、ロボッツはきっちりとやりきったからこその結果にも見える。アウェーでの連戦、一方ではタイトなスケジュール、さらには#25平尾充庸の不在が続くなど、厳しい条件が続く中で集中しきった2日間を送ったこと、その上で連勝という最高の結果を得られたことは、チームへの追い風というほかない。2日間を終えたグレスマンHCはこのように選手を称えた。
「この勝利はたまたまのものではありません。ゲーム前まで3日間、良い練習を積み重ねることができましたが、簡単なことでもありません。この先も準備を重ね、良い結果に結びつけられるように精進していきたいところです。」
集中して、チャレンジを続けることで勝利を手にする。かねてから問われ続けてきた「戦う」の具現化が進みつつあることは、今後に向けた好材料だ。これを循環的に、あるいは習慣的にしていけるか。この先の戦いでの浮上のカギはそこに隠されている。
思い切りも相まって
この2戦、オフェンスで特に力強いパフォーマンスを見せたといえば、地元凱旋ゲームとなった福澤の名前が挙がるだろう。母校・東海大三(現:東海大諏訪)の後輩であった、信州の#31三ツ井利也とのマッチアップを制して、GAME1では代名詞の3ポイントシュート無しで11得点。GAME2では、一転して3ポイントを4発浴びせて22得点。主役といって差し支えない活躍を見せた。ディフェンスでもGAME1で三ツ井からチャージングを誘うなど巧さも目立った。B2時代、ロボッツが信州と最後に対戦した2試合で、完璧に押さえ込まれて2試合ともに無得点に終わったことを考えると、彼の成長ぶりが改めて際立ってくる。
ほしいところではパスをつないで、チャンスの起点にもなった。アシストはGAME1で4つ、GAME2では7つを記録。このパフォーマンスに関しては、グレスマンHCもこのように評価する。
「福澤選手は、非常に素晴らしい選手であり、非常に素晴らしいシューターです。一方ではただのシューターではなく、多彩なプレーができる選手でもあります。身長が高いわけでもない中、B1で戦えるレベルまでしっかりと成長してくれました。本当に大きな存在だと思っています。」
また、本人も久々となった凱旋試合を、GAME1を終えた段階でこう振り返った。
「地元出身ということで名前を呼ばれて、拍手で迎えられたときにうれしかったです。3ポイントはなかなか入らなかったので、もっと良い状況で打てるようにならないといけませんが、切り替えてペイントアタックやアシストができたこと、大事な場面でそれができたことが良かったと思っています。地元で試合ができるのはこの2試合しかないので、しっかり恩返しができればと思います。」
思い切り、となると多嶋の活躍も見逃せない。GAME2の第4クォーター、多嶋はフリースローを2本連続で落としてしまうのだが、そこで積極性が削がれることはなかった。残り5分あまりの場面で、ウイングの位置から相手の隙を見計らったかのように3ポイントを叩き込む。シーソーゲームだったところで、一気にロボッツに流れを傾けるようなビッグショットだった。ロボッツ加入後最多となる15得点で、勝利を後押しした。
多嶋本人は、試合直後のインタビューでその場面を問われてこのように語る。
「相手がジェイコブセン選手の後ろに回ったので、ズレを作りに行くことも可能だったんですけど、思い切って打つことがロボッツのスタイルだと思いましたし、フリースローを落としてしまったことも心残りでした。良いところで決められたなと思います。」
キャプテン・#25平尾充庸の欠場が続く中で、平尾不在の5試合全てでスターターを任せられている多嶋。彼がめきめきと状態を上げていることは、チームにとって好材料というほかない。序盤戦で苦しんでいたシュートタッチも徐々に合うところが見られ、相手を欺くようなフローターもスパスパと決まるようになってきた。チームがB1の戦い方を急速に吸収している中、ベンチマークとして多嶋がいる意味も大きい。多嶋が残したコメントには、ロボッツが進むべき道しるべが示されているようだった。
「いかに自分たちのペースをコントロールしながら、粘り強くバスケをすることがすごく大事だと思っています。アウェーで難しい2試合になったんですけども、勝ち切れたことは良かったと思います。これからチームはもっともっと成長するでしょうし、その糧にできればと感じています。」
Bリーグ納めは、アダストリアみとアリーナで!
BリーグはB1、B2共に明日・12月29日の試合を以て年内の日程には一区切りがつき、「Bリーグ納め」ともいうべき試合を迎える。ロボッツはアダストリアみとアリーナに東地区2位の川崎ブレイブサンダースを迎え撃つ。11月の対戦では連敗を喫してしまった相手だけに、一味違う戦いを見せてリベンジを果たしたい。
リーグ4位の平均得点85.4を誇る川崎。目下リーグ得点王を走る#22ニック・ファジーカスの脅威は言わずもがなだが、前回の対戦で牙をむいた#23マット・ジャニングへの警戒を怠りたくない。11月の対戦ではGAME1で14得点、GAME2で16得点と持ち前の得点能力が爆発。登録ポジションこそシューティングガードだが、ボールプッシュやピックアンドロールでの組み立てにも優れており、川崎が誇るビッグラインアップに大きく幅を持たせることに成功している。彼を誰が抑えるかに当たっては、前回ジャニングに手を焼いた鶴巻のリベンジか、はたまたここのところ元気の良い#13中村功平の出番か、あるいはサイズやスピードで利する#0遥天翼や#14髙橋祐二か。しっかりと練ったマッチアップをしていきたいところだ。
また、勝負のカギはリバウンドとインサイドでのディフェンス力だ。特に前回対戦のGAME1では、セカンドチャンスポイントでの9点の差が、そのままゲームの点差となってしまった。オフェンスリバウンドを取られてしまうと、高さに分がある川崎の長所を活かされる格好となる。攻守ともにリバウンドを1回で取りきること、またリバウンドに至らせない確度の高いシュートセレクションを行うことで、勝利への活路を見出していきたい。
ホームで強豪へのリベンジの機会を得たロボッツ。勝利で2021年を締めくくって、新年への原動力としていきたい。