【AFTER GAME】 2023-24 Vol.3~仲間を信じて。ロボッツらしさを取り戻す~

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取材:文:佐藤拓也 text by Takuya SATO

写真:Bリーグ photo by B.LEAGUE

1月21日に行われた第18節GAME2島根スナノオマジック戦、リーグ後半戦初戦となったこの試合で、茨城ロボッツは98対85で西地区2位の強豪を撃破。

「今季ベストのゲームができた」

試合後、リチャード・グレスマンHCは誇らしげな表情で喜びを口にした。

目次

コートで戦わなければ始まらない

それまでロボッツは30試合を戦い終えて、わずか2勝しか挙げられず、東地区最下位に沈む状況が続いていた。また、前日のGAME1では「オフェンスもディフェンスも中途半端で、自分たちのやりたいことが何もできずに終わってしまった」と#29鶴巻啓太が振り返るように、島根に圧倒され続けて、30点差の敗戦を喫した。

浮上のきっかけをつかむことができないまま大敗を喫し、チームとして崩れてもおかしくなかった。

しかし、この苦境で“ロボッツらしさ”を取り戻してみせた。その原動力となったのが、頼れるベテラン #25平尾充庸だった。この試合において、チームとして変えたことは「戦う姿勢だった」と平尾は断言する。

大敗を喫したGAME1終了後、平尾は選手たちに向けて、「戦わないならコートに立つな」と厳しい言葉を投げかけた。そして、GAME2の前にはあらためて「戦う姿勢だけしっかりしよう」と訴え、「コートに立って戦わなければ、はじまらない。そのうえで1人1人役割を果たしていこう」ということを共有して試合に臨んだ。

「みんなに伝えた分、言葉の責任もある。僕が体現しないと何もはじまらないと思ったので、最初から自分の持っている力をすべて出し切ろうと思ってコートに立ちました」

試合開始から平尾はエンジン全開で強烈にチームを引っ張った。

開始から3連続で3ポイントシュートを決めて勢いをもたらし、その後も強度の高いディフェンスで島根の攻撃を食い止めて、流れを引き寄せた。

キャプテンの気迫に呼応するように、チーム全体でエネルギーを全開に戦い続けた。

第1Qでは序盤から猛攻を仕掛けて一時11点差に広げながらも、第2Qでは島根の反撃を受けて、2点差まで追いつめられる状況となった。

今まではズルズル失点を重ねて逆転を許してしまうことがほとんどだったが、そこから再び攻勢に出て、残り3分以降、島根に得点を与えることなく、得点を重ねていき、12点差で前半を終えることに成功した。

その勢いを後半も維持し、第3Q開始2分で20点差に広げて、そのままペースをつかんで優勢に試合を進めることができたのだ。

「第2Qで2点差になってから10点差に広げることができました。しかも、後半もその勢いで戦い続けてくれた。相手が反撃してきた時に落ち込まないで、自分たちが精神的な強さを持ち続けることを、試合を通してできたと思います。今シーズン、前半にいい戦いをしても、後半相手の強度が上がった時にボールが止まってしまって、そこから綻びが出ることがよくあったんですけど、今日は40分間戦い続けてくれた」

グレスマンHCが選手たちを称えたように、「戦った」のではなく、「戦い続けた」ことが勝利をもたらした。

シュート成功率向上の要因

そして、もう一つ、これまでの試合と大きな違いがあったと平尾は言う。

それは「コートに立っている5人が連動したこと」。

「自分たちは負けているチームなので、どうしても『自分が打開してやろう』という気持ちが強くなってしまっていた」

結果が出ない中で1人1人の責任感が強くなりすぎてしまう悪循環に陥っていたと平尾は感じていた。しかし、この試合は違った。

「今日はどちらかといえば、自分が点を取ってやるというより、しっかりボールを動かしながらノーマークの選手を探してくれた。だから、ハイパーセンテージのシュートが打てたと思っています」

その象徴的なシーンとして平尾が挙げたのが、第2Q残り25秒でのプレーだった。

中央に侵入した #18大庭圭太郎が3ポイントライン外にいる #1トーマス・ケネディにパス。3ポイントシュートを得意とするケネディにとって絶好のシュートチャンスが訪れた。

「いつものケネディなら、そこでシュートを打っていた」(平尾)

しかし、ケネディは素早く、よりフリーの状態でコーナーにいる鶴巻にパスを送り、鶴巻が冷静に3ポイントシュートを決めてリードを広げた。

前日の試合で21.1%だった3ポイントシュート成功率が、この試合では55.2%に上がった。2ポイントシュートも42.9%から56.7%に高まった。シュートの成功率の向上が勝利の大きな要因と言える。

急にシュートがうまくなったわけではない。

高い成功率を生み出した理由は、前日から10も増えたアシスト23という数字に表れている。

初勝利を挙げた長崎ヴェルカ戦のアシスト数は19、2勝目を挙げた京都ハンナリーズ戦のアシスト数は27。アシスト数の高い試合は勝利を手にすることができている。

「自己犠牲じゃないですけど、ノーマークの選手にパスを出したことによって、ハイパーセンテージのシュートを打てたんだと思います。ボールを動かすと、自分たちらしいバスケができるし、いいバスケができる。個人で打開するんじゃなくて、みんなを信じて、パスを回していけば、次は自分に回ってくることが分かったと思う」

平尾は確かな手ごたえを口にした。

ロボッツらしくあり続ける

ロボッツがロボッツらしくあるために大事なのは「連動性」だと、平尾は断言する。

「アグレッシブにバスケをすることは必要なことだと思いますが、コートに立っている5人が連動して動かないと、アグレッシブに動いたところで、状況を打開することはできません。今日、あらためて全員が動いたからいいバスケができるんだなと感じることができました。自分自身も今まで以上にアグレッシブにやらないといけないと思いますが、その中でも周りを動かしながら、自分を活かしていきたいと思います」

仲間を信じ、仲間を活かすことによって、自分が活きる。そして、チームとして活性化する。

平尾一人ではなく、全員がその意識を持ってプレーし続けることによって、ロボッツは最大の力を発揮する。その成功体験を手にしたことこそ、この勝利の最大の意義だ。

リーグ後半戦、浮上の道筋が明確に見えた。

ただ、まだ東地区最下位のままであり、リーグ全体でも勝率最下位という状況に変わりはない。

大事なのはここからだ。

「今日の勝利はもちろん自信につながりますが、やっと土俵に立てたと思っています。戦う姿勢を見せる。そこから積み上げていくことが残りの試合でも大切になってくると思います」

平尾は気を引き締める。

第15節GAME2京都戦で今季2勝目を挙げ、第16節GAME1で中地区2位のシーホース三河相手にオーバータイムまでもつれ込む接戦を繰り広げるなどいい流れを築けそうになりながらも、持続させることができなかった。

同じことを繰り返すわけにはいかない。

この試合で見せたメンタリティーとプレーをベースに、残り試合を戦い抜くことが求められる。そして、それこそが、現状打破の唯一の方法だ。

そのために、やるべきことは確認できた。あとはやり続けられるかどうか。

そして、ロボッツがロボッツらしく戦えるかどうかに懸かっている。

すべては自分たち次第だ。

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この記事を書いた人

茨城県のスポーツシーンを取材するフリーライター。現在は水戸ホーリーホックを中心に活動しており、有料webサイト『デイリーホーリーホック』のメインライターを務める。
Twitter @takuyabeat69

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