取材・文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:B.LEAGUE
2020-21シーズンのBリーグが開幕を迎えた。茨城ロボッツは敵地で群馬クレインサンダーズと激突。いきなりプレーオフや優勝を争うライバルと目されるチームとの対戦となったが、結果は2連敗。重苦しい滑り出しとなってしまった。しかし、試合全体を見ていくとロボッツに全く良いところが無かったわけではない。ただ、今後シーズン中に幾度と訪れるであろう厳しい試合を勝ち切るに当たって、チームとして取り組むべき課題がはっきりしてきたことも事実である。開幕節の2戦から見えてきたのは、「unselfish」と「tough」という、リチャード・グレスマンヘッドコーチ(HC)が掲げる今シーズンの戦略そのものだった。
2戦ともに掴みかけた流れ
開幕節の2戦を通じて確実に言えることは、群馬に対して、手も足も出ずに敗れたというわけではないということ。ロボッツは確実に見せ場を作り、優勝候補の群馬に食い下がった。共通していたのは、ディフェンスから攻撃への流れをしっかりと作れていたことだ。ポイントガードが持ち前のスピードで相手の自由を奪い、苦し紛れのパスミスを誘った。また、#15マーク・トラソリーニを中心にビッグマンたちがディフェンスリバウンドも奪い、攻撃へのリズムも作った。
これに応える形で、オフェンスも躍動した。開幕戦(10/3)では、インサイドを塞がれたと見るや、#2福澤晃平を中心にアウトサイドでシューター陣が3ポイントを沈めていく。第2クォーターでは、計5本の3ポイントシュートを沈め、一時4点差まで迫った。日曜日の第2戦では、第1クォーターからパスワークで相手を翻弄し、インサイドでも#6小林大祐のフェイドアウェイが決まるなど、一時はリードを奪う展開となった。
だが、開幕戦の試合後、福澤が「自分たちでオフェンスの形を崩してしまった」という言葉を残したように、ロボッツは2試合ともに掴みかけた流れを手放してしまった。開幕戦では、第3クォーターでパスワークが重くなり、外側でボールを動かしてもシュートをなかなか沈められない状況に。特に3ポイントシュートが全く決まらず、7本を放って成功なし。ディフェンスリバウンドにおいても9本を奪われたロボッツは、全くリズムを掴めないまま、このクォーターで大幅なリードを許した。
第2戦では、第2クォーターの攻撃で問題を抱えた。クォーター序盤は守備が機能し、相手にも得点を許さない展開に持ち込んだ。しかしその後、チャンスを掴んでも、自滅とも言えるオフェンスファウルを犯して相手にボールを渡してしまい、十分な攻撃時間を作ることができなかった。結果として12連続失点となり、あっという間にビハインドの展開となってしまった。
試合後の会見で、福澤や#25平尾充庸は、流れを失った理由を「ボールが止まり、個で攻める展開となった」と述べた。この状況を打開するキーワードは、「unselfish」に他ならないだろう。その言葉通り利己的にならず、「渡せば誰かが決めてくれる」ことを信じて、パスを出す。その結果、一点でボールが止まらず、隙を生み出すこともできる。グレスマンHCもボールと選手の連動を課題として掲げているだけに、今後シーズンが進む中での改善を期待したいところだ。