取材:文:荒 大 text by Masaru Ara
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide Toyosaki
開幕節は敵地での戦いとなった茨城ロボッツ。第2節はホーム・茨城へと戻り、アースフレンズ東京Zを迎えてのゲームとなった。10月10日の第1戦で今シーズン初勝利を挙げると、翌11日の第2戦は、最大19点差をひっくり返しての劇的勝利。アダストリアみとアリーナを熱狂の渦に巻き込んだ。今節の連勝の裏には、高いプレッシャーを保ち続けたディフェンスと、選手全員が最後の1秒まで力を出し切るための戦略が存在していた。今後のロボッツの戦いにおいて、躍進のヒントになるであろう部分を、改めて振り返っていきたい。
「点差は悲惨だった」が、誰も諦めていなかった
11日の第2戦、ロボッツは第3クォーター終了時点で、東京Zに対して16点ものビハインドを背負っていた。端から見れば、敗色濃厚と言ってもいいような状態。だが、その場面でも選手たちは口を揃えて「試合を諦めていなかった」と言う。第4クォーターでコートに立った#6 小林大祐もその一人だ。
「16点差というのは、正直に言って悲惨な点差でしたが、第3クォーターが終わった段階でも選手みんなで『逆転できる』という話はしていました。一方で、オフェンスに徹したところで、流れはやってきません。相手からボールを奪う、簡単にボールを出させないというところを徹底することにしました。」
良い守備が、良い攻撃を生む。ロボッツはその連鎖で、猛烈な追い上げを見せていった。点差が縮む中で、東京Zはファウルがかさんでしまい、第4クォーター中盤の時点でチームファウルが5つに達していた。加えて、なんとか流れを取り戻そうと、タイムアウトで間合いを取りに行く。東京Zはロボッツが逆転を果たした残り3分時点で3つのタイムアウトを使い切ってしまった。
対して、ロボッツはお祭りのような追い上げムードの中でも、冷静さを失っていなかった。東京Zの#10 岡田優介や#24 髙木慎哉といったシューターに対しては、小林や#13中村功平が厳しいマークで張り付いて自由を与えず、ショットクロックを使わせてタフショットに追い込む。なんとか引き剥がしたい相手がスクリーンを敷いても、すぐさまスイッチで応じていく。網に絡め取っていくようなディフェンスで、ロボッツは流れをどんどんと自らに引き寄せていった。小林は、これこそがロボッツの変化であると言う。
「僕が加入した昨シーズンから、ロボッツは個人の能力が高く、オフェンスを強みとする一方で、ディフェンス面で、相手のオフェンスの選択肢を無くすということがやりきれていないことが課題でした。ディフェンス面での解決策を、相手に攻め込まれている時に持てるようになれば、昇格への道が開けると考えています。特にうちはスモールチームなので、ディフェンスとリバウンドが常に課題になってきます。これまでオフェンスで打開しようとしていたことを、ディフェンスで解決できるようになれば勝ちにつながると、チームにも伝え続けていました。」
一方、オフェンスにおいては、例えばビッグマンが体格で押していくような個の打開というのはほとんど無く、ボールを動かしながら、小林や平尾に対して速いパスを送り込み、スピードで相手を振り切って得点を生み出していった。ディフェンスでは時間を使わせたが、オフェンスは「アップテンポ」そのものだった。#25平尾充庸は、コート上の選手たちにある共通理解があったと振り返る。
「オフェンスで時間をかけてしまうと、自分たちのシュートが入らなかったときに時間がなくなってしまいます。小林選手から言われたのですが、ショットクロックが15秒残っていたとしてもシュートを打って、アグレッシブに攻めていこうという意識を、コート上の全員が認識できていたことが大きかったと思います。」
平尾は、「まだまだ思い描くバスケットにはほど遠い」と試合後にコメントを残したものの、あの10分間の大逆転劇は「選手とボールが連動するアップテンポなバスケ」という理想に対する、一つの答えだったのではないだろうか。