取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎 彰英 photo by Akihide TOYOSAKI
ホーム5連戦の始まりは、アースフレンズ東京Zを迎え撃つゲーム。ロボッツは#2福澤晃平の大活躍でGAME1を94-68の大差でものにすると、GAME2では重たい試合の入りを修正し、最終盤での相手の猛追を振り切って86-68で勝利。このカードの連取に成功し、B2東地区2位の座に再び舞い戻った。だが、安堵すべきゲーム運びだったかと考えると、そうではない。コートに立った選手たちの言葉から、ロボッツをより強いチームに進化させようともがく姿が浮かび上がってきた。
課題の出だしで苦戦。見えない「敵」と戦いながら
GAME1、GAME2ともに第2クォーター以降で相手を大きく引き離した、またはリードを奪い返したことからつい目をそらしがちになるが、ロボッツは試合の立ち上がりで苦しんでいた。GAME1ではオフェンスでいきなり4つのターンオーバーを引き起こしたほか、この試合大車輪の活躍を見せることになる福澤も、なかなかシュートまで持ち込めない。GAME2もなかなかゴールを脅かせず、得点を挙げきれない場面が増えていた。対して、東京Zは積極的にゴールへと向かい続けることで、一旦は試合の主導権を握りかける。このような状況が生まれたことについて、福澤は次のように分析する。
「抽象的な表現になってしまいますが、試合の入りでディフェンスのエナジーやインテンシティ(強度)といった部分が足りなかったなという印象でした。ファウルをしろとまでは言いませんが、(簡単な)レイアップを許す場面もあったのでもっと体を寄せることは必要だったと思います。オフェンスでも、最初はボールが回らず、中に切り込んだり、相手をはがしたりする動きも後半と比べるとゆるかった気がします。そこが一つ違うだけで、誰かがノーマークになる場面もできたと思うんです。」
それだけでなく、「相手にフォーカスできていない時間もあった」という福澤。立ち上がりに苦しみ、「ゆるかった」ゲーム運びの理由を尋ねると、彼なりに原因を感じ取っている部分があるようだ。
「他の試合でもあることですけども、『あとからやり返せばいい』という風に見えるシーンが結構あります。一度相手に点差を付けられてから、コミュニケーションをとったり、危機感を持ったりすることで、試合運びが良くなっているのかなと感じています。例えば西宮戦のGAME2では、出だしからそれができていました。シーズンが進む中、どこが相手でもやらなくてはならないことだと感じています。」
キャプテン・#25平尾充庸も、そうした流れには警鐘を鳴らす。GAME2を終えての記者会見で、平尾は次のように述べた。
「今のロボッツは、まだどこのチームにも勝てる一方で、どこのチームにも負ける可能性があるチームです。起こっている状況をいかに自分ごととして捉えられているか、また全員が集中できているかということだと思います。集中しているのが伝染するのは難しいことなのですが、一方で気を抜く、少しのふわっとしたプレーが伝染するというのは今のロボッツにありがちなところなので、そういった部分をなくさなければならないと思っています。」
1試合の40分を通して、コート上に立つ選手たちがアップテンポでボールと人を動かし続ける「ロボッツのバスケット」を体現し続ける。ハードな課題ではあるが、難敵に立ち向かうに当たって、相手に合わせてしまっては持ち味を出しづらくなることもまた事実だ。シーズンは刻一刻と終わりに向かって近づいているが、乗り越えた先に「強いロボッツ」が実現できると信じて、解決に向かってほしいところだ。
ベンチメンバーも含めて「耐え」の展開を作って
一方で、この2試合で見逃せなかったのは、ベンチメンバーの活躍だ。#0遥天翼や#29鶴巻啓太たちは相手のフォワード陣たちにひるむこと無くマッチアップを挑み、#13中村功平は果敢に3ポイントシュートを放っていくことでその期待に応えた。ビッグマンディフェンスを必要とする場面やボールを動かしたいという場面では、#4小寺ハミルトンゲイリーの活躍も光った。この2試合、スターターとして出場した福澤も、「2連勝はベンチメンバーが悪い流れを耐えてくれたからこそ」と語る。一方、投入された側の選手たちも、自らの役割をしっかりと頭に入れてゲームに臨んでいた。ここでは中村の言葉を借りてみたい。
「僕が試合途中から起用されるときは、ちょっとリードされていたり、シュートも入っていなかったりという場面が多いです。そんな中で、『思い切りシュートを打ってこい』と伝えられて送り出されるんですけど、奪われたリードを取り返さなきゃいけなかった場面だったので、思い切り行きました。一方では、3ガードの場面でボール運びを平尾さんや福澤さんに任せてしまったり、シューター陣をファウルで止めてしまうことも多かったので、そこは反省しないといけません。」
流れが悪い状況で必要なのは、思い切りの良さ、あるいはチームを奮い立たせるエナジーといった部分であり、それを選手たちも理解している。バイスキャプテンを務める福澤も、それを痛切に感じている一人だ。
「控えで出る展開も多いのですが、声を出して鼓舞するとか、ファウルをしてでもアグレッシブにディフェンスをするとか、いろいろ心がけています。自分が出たときにチームの雰囲気を一新できるように、ボディランゲージや声かけをできる存在にならなくてはいけないですよね。」
思えば、福澤はシーズン前、バイスキャプテンとして「チームを勝たせるという責任がある」と述べた。エナジーあふれるプレーも、積極的なコミュニケーションも、全ては勝利のためにもがくからこそだろう。このもがきをチーム全体が感じ取り、チーム全体が底上げされていく原動力にしてほしいところだ。
レギュラーシーズンが残り4分の1というところまで差し掛かっている中で、チームとしては良い連鎖を作り、勝利を重ね続けなくてはならない。オフェンスもディフェンスも、何もかもが万全という流れでゲームができる可能性はそうあるものではない。これまで以上に、悪い流れを「耐える」力がロボッツに試されていることだろう。そのためには、コート上の5人だけでなく、ベンチ入りする12人の選手が全員で戦い続けなくてはならない。コートに送り出された瞬間から最大限のパフォーマンスをして相手を突き放せるよう、集中と準備を続けてほしい。
白熱し続ける順位争い。連勝は必須条件
次節も、アダストリアみとアリーナでのホームゲーム。対戦相手はB2西地区6位の熊本ヴォルターズだ。プレーオフのワイルドカード戦線への生き残りを懸け負けられない熊本と、今シーズン唯一の2連戦。
熊本の注目選手は#11石川海斗。得点能力も高いポイントガードではあるが、彼の魅力はそのパスセンスだ。相手の隙を見つけては的確なラストパスを送り込んで得点へとつなげており、平均アシスト8.6は、B2リーグでぶっちぎりの数字だ。彼がボールを持つ機会を減らす、あるいは積極的にディナイディフェンスを展開していくことで、石川からのチャンスメイクを阻止していきたいところだ。
対するロボッツは、キャプテン・#25平尾充庸に期待したい。チームの司令塔としてどのようにボールと人を動かし続け、ロボッツを勝利に導くかが問われる。それだけに、彼を起点としたボールさばきに目をこらしていきたい。
手に入れた東地区2位の座を、手放すわけにはいかない。ロボッツに残された選択肢は、勝つことただ一つである。勝ちにこだわるロボッツの姿を目に焼き付け、応援を続けてほしい。