取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI
ロボッツファンが待ち望んだ、B1での戦い。その幕開けに立ちはだかったのは、秋田ノーザンハピネッツ。ハードディフェンスを信条とする秋田に対して、ロボッツはなかなか活路を見いだせずに次第に大差を付けられ、GAME1を84-63、GAME2を83-57と連敗。アウェーの地で、厳しいスタートとなってしまった。しかし、選手や指揮官の言葉には、結果以上の悲壮感は無かった。突きつけられた課題を克服した先に、勝利が待っているはず。会見の様子なども交えながら、この2試合を振り返っていく。
いくつかの誤算と向き合いながら
開幕までに#22ハビエルゴメス・デ・リアニョの合流が間に合わず、さらに9月に行われた越谷アルファーズとのプレシーズンゲームで#21エリック・ジェイコブセンが負傷。開幕節でジェイコブセンはチームに帯同したものの、コンディションが整わずエントリー外となってしまった。ビッグマンを1人欠いた状況下でも、#11チェハーレス・タプスコット、#15マーク・トラソリーニ、#55谷口大智らがなんとか場をつないでいく。要所要所ではゾーンディフェンスも展開して、組み立てを狙っていた。誤算は誤算だったが、戦おうという意思がそこにはあった。
しかし、GAME1ではトータルリバウンドで15本の差を付けられ、秋田の#9アレックス・デイビスと#45コルトン・アイバーソンにインサイドでの自由を許してしまう。GAME2ではリバウンドでこそ競ったものの、今度はフロントコート陣を目指したボールが納まらず、チーム全体で23個のターンオーバーを記録。ターンオーバーからの失点も28に達した。GAME2を終えて会見に出席した#25平尾充庸は「GAME2に関しては外国籍選手の疲労が出てしまっていたのでは」とした上で、「23個ものターンオーバーを許してしまうと、どこにも勝つことができないと思います」と、率直な思いも打ち明けた。
また、全体的なプレーでも迷いが拭えていないようだった。B2での戦いで得意としていたはずのトランジションアタックが鈍り、走り込んだ秋田に守備陣形を敷かれてしまう。ボールを回した先でのシュートセレクションも厳しいものとなり、シューター陣にもやや苦労が見えた。恐らく、今までであれば楽にオープンが作れていたであろうタイミング。ただ、そこから秋田ディフェンスの手がよく伸びてきた。#2福澤晃平のスタッツを見ればそれが大きく現れ、GAME2ではシュートがことごとく外れてしまう結果となった。もちろん、シューターだけが悪いわけではない。ハンドラーから狙ったようなピック&ロールが展開できず、効果的な「ズレ」とはならなかった。秋田は常にマークマンを明確にした中でディフェンスで先手を打ち続け、ロボッツがわずかな差で後手を踏む。平尾も改めて、B1での戦い方を見据えたコメントを残した。
「スタッツを見ても分かる通り、打つべきプレーヤーが自分のシュートタイミングで打てなかったのかなと感じています。昨シーズン終了後にも言っていたのですが、B1の舞台では自分のタイミングでシュートを打たせてはくれないので、しっかりと自分でノーマークを作る必要があります。今日も福澤でいうとフィールドゴールが6の0。そこは改善しないといけないですね。スクリーンにおいても、もっとハードに相手にヒットさせて、ズレを作っていかないとチャンスも生まれません。しっかりと準備をしてやっていければと思います。」
とは言え、この秋田での戦いを収穫にしないことには先が見えてこない。平尾はGAME2の会見をこう締めくくった。
「特に秋田さんのディフェンスは、個々の能力が非常に高いので、そう言った意味では組織的なところでカバーしなければと思います。一方で、他のチームでここまで個人でプレッシャーをかけてくるチームがあるかというと、僕はおそらく無いと思います。その意味でも、開幕節で秋田さんのディフェンスを肌で感じられたことは、運がいいと感じています。これを基準にして、残りの58試合をしっかり戦っていきたいと思います。」
そう、シーズンはまだ始まったばかり。逆襲のチャンスは残されている。この船出を乗り越えて躍動する姿を、心待ちにしたい。
コートだけが戦いの場ではない
戦っているのは、コート上にいた5人だけではない。劣勢に立たされながらも、ベンチでひたすら策を練り続けた指揮官がいた。場面場面で声をかけ続けたベンチメンバーがいた。2試合のフル稼働で疲れもあったはずだが、コートサイドで見えた中にも、全員の戦いの欠片がそこにはあった。
特に印象的だったのが、ベンチにいた選手たちだ。#0遥天翼や#8多嶋朝飛は少しでも選手たちの動きに違和感を感じれば、タイムアウトや交代で戻ってくるなり、メンバーに戦況を伝える。タイムアウトを終えて、ベンチから飛び出していく選手たちを見送った後、谷口はベンチに残ったメンバーを取りまとめ、円陣を組んだ。極めつけは、キャプテンの平尾だ。コートの中の動きが悪ければ、容赦なく叫んで奮起を促す。時に、そのトーンはリチャード・グレスマンHCよりも激しさを感じさせた。どんな状況下でも「戦おう」というメッセージを、全身で送り続けているようだった。
そして、「クレイジーピンク」と称される秋田ブースターの大集団が会場に詰めかけた中でも、遠路訪れたロボッツファンは最後までメガホンを打ち鳴らし続けた。その思いは、チームにもしっかりと届いていた。グレスマンと平尾は、試合後にこのようなコメントを残している。
(グレスマン)「ファンの皆さんには本当に感謝していますし、私たちにとってはとても大きな存在です。長距離の移動をしてまでサポートをしてくれる。本当に大きな意味を持っています。自分たちは、節を終えるごとに成長していき、ファンの皆さんにお返ししていけたらと思っています。」
(平尾)「今日もコートに立っていて、遠いところまで応援しに来てくれているブースターの皆さんのメガホンでの応援など、しっかりその存在を感じながらプレーしていました。次は滋賀戦ですが、勝ちを目指して頑張っていきます。」
この2試合のように、どこまでも厳しい展開の試合は、いくつも待ち受けているだろう。下を向きたくなるような瞬間だってあるはずだ。ただ、そこはグッとこらえてほしい。良いプレーには盛り上がり、そうでなくとも奮起を促す姿は、決して失ってはならない。「BUILD UP (TOGETHER)」のスローガンの通り、共に戦いの雰囲気を作り出すような戦いぶりを、これから見せてくれることを願いたい。
戦わずして道は開かれない
下を向く時間は残されていない。次節のアウェーゲーム、滋賀レイクスターズ戦でロボッツはB1初勝利を目指すことになる。滋賀は開幕節で三遠ネオフェニックスと1勝1敗。昨シーズン、佐賀バルーナーズを率いたルイス・ギルHCのもとで攻撃的なバスケットを展開。GAME2では外国籍選手4人全員が2桁得点を記録するなど、開幕から上々の戦いぶりを見せている。
滋賀のキーマンとなると予想されるのが、#15キーファー・ラベナ。フィリピンの至宝とも言うべきプレーヤーは早速大暴れを見せており、2試合で31得点、15アシストと滋賀のオフェンスを牽引した。まずは彼を止めることで、滋賀の攻撃パターンを削り取っていきたいところだ。
マッチアップが予想されるのが、#8多嶋朝飛や#14髙橋祐二。ラベナのスピードやシュートセレクション、パスセンスに警戒しなくてはならないが、一つ一つの場面をしっかりと守りきることでロボッツの勝機も見出されるというものだろう。
ジェイコブセンの復帰も期待される滋賀戦。全員が40分間戦いきって勝利を掴み、B1を走り出す原動力にしてほしい。