取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:豊崎彰英 photo by Akihide TOYOSAKI
シーズン唯一の神栖市・かみす防災アリーナでの開催となった、三遠ネオフェニックス戦。B1での初勝利を目指して戦ったロボッツは、GAME1で攻守にわたって躍動し、今シーズン最多の95得点を記録。ディフェンスでも奮闘して今シーズン初めて80失点未満に抑えることに成功し、うれしいB1初勝利を飾った。連勝を期したGAME2は、終始流れを掴みきれずに66-83で敗戦。何が良くて勝てたのか、これからの勝利に向かって何を良くしなければならないのか。「1勝1敗」という結果がロボッツに与えた新たな課題を探っていく。
共通理解と我慢の勝利
「なかなかシーズンが開幕してから結果が出ず、難しいスタートを切った中で、こうして少しずつ自分たちがやりたいことを明確にして、練習や試合で積み重ねていった結果が今日は出たと思います。自分たちがブレずに、みんなで同じところを見ながら試合で結果を出すことができたというのは、すごく良かったと思います。」
歴史的なGAME1での勝利を経て、#8多嶋朝飛はこう語った。
ロボッツは今節、多嶋に代わる2ガードのスターターとして#2福澤晃平を起用。多嶋はベンチから登場し、相手に行きそうな流れを取り戻すような存在を託された。これは一つ、ロボッツの戦い方におけるキーポイントになっていった。
リチャード・グレスマンHCが就任した昨シーズン以降、特に選手交代の意味合いは非常に濃いものとなってきたように見える。ガードの速攻を止めたいときには#14髙橋祐二、3ポイントでの得点がほしいときには#13中村功平、エナジーを活性化させたい時には#0遥天翼や#55谷口大智…。ただ選手が交代するのではなく、「この選手を投入することで、コートにこのような効果を求めている」というメッセージ性がついてきている。その意味は、選手たちも重々理解しているはずだ。
そこに加わったのが多嶋だ。落ち着き払ったボールハンドラーであること、同時に相手の隙を突いて走り込んだ選手を決して無駄にしないパスの供給で、得点を生み出していく。GAME1で記録した7つのアシストは、今シーズン最多となった。多嶋がコートに入る瞬間には、「一旦落ち着こう」「その上でボールを動かしていこう」というメッセージが込められていたかのようだった。
特に、#25平尾充庸や福澤、髙橋といった面々が、スピードを活かしたボールプッシュで「アップテンポ」なゲームメイクをしていくだけに、多嶋の生み出す緩急はより際立った物となる。これまでは多嶋と平尾の2ガード的な起用が多かったが、「多嶋の時間」「平尾の時間」のように使い分けていくことは今後も大きな効果をもたらすはずだ。
多嶋はさらに、こんなコメントを残した。
「前節の宇都宮戦から、自分たちが何をしたいのかというところが、明確になるケースが多くなってきたと思います。『自分たちは何をしているんだろう』となるケースが少なくなったことで、良いスペーシングから自分たちが思うようなプレーができました。一方でそれができなくても、しっかり最後までプレーし続けることによって、自分たちにとって良いオフェンスの終わり方ができる。今日はそんな展開が特に多かったのかなと思っています。」
また、相手のシュートに対してもある種の割り切りができていた側面も大きい。第3クォーター、一時2点差まで詰め寄られる場面が訪れたが、そこで慌てることなく試合を続け、結果的には引き離した。三遠の#0サーディ・ラベナがショットクロックがギリギリになった状況からタフショットを決め続ける。そこで嫌な展開になっていたのかと思えば、コート上ではそうではなかったという。再び、多嶋の言葉を借りる。
「もちろん相手のタフショットが入ってはいましたけど、あれをやられるのは僕たちにとってみればOKという判断で、もう次のプレーに行くという切り替えの部分になっていました。そうしたオフェンスに追い込んだ、僕らのディフェンスが良かったと思っています。また、やりたいことが明確になった中で試合を展開できたこと。これらが組み合わさって我慢をしながらも点差を引き離せた要因なのではと思います。」
昨シーズン、ロボッツがB2を勝ち抜けたことの裏にも、「我慢」の側面は大きなものがあった。点差ばかりを見てしまいがちになるが、「今の自分たちが何ができているか」ということを問い続け、試行を続けることは大事である。特に勝利したGAME1では、課題だったリバウンドで相手を上回ったこと、そしてそこから走りきる攻撃ができたこと。いくつもの良いことの積み重ねで勝利を得たのだ。絶対的な答えではないかもしれないが、一つの筋道は作ることができた。今後もブレることなく戦っていってほしいものである。
相手が嫌がる2点を
誰が言ったか、「シュートは水物」という言葉がある。それ自体は長いシーズンを考えれば、決して間違った話ではない。特にシューター的な役割を担う選手が多く顔を揃えるロボッツにあっては、その影響は無いと言えば嘘になるだろう。
だが、今シーズンのロボッツのオフェンスにおいて懸念点はむしろそこではなくなりつつある。「2点を取る」という部分に対して非常に苦労しているのだ。フィールドゴールの成功率が50%を超えたのは、勝利を収めた今節のGAME1のみ。40%を超えたのも、点の取り合いの様相を呈した滋賀レイクスターズとの2試合の対戦を加えて他には無い。8試合を終えての平均成功率は40.2%。昨シーズン(47.5%)と比べると実に7ポイント以上の開きがある。ではシーズン当初のように3ポイントシュートの部分で苦しんでいるかと言われれば、現状はそうではない。8試合を終えての平均数値では、シュートの試行数に加え、成功数や成功率も、昨シーズンと大きな差がないところまで来ているのだ。
特にGAME2においては、#21エリック・ジェイコブセンや#15マーク・トラソリーニなどがペイントエリアでの攻防に競り勝っても、ボールがリングに嫌われる場面がたびたびあった。特にファウルを受けながらショットに出る場面もあり、それが決まっていれば、と思わされることは1つや2つではなかった。この2人だけの数字で、2試合合計で26個のファウルドローンがあったことを考えると、最後の「決め」の部分での遂行力が一層問われてくることになる。
ここで、昨シーズンに平尾がたびたび口にしていた「2点をどう取るか」という話が頭をよぎる。GAME2を終えての記者会見でグレスマンHCに思い切ってこの疑問をぶつけることにした。指揮官からも、苦労がにじむような言葉が返ってきた。
「2ポイントシュートが決まらないことは、私の懸念点の一つでもあります。今は練習を積み重ねていくしかないと思っています。ジェイコブセン選手以外にペイントエリアでコンスタントに得点を取れる選手が今のところおらず、何かしら方法を見つけないといけないですし、練習し続けるなど、何かアイデアを持って選手たちをより良くしていきたいと思います。」
GAME2だけでなく、実は、勝利を収めたGAME1においても、不安視したくなる数字がある。ペイントエリアの外側、いわゆるペリメーターエリアでのフィールドゴールが、2試合を通じて1つもなかったのだ。特に昨シーズン、ピック&ロールからズレを作ってペリメーターエリアに進入し、たびたび2ポイントを奪っていた姿が見られただけに、ここはより強化すべきところだろう。スクリーンをハードヒットさせる、マークマンにしっかり外を回らせることを含めて、連携は欠かせないものの、「全員でオフェンスを成功させる」という意識付けは、できるだけ早く進めなくてはならない。
「3ポイントを抑えられたら」、「ペイントエリアを制圧されたら」、目指したいオフェンスが満足にいかない瞬間は、今シーズン数多くやってくるだろう。そんな場面においても、「そう来たか」と思わせることは必要だ。先ほどの多嶋の言葉を借りて「OKな2点」があるということは、裏を返せば「嫌がる2点」もあるということだ。相手が嫌がるような2点の取り方を追い求めていくことも、また新たな課題になってくることだろう。
長距離移動は続く。耐えて、勝利を
ロボッツは中2日で西地区のシーホース三河と敵地で激突する。三河は#14ジェロード・ユトフ、#32シェーファーアヴィ幸樹、#54ダバンテ・ガードナーといった強力なインサイド陣が躍動するバスケットを展開。ガードナーがここまで1試合平均19.5得点(リーグ7位)と攻撃力を発揮する一方で、ユトフ、シェーファーが共に1試合平均1.1ブロック(リーグ7位タイ)を記録するなど、ここぞという場面では守備の貢献も果たす。ガード陣においても#5カイル・コリンズワースや#7長野誠史らのバランスの良さが光る。いくばくかの選手の入替こそあったが、オールマイティな試合展開ができるチームとして現在は西地区の2位(6勝2敗)につけている。
対するロボッツ。個人でどうこうという部分ではなく、チームで負担をシェアし合うことがまず一つのカギになっていく。ビッグマンの疲弊をガード陣が支えられるか。シューターのための1本のヘルプやピックをやりきることができるか。そしてそれを続けることができるかが問われる一戦となるだろう。
三河戦の後には、北海道に移動しての天皇杯も待ち構えている。ハードなスケジュールの中ではあるが、浮上のきっかけを一つでも多く掴み取り、リーグ戦の再開に向けてひた走ってもらいたい。