【AFTER GAME】 2021-22 SR渋谷戦(11/10)~残り10秒に待ち受けたドラマ。最後に笑うために、とにかく戦う~

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取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE

今シーズン2度目の平日開催となった、アウェー・サンロッカーズ渋谷戦。ロボッツは先手を取るバスケットを精力的に展開し、最終盤までリードを守る。第4クォーター、残り10秒で点差は1点のリード。ここを守れば勝利、という場面で渋谷の#9ベンドラメ礼生がコートを切り裂くように駆け抜けていく。裏を突かれたロボッツディフェンスはファウルで止めるほかなく、バスケットカウントを許す。3点プレーを完成され、最後の最後であまりにも重い2点差を突きつけられたロボッツは、逆転叶わず敗戦となってしまった。今回のAFTER GAMEでは、2点の差に見えた、ロボッツの現在地を探ることにする。

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「とっておき」と、そこに至らせない力

最終局面、SR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチは、3段構えでの得点を狙っていたという。まずはベンドラメのドライブによる得点。それが無理であれば、ゴール下に陣取っていた#14ジェームズ・マイケル・マカドゥにボールを託し、彼の力技を活かしての得点。それさえも阻まれるようであればキックアウトを試み、外に陣取った#55ジョシュ・ハレルソンによる3ポイントに全てを懸ける…。伊佐HCは試合後の会見で「当初の思惑とは少しズレた」と話しながらも、結果的にこの作戦を決めきったのだ。ロボッツもスイッチやミスマッチで守りに行く、あるいはチームファウルの余裕もあったため、状況次第ではファウルストップも試みるという状況だったが、一歩の差で叶わず。SR渋谷に振り切られる格好となった。

シーズンにおいて、そう訪れることはない場面に対して、しっかりと準備ができている。ロボッツは改めて、B1の上位チームが何たるかということを身を以て経験する形となった。

ドラマチックな幕切れ故に、この「とっておき」の場面にクローズアップしがちになるが、ここにたどり着くまでに、ロボッツは徐々に追い詰められていたとも見える。

第4クォーターの残り3分あまり。#8多嶋朝飛のシュートが外れ、リバウンドから#21エリック・ジェイコブセンがゴール下でファウルを獲得。きっちりフリースローでの2点につなげた。しかしそこからの得点は、残り1分35秒で放ったジェイコブセンの2ポイントシュートを除いて無し。相手が最後にディフェンスの上げるべきギアを残していた、と言われればそれまでかもしれないが、ロボッツ側にもシュートチャンスが全くなかったわけではない。ギャップをある程度作ることができていた。それらを引っくるめてであろう、#25平尾充庸は試合後にこう語った。

「要所要所でのターンオーバーであったり、勝負どころでのデザインプレーであったり、プレーしていてもそこが素晴らしいと思えましたし、逆に言えば、自分たちもそのレベルに立たなくてはいけません。2点差を惜しいと捉えるか、まだまだと捉えるかは個人によって違うとは思いますが、自分としては2点差が遠く感じました。」

3週間で2度の平日ゲーム。加えて天皇杯での3連戦など、チームや選手にとって日程の負担は無いと言えば嘘になるだろう。ただ、その条件を背負っているのは、各チーム共に変わらない。戦い抜ける、あるいはそこで試合をひっくり返せるだけの土台を、まさに「BUILD UP」していかなくてはならないはずだ。平尾はさらにこう続ける。

「離さなければいけないタイミングで、自分たちがターンオーバーをしてしまって、相手に逆に走られてしまう。第4クォーターだけでも、そんな場面がたくさんあったと思います。そこでサンロッカーズさんはしっかりシュートを決めてきましたし、僕らはリズムが狂っていったという感じです。最後に関しても、鶴巻のターンオーバー、あるいはコーナーでの3ポイント。あそこで打ったことは別に間違いではないと思いますが、あそこで沈められるだけの経験というのも、今後の彼の成長を支えていくのではないかと思います。彼に限らず、勝負どころでのターンオーバーを減らすことには、フォーカスしていかなければいけないなと感じています。」

この場面で、あえて平尾が#29鶴巻啓太の名前を出したのは、彼に対する期待の表れに他ならないだろう。この試合の中でも、ベンドラメや#44盛實海翔に対するディフェンスなどでしっかり流れを作った。逆に、最終盤の場面でコートに立つということ自体が、本来は信頼の証なのだ。試合全体でなかなかSR渋谷を流れに乗せなかっただけに、あとはオフェンス面での安定性が見えてくれば、ということを考える人は少なからずいるはずだ。今シーズンだけを考えても、まだまだやり返す機会は残されている。「伸びた」「変わった」と思わせる力強さを期待したい。

プレッシャーにわざと「持たず」。成長の証も見えて

SR渋谷は、ロボッツのボールプッシュに対して積極的にバックコートからプレッシャーをかけてきた。ロボッツのスタイルであるアップテンポを封じること、あるいはロボッツのハンドラー陣をサイズで抑えるという思惑も見えるようだった。実際に、ハンドラーもたびたびこれに対して足止めを食ってしまう。だが、この日のロボッツはそんな状況からでも、積極的なオフェンスを展開することができていた。サイズに勝る選手が2枚目の壁としてやってきたところを突いて、裏を抜けるようなパスを出す。結果的にアウトナンバー(数的優位)の状態を一気に引き出したロボッツは、シンプルなオフェンスパターンを完成させていった。

フルコートプレスに対する対応一つ取っても、ロボッツの「B1慣れ」は顕著な印とも言える。特に開幕節の秋田ノーザンハピネッツ戦でたびたびバックコートからのボールプッシュに苦しんで、ターンオーバーに追い込まれていたところを考えれば、大きな進歩と言うほかない。平尾は、そこには一定の狙いが存在していたと明かす。

「ベンドラメ選手や関野選手(#1関野剛平)など、体が強く、ディフェンスが上手な選手がサンロッカーズさんにはいました。逆に、そこでマークに付かれている選手がボールを運ばないようにすることで、自分たちのバスケットを楽に展開できるのではと、試合前に話していました。それが決まったところも、一つ試合が競った要因なのではと思います。」

ただ、ある意味では今回の作戦は一種の「飛び道具」的なものでもある。平尾自身も、こればかりに頼っていられないことを認識していた。彼は続けてこう話す。

「でも、リズムという面ではガードがしっかりボールプッシュをして、みんなを引っ張っていかなければいけません。少しスローペースになってしまった部分もありましたし、プレーに対してスムーズに入れないこともあります。それは反省点の一つではないかと思います。逆にサンロッカーズさんがそれをやってくれたことで、自分たちが次に何をしなければいけないか、成長材料は目に見えました。しっかりと改善していればいいなと思います。」

ゴール下に向けた「合わせ」もよく決まった。ペイントエリアでの得点は、SR渋谷の28を大きく上回る46。3ポイントの確率がなかなか上がってこない中で、「2点を取る」スタイルがしっかり決まったことを、数字においても表していた。アシストもSR渋谷の21に対してロボッツが28。ガード陣だけでなく、ジェイコブセンや#11チェハーレス・タプスコット、#15マーク・トラソリーニも含めて、全員がボールの連動性をしっかりと確保できていた。

平尾は改めて、B1での成長を実感しつつ、リベンジを誓った。

「こうして競られる段階までしっかり戦えるようになってきているので、一つ収穫だとは思っています。ただ、あと2点という部分は遠いと感じているところでもあります。自分たちが全力で戦って初めてこのレベルなのだと証明できたわけですから、しっかり、40分全力で戦ってこそ、ファンの皆さんにロボッツのバスケットを披露できるものだと思っています。タイトスケジュールで疲労もたまってきてはいるのですが、しっかりとケアをして、切り替えていきたいと思います。」

長期連戦の締めくくり。ホームで強豪と勝負

長かった移動と連戦の締めくくりは、ホーム・アダストリアみとアリーナでの川崎ブレイブサンダース戦となる。Bリーグが誇る屈指のタレント集団に、どのように戦っていくかが注目の的である。前節では残り10秒という段階で#22ニック・ファジーカスが逆転のシュートをねじ込んで、新潟アルビレックスBBに1点差で勝利。ロボッツにとっては、まさに1秒たりとも気の抜けない、精神力も含めた戦いとなるだろう。

川崎は、帰化選手のファジーカスをフルに起用することを軸にした、ビッグユニットによる攻撃力が魅力。シーズン当初は特にファジーカスがアウトサイドでのチャンスメイクに悩まされていたこともあったが、試合を追って改善を重ねており、脅威の得点力であることに変わりは無い。さらに今シーズンは#23マット・ジャニングが加入したことで、ビッグユニットに機動性が加わっている。一方では新キャプテンの#0藤井祐眞と、チームの顔である#7篠山竜青による2ガードがしっかりと並び立つ状態に。Bリーグのベストディフェンダーと名高い藤井がキャリアハイともなる1試合平均12.7得点を記録しているとあって、どこからでも攻撃が成り立つチームに仕上がっている。

ロボッツとしては、とにもかくにも「守りからの攻め」を徹底して戦いたい。スピード、パワーでしっかり相手と伍するだけの戦い方を、常に続けなくてはならない。ガード陣で言えば#14髙橋祐二や#2福澤晃平、インサイド陣で挙げるならばトラソリーニ。彼らがしっかりと守備を組み立てられるかが、勝敗の流れを握ってくるだろう。

とてつもない駆け足で展開されているシーズンも、この戦いを終えれば一旦お休み。アダストリアみとアリーナでのB1初勝利を目指して、戦いきってほしい。

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この記事を書いた人

福島県内での報道記者、大手自動車メーカーのモータースポーツ部門ライターを務めた後、独立。
茨城ロボッツを中心にB2の試合現場に足を運び、ファン目線から取材を重ねる。Twitter @MasaruARA

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