【AFTER GAME】 2021-22 群馬戦(1/27)~集中と我慢の連続。40分戦い続けての勝利~

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取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE

昨シーズンにロボッツとB2の覇権を争った、群馬クレインサンダーズ。今シーズンの初対戦が、昨季のB2プレーオフファイナルの地にて行われた。ロボッツは試合開始早々に8-0の連続得点から走り出したが、その後はシーソーゲームに。2桁点差を付けた第4クォーターで一度リードを失ったものの、再びリードを奪い返して試合を締めくくった。最後まで固唾を呑むような展開を制したのは、何を言ってもロボッツのチーム全体としての我慢であった。勝利を掴み取ったいくつかの場面を切り取って、振り返っていく。

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苦しい状況で響いた声

この日のロボッツは前半から外国籍選手が揃ってファウルトラブルに陥る。前半を終えた段階でのファウル数は、#21エリック・ジェイコブセンが3つ、#11チェハーレス・タプスコットと#15マーク・トラソリーニが2つずつ。一方の群馬は戦列を離れていた#4トレイ・ジョーンズや#40ジャスティン・キーナンがこの試合から復帰し、#3マイケル・パーカーも加わっての強力なオフェンスユニットを形成。ロボッツはインサイドの強度を落とさず、それでもファウルはできないという、苦しい台所事情となっていた。

リードして迎えた第3クォーター、ジョーンズの突破に対して#2福澤晃平が手を引っかけてしまう。ファウルとなり、フリースロー2本が告げられたが、ここで#25平尾充庸がチームをまとめた。

「Huddle! Huddle!(円陣を組もう!)」

ここでかかった声が、ロボッツの面々が誰と戦っているのかを明確にさせたと思える。戦うべきは相手だと、しっかりチームで把握していた。その後点差を詰められても、ロボッツはミスマッチを積極的に探して、迷わなかった。第3クォーター終盤にはジェイコブセンが4つ目のファウルをしてベンチへと退いたものの、ロボッツは一歩も退かなかった。そこから第4クォーター序盤までで、12点差までリードを拡大して、あとはクロージングへと向かう場面というところまでこぎつける。

ただ、ここから試合の行方は混沌とし始める。早々に群馬のチームファウルが溜まったことでロボッツはフリースローを得たのだが、これがなかなか決まらない。一方の群馬はこの試合を通じて不調だったジョーンズのシュートタッチが蘇り、一気に点差を詰め、さらに#7五十嵐圭の3ポイントシュートで78-78の同点に追いつく。ここで残り時間は5分を切っており、オフィシャルタイムアウトとなった。

「点差が詰まっていった場面でも、選手たちがメンタルをタフに保ち続けてくれた」と振り返ったのは、リチャード・グレスマンHC。残り3分半の段階で群馬が再びリードを奪い返したが、続くオフェンスで平尾がペイントエリアを切り裂いて、すぐさま同点に追いつく。後述するがタプスコットやトラソリーニも、この試合はインサイドを度々脅かし、試合を通してペイントエリアによくボールが入り、ペイントエリアでの得点は42に達した。前節・広島ドラゴンフライズ戦のGAME2の28点と比べれば、大幅な改善であることが分かる。

ペイントエリアへの意識については、グレスマンHCはこう述べる。

「ペイントアタックはチームとして意識していたことでした。得点を取るためだけでなく、良い3ポイントシュートに結びつけるという意味でもアタックを意識していました。広島戦で縦のドライブがなかなか少なかったこともあって、今日は特に強調したポイントでした。」

最後まで集中力を高く保ったロボッツは、残り1分半で再びリードを得ると、ボールムーブメントの中でインサイドを攻め続けてリードを拡大。群馬のペースを抑えるべく、50:50のボールにも容赦なく飛び込んでいった。何をすれば勝てるかを探し出し、それをしっかり遂行しきっての勝利。ひるまず、臆さず、40分間相手に立ち向かい続ける。戦果以上に得たものは大きかっただろう。

目覚めたタプスコットとトラソリーニ

タプスコットとトラソリーニの活躍も、この試合では見逃せない。前節・広島ドラゴンフライズ戦に敗れた際、ファンへの感謝を言葉にしたタプスコット。約1ヶ月ぶりにスターターとして起用された彼が、攻守に渡ってまず火付け役になった。先制の3ポイントシュートに始まり、22得点・13リバウンドで「ダブルダブル」の活躍。勝負どころではジョーンズに対してブロックショットを見舞うなど、目の色が違った。グレスマンHCも試合直後のインタビューで、

「今日はアグレッシブによくやってくれたと思います。他の選手たちもスペーシングを積極的に行うことで、彼がアタックするコースを作ってくれた。良いプレーでチームを救ってくれた」

と話している。その後にインタビューに応じたタプスコットは、

「今日は積極的に行かなければならないと思っていました。広島戦のGAME2で、あるべきパフォーマンスを出せませんでした。チームにはたくさんのunselfishな選手がいて、良いスペーシングからのプレーを出せたのは、チームメイトのおかげです。」

と振り返る。群馬が1on1での打開を積極的に活用するプレーセットをする一方で、フィニッシャーを1人としたとしても、そこに至るまでに多くの選手が絡んでいったのがロボッツ。その特徴ゆえに好対照を成すゲームとなったが、改めて「UnselfishなTeam win」が何たるか、一つの答えを示せたのではないだろうか。さらに、タプスコットはインタビューでこんなエピソードを明かした。

「今日、偶然父と電話をして『リバウンドを取っていかないとプレーできないぞ』と言われました。(この日の13リバウンドは)本当に素晴らしい結果ですし、チームメイトが自分を救ってくれた部分もありますし、父のおかげだと思っています。」

負けが込んでいる間も、勝利に向けて執念を燃やし続けたタプスコット。次の試合に対してはファンの応援への感謝を伝えた上で「勝たなければならない」と言ってみせた。タプスコットが再び上昇気流に乗れるかで、後半戦の戦い方は大きく変わってくる。Unselfishの体現者が、今後どう戦えるか注目したい。

トラソリーニも22得点・9リバウンドでチームを動かし続けた。群馬のディフェンスの戻りが遅いと見るやインサイドにボールを呼び込み、バスケットカウントを立て続けに奪う。#8多嶋朝飛とレバンガ北海道時代に形成したホットラインが、しっかり生きていることを再確認させる場面だった。第2クォーター終了間際に見せた、ディフェンスの隙を突いてのダンクシュートも含め、ポストアップからのパワー勝負に出るのではなく、しっかり動きの中で迫力を見せて点を取る姿勢が、最後まで見られたのは大きい。

一方のディフェンスでは、広島戦では手で守りに行ってのファウルが多かった。この試合もファウル3つを吹かれこそしたが、しっかり体を使ってのディフェンスに戻っていた。得点能力もさることながら、ディフェンスでの躍動感が出たことで、キーナンや#33カイル・バローンを外へ外へと追いやり、決定的な仕事をさせなかった。パワーだけの勝負がバスケットではない。この試合がトラソリーニの自信を取り戻す、一つのターニングポイントになってほしいところだ。

苦しむチームが直接対決。勝利で道を切り開け

次戦も中2日でのアウェーゲームというハードスケジュール。群馬に勝利した勢いを維持しつつ、しっかりと戦うマインドをセットしていきたい。対戦相手は東地区最下位と苦戦が続く、新潟アルビレックスBBだ。新潟は第2節で三遠ネオフェニックスに勝利して以来、およそ4ヶ月にわたってリーグ戦での勝利から遠ざかっている。短い準備期間の中でロボッツを迎え撃って、上昇気流を掴まんと挑んでくるだろう。

この試合の注目ポイントに、まず指揮官同士の戦いを挙げたい。新潟を率いるのは平岡富士貴HC。Bリーグ開幕以前のつくばロボッツを指揮し、その後は群馬のHCとして5シーズンを過ごし、B1昇格・B2優勝を成し遂げた。「敵としてのロボッツ」を知り尽くした彼がどんな策を練ってくるか。グレスマンHCとはB2プレーオフ以来の戦いとなるため、どちらが戦略から相手を上回れるか。昨シーズン新潟をシーズン途中まで率いた福田将吾ACも含めて、注目される一戦だ。

新潟の注目は外国籍選手たち。シュートレンジの広さを武器に得点を重ねる#25ロスコ・アレンを筆頭に、B2時代のロボッツを度々苦しめた重戦車系センターの#15チリジ・ネパウェ、シーズン序盤の不振を脱却しつつあるビッグマンの#4ジェフ・エアーズ、フィリピンの若き才能#6コービー・パラスと役者は揃っている。ロボッツとしてはまず、この選手たちを分断し、「個」にしていくディフェンスが求められる。新潟のチームとしてのアシストは、リーグ最下位の1試合平均16.8、そしてターンオーバーもリーグワースト2位の1試合平均14.6に達する。アシストとターンオーバーが平均ラインを超えるか超えないかが、勝負を左右してくるだろう。

ロボッツで期待がかかるのが、群馬戦で本領発揮とはならなかったジェイコブセンだ。ネパウェの突進を止めるには彼が適任。さらに、母校・アリゾナ州立大学の先輩であるエアーズとの肉弾戦にも期待が高まる。ジェイコブセンがインサイドを制圧できれば、トラソリーニ、タプスコットの生きる場面も増えてくる。得点力だけではない献身性をどこまで見せられるか、楽しみにしたいところだ。

ロボッツに改めて必要なのは、「戦って勝ちに行く」というシンプルな課題。相手が停滞した時間も付き合わずに、自分たちのバスケットを遂行しきってほしい。

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この記事を書いた人

福島県内での報道記者、大手自動車メーカーのモータースポーツ部門ライターを務めた後、独立。
茨城ロボッツを中心にB2の試合現場に足を運び、ファン目線から取材を重ねる。Twitter @MasaruARA

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