群馬クレインサンダーズ戦が行われてから中2日。タイトなスケジュールの中で、ロボッツは新潟アルビレックスBBとのアウェー2連戦に臨んだ。上位チームからの勝ち星を追い風に、この2試合でも勝利を掴みたかったはずのロボッツ。しかし、勝利を待ち続けていた新潟の執念に押され、GAME1は76-79、GAME2は79-87と、このカードは連敗に終わった。喉から手が出るほどほしかったはずの勝利。それを得るためには何が足りなかったのか。チームが再確認した出来事とともに、今節のコラムを進めていく。
警戒を重ねていたはずが
「ディフェンスの中で、やられてはいけない選手、また走られてはいけない選手にやられたというのが、今日の敗因じゃないかと思います。」
GAME1を終えて、#25平尾充庸は淡々とこう振り返った。新潟の得点源となっていたのは、4人の外国籍選手。GAME1ではその全員に2桁得点を許し、特に#25ロスコ・アレンには26得点の荒稼ぎを許した。ハードなディフェンスを徹底した中で、ここまでの爆発力を発揮させなければ、勝負の行方は幾分ロボッツに傾かせることができたはずだ。平尾によれば、試合を控えたミーティングの中でもアレンの名前は挙がっていて、チームは強い警戒感を抱いていたという。
となると、「そこまで話して、なぜ」と疑問も出るはずだ。平尾はディフェンスで後手を踏んでしまった理由をこう説明する。
「細かいところに対しても指示はあったんですけど、どうしても相手のリズムになったときにアレン選手に走られたりだとか、スイッチミスが起きたところで3ポイントを決められたりだとか。そこは一番自分たちが警戒しなければいけないところでした。そこができなかったのが反省点の一つです。」
勝負を分けた、試合終了間際にアレンが放った3ポイントも、新潟の#15チリジ・ネパウェがその巨体で#11チェハーレス・タプスコットによるマークを引き剥がし、スイッチミスを生んだことで生まれたものだった。新潟側の記者会見に登場したアレンによれば、このプレーは、実はアレンとネパウェが温めていた「とっておき」だったという。あの場面の新潟は後半のタイムアウト3つを既に使い切っていたわけだが、そのプレーの出し所を間違えなかったこと、実行するための共通理解ができていたこと。さらにそれを一発で決めきったことで勝利を呼び込んだ。改めてB1での経験の差とも言うべき瞬間だった。今シーズン、度々勝負を分けてきた「詰め」の部分での準備と執念深さ。回り道は無いと知りながらも、解決を急ぎたい部分ではある。
GAME1を終えて、リチャード・グレスマンHCはチームの戦いぶりをこう分析している。
「今シーズン、自分たちに起こる全ての出来事がハードなもので、簡単なことは一つもありません。水曜日に良いゲームができたわけですが、この試合では1試合を通したUrgency(危機感)が足りず、新潟さんに上回られました。ただ試合に来れば勝ち星を得られる、そんなことは無いんです。しっかりと戦っていきたいと思います。」
今シーズンのロボッツは、何か光明を掴みかかってはすぐさま大きな課題に直面することを繰り返している。例を挙げるとするならば、善戦を続けた千葉ジェッツ戦を経てからの、島根スサノオマジック戦での敗戦であったり、信州ブレイブウォリアーズに連勝を果たした後に、川崎ブレイブサンダースに一方的なゲームを許したことが挙げられる。一筋の光を、掴んだら離さすに駆け上がるという、新たなステップに立たなくてはならない。この2試合の敗戦は、それを強く感じさせる2日間となった。
苦しむ両チームがたどり着いた境地
GAME2は、古巣対決となった#0遥天翼を、今シーズン2回目のスターターに起用した。外国籍選手のスターターは#21エリック・ジェイコブセンのみ、という滑り出しではあったが、遥は持ち前の気迫とディフェンスで着実に流れを呼び込んだ。オフェンスリバウンドに飛び込んだ場面ではファウルも誘って得点。少ないプレータイムの中で、きっちり仕事を果たしていった。
遥の起用について、グレスマンHCは「数分間のプレータイムの中ですごく良いプレーをしてくれた」と話す。しかし、指揮官はこう続けた。
「結局のところ、新潟さんが全ての場面でロボッツを上回っていました。」
グレスマンHCがこう続けた通り、ロボッツは良い時間を継続することができなかった。第3クォーターで新潟に逆転を許すと、ジワジワと点差を引き離される展開に持ち込まれる。逆襲を誓ったチームにとっては少々厳しい結果となった。
試合後には、西村大介社長兼GMが、「矢印を自分に向け、ブレずにチーム一丸で戦い続ける」旨を確認し合ったことを明かしている。「矢印を自分に向ける」ことは、言い換えれば「物事を自分ごととして捉える」ということではないだろうか。「自分ごと」は、B1昇格に向けての正念場だった昨シーズンの後半戦以降、度々出てきている言葉でもある。それを意識し続けた結果がB1昇格だったであろうし、初めて「自分ごと」という言葉を聞いた会見での、平尾の言葉を思い出した。彼のコメントを、改めて引用する。
「今のロボッツは、まだどこのチームにも勝てる一方で、どこのチームにも負ける可能性があるチームです。起こっている状況をいかに自分ごととして捉えられているか、また全員が集中できているかということだと思います。集中しているのが伝染するのは難しいことなのですが、一方で気を抜く、少しのふわっとしたプレーが伝染するというのは今のロボッツにありがちなところなので、そういった部分をなくさなければならないと思っています。」
B1昇格後も、平尾は「強豪に良い試合をするのもロボッツであり、打ちのめされるのもロボッツである」と、チームの姿については重ねて引き締めを呼びかけ続けている。それだけ言葉として出されることで意識につながるし、意識に刷り込まれたと思っていても、ふとした瞬間に再確認することは必要不可欠だ。
一方で、実はこの「矢印を自分に向ける」というキーワードは、今回の対戦相手だった新潟の勝利に対しても大きな役割を果たしていた。特にGAME2で、外国籍選手を中心に序盤からファウルトラブル気味となっていた新潟は、ややフラストレーションの溜まる展開となっていた。後半にそれを跳ね返して勝利を掴んだわけだが、新潟・平岡富士貴HCはGAME2を終えての会見で次のように話している。
「(新潟の選手たちは)自分のミスに対して、人に指を向けませんでした。自分が悪かったと、それぞれが自分で認めていて、それが今までとちょっと違うところでした。今までだったら(ミスに対して)人に指を向けていたのが、自分たちに向けるようになった。だから切り替えることもできたし、みんなが同じ熱量で戦えたんじゃないかなと思います。」
今回の対戦を終えて、リーグ戦の勝率はどちらも1割台と苦戦が続くロボッツと新潟。後半戦・終盤戦に向けて反撃を狙う両者が、浮上のためにそれぞれ似たような結論を出したというのは、なんとも面白い点でもある。残り試合数が30試合を切った今、「ベクトルを自分に」という言葉に対する遂行力が問われる。「あの時の負けがカギだった」となるような活躍となるか。ロボッツを支える皆さんも、どうかその行方を見守っていてほしい。
超個性派集団の猛攻を食い止めろ
本来であれば次の試合も中2日で行われる強行軍であった。だが、折からの新型コロナウイルス感染症の影響で、アダストリアみとアリーナでの秋田ノーザンハピネッツ戦は中止となっている。開幕戦の相手だった秋田を相手に「BUILD UP」の答え合わせと行きたかったところだが、こればかりは誰を責めることもできないため、再戦の時を改めて待ちたい。
次の対戦相手は、富山グラウジーズ。今シーズンから西地区所属となったため、今季の対戦は今回の2連戦が唯一となる。個性の強い選手たちが爆発力を発揮することで勝利を重ねてきた富山。開幕から8連敗を喫したものの、その後は持ち直して現在は13勝19敗で西地区の8位に位置する。広島ドラゴンフライズから3勝を挙げるなど、実力は確かにあるチーム。万全の対策をもって、対戦に臨みたいところだ。
今シーズンは、天皇杯での対戦もあったロボッツと富山。この時は富山に87-94で敗れており、富山のスコアを伸ばさせないことが、勝負を大きく左右するだろう。富山の大黒柱は#32ジュリアン・マブンガだ。ここのところ4試合連続でベンチスタートとなっているが、試合を作る能力はリーグ屈指と呼んで差し支えない。「ポイントフォワード」と呼ぶにふさわしく、得点・リバウンド・パスセンスに抜群の強みを持つ。得点、リバウンド、アシスト、スティールなどの個人記録のうち3つ(トリプル)が2桁(ダブル)に達する「トリプルダブル」を、Bリーグ最多となる通算17回記録しているマブンガ。過去にはオーバータイムも含めたフル出場を何度もこなしたタフネスも持ち合わせているため、彼に対するしつこいディフェンスを40分間やり続けられるかが重要になってくるだろう。
ロボッツは、マブンガとのマッチアップでキレを見せたタプスコットに期待したいところだが、ここでは敢えて天皇杯の富山戦を欠場した#21エリック・ジェイコブセンをキーマンに挙げたい。富山の#34ジョシュア・スミスを始めとしたインサイドのパワーを押しとどめるには彼の力は不可欠で、その一方で相手のインサイド陣をしなやかに振り切っていく、ジェイコブセンの「柔らかさ」も、得点を重ねる上では重要になる。ディフェンスでポストアップを食い止め、オフェンスではポストアップに頼らずに動きの中で得点ができるか。「Mr.ハードワーカー」ジェイコブセンの本領発揮となるか、注目したい。
この試合を終えると、日本代表「AKATSUKI FIVE」の活動を控え、再びBリーグは長期にわたって中断を迎える予定だ。より良いイメージを作る試合にできるか。ホーム・アダストリアみとアリーナが歓喜に包まれる瞬間を楽しみにしたい。