取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
撮影:B.LEAGUE
レバンガ北海道のホーム・北海きたえーるに乗り込んだロボッツ。#15マーク・トラソリーニなどの不在もあり、エントリー9人で臨むことになった。試合中も選手が続々とファウルトラブルに陥ったほか、さらには#2福澤晃平が一時負傷でコートを離れるなど、次々緊急事態に見舞われてしまう。しかし、序盤に作ったリードを崩しきることなく戦い続け、終わってみればスターターの5人全員が2桁得点を記録する活躍で主導権を渡さず。82-94で北海道に勝利し、リーグ戦の連勝を5に伸ばした。連勝中、チームには一貫してコート上での我慢強さが見え、このゲームでもしっかりとそれが垣間見られた。週末のホームゲームを前に、アウェーでの激戦を振り返っていく。
準備された「ミスマッチ」ブレなかった遂行力
離脱者が相次いだこともあり、この試合でのエントリーは9人に留まったロボッツ。なかなかプレータイムを得られていないメンバーも含め、この試合はスタートから総力戦だった。
昨年12月に行われた、ホームでの北海道戦では、終盤にインサイドを立て続けに攻略されたこともあり、ペイントエリアでの失点が52点に達している。まずは、こうした失点を減らすことが勝利に向けた課題だった。さらに、この試合に限って言えばトラソリーニ不在の中でも戦いきらなくてはいけない。ハードルはいくつもあった。
ロボッツが結果として選んだのは、攻守でマッチアップの選手を変える「クロスマッチアップ」という手法である。北海道の#24デモン・ブルックスに対して、本来のラインアップから考えれば#11チェハーレス・タプスコットを相手にするところを、#29鶴巻啓太や#14髙橋祐二を当て、一見してサイズのミスマッチとも言える状態を作り出したのだ。
だが、実際試合になってみると、ミスマッチを突こうとブルックスに託されたボールが止まってしまう。ならばと北海道は目先を変え、#21ショーン・ロングがインサイドでのポストアップを中心に得点を狙いに来るが、#21エリック・ジェイコブセンが献身的にゴール下を絞り込み、得点が伸びていかない。時間をかけてやっとシュートまでこぎつける北海道とは対照的に、ロボッツはトランジションから積極的にシュートを仕掛けて得点を奪っていく。
職人技とも言うべき鶴巻のディフェンスだが、B1のビッグマンを相手にしてもひるまなかったのは流石というほかない。そんな彼が、ブルックスへのディフェンスで重要視していたポイントを試合後に明かしている。
「スカウティングの段階で、左からのドライブが相当強いことを指摘されていました。それをどれだけ抑えられるかがポイントだと思っていたので、意識を持って守りに行きました。」
相手をしっかり研究した上での対策を、着実に実行した鶴巻。準備のたまものとも言うべきディフェンスで、相手の流れを止めてみせた。一方、ボールムーブメントが止まった状況からでは、さすがに打開するのは容易なことではない。少しずつ余裕を削いでいったことで、オープンができても一瞬迷いが生じる。終盤にはあえてシュートコースを空けるような状況も見せ、ロボッツが終始、先手を打って考えさせ続けていった。
終わってみれば、試合の中でビハインドを負わず、同点にもさせず。力強い展開を最後まで続けて勝ちきった。試合後の記者会見で、リチャード・グレスマンHCは、こう試合を総括している。
「本当に、チームを誇りに思います。”Resilience(=不利な状況での対応力)”だったり、戦い抜く力を見せてくれたと思っています。結果にも表れているように、自分たちはタフな状況の中でも戦い抜く力が出ていると思います。」
緊急事態でも慌てず
トラソリーニが不在、#0遥天翼もまだ合流ならずという状況で、今節はベンチ入り選手9人で戦わざるを得なかった。グレスマンHCを始め、コーチ陣がどう戦力をやりくりするか、という点も重要となったが、まず試合前の段階で、グレスマンHCがチームに火を付けた。
「試合前、選手たちには”Keep Fighting(戦い続けよう)”と伝えました。ここ2~3週間、選手が少ない状況が続いていて、今日は9人のエントリーに留まりましたが、長く一緒にプレーしている選手たちであったこと、そして何よりもキャラクターの良い選手たちが揃っているので、本当に頼もしく感じます。特別なゲームプランを用意する、ということではなく『戦い続けよう』とチームに求めたんです。」
局面局面で、エナジーをしっかり出しつつプレーを続けたロボッツ。ただ、全てが上手く回ったゲームかと言われると、そうとは言い切れない。序盤で、早々に#25平尾充庸が2つのファウルでベンチに退かざるを得ず、ここからファウルトラブルとのにらみ合いが始まってしまう。第2クォーターではインサイドを守ろうとした#55谷口大智が4つのファウルをため込み、第3クォーターではジェイコブセンも個人ファウルが4つに達してしまう。点差はまだ保っていたものの、ゲームは綱渡りの様相を呈していく。
また、前半だけで14得点を挙げてオフェンスを牽引していた福澤も、第3クォーターの途中で足を負傷し、一時的にコートを離れる場面も訪れた。どれを取っても、試合展開が一変しかねない事態だったが、代わって入った選手たちが決して流れを渡さず、ジェイコブセンと谷口も、ファウルが込んでいるからと強度を落とすことなく戦い続けた。
また、運命の分かれ道となったのは、ターンオーバーの少なさだろう。試合を通じて5つに抑え、ターンオーバーから喫した失点もわずかに6。危ない状況でも簡単にはボールを失わず、しっかりオフェンスを組み立てていった。北海道がフルコートプレスを仕掛けに来た場面でも、ジェイコブセンや谷口が度々ヘルプとしてバックコートに走り込み、パスコースを空けることで、むしろそこからのトランジションを可能とするきっかけ作りにもなった。
グレスマンHCは、ターンオーバーの少なさについて、こんなコメントを残している。
「連勝している中で気付いたことですが、特に後半戦に入ってから、ターンオーバーが非常に少なくできています。北海道さんはプレッシャーをかなりかけてくるチームで、前回の対戦で17のターンオーバーをしてしまいました。ここを抑えられたことは、成長のポイントじゃないでしょうか。」
ここに来てロボッツのバスケットは「アップテンポに攻めていく」というところから「場面や瞬間瞬間で攻め方を使い分ける」という段階へと、大きく進んでいる。それがターンオーバーの減少や、最終盤での逆転やリード拡大など、結果として表れるようになった。試合直後のインタビューに登場した福澤のコメントからも、それが窺い知れる。
「3ポイントの調子が悪かったんですけども、今日は相手のディフェンスをしっかり見て、二点のシュートを決められたので良かったと思います。5連勝ができるとは、なかなか思っていなかったんですけども、自分たちがやってきたことが結果に表れているのは、すごくうれしいです。これからも現状には満足することなく、もっと勝ちを積み重ねられるように、頑張っていきたいと思います。」
BUILDUPの道のりは、着実に実を結びつつある。ただ、ここでさらに高い意識を持ち続ければ、シーズン終盤に向けて、さらにロボッツがより高い次元で戦える要素となってくるだろう。改めて、チームとしての茨城ロボッツに、期待をかけたくなる一戦だった。
つくばの地で、強豪と再戦
次節はサンロッカーズ渋谷とのホームゲームだが、今回は年に一度のつくばカピオアリーナでの開催となり、いつもと違う雰囲気での試合となるだろう。つくば開催は、他のホームゲームではなかなか味わえない、コートとの近さが魅力。ぜひ迫力のプレーを間近で楽しんでほしい。
SR渋谷は目下5連敗中で、直近10試合で2勝8敗と、チャンピオンシップ出場を狙うにはかなり苦しいチーム状況に陥っている。一方で、直前の試合が中止となったことで体力的には分があるとみても良いだろう。
チームとしての3ポイント成功率が、実はリーグ最下位というSR渋谷。しかし、どのポジションの選手もシューター揃いであるため、データに囚われてしまっては危ないところ。前回対戦で#44盛實海翔が見せたようなシュートラッシュが起きてしまうと、勝機が遠のくと考えておきたい。盛實に「Sexy」な活躍をさせないためにも、臨機応変に間合いを詰めるディフェンスを心がけたいところだ。
対するロボッツとしては、この試合オフェンスのキーマンとして鶴巻の名前を挙げてみたい。北海道戦では2ポイント、3ポイント、フリースローの全てを成功させて16得点を挙げた鶴巻。彼の機動力と思い切りでSR渋谷のディフェンスに迷いをどれだけ生じさせられるかが、いざという時に効いてくる。勝負どころを有利に進めるためにも、序盤から彼が仕掛けとなるような良いオフェンスをしていってほしい。
連勝が伸びて、良い流れだからこそ、一寸先は闇であるという意識を持ちたい。相手の事情に決して付き合わず、ハードなディフェンスをくぐり抜けられるか。苦しい状況でも、チームとしての共通認識を持ったゲームを展開できるかが問われる。
タフなスケジュールを駆け抜けた3月の連戦。選手たちの+αの力を引き出すブーストを、ぜひ会場やバスケットLIVEでお願いしたい。