取材:文:荒 大 text by Masaru ARA 写真:B.LEAGUE photo by B.LEAGUE
天皇杯の開催や、日本代表の活動期間があった影響で、およそ3週間ぶりにB1のリーグ戦が再開。ロボッツはアウェーでサンロッカーズ渋谷と対戦した。GAME1は第2クォーターの停滞が重くのしかかって91-75で敗戦。GAME2は点の取り合いの中で相手を最後まで止めきることができず、97-95で連敗。今季初のリーグ戦3連敗となったわけだが、今のロボッツは改めて”チーム”でなくてはならない。もう一度、ここをきっかけに立て直せるような試合になってほしいところだ。
シュートラッシュで食らいついて
GAME2で猛攻を見せたのは、#11チェハーレス・タプスコットだった。相手のエースであるケリーとマッチアップを続ける中で、今季2度目の1試合30得点を記録。#34ライアン・ケリーが止まらなければ、タプスコットも止まらない。意地にも見える点の取り合いで、相手の一方的な流れにしなかった、という点では彼に救われた部分も大きかっただろう。ちなみに、得点を量産していた中で、SR渋谷の伊佐勉HCは、「3ポイントを打たれるのはOKということにしていた」としながらも、「改めて、スコアリング能力は素晴らしかった」と、タプスコットに一目置くようなコメントもあったことはここで補足しておきたい。
GAME1でこそ、シュート確率が上がらない間に大量リードを作られてしまったロボッツ。この試合では3ポイントの当たりが戻って、今季最高となる成功率52.4%を記録した。これも点の取り合いを可能にした要因だっただろう。今節で久々にスターターへと戻った#1トーマス・ケネディのほか、#8多嶋朝飛もつないでほしい時間帯で的確にシュートを沈めていった。決して誰か1人ではなかった、ということは純粋に好材料だったはずだ。タプスコットはGAME2を終えてこう話す。
「SR渋谷さんのディフェンスが、こちらのアタックに手こずっている…という印象があったので、自分からアタックして相手の注意や意識を引きつけて、寄ってこなければそのままフィニッシュを狙いにいく、寄せてきたら外へのパスを狙う、そんな気持ちを持っていました。」
また、多嶋も現状のチームオフェンスについてはこう手応えを語る。
「今はチームとしてのスペーシングやバランスの取り方が正しく行われていれば、自分たちはいろんなプレーができますし、またそれで僕に回ってくるケースもあります。それを決めることができた、というのは悪いことではないですし、チームとしても個人としても継続してやっていければと思います」
一方で、この試合で光明となったのが、#29鶴巻啓太が改めて復調の気配を見せたことだった。#9ベンドラメ礼生や#27石井講祐、#44盛實海翔などを度々しつこく追いかけ回し、相手のペースを遅らせつつ、攻撃でもようやく馴染んでいる部分を見せた。昨季終盤に負った怪我の重さからすれば、元々開幕に間に合ったこと自体がサプライズだったはずの鶴巻。戦術理解の再確認なども考えた際に、3週間のバイウィークが良い方向に作用した1人と言えるだろう。グレスマンHCも、鶴巻に対しての信頼が改めて厚くなったようなコメントを残す。
「鶴巻選手は膝の大ケガからの復帰ということで他の選手と違った難しい状況から開幕を迎えたので、特に序盤戦はタフだったと思います。ただ、今日のパフォーマンスは特によく、ディフェンスでの流れやエナジーを与えてくれたと感じています。」
同時に、彼のように一人、また一人と求められたポテンシャルを発揮する選手が増えてこなくては始まらない。そして同時に、鶴巻自身も今のような立場ではなく、攻守に渡って躍動感を見せて、グレスマンHCの頭を、良い意味で悩ませるようになっていかなくては、チームの好循環を生みづらくなるだろう。鶴巻を始めとしたメンバーが、改めてチームに風を吹き込んでくれることを期待したい。
守備のギャップを潰しきれず
攻撃陣が決して不調ではなかったがゆえに、連敗を喫したことは悔やまれた。GAME2を振り返ったリチャード・グレスマンHCはこう語る。
「マカドゥ選手が欠場したことで、相手のスペースは広がると感じていましたし、それによって相手がさらにオフェンスに長けた展開になるだろうと感じていました。そして、ハードに守ることができませんでした。やはりディフェンス面でのUrgency(危機感)やよりハードにやる、というところが足りていないので、自分たちが勝つに値しなかったとも感じています。」
コート上の選手たちも、難しさを感じていたようである。多嶋の言葉にもそれが見え隠れする。
「守りづらさというのは、もう点数の取られ方を見ても分かると思いますし、やっぱり2日間とも、あれだけ簡単に点数を取られていたら、いい勝負をしたとしても勝つのはすごく難しくなってくるなと思っていて。それは一つ一つのプレーの積み重ねだと思うので、『このプレーが良かったから勝てた』『このプレーがダメだった負けた』とかではなく、1個1個を自分たちがコントロールできるようにディフェンスをしていくことがまずは大事だと思います。これだけリバウンドで勝って、オフェンスで点数を取って勝てないというのは…良いことではないというか。最終的に勝てればと思う中、勝利に結びつかなかったことは、やっぱりまだまだ何かが足りないと言うことだと思うので。」
局面局面でハドル(円陣)を組んで、選手たちは懸命に答えを探そうとする。ただ、結果から言えば最後までこれぞという最適解が出なかった。前日、GAME1を終えて会見場に現れた#2福澤晃平は、改めてコミュニケーションの重要性を説いていた。
「もちろん、ベースとなる部分はコーチが決めること、というのはありますが、やっぱりコートに出ている5人が、『相手がこうしているからこう対策をしよう』という具合に、変化についてコミュニケーションを取っていかないといけません。試合後のロッカールームで平尾さんからもそういう話が出ました。」
前戦のレバンガ北海道戦でグレスマンHCからは「Killer Instinct(容赦の無さ)」や「Extra Effort(あと一歩の努力)」といった言葉が出てきたわけだが、バイウィーク明けの初戦にそれを持って来られるか、という試合の中で、ロボッツはそれを出せなかった。相手が攻撃力を武器にしている…といっても打ち合いで叩こうとするのではなく、まずどんな相手でもタフに守って相手を止める、というプレーを増やした上で、素早い得点パターンを探る。特にグレスマンHCが目指し続けてきた「アップテンポ」を紐解くと、攻撃力ももちろんだが、「良い守備からの速攻」も大きなピースを占める。
それは今のチームにおいても恐らく大きくは変わっていないはずで、今後も継続性を持って高めたいだろうポイントだ。先述した鶴巻のように守備からチームのリズムを生み出すメンバーを、度々グレスマンHCが評価するのもその一端だろうし、長く在籍する面々である#25平尾充庸や福澤などが度々課題を「ディフェンス」と言い続けていることも含めて、選手たちもアップテンポに含まれた肝の部分は刻まれている。それを、選手個人がどのように自分のものとして昇華させていくか。全てを会得するには時間がかかる部分だろう。ただ、今後のチームをより良くするためには、ここから崩れてしまってはいけない。今その場を立て直す、ということも必要だが、シーズンが終わるその瞬間にどれほど良くできたか、というところもフォーカスしていってほしい。見る者も含めて、今が辛抱なのだと、改めて感じさせられる2日間だったのではないだろうか。
守る相手をどうおびき出すか
次節もアウェーゲームが行われ、ロボッツはアルバルク東京と対戦する。昨シーズンは4戦して勝てず、今季も既に天皇杯での対戦で敗れている。上位を目指すためには、彼らからの勝ち星は必須条件と言える。
今季のA東京は新指揮官であるデイニアス・アドマイティスHCのもと、持ち前の堅実な戦いぶりにさらに磨きをかけている。90得点以上を記録した試合がない一方で、90失点以上を喫した試合も無し。時には両者70得点未満でも勝利をさらう…という手堅さは今季も健在だ。
A東京は#9安藤周人や#24田中大貴など、いわゆるポイントガードの選手でなくともボール運びに苦労しない選手が多く並ぶ。その中で今季最大のアクセントとなっているのが#1ジャスティン・コブスだ。チーム内で最多の1試合平均15.6得点を記録しているコブスだが、体の当て方が上手く、相手のリズムを乱してファウルを誘うことを得意としている。1試合平均で5.5被ファウルという数字はリーグ5位。ファウルをもらえるポイントガード…というと厳密には違うのだが、B2時代に対戦のあるレイナルド・ガルシア(佐賀バルーナーズ所属)などをイメージすると分かる人もいるかもしれない。
固定のマッチアップとして誰が適しているのか、見出すには少々時間がかかるかもしれないが、時にはポジションを無視してでもマークマンを付ける…ということをしないと、相手の流れを止めるのは難しくなるだろう。
ロボッツとしては昨季のA東京戦をコンディション不良のために4試合全て欠場した平尾に注目したい。チームにエナジーを注ぎ込むのは、彼の活躍があってこそ、という部分もある。攻守両面でロボッツの粘り強さをどこまで体現できるか、そして「今年は俺がいる」と見せつけるような活躍を見せてほしい。
この2試合が終われば、久々のホーム連戦が待ち受ける。ロボッツが再び浮上のきっかけを掴んだと、ファンに向けて大きくアピールできるような一戦にしてほしい。