取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:B.LEAGUE,茨城ロボッツ photo by B.LEAGUE,IBARAKIROBOTS
東地区首位を走る千葉ジェッツとのアウェーゲーム。ロボッツは初戦でシュートが思うように決まらず、相手を攻め込みきれないまま、83-70でGAME1に敗れる。GAME2は#21エリック・ジェイコブセンがファウルトラブルに陥り出番が制限される中、#1トーマス・ケネディのシュートラッシュと、#17山口颯斗のインサイドへの突破が組み合わさり、最終盤まで一進一退の展開となる。81-76で連敗となってこのカードを終えたが、ロボッツが掲げようとする「自分たちのバスケットのためのベース」がようやく見えた一戦でもあった。2日間の戦いを振り返る。
空中戦だけがリバウンドではない
GAME1でのトータルリバウンドが千葉Jの49に対して、ロボッツが32。単純に本数だけで数えるならば、相手に17回も多く攻撃権を与えた、ということになる。大前提として、両チームのラインアップを見ると、千葉Jの方がリバウンド獲得に長けた選手が多くいるだけに、確かに大きな壁ではあった。
GAME2、チーム唯一のビッグマンであるジェイコブセンがファウルトラブルに陥り、プレータイムは今季最短の15分11秒に終わってしまう。サイズの利がある千葉Jは、#21ギャビン・エドワーズと#33ジョン・ムーニーを同時起用する時間を作るなど、インサイドやゴール周りの高さと強度を大きく上げた。
だが、試合が終わってみれば、トータルリバウンドは千葉Jの38に対して、ロボッツが42と上回っている。単純にリバウンドを取らせない努力があったことも、あるいはケネディのようにポジショニングの駆け引きに勝って獲得した場面があったことも見逃せない。だが、リバウンドを掴むのではなく、競り合って弾かれたボールを回収した、というシーンも目立った。#8多嶋朝飛や#25平尾充庸らがリバウンドを獲得しているのも、その現れだった。かねてからリバウンドへの参加が多い山口は、「リバウンドを挽回しようという話があった中で、僕としては変わらず飛び込みに行くことを続けた」と話す一方で、リバウンドからの速攻についての意識についてもこう話す。
「僕がリバウンドからバックコートでボールを持ったときに、僕は1人でもかわせれば、あとはそのままゴールまで向かっていける。特にGAME2は会場入りの段階からコンディションが良かったので、『行ける』という気持ちもありました」
競り合いが起きていると、当然直後のプレーに関われる人数は減る。相手が守備陣形を整える前に、ロボッツの選手たちがゴール下へ鋭く割って入った。特に千葉Jのシュートタッチがバラついた時間にこれを連続して発生させることもでき、結果的に競ったゲーム展開に持ち込むきっかけともなった。
そこで生まれたボールの連動性は、他のプレーにも波及する。終盤に入って、#11チェハーレス・タプスコットや山口が、ディフェンスに定評のある千葉Jの#14佐藤卓磨を度々攻略し、バスケットカウントを連発させた。決して止まったところでボールを受けるのではなく、動き続けるからこそ、相手の判断をより惑わせ、ほころびとズレを生んでいく。それを長い時間続けたからこその激戦でもあった。バスケットは流れのスポーツ。改めて、流れを掴んだときには、強豪チームにさえも牙を剥き続けられる。そんなロボッツの良さを再確認できたのではないだろうか。
「あとちょっと」の糸口は
チーム全体のリバウンド獲得もあって、勝負の土俵に立った試合になった。だが、最終的に勝敗を分けたのが、両チームの攻撃精度だったとも言える。ケネディ以外になかなか当たりが出なかった3ポイントシュートがその1つ。チーム全体で30%ちょうどということで、チームの平均成功率を下回った。一方千葉Jは、特に#34クリストファー・スミスが個人の打開からフィニッシュまで持ち込めたこともあり、痛いところでしっかり得点を奪ってきた。
試合を振り返ったケネディが「勝つとすれば、あと2、3本でもシュートを決めてリバウンドを取る必要があった」と話す。この日、ケネディこそ打ち始めたら止まらない、という状況になったが、全体的には3ポイントシュートのタッチが低調で、チーム全体では30%の成功に留まっている。実はこの2日間、ケネディが試合後の囲み取材に登場したのだが、GAME1を終えた時点で、より詳しくチームの現状を打破するための策を話していた。
「状況によっては、ショットクロックに余裕があったとしても、一番初めに来たチャンスでシュートを狙うことも大切だと思います。パスを回し続けるあまり、最終的に難しいシュートに追い込まれることもあるわけで、最初に来たチャンスが一番いい場面だった、ということもあり得ます。そこは、しっかりとコート内の状況を感じ取りつつ、選択と判断をできるかっていうところだと思います」
もう1つがフリースローだ。この日の点差は5点、そしてロボッツが落としたフリースローが、ちょうど5本だった。1本の積み重ねが、最終盤のロボッツに対して徐々に重荷になっていったというのは、あながち間違いとも言えないはずだ。そうした勝負のあや…とも言える状況を物にするとなれば、ここからはシュートタッチを高めていくという「自分ごと」を突き詰めていく、というところまでたどり着いたとも言える。それは選手たちにも理解ができているようで、山口はGAME2を終えて、こうコメントを残している。
「この2戦では外からのタッチをなかなか良くすることができなかったので、次戦までに修正していきたいです。勝つためには何かが変われば良いと思いますが、その『何か』がまだ見つけられていないところもあると思います。本当に1回でも勝てれば、『勝ち方』を覚えてくると思うので、本当にそれを早く探し出していきたいです」
リバウンド、シュートタッチ、あるいは2ポイントシュートの確率の低さなど、これまで1試合の中で同時多発的に課題が積み重なっていた今季のロボッツにあって、「まず何から解決すべきか」というのが掴めそうで掴めない状況が続いていた。今節において、リバウンドという大きな課題を一つ解決できたことで、勝つために次に何をしなくてはならないか、という段階までこの連戦の中で探ることができた。GAME2を終えて、より得点効率を高めるために何が必要かを尋ねられたケネディは、
「もちろんもっとスピードアップをしていくこと。それと同時に、『チェンジ・オブ・ペース』で相手とズレを作っていくことも大切だと思う」と話している。
基本的に全速力で立ち向かうからこそ、いざというときに緩急を使って相手の裏をかける。やりたいバスケットは見えた。あとはそれをどこまでブラッシュアップできるか。レベルアップの術を探り続けたチームが、あと一歩で殻を破ろうとしている。この1ヶ月ほど、上位陣と競り合っては最後に押し切られるというもどかしいゲームが続いたが、そこから勝利へのあと一歩を駆け上がれるかどうかの場所には立っている。あと少し、もう少し。勝利で報われる瞬間を心待ちにしたい。
手負いの王者を倒して進め
ロボッツの次戦は、アダストリアみとアリーナでのホームゲーム。対戦相手は東地区の宇都宮ブレックスだ。ロボッツとの対戦は、昨年10月、B1で初のホームゲームの相手となり、ロボッツが連敗を喫して以来だ。
宇都宮は現在3連敗中。この間、絶対的なエースである#6比江島慎の欠場が続いていることが大きな要因となってしまっている。ただ、チームへの帯同は続けているため、いつ出てきてもおかしくはないという状況でもある。また、その中で新戦力への注意を怠りたくない。インサイドの補強として4シーズンぶりにBリーグへ帰ってきた、#34グラント・ジェレット。そして特別指定選手として加入した#12高島紳司には要注意だろう。ジェレットはゴール下を運動能力の高さで打開できるビッグマン。それでいて3ポイントシュートも苦労しないタイプなので、宇都宮の攻撃のアクセントとなっている。加入2戦目の川崎ブレイブサンダース戦では、川崎のインサイド陣を上手く料理して28得点を記録しており、もうエンジンが暖まっているとも言えそうだ。
もう1人に挙げた高島は、大学バスケット界を代表するシューター。先日開催された全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)では主力として大東文化大学の3位入賞に貢献している。プロの舞台でもその得点力は証明済みで、過去2シーズン活動した大阪エヴェッサでは、2桁得点を記録する試合も見せている。特に昨年12月に行われた川崎戦ではシュート成功率100%での23得点という離れ業もやってのけた。彼に見せ場を作らないことを心がけたい。
一方のロボッツは、まず宇都宮のバックコート陣をどう攻略するかが鍵。#18鵤誠司のようにフィジカルを使いこなす選手もいれば、#9遠藤祐亮、#13渡邉裕規のように40分間の中で浮かび上がる勝負のツボを確実に押さえに行く選手もいる。こういった面々に時に立ち向かい、時にいなす。そのキーマンは#2福澤晃平と山口になるだろう。
昨シーズンの宇都宮との初対戦で気を吐いたのが福澤。「B1でも福澤あり」を見せつけたわけだが、今シーズンの出番はなかなか流動的な状況が続く。活躍のきっかけを見出した宇都宮との対戦で、奮起の一戦となれるかを期待したい。
さらに栃木県出身の山口にとっては、地元クラブであり、2019-20シーズンに宇都宮の特別指定選手として在籍。プロとしての第一歩を踏み出したクラブとの対戦ともなる。その山口は、「実は朝飛さんとスペシャルシューズを用意するつもりなので、楽しみにしていてください」と千葉J戦終了後のインタビューで話している。それだけに、彼らの足元にも注目してほしい。
クリスマスイブから始まる、2日間の熱戦。勝利というプレゼントを、アダストリアみとアリーナに集まったファンに届けてほしいところだ。