取材:文:荒 大 text by Masaru ARA
写真:茨城ロボッツ photo by IBARAKIROBOTS
昨シーズン、ホーム開幕戦の相手となった、宇都宮ブレックスとの対決。ともに連敗ストップに燃えた両者の戦いは、会場を二分したファンをも巻き込んだ熱戦となった。ロボッツはGAME1を79-67で勝利し、宇都宮からの初勝利を記録。GAME2では最終盤に押し切られ、64-68で敗戦となったが、昨シーズンの苦しいスタートを思えば、着実に成長を感じ取れる試合となったはずだ。この2試合を、選手たちの言葉で振り返っていく。
爆発の福澤が見せた意地
GAME1では後半からの得点だけで13得点、GAME2では今季最多の17得点ということで、この2日間の福澤は、一段違ったところを見せていた。GAME1ではMVPを獲得し、その後のインタビューではこう答えた。
「控えから出ることが多いんですけど、あまり自分のらしさというか、良いプレーができないことが多かったので、そういったストレスを発散しようと思ってプレーしました。」
この直後の記者会見にも登壇した福澤。改めて、この言葉について答えてくれた。
「去年と比べるとプレータイムが短い、あるいはシュート回数がそもそも減っていたりします。その中で、結局腐らずに練習をするしかないと思っていましたし、その結果が今日に良い形で出たのかと思います。インタビューでこそああ言いましたけど、練習していたこと、努力していたことが形になって出るのはうれしいですし、それがあるから『今後、もっとがんばろう』ってなるところもあります。その積み重ねは今後もしていきたいです。」
さらにGAME2では、#25平尾充庸がエントリーしながらプレーせず、という状況だったこともあり、今季最長のプレータイム(25分54秒)を記録。3ポイントシュートのタッチがこの日も良く、こちらも今季最多となる5本の3ポイントシュートを沈めた。第3クォーターの終了間際には、ブザービーターでの3ポイントも披露するなど、「今日も福澤、やはり福澤」という印象を強めていった。
だが、好事魔多し。第4クォーターのオフィシャルタイムアウト目前、リバウンドをさらった福澤がゴールを目指したものの、#18鵤誠司のスティールに遭い、そこから宇都宮の反撃を許す。ロボッツからすればリードを広げてあと5分としたかったし、宇都宮からすれば1点差に追いついてあと5分…に持ち込みたかった場面。福澤がその瞬間についてこう述べる。
「やっぱり、あのターンオーバーがなければ、1本オフェンスを作りきって、5点差にしていたならば、全部の流れが変えられたと思うんです。起こってしまったことはしょうがないんですけど、そこは反省して、次に良い判断ができるようにならないといけないですね。」
細かな数字を見ていくと、ターンオーバーの増加やアシストの減少、リバウンドを相手に多く獲られたことなど、激戦を過ごしつつも、徐々に宇都宮の土俵での勝負にされたことも見てとれる。ロボッツにとって、強豪との連戦を連勝する、という新たなハードルが立ちはだかることとなった。そこについて、福澤は改めて勝負の肝を説く。
「1日目を受けて、相手も分析した上で守ろうとする。そこでさらに、僕らがすぐ対応できるかだと思いますね。これだけ競った試合が続いて、お互いに疲労も溜まっているはずの中で、1つのリバウンド、1つのシュートが大事になります。そこで最後の集中ができるかどうかが問われるはずです」
このあとも、難敵とのホームゲームは多く訪れる。そこに向けて、この1敗を教材にすることが、改めて求められていくだろう。
「正しいスペーシング」で打開して
福澤や#1トーマス・ケネディらのシュートタッチが見せ場を作った一方、高さのある宇都宮のインサイドを、ロボッツはたびたび打開していった。ロボッツのシーズン平均の2ポイントシュートの確率が50%を切っており、宇都宮戦の前の段階で1試合平均48.7%だった。リーグトップを行く広島ドラゴンフライズが同じ時期で平均57.2%で決めていることと比べて考えると、ロボッツがゴールに近い部分でのシュート精度で苦しんでいることが伝わるだろう。
だが、宇都宮戦では2試合ともに2ポイントでのシュート成功率が50%を超え、勝負がかかる場面できっちり得点を重ねていくことで、逃げを打ちたいはずの宇都宮を捉え続けていた。特に#8多嶋朝飛が、相手のギャップをしっかり見極めて得点を重ね、GAME2では2ポイントシュートだけで10得点を挙げている。その多嶋は、チームの現状についてこうコメントを残す。
「感覚的には、正しいスペーシングでアタックできているときで、いろいろなアドバンテージができているなと感じます。インサイドに限らず、3ポイントでもそうですけど、パスのつながりの良さから出てきているんだと思います。ロボッツはかなり選手が自由に考えて組み立てるシーンも多いので、いろいろな選手たちが判断をしてアドバンテージを作っていって、良いシュートが打てることが増えてきているのかと。スペースを消さない動きも必要ですし、待たなきゃいけない瞬間もある。それを5人が合わせなくてはいけないですし、そこが噛み合ってくると、良いオフェンスにつながっていくように思えます。」
コート上の共通理解、というポイントは、実は守備にも通じる。勝利したGAME1を振り返ると、ロボッツは後半にタイムアウトを1つも使わなかった。コート上のコミュニケーションと修正が場面場面ではまったことで、タイムアウトを取ることで相手に間合いを与えさせなかったことも、勝利を引き寄せたと言えそうだ。GAME1を終えて福澤にこのことを尋ねると、選手たちも手応えを感じていたことが窺える。
「相手のどの選手がコート上にいるかで、うちはディフェンスに誰が付くのかを変えることがあります。プレーが止まったところで、今日はかなり頻繁に話をし続けたんです。そこでディフェンスのベクトルを5人でしっかり合わせられたこと。特に後半はそこが合っていたなと感じていたのと、やられてはいけないプレーを防いで、『そこでやられたらしょうがない』とすることもできていたので、チーム全員でゲームに集中し続けられていたと思います。」
また、チームとしての進化については、#21エリック・ジェイコブセンも同意するところのようだ。
「シーズンが始まったころ、特にFE名古屋さんや富山さんとの試合をしたときと比べれば、細かな所がたくさん良くなったと思いますし、全員が自分たちの役割をしっかり理解してきています。勝つことがどれだけ難しいか。小さいこと、細かいことを遂行すること、そこでもう一歩の努力をやれるか。チームメイトが劣勢ならば、一歩助けに行くこと。リバウンドでも、弾くことでポゼッションを獲ること。多くの部分で成長できていると思います。」
また、多嶋は会見の終盤、ここ数試合の好ゲームを受けて「これが土台になる」と話した。平尾がこれまで勝利のたびに残してきた言葉でもあるのだが、その意識が共通理解として、ロボッツに根付いている。そうみても良いのではないだろうか。意識をし続けるからこそ、とっさのプレーでの引き出しになっていき、それが次の1勝を手繰り寄せる。勝つにも、負けるにも、理由はある。理由を探し出し、その答えを導き出すことで、改めてシーズンの中でのジャンプアップの基盤を作っていくことができるはずだ。
アウェーのプレッシャーをはねのけていけ
次節は中2日での開催。ロボッツはアウェーで秋田ノーザンハピネッツと対戦する。超がつくほどのプレッシャーディフェンスを身上とする秋田だが、今シーズンはこれまでビッグマンの#11ケレム・カンターやディフェンスでの信頼が厚い#12川嶋勇人などの欠場が長引いたこともあって、チームとして万全な姿をなかなか出せていない。加えて前節の広島ドラゴンフライズ戦で#5田口成浩が左膝の大ケガを負って離脱。チームとしても正念場の一戦を迎えている。
その中でも、シーズンを通して安定感の高い活躍を見せているのが、#51古川孝敏だ。35歳にしてBリーグでのキャリアハイとなる1試合平均12.9得点を記録していて、この男が乗ったら秋田は内に外に攻撃が止まらなくなっていく。シューターの足元から入って、シュート体勢をまず作らせない、またボールを供給させないために、オンボールオフボールを問わないディフェンスでの仕掛けが重要になるだろう。
ロボッツとしても、層の厚い戦いで相手のディフェンスを超えていきたい。宇都宮戦でも活躍を見せたケネディ、福澤はもちろんのこと、たびたびスターターで起用される#13中村功平や#17山口颯斗といったメンバーが相手を打開し続けられると、ロボッツがおのずと流れを掴んでいく…という展開が見えてくるはずだ。
また、ここのところ、ディフェンスが必要というところでは#33林翔太郎の起用も目立つようになってきた。どうしてもスターターたちの出番が長くなりがちなロボッツにおいては、「今、ここだけでも守る」というスタイルは、相手の勢いを止めるためにも大きな役割を果たすことになる。さらに、そうした役割をやりきっていくことで、今後の選手ローテーションにおいても大きな役割を果たしていくことだろう。
4日間で3試合という、とてつもないスケジュールの幕開け。ピンクに染まったアリーナでの熱戦を楽しみにしてほしい。