取材:文:佐藤 拓也 text by Takuya SATO
写真:茨城ロボッツ、B.LEAGUE photo by IBARAKIROBOTS,B.LEAGUE
3週間半のバイウィーク(試合のない週)を経て挑んだリーグ再開初戦の第23節レバンガ北海道戦。3連勝中の勢いと自信をリーグ後半戦につなげるためにも「勝ってスタートしたかった」(#8 多嶋朝飛)と必勝を期して試合に臨んだ。
逆転したタイミングでのアクシデント
序盤は北海道にペースを握られてしまう。北海道#6 中野司のシュート精度が高く、第1Qだけで13得点を決められてしまい、20-21とリードを許して第1Qを終えた。しかし、第2Qに入って、茨城ロボッツは反撃を開始。タイトな守備からテンポのいい攻撃というバイウィーク直前の試合で見せたような“ロボッツらしさ”を発揮して、得点を重ねていった。#33 林翔太郎の3ポイントシュートや#11 チェハーレス・タプスコットと#21 エリック・ジェイコブセンの見事な連係からのシュートなどが決まり、逆転に成功。
そして、7点差までリードを広げてみせた。そのまま勢いに乗って、さらにリードを広げたいところだったが、そのタイミングでまさかのアクシデントが発生する。試合会場のモニターの不具合により、試合が中断されてしまったのだ。
約10分後に試合は再開されたが、中断前までの流れをロボッツはつかみきることができなかった。北海道の勢いを受ける形となり、立て続けに5得点を奪われてしまう。タイムアウトを取っても流れを食い止められず、さらに4得点を許して、32-34とリードされた状況で試合を折り返すこととなった。
バスケットボールの試合において、想定外の出来事は起こりうること。それでも、集中を切らしてはいけないし、流れが変わるタイミングで緩みを見せてはいけない。そして、流れを失ったとしても、我慢することやその時間をできる限り短くすることが勝利のために求められる。残念ながら、この日のロボッツは「流れ」を読み取る力が足りなかった。
「試合が中断したことは、僕らとしては流れ的に難しい時間帯になってしまったことはありました。たまたまあの時間帯に起きたというか、誰が出ていたとか関係なく、もう一段階引き締めないといけなかった時間帯だったと思います。中断している間もチーム内でそういう話もしてはいたんですけど、フワッと試合に入ってしまったところがありました。自分たちは強豪チームではないので、ブレイクがあったからとかではなくて、どんな時でも自分たちがやるべきことを40分間トライし続けないといけない」
多嶋は唇を噛んだ。
頭に浮かんだ三遠戦の成功体験
第3Qに入っても流れを変えることができず、“要注意人物”として警戒していた#21 ショーン・ロングや#12 ブロック・モータムに得点を重ねられてしまう。そして、最大で15点差までリードを広げられてしまった。だが、ロボッツの選手たちは誰も下を向くことはなかった。選手たちの頭に浮かんだのは、第3Q終了時点で21点のリードを許しながらも逆転勝利を収めた第3節GAME2三遠ネオフェニックス戦。その成功体験が選手たちの背中を力強く押した。そして、勝利の可能性を信じて戦い抜いてみせた。
#13 中村功平は振り返る。
「15点差まで開いて、確かに『ちょっとヤバい』という空気感はありました。でも、三遠戦で大逆転を経験していますし、まだいけると思っていました。北海道さんは決して勝ち慣れているチームではないので、このまま我慢強く食らいついていけばチャンスはあるという声がけを多嶋選手がしてくれていて、本当にそれを信じて、今までやってきたことをやろうと思って続けました」
第4Q、ロボッツは本来のアップテンポのバスケで北海道を圧倒。多彩な攻撃で得点を重ねていき、3点差まで縮め、逆転勝利まであと一歩のところまで追いつめた。しかし、最後は北海道の意地に押し切られて、83-88で敗戦を喫した。今季初の4連勝を飾ることはできなかった。「15点のリードを奪われるシチュエーションになっても、僕らは勝つという気持ちでプレーしていました。結果的に勝てなかったので、悔しい気持ちの方が強い」と中村は悔し気な表情を見せた。必勝を期して挑んだリーグ再開初戦で同地区リーグのチーム相手に敗戦した事実は決して軽くはない。
とはいえ、敗戦から学ぶこともある。この試合においての課題は明確だ。「試合の流れを読む力」。うまく行かない時間帯こそ、チームがより一丸となって乗り切る力の必要性を突き付けられた一戦だったと言えるだろう。「悪い流れになっても、できる限りその流れを短くしないといけないですし、ワンポゼッション・ツーポゼッションで引き締めて立ち返られるようなゲームを今後もっと濃度濃くやっていないといけないと思います」と多嶋は語気を強めた。痛い1敗ではあるが、リーグ後半戦に向けての教訓にすることができれば、この悔しさも大きな喜びへと変えることができるだろう。
第2Q中断までと第4Qで見せた、ハイパフォーマンスはチームとしての成長の証。チームの土台は着実に高まっていることを感じさせた。それゆえ、北海道2日後のトレーニング前に行われたミーティングにおいて、リチャード・グレスマンヘッドコーチが見せた映像はそれまでと異なる内容だったという。
「今まではチームとしてうまくいっていない場面の映像が多かったのですが、その日は小さなミスにフォーカスした映像でした。そういう細かなところの精度をもっと高めていかないといけないと感じました」(中村)
チームのベースは築かれつつある。リーグ後半戦、いかに質や精度にこだわれるかに懸かっている。グレスマンHCからのメッセージは選手たちの胸に刻まれたことだろう。
コロナ禍以降ホーム初声出し解禁試合へ
そして、3月15日にゼビオアリーナ仙台で行われる次節仙台89ERS戦に挑む。前節に続き、同地区のライバルとの一戦となる。絶対に負けるわけにはいかない。
「タフなチームを相手に、アウェーでの戦いとなるので簡単なゲームになることはないと思います。仙台も是が非でも勝ちたいと思って臨んでくると思います。そのための我慢比べを自分たちはしなければならない。声出し応援が解禁になって、アリーナの雰囲気も含めて、よりホームアドバンテージが出やすい環境になると思います。自分たちはその中でタフに戦い続ける姿勢を出さないといけない。僕的には内容関係なく、勝つために何が必要か考えて行動に移していきたいと思います。それがチームの助けになるようにしっかり準備したいです」
多嶋は闘志を燃やす。
敵地で勝利を手にして、勢いを持ってホームに戻ってきてもらいたい。
3月18日と19日に行われるホーム第25節広島ドラゴンフライズ戦はコロナ禍以降、アダストリアみとアリーナでの初の声出し応援解禁での試合となるだけに、選手たちはこの日が来ることを心待ちにしている。
「僕はまだロボッツの歓声がある状況でのホームゲームを体験したことがないので、すごく楽しみ」と中村は話す。そして、こう続けた。
「ロボッツに移籍をする際、ブースターのみなさんがいろんな工夫をして、ホームアリーナの雰囲気を作って応援してくれている映像を見て『すごいな』と思っていたんです。まだ完全にコロナ禍前に戻ることはないかもしれませんが、その応援を体感できることが楽しみで仕方ないんです」
その思いを持っている選手は中村だけではないはず。ブースターの熱い思いが込められた「声」を受けて奮い立たない選手は誰もいない。最高の雰囲気の中、躍動する選手たちの姿に期待せずにはいられない。