【AFTER GAME】 2022-23 PSG富山戦・A千葉戦(9/17〜18)〜チームで崩すアップテンポ。開幕に向けた確かな手応え~

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取材:文:荒 大 text by Masaru ARA

Bリーグ開幕まで残り2週間。ロボッツはアダストリアみとアリーナでプレシーズンゲームを行い、B1中地区の富山グラウジーズと、B2東地区のアルティーリ千葉を迎えての2連戦を行った。富山戦はスピードと高精度のシュートで相手を翻弄して83-59で勝利。A千葉戦はミスマッチを的確に突き続けて101-80と100点ゲームを達成。勝利とともに、開幕に向けた収穫を、着実に得られた2日間だったのではないだろうか。プレシーズンゲームのAFTER GAMEは、#13中村功平と#25平尾充庸に注目。2人の言葉をもとに、開幕に向けたキーポイントを探っていく。

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先手を取り続けて

2試合ともに、ボールをよく動かしていくオフェンスを武器にして戦った感もあるが、ディフェンスでの主導権が取れていたことが大きかった。この2試合で言えば、#1トーマス・ケネディ、#17山口颯斗、#33林翔太郎らが存分にディフェンスでの持ち味を見せていた。さらに、マークに付く相手を入れ替える「スイッチディフェンス」も小気味よく効かせたことで、相手の出先を防いでいったことの効果は大きかっただろう。A千葉を率いていたアンドレ・レマニスHCも、「まず茨城さんが前線から張ってくるディフェンスで先手を打たれて、ミスマッチを作られてしまう場面が増えてしまった」と振り返っている。

一方では、細かなところでポゼッションを得られなかったり、外国籍選手のドライブアタックが連続して決まる場面もあったりと、集中力が削がれそうになる場面もあったが、全体を見れば2試合ともに我慢比べに勝った形となった。こうした状況について、平尾はA千葉戦を終えての記者会見でこんなコメントを残している。

「自分たちが思っているような判定にならないとか、そういったシーンもあったかもしれないですけど、試合中にそれが起こるのはしょうがないことなので、僕たちがコントロールできることでもないですし。そこに執着せずに、しっかりと相手にフォーカスできたというところも、自分たちが、昨年よりも一つ成長した部分じゃないかなと思います。オフェンシブなところが注目されますけど、どちらかと言えばディフェンスに狙いを持っていて、守れなければ自分たちのバスケットはできない。しっかり守った上で、やりたいバスケットを展開することに集中している感じです。」

一方、リチャード・グレスマンHCはA千葉戦を振り返って、このように振り返っている。

「ディフェンスで得点させないという時間をしっかり作れたのが大きかったと思います。第1クォーターでリードをして、そこから停滞する時間が2試合ともにあったわけですが、ディフェンスで相手を止めたこと、そこから速攻へと持っていけたこと、これが良かったのかなと感じています。」

一方で、このプレシーズンゲームでの収穫は、#2福澤晃平、#5LJ・ピークなど、ベンチから登場したメンバーたちもしっかり得点を重ねていったことで、層の厚い攻撃を見せられたことだろう。控え選手による得点は、富山戦で35得点、A千葉戦では39得点に達した。昨シーズン、時折控え選手の得点がない、という状況もたびたび起きていた中では、こうしたデータも収穫になったはずだ。

「今日のように、得点を分散させて、いろいろなパターンで得点が取れることを継続させていきたいところです。一方で、富山戦で4得点だったジェイコブセン選手がA千葉戦では15得点となりました。コーチ陣も選手本人も、インサイドでの得点を増やしたいという考えはあります。いくつか、インサイドに良いパスが飛んでくる、という状況もありましたので、エリック選手が引き続き得点に絡める状況を作っていきたいですね。」

層の厚さが勝利につながる、ということは、B1への昇格を成し遂げた2020-21シーズンを思い起こしてもらえれば分かるはず。開幕に向けて、当時のように「誰が出ても落ちない」というバスケットがまず見られたことは良い兆候だったはずだ。

中村の余裕に見た成長

昨シーズンの終盤、相手選手との交錯で負傷して以来、中村は久々に観客の前でのプレーを見せた。実に半年ぶりの復帰の瞬間、会場が一際暖かい拍手に包まれた。昨シーズン以来、複数のポジションで相対するディフェンダーとしても伸びしろを見せていた中村。この2試合でも、アウトサイドならどこでも守りに行くと言わんばかりのプレーを見せ、アグレッシブにコートを駆け回った。

「ある意味、僕の方が2ヶ月早くシーズンを終えてしまった状況になって、久しぶりなだけに、試合勘などがどうなるかという不安を持ちながらコートに立ちました。実際、プレーしてみた感じとしては、ブランク的なところはなかったんですけど、パフォーマンス、特にシュートタッチに関しては、ケガの前とちょっと違うかなという部分もありました。シュートが入らないときこそ、ディフェンスをアグレッシブにやっていけたらと感じています。」

特に昨シーズンから、中村は自分より体格の大きな選手とのマッチアップを経験することが多くなり、端から見ればミスマッチになるだけに攻略されてしまう場面もあった。ただ、シーズンが進むにつれて、自信を持って対峙していたようにも見えたし、実際この2試合でもそうだった。本人も、ディフェンス面でのアグレッシブさについては実感している部分があったようだ。

「今シーズンについて言えば、ケガをした分、早くから体作りに時間を作れていたので、ディフェンスでも足が動くのかなと思います。将吾さん(福田AHC)からディフェンスの指導を受けるんですけど、今まではいっぱいいっぱいになってしまって『今はどうやって守るんだろう』というときもあったんです。長く指導を受ける中で、余裕を持ってディフェンスができるようになってきたので、そうした判断の部分が身についてきたのかな、と感じています。」

富山戦でこそシュートタッチに課題を残したが、A千葉戦では身体能力を活かした鋭い切り込みで得点を奪い、第3クォーターには、相手がゾーンディフェンスを採用した最初のプレーで3ポイントシュートを沈める「一発回答」も見せて、相手の思惑を封じた。ロボッツの素早い攻め手を防ぐことを考えれば、ゾーンは確かに有効性を持ってくる。「それでも点を取ってくる」と思わせた意味合いは、かなり大きかっただろう。

今の中村の役回りを考えれば、A千葉戦で順当に行けば#6小林大祐との再会、そしてマッチアップも予想されたところ。「ダイスさんにはコートの内外でお世話になりましたし、ダイスさんがいなくなって1年ほど経った今のチーム、そして自分がどれだけ成長したかを見せたい」とも意気込んでいたのだが、残念ながら小林が欠場したために、それは叶わず。またどこかで、機会が訪れることを祈りたい。

まだ#29鶴巻啓太の復帰には時間がかかるであろう状況では、在籍3季目という中での戦術理解度も含めて、今季の中村にかかる期待は大きくなってくるはず。まず、彼が全力で開幕を迎えてほしいところだ。

100点ゲーム達成も…?

2試合共に、ハイペースにオフェンシブな戦いを見せたが、終わってみれば83得点と101得点という結果だった。見ている側としてもこのハイペースぶりには息が詰まりそうになるのだが、試合を終えた時点で、チームには「もっと点を取らなければ」と考えていた面々もいたようだ。A千葉戦を終えた段階で平尾に攻撃の仕上がりを尋ねると、やや辛口な答えが返ってきた。

「個人的には101点だと少ないな、という感じです。もう少し、シュートの回数も、成功率も増やしていけるのかなと思っているので、101点が普通、となるようにしていかないと。アンダーサイズとされる中では、攻撃回数を増やしていかないとこのチームは勝てない。攻撃回数が増えれば、点数も増えていくでしょうから。受け止めとしては、『まあ、普通』という感じです。」

もう一つ、数字の面での収穫となると、2試合ともにリバウンドを取りきる場面が多かったことも挙げられる。リーグ屈指の巨漢センター・#34ジョシュア・スミスを要する富山を相手に45-36と9本上回り、A千葉戦でも33-30と相手の優位に立った。こうした結果について、平尾はこう話す。

「自分たちの弱点というのを一人一人が理解できてるからこそ、リバウンドの数に現れるのかなというふうに思っています。もちろん練習中から『自分たちは高さがないんだからリバウンドに参加しなさい』と口酸っぱく言われていますし、いろんなプレーヤーがリバウンドに参加してくれているので、そういった意味では非常に成長してきているのかなと思います。これをスタンダードに取れるようになれば自分たちの攻撃に繋げられるはずですしね。」

開幕まで時間がない中で、個々が遂行すべきミッションを、しっかり結果として残したこと、そしてそれが勝利という結果になって帰ってきたことは、返す返すも大きな影響を残すはず。改めて集中力を高めた上で、残り2週間に迫った開幕戦に向けて、再びフォーカスしていきたいところだ。

1週間後を待ちわびて

繰り返し書くようだが、もう開幕戦は1週間後に迫っている。B2時代に何度も激闘を繰り広げたファイティングイーグルス名古屋と、ホーム・アダストリアみとアリーナで対戦する。ロボッツがホームで開幕を迎えるのは、3年ぶり。「GEARUP4000」というスローガンが示すとおり、4000人のファンが埋まった中で開幕を迎え、勝利を目指したい。

FE名古屋は、昨シーズンのB2で抜きん出た強さを発揮して優勝。懸案だったライセンス問題も解決してB1への昇格も果たした。#0アンドリュー・ランダル、#11石川海斗、#18相馬卓弥など「B2オールスター」とも呼ぶべき布陣に、帰化選手の#3エヴァンスルークや#21笹山貴哉などを加え、得点力と組織的なディフェンスを両立させていた。

開幕節の注目は元ロボッツ戦士のアンドリュー・ランダル。2度にわたるロボッツ在籍や、2020-21シーズンには当時の山形へ途中加入しながらB2得点王をさらったように、「THE助っ人」だった彼が、チームに無くてはならない存在としてモデルチェンジを果たしたことで、得点力だけでない「いやらしさ」を持った選手として立ちはだかる。彼を乗せないことが一つのバロメーターになりうるだろう。

一方で、ロボッツにとっては#2福澤晃平、#88ジャワラジョゼフの古巣対決…という注目もしたいが、ケネディ、ピーク、そして#11チェハーレス・タプスコットの元B2得点王トリオが、B1でも成長を見せたオフェンス能力のほか、ハードなディフェンスを展開することで「B1の戦い方」をきっちりと示しきってほしい。ちなみに、Bリーグの過去6シーズンのB2得点王は、獲得順にタプスコット、ケネディ、ランダル、ピークの4人。全員がそろい踏みするのは、今シーズンのリーグ戦ではこの対戦のみとなる。ロボッツが昨シーズンの1年で積み上げた「BUILDUP」の経験を見せつけて、「GEARUP」のスタートを最高の形で切れるかが注目だ。

今シーズンの行方を占う一戦になることは間違いない。ぜひ満員のアリーナを実現し、幸先の良い序盤戦を送れるような後押しをしてほしい。

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この記事を書いた人

福島県内での報道記者、大手自動車メーカーのモータースポーツ部門ライターを務めた後、独立。
茨城ロボッツを中心にB2の試合現場に足を運び、ファン目線から取材を重ねる。Twitter @MasaruARA

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